表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
8おおかみツイン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/71

交錯する想い

一葉side。


瞳ちゃんを家まで送って、自分の家に向かう。道程が遠く感じる。

こんなところに、公園があったんだ。あれ、蓮美??

松木まつのき 蓮美はすみ。親類の小学5年生の女の子。

木に抱きついて、動かない。

「蓮美!!」

慌てて駆け寄ると、ゆっくり僕の方に顔を向けた。

木から離れて、丁寧に挨拶。

「一葉君、こんにちは。」

「……こんにちは?」

不思議そうな僕に、無表情で首を傾げて……ニッコリ。

【ゾクッ】

?!!

何の感情なのか、理解できない感覚……何故か焦る。

「サクラと、話をしていたのです。最近は、栄養が足りないと言うので食事です。」

僕には理解できない話が進む。

「そう。」

適当な返事の僕をじっと、見つめた。

「……辛いのですか?」

【ポロッ】目から熱い涙が一筋。

そして流れ続ける涙に、解らない感情が波のように急き立てる。

「……逃げたい。」

「一葉君、逃げれば良いのです。案外、それは追いかけてはこないかも。むしろ、去っていくものが重要です。」

去っていく?

「蓮美?何を……知ってるの?」

「何も知りません。ただ、頭に浮かんだ言葉を口から出しただけです。」

【サワサワ……】

風もないのに、木が揺れた。

「時です……」

「おや、お譲ちゃん。今日は、ナイトがいるのかな?」

気配なく、矢城さんが現れた。

「ふふっ、ナイトではありません。ヘタレです。」

……!?

軽いショックを受けその場に座り込む。

「あはは。一葉、最高だな。お譲ちゃん、綺麗だね……キスをさせてよ。」

矢城さんは蓮美の前にひざまずく。

自然すぎて、怖いぐらいだ。思わず傍観していたが、我に返る。

良く考えたら変態だよね!?

「嫌です。もう、唇は彼のものです。」

「ふふっ。その手の甲でいいのです。」

…………。

何、このやり取り??

蓮美は、サッと、右手を出し……矢城さんが手の甲にキスをする。

あれ?やっぱり不自然さを感じない。

おかしいのは、僕ですか??

「さて、キスをもらったし。帰ろっかな。」

腕には蓮美を抱いている。

「待て待て待って!!蓮美は、置いていこうか?」

「……ちっ。」

今、この人……舌打ちしましたよ??

「姫、残念です。もっと、早く出会っていれば……」

「そうね。くすくすくす……諦めて?」

蓮美の色気が駄々漏れ、僕もクラクラしそうだ。

……彼女の相手は、きっと苦労するだろう。

「半分本気は置いといて、一葉……話をしないか?」

本気……半分なんだ。

「……話?何の?」

「そうだね、私の不在だ……」

「……どこに行くの?」

悲しそうな、伏せ気味の眼。

何を見ているのか……僕には、分からない。

「ふふっ。どこにも行かない。どこにも……行けない。私は、母に似た……姉さんとは違う意味で、消えることを望みたい。」

消える??

この会話は、僕が聞いてもいいのかな?

何故か、相手が僕ではないような……

「双葉を、好きなの?」

返事はない。

「またね……」

会話をしようと言ったのは、矢城さんなのに。

会話の途中で、逃げるように歩いていく。

僕は、引き止めることが出来なかった。

「一葉君。双葉君に、言うのです。選択が、未来を変える……ので……す……」

「蓮美!?」

蓮美が、眠るように僕にもたれた。

「はぁ……はぁ。一葉、ごめん。触らないで……俺のだ。男の君に触れて欲しくない。」

息を切らした麒麟。僕から奪うようにして。

蓮美を愛しそうに、抱きかかえ……僕の前でキスを落とした。

「……蓮美……俺は、どうしたらいい?苦しい……気が、おかしくなりそうだ。君は……」

追い詰められたように、麒麟の不安が切なく伝わる。

「麒麟、ごめんね。」

僕は、その場を離れた。

歩くスピードが速くなり、走っていた。

苦しいのを我慢して、走り続ける。

麒麟の相手が見つかった。僕は!!




双葉side。


家に、一葉が帰っていないので不安になる。

瞳と一緒に帰ったのは知ってる。けど、自分が暴走して……一葉の相手に欲情した。

止める人がいなかったら?そのまま、瑠璃の気持ちを無視して……。

自分の感情が、それを否定しないのが恐ろしい。

父さんは、会社を継ぐ日が決まり……忙しい。

一葉……君に言ったほうが良い?でも、どう伝えたら?

「ただいま。」

玄関の一葉の声に、飛び出したけど……言葉が出ない。

一葉も、俺に何も言わない。

『……矢城さんが、消えるかも……何て、どう伝えたら……』

一葉の心。今……何を……?

