俺はおおかみ!!
次の日。俺は、決意をして学校へ向かった。
ナミが、いつもの校門に立っている。
「あっ……景彩、おはよう。今日ね、お弁当作ってきたの。」
可愛い笑顔に、心が和みそうになる。
「……ナミ……話がある。ついて来て?」
俺の雰囲気に、泣きそうな笑顔。
多分、何かを感じている。
「……景彩……誤解してる。海波の本質は、私なの……。私が望む姿は……」
「うん。啄路くんが、好きだった君だね?」
「……!!」
図星だったのか、ナミは青ざめて口元を押さえ……震えている。
「それが、トラウマなの?……いるんでしょ、ミナ……出て来なよ。俺が選んであげる。そして、答えも……。どれだけ俺をだますの?俺は……そんなに、情けないかな?」
「……景彩……それは違う。」
後ろの校舎の陰から、ミナが出てくる。
よかった……チャンスはないかと思った。
「二人とも、ここに並んで?」
「景彩、お願い……私を選んで!!でないと、私……私は……」
ナミが俺にしがみついて、涙を零す。
「大丈夫。君は、海波の中に戻るだけ……消えないよ?」
俺の言葉に、ナミが驚いた顔。
ミナも、驚いた顔……慌てて視線を逸らした。
「力が暴走したにしては、害がない。確かに、結果が二人にしたけど……俺を試したの?」
「それは勘なの?」
「……うん、勘だ。けど、確実に結論と結びつく。憶測だけど……多分、合ってる。でしょ?」
魔方陣が、二人を包む。そこに残ったのは一人の海波。
ナミでもミナでもない……元の雰囲気だ。
「お帰り。……俺、怒ってるんだよ?さ、正直に言って。全部、受け止めるから。ね、海波……俺は、君が好きなんだ。信じてくれる?」
「うん。ありがとう……」
話は、とても単純。
海波は、サバイバルで男前な雰囲気になってしまった。
啄路くんは、男の子らしくなっていたけど……海波の好きは、顔じゃなく啄路くん自身。
それなのに啄路くんは「可愛くない!!」と、泣きそうな顔で外国へ旅立った。
君は可愛い女の子に迫るけど、啄路くんの幼い時の面影を求めていたんだ。
その女の子たちからの許容を求め……。
トラウマだ……。情報は正しかった。
君は、ここでも嘘をついていた。
「ね、海波……俺を試して、答えは出た?俺を……好き?ね、答えて……」
「……ごめん……」
「謝って欲しいんじゃない!!……俺は、海波が好きなんだよ?求めておきながら、一線を引いていたのは海波だ!!……答えて……酷いよ、海波。俺は、どうしたらいい?俺は……」
「……景彩……。力が暴走したのは、君がおおかみの一部を見せたからだ。トラウマが……男になった君は、私を求めないと……タクと同じように、可愛い過去を求めたら……生きていけない。そんな経験をするぐらいなら消えた方がマシだ。」
やっと本音が聞けた。
啄路が羨ましい。どんな形であれ、海波の心を捕らえていたのだから……
「で、どうしようか?……“俺”で、いいのかな?」
「うん、“俺”がいいね!私の彼氏、でしょ?」
「うん!!」
嬉しくて、海波に飛びついた。
「……ははっ……景彩は、本当に可愛いな。ね、こんな私は君に相応しくない……それでもいいの?」
「海波がいい。君の中の可愛い部分は俺だけが知ってる。誰にも見せないで?……ふふっ、嫉妬で狂うよ?」
「うん、嫉妬してよ……私は、そんな男らしい景彩も大好きだ!!」
「……何?タクが景彩に……キスをしただと?」
以前、俺に啄路くんがキスしたことを知った海波。
啄路くんに、海波の猛攻撃が続く。
俺は見物だ。
「ね、止めなくてもいいの?一応は、妃だから……問題は困るんだけど?」
麒麟が困った顔で、二人を見ている。
「……うぅ~~ん。ね、麒麟?」
「何?」
「まだ何かが、おかしい気がするんだけど……何かな?」
「……今更?遅いよ……」
「ま、いいか……。海波、そろそろお弁当を食べない?俺……お腹がすいちゃった。」
「あぁ、行こう。けっ!!今後、景彩に触れたらコロス!!」
「……嫌だ!!景彩は、俺が必ず手に入れる!!」
【ゲシッ】
トドメが決まったかな?
