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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
8おおかみツイン

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43/71

瞳に惑わされて……

一葉side。


今日は、父さんと二人でお出かけ。

時々、父さんとはこうして出かける。

「今日は、遠出して星の見えるところに行くか?」

「うん!……あ、今日ね……忘れててごめんね。瞳ちゃんから誘われて……あ、僕の好きな人だよ。」

僕が嬉しそうに報告するのを、運転しながらうなずいて聞いている。

覗き込むと、父さんの口元が笑ってた。

「どこが好き?」

「……うんとね、可愛いところ。僕に頼ってくれるのが嬉しいよ。」

「そうか、その子は他の子に対してはどうなんだ?」

他の子……??あまり、気にしたことがない……

「分からないや……。あぁ、そういうのを知らないから双葉が怒るの?じゃぁ、父さんは母さんと……どうだった?」

僕の質問に、あはは……と笑って真剣な表情に戻り、目は真っ直ぐで運転を続ける父さん。

「父さんか……。呪いで、母さん以外は女の子の違いが分からなかった。母さんだけが特別だったんだよ。匂いも、キスも……触れる手も……母さんが特別だった。」

照れることもなく、父さんは懐かしそうに語る。

特別……か。キスも……。

【ドキドキ……】

僕は、いつか瞳ちゃんと……

「一葉、君たちは呪いから解放された。相手を間違えることもある。」

相手を間違える……?

「……父さ……」

「そのまま、相手じゃない人を選ぶことも出来るだろう。幸せも得るかもしれない……。それが、君たちの幸せなのか……俺には解らないけどね。弊害だよ……一葉、相手ともう少し仲良くなりなさい。一生は長い……君が相手に選びたいなら……慎重にね。」

「……はい。」

双葉が言いたいのは、これのことなのかな……?


次の日。

「一葉君。危ないわよ?」

鞄が引っ張られ、視線を前に戻すと……壁が目の前。

「ぎゃ!!……危なかったぁ~~。委員長、ありがとう。」

笑顔を向けると、綺麗な微笑みが返ってくる。

【ドキッ】

委員長って、綺麗だな……この目……かな?

「……一葉君!?」

委員長の驚いた声で我に返ると……僕の両手が、委員長の両頬に触れていた。

?!!

「ごめん!! ……ごめんね。あの、嫌だったよね……?その、なんて言うか……綺麗な目だなと思って。無意識に……いや、あわわわわわ……」

つい、口が正直に次々と。

「……ふふっ。くすくすくす……じゃ、許してあげる。一葉君って、可愛いね。」

最高の笑顔に、紅葉した頬。

【キュン……】

心に、感じたことのないムズムズ……

「ありがとう、委員長!」

それから黙ってしまった委員長は、嬉しそうな雰囲気?

静かに二人で歩く道が、心地よく……このまま、続けばいいのにと、願ってしまう。

委員長のこの雰囲気が、好きだ。安心できる……

多分、図書室と同じ雰囲気だからだね。うんうん、静かな……

「一葉君。おはよう!」

「あ、瞳ちゃん!おはよう。」

「一葉くん、あのね……」

瞳ちゃんは視線を下にして、口ごもる。

……??

「ごめんなさい、二人とも。私、委員会に遅れそうだから先に行くわね。」

委員長は携帯の時間を確認して、慌てて走って行く。

「気をつけて。」

後姿に、心の奥……痛みが少し。

ん?冷たい風が、通り過ぎたかな??

「一葉君?」

覗き込み、瞳ちゃんが僕の頬にキスをした。

「……へへっ。しちゃった……」

【かぁあぁああ~~】顔が真っ赤で熱い!

「……ごめんね?」

「うぅん!!ううぅん!!いいよ、大丈夫だよ!!」

わぁあ~~、頭がパニックだよ??

その後の会話も、授業中も上の空だった……。


お昼休み。

「一葉、4組の女の子が呼んでるぞ?」

4組??覚えがなくて、入り口に歩いて行く。

そこにいたのは、知らない女の子。

「えぇ~っと。君は誰かな?」

「……この間、一葉君に困っていた所を助けてもらったの。お礼が言いたくて……」

困っていた??どの子かな……分からないや。

思い出そうとしている僕の後ろから、少しトーンの低い声が聞こえた。

「一葉君は、私の彼氏なんだから!近づかないで。」

……彼氏?この声……瞳ちゃん??