理解できない感情が、俺を苦しめる。

「一葉、お願い。教えて……心が痛い。穂波は、どこにいるの?」

「さっき、麒麟の家に近い公園に。でも、その後どこに行ったのかは……」

俺は、家を飛び出した。

消える?どこに?俺が、瑠璃に心を傾けたから?

くそっ!!呪いに縛られていたほうが、幸せだったんじゃないかと思う。

俺の相手として認識したのは……穂波なのに!!

「呼んだ?」

!?

息の切れた俺が、公園に入ろうとした瞬間。

後ろから、タイミングのいい声。

「……海波……先輩??に、景彩……。呼んでないですよ。」

俺が呼んだのは、穂波だ!!

そんな事より探さないと、時間が……

「穂波なら家にいるよ、未来の弟。」

「……海波、またそうやって……て、僕のおしりを触るのは止めようか?」

緊張感のなさに、力が抜けた。

地面に座り込んで息を整える。

「水飲む?僕もちょっと飲んだけど……あっ!!」

景彩の気配が遠退いたので、顔を上げる。

ペットボトルを取り上げ、一気に飲み干した海波先輩。

……男同士なんだけど……それでも間接キスが、許せないですかね??

「海波、大人気ないよ?」

「じゃ、景彩は私に付いた女の子の匂いが許せるのか?」

「うっ……最近、海波が女の子に触れてないのは、ちゃんと分かっているからね。双葉は、いとこだよ?」

「ぐ……実はタクが従兄妹だと言ったら?良いのか?」

「駄目だよ!!」

イチャイチャにしか、見えない。

これが相手なんだ。涙が零れる……

「おい、下衆……泣くな、ウザイから。」

……きつい。今、その顔で止めて……

「海波?一葉に意地悪すると、キスは無しだよ?」

「……うっ……本当に、濃厚なのくれる?」

「あげるから。でも、ちゃんと役目を果たしたら!だからね。約束を守らないと、嫌いだよ?」

濃厚なキスを女性にあげる約束……何かが、ずれてる??

この二人だからなのかな……

「穂波は、君の相手を放棄した。」

……そんなこと……出来るの?

「私たちは、呪いから解放された。異質な呪いから……穂波は、他の奴と付き合う。邪魔をするなよ。」「海波、言葉を選んでって……うんむっ……んん~~っ!!」

我慢の限界なのか、海波先輩の濃厚なチュウを景彩は受けている。

俺は、二人を後にした。

多分、話の途中だろう。……けど、イチャイチャでうやむや……

穂波……穂波……君が俺の相手。

昔、父さんと母さんの物語を何度となく聴いた。

ずっと憧れていた相手……

君を見つけたのは入学式だった。

この広い麻生学園。気がつかなかったんじゃない。

地区に分けられた小等部の校舎は二つあった。出会うきっかけがなかった。

規模が大きい幼等部と小等部は運動会とかのイベントがないから。

中等部は、姉妹校に編入する人で激減するから……君と出会えたのは、奇跡。早いほうだ……

あの時の感動が……何故!!




一葉side。


携帯が鳴り、画面表示が目に入る。

【瞳ちゃん】

出ることが出来ず、じっと自分の部屋の暗闇の中で、光る携帯を見つめていた。

父さんの言葉を思い出す。

『その子は友達にはどうなのかな。』

瞳ちゃんの友達?誰かな……親しい人が誰なのかあまり知らない。

朝、僕には挨拶をするけど委員長にはしない。

委員長は何かを感じて、いつも先に行ってしまう。

予定の委員会は本当だけど、どちらかと言えば遠慮するように。

委員長は、クラスのみんなが尊敬してる。綺麗な声……いつも、僕の体調を気にしてくれた。

【トク……ン……】

心が反応する。

「……うぅ……っ……うぁあ~~ん。……ふぅ……うぅ~~……」

君だったの?僕の相手、僕の求める人……。

痛い、心が痛いよ。こんな僕を君は好きにならない。

こんな、情けない僕。それでも嫌わないで……




双葉side。


失いかけて、やっと大事なものに気がつくなんて……

心が読めないのは、みんな同じだ。

不安も恐れも、小さな幸せも。

君の心は、俺の心が君だけを求めていれば簡単に分かる。情けない……

君は、もう他の誰かのもの?赦さない……

わがまま?上等だ!さんざん自分勝手した。今更だろ?

ふんっ。全力で、お前を落とす!!覚悟しろ♪

瑠璃……君には、きちんと謝ろう。今までと同じ、一葉への想いを応援する。

ただ君の瞳……何故か、狂うように惑う。

こんなときの麒麟だ。役員も、俺の相手のために利用する。

穂波……君を護れる男に必ずなってみせる。俺はおおかみだ。

そして君は魔女……求めて、俺のすべてを捧げるから。

もう心は分かたれない。俺の全ての心を、君だけに注ぐ……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