「麒麟、コレ……後、宜しくね?」
「高いぞ?……全く、役員に入れた意味がないよ!」とか言いながら、気絶した啄路くんを軽々と運ぶ麒麟。
いつもの場所で、敷物を広げ重箱を並べる。
「へへっ、景彩……私、景彩の料理好きだ。美味しいと思うよ?」
「……ふふっ。嬉しい……。たくさん食べて、これなんか新作だよ♪」
「ふふっ。あ~~ん。」
口を開けて、待つ仕草にドキドキする。
「くすっ。可愛いな海波……はい。」
口に入れてあげる。
「……もぐ……もぐもぐ……へへっ。美味しい!」
海波は凄い勢いでお弁当を口に入れ、満足そうな笑み。
その様子を見ていると嬉しくて、どんどん愛しさが募っていく。
「ご馳走様でした!!……景彩、こっちにおいでよ。」
「嫌。」
「……え、怒ってるの?」
「うぅん。あの……ね?ここ……膝に寝てみない?」
正座した太ももにポンポンと手で合図して、チラッ……様子を見る。
「……~~っ!可愛い!!寝る、そこ……私の特等席ね!!」
僕の膝枕に幸せそうな海波。
頭の重みが心地いい……ん、あれれ?
「海波、何してるの?」
「え、何が?おしりが私に触ってって呼ぶんだよ!」
僕の不満そうな反応に、海波は起き上がって猫のようなニッコリ笑顔でキスをする。
「……っ……もう、外なんだよ?……くすぐったい。ふふ。もっと……」
「うん。もっと……景彩、大好き。」
「うん、俺も……」
【ドサッ】
重みがかかって、押し倒されてしまった。
「……?!!……ぁ……そこ、駄目……ダメだって!」
「可愛い景彩。……?……ごめん、ヨンデル……行かなきゃ。」
海波の目が緑色に変わる。
幼い時から聞いた物語……
また魔女の力なの?
俺の上から退いて、海波は服の乱れたまま走り出す。
「海波?!」
……ヨンデル??
慌てて起き上がり、服を正しながら追うように走りだす。
向かう先から、喧嘩のような声が聞こえるけど……そこは異様な雰囲気。
こんな騒ぎなのに周りに誰もいない。役員でさえ、対処していないなんて。
その中心に居る人物に驚く。
「……麒麟?!……蓮美……どうして?!!」
「景彩、急いで奴らを止めなきゃ。正常じゃない……手を抜くな!!」
4人の男子生徒が二人を囲んでいた。
麒麟は蓮美を護って、上手く攻撃できないでいる。
「……麒麟……もう、いいです。止めてください……うぅ……いやぁ~~!!」
魔方陣が辺りを包む。
「不味い!!景彩、下がれ……」
【トンッ】海波の軽い蹴りに、俺は後ろにしりもちで倒れた。
海波も魔方陣を出し、それが対抗しながら徐々に覆って色を変える。
囲んでいた男子生徒たちは倒れて気を失った。
「……麒麟!!大丈夫ですか?」
「あぁ。大丈夫だ……蓮美、泣かないで。」
海波は、蓮美に近づき額にキスをした。
「……え?」
もちろん、可愛い蓮美に嫉妬するが……あれ??
「……はぁ、ここにも……未来のカケラがあったのか。」
海波の小さな声が聞こえた。
蓮美は眠るように、海波の腕に寄りかかる。
「ほら……」
麒麟は、愛おしそうに蓮美を抱きかかえた。
そしてキスを落とす……優しく……
「役員に報告しておく。草樹のところへ行け……。学園の予見者の所へ案内してもらえ。」
何が起きているのか……勘では分からない。
ただ、麒麟の相手が見つかったのだと……それが蓮美。
彼女は『未来のカケラ』。
「景彩。ごめん、大丈夫か?」
俺は立ち上がり、ほこりを払う。
近づいた海波の服が乱れたままなので、そっと整えてあげた。
「……海波?」
呼びかけに不安そうな笑顔を向ける。
その表情に、胸が苦しくて俺は目を細めた。
海波の頬に手を当てて唇をそっと重ね、目を閉じる。
手に当たる暖かいものに気付き、目を開けると海波が涙を流していた。
「……海波……俺では癒せない?」
「違う。……景彩、愛している。君のすべてが欲しい。過去の魔女は手に入れないまま、悲恋を繰り返したから。」
「……うん、いいよ……あげる。俺のすべて、君は手に入れた。俺も君を手に入れたんだよね?」
「私は必死だよ。景彩を喪ったら、生きていけない。一生独り……」
「それは俺も同じ。俺は、おおかみ……解放された呪いが何かを告げる。」
「……多くの幸せを願おう……」
「うん、そのための役員だからね。」
「……そうだね、私たちで護ろう。」
END