「え?」

「……え、キス……した後に、OKしてくれたよね?嘘なの?」

…………。

その後の教室中のざわめきが聞こえないぐらいに、僕の思考が止まった。




双葉side。


一葉が瞳を連れて、廊下に出た。

教室中の奴らはみんな、野次馬で廊下の様子を見ていた。

俺は席に座ったまま……外を眺める。

【カタン……】

穂波が机の上に、右側から後ろ向きで座る。

両手は後ろで体を斜めにして、流し目で俺に観察の視線。

「邪魔なんだけど?本出せないし……」

「くくっ。見に行かないのか?」

俺は廊下よりも……

【ドキッ】

委員長は自分の席で、教科書に目を落としていた。

俺の視線に気付いた穂波は、机の上に体勢を変えて横になる。

「……ね、誰を見てるの?」

俺を誘うように、制服の胸元の隙間が大きく開く。

【ドク……ン】

しかも、こんなおいしそうな匂い……

けど、彼女が気になるなんて……

穂波は俺を見透かすように、意地悪な顔。

「ふっ、時間切れだ。残念、またのチャンスを。」

視線を逸らして起き上がり、軽やかに机を下りた。

「穂波……」

「……矢城……だろ?」

【ズキッ】

拒絶された。当たり前か……

「行け。お前の兄貴の責任は、弟が取るべきだ。ふふ……それとも、私が慰めようか?」

ニヤリと笑ったすぐ後、穂波は俺に背を向けた。

なんとも言えない感情に突き落とされたものだ。

そんな感情にもがきながら、委員長のために立ち上がった俺。

【バンッ】

「席に着きなさい!授業よ!!」

キリっとした委員長の声と態度に、全員が席に着いた。

俺もイスに落ちるように座る。

「一葉くん、迷惑よ。授業が出来ないわ。先生を呼びなさい。陰で見ているはずだから!」

一葉は、すぐに先生と瞳を連れて入ってきた。

全員の視線が、委員長を尊敬の眼で見ていた。俺もだ……。

胸がザワザワする。

俺の心に2人の存在。

一葉が悪いんだ!!一葉が、瑠璃を選ばないから……




一葉side。


廊下で、瞳ちゃんと話をした。

「……あの、ごめんね。キスで、その……話をあまり聞いてなかった……。瞳ちゃん、あのね……」

「私のこと、嫌い?」

「……好きだよ。けど」

父さんが……

「何がいけないの?私じゃ駄目なの?……他に、好きな子がいるの?」

「……他に……?」

この時、思い当たる子なんていなかったのに……反応したんだ。

「酷い……」

「違うよ!いないよ……」

「じゃ、いいよね?」

いい……よね。何がいけないのか、答えられない僕は……

この時間から解放されることはないだろう。

「……うん。よろしくね……」

後悔する。この、自分の幼さに……

見えなかった心。理解しなかった……自分の相手。

もう手に入らないかもしれない。君の心は、呪いで縛られていないから……


授業がとっくに始まっている時間に、先生は壁に隠れて僕たちの様子を楽しんでいた。

委員長を怒らせてしまったみたいだし……心が痛い。

痛みで、おかしくなりそうだ。

瞳ちゃんを、僕は好きなはずなのに……今更、相手ではないかも……なんて。

父さん……双葉……どうしたらいい?

双葉、君は……僕に答えをくれるかな?

……くれたね。残酷な応えを……




双葉side。


一葉、君の事を悪く言うことなんて出来ないね……。

やはり兄弟だからなのかな……二心で迷うなんて。

交錯を始める恋が、僕たちを切り裂くなんて……。

まだ、知らないままでいればよかったのかな?どこで間違えたの?

この後の、俺の行動かな?

俺の相手は、呪いの弊害に縛られている。俺たち以上に……

始まりの原因は魔女だから。

それもまだ未来……


授業が終わって、俺は瑠璃の席に行く。

「……双葉君。図書室の資料の整頓に、付き合ってくれるかな?」

「あぁ、いいよ。今日は、閉館日か……話しも出来るね。」

本当は、役目があったけど……麒麟に許可をもらおう。

優しいあいつは、笑って許してくれるだろう。

麒麟、この時に……君に相談していれば未来が少しは違ったかな?

それはただの言い訳、逃げ道を探しているだけ。


委員長の目は、一葉を見ている。

この目が俺をおかしくさせる。勘違いしそうだ……

俺の相手なら?いや、今すぐ……相手でなくてもいい。俺のものにしたい……。

狂いそうだ。匂いじゃない……この眼だ。

惹かれて、囚われたように逃げられない!!

「……ば君?双葉君!……大丈夫?すごい汗……顔色も悪い……んっ」

意識が混濁しているのか?俺は、いつ図書室に来た?

俺は今、一体何を…………

一葉は、瞳とキスをした。

俺は穂波にキスをした。そして今、瑠璃の唇に重ねたキス。

【パシッ!!】

頬に一瞬の熱。痛みを感じない……

涙ぐむ瑠璃の瞳が、俺を惑わしている。

「双葉君には、好きな人がいるよね。私は、一葉君が好き……心は、まだ……ここにある。想いが熱く、冷めることなく……重くて、辛いのに微かな幸せで生きてるの。」

「……うん。その心が欲しい。瑠璃……俺を選んで……。すべてを捨てて、君を選ぶから。」

「何を、言って……双葉く……っ……いやっ!」

机に押し倒し、瑠璃の首元に唇を押し当てる。

相手ではないのに、心が急かす……求めろと。手に入れろと、俺を動かす。

欲しい。もっと……この一葉を愛するこの心が欲しい。俺を愛して欲しい。

「瑠璃……」

「はい、すとぉ~~っぷ!」

俺の制服のえりくびが引かれ、我に返る。

机には、震えて……制服が乱れた瑠璃。

彼女に布を被せ、抱きしめる女性。

「……あの、俺……」

【バキッ】グーパンチが俺の頬にヒット!

「……いてててて……」

「目が覚めた?……ボスがストレス発散に呼んでくれたのよね。けど、気分が悪いわ。お願いする相手を間違えたかしら?」

色気のある、綺麗な女性だ。

女優?モデル?みたいな、その辺にいないような(親類以外の話だけど)。

「優貴、いるんでしょ?あなたのチームの責任よ。さぁ、あなたも殴られる?」

「……綾。浮気じゃないって……話を聞いて。許してくれよ。それにその子、気を失ってるよ?」

…………。

この人が役員衆のハナ

自分のしたことに、思考がついていかない。悪いことなのに、心が痛まない。

闇に落ちるようだ……



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