冒険2
村3。日の暮れた時間帯に到着した。
舞踏会の開かれる城下町の外れに、その村はあった。
ここに、“シンデレラ”がいる。名は知らないが、私の魔女の血が知らせる。
『美衣、私……いらない?』
多分、いらない?どうかな……。もしかして、この物語は……。happy‐end……なのかな?
『美衣……この世界で死なせたら、酷いのは……私ですよ?』
そうね……
ケイトは、寝ている。起こさないと、幸せを逃す女の子がいるの……。
「ケイト、着いたぞ!」
ユサユサと、起こし……ケイトの目を擦る仕草にときめいた。
「降りろ、この馬車は目立つから処分する。私は、今から役目がある。さ、宿を探して来い!」
ケイトは、私を見つめ……寝ぼけているのか微笑んだ。
【ドキ……】心臓に悪い奴だ!
「じゃ、先に行くよ……」
ケイトを見送る。
舞踏会に行けず……運命から外れた女の子。
「何を泣いているの?さ、着替えて……これに乗って行きなさい。あなたを、定めが待っている。」
……嬉しそうな彼女。これは、現実……夢物語ではない。
馬車は、物語と同じで……12時には消える。あなたは……立ち向かう。今より辛い現実に……。
シンデレラは、幸せになったのか……定め……
《 ★※〇 》私は、家から水晶球を召喚した。
私の未来は分からないけど……
「ビエ、宿取れたよ。へへっ。俺が、先に見つけた!」
何だか、得意げに言う。……子供だな。
「ご褒美に、何が欲しい?」
「……お前……」
小さい声で、聞こえない。
「え?」
「お前、内緒で何食った?優しいのが気持ち悪い!薬屋!!どこかに……」
……こいつ……調子に乗って!!
酒場に入る。
「ビエ。俺に、何か隠していることあるだろ?」
真剣に問うケイトが、睨む。
「あぁ、いっぱいありすぎて分からないぐらいだ。どれのこと?」
口に食べ物を押し込めながら、訊いてみる。
「……宿は、狭くて……部屋が一つしか取れなかった。」
………。
「そうか、しょうがない。ケイト、今日は……女を我慢してくれ。」
ニヤリと笑ってみせる。
「……ビエ、お前……」
「あぁ、俺も我慢する。この村の子も可愛いけど、残念だ。」と。
可愛い女の子に目を向け、手を振って見せた。
女の子も、俺に手を振る。
ケイトは、俺の何を疑ってるんだ?
寝ている間に、暗示をかけ直すか……。いいタイミングだろう。
「ほら、ケイトも喰え!!」
ナイフに肉を刺し、突き出した。
「……あぁ、食うから皿に置け!」
宿の客室。確かに狭いが、ベッドが二つある。
窓際に立ち、遠くに見える城を眺めた。
今日、舞踏会が行われている。もうすぐ、12時……魔法の切れる時間。
後は、あなた次第。幸せの後も……努力が必要。
「ケイ……ト……へ?」
話しかけようと、振り返る私の腰に手が回り……ベッドに自然に導かれた。
不自然なぐらい、驚くほど簡単に!!
「ビエ……」
はっ!感心している場合ではない!!
やばい、気がついてる??
「ケイト、重い。冗談は……あ、酔ってるのか??」
上に被さるケイトの、見つめる眼はシラフだ。
押し退けようと、押すが……動かない。
「ケイト、話は聴かない。退いてくれ。お願いだ……」
退く気配は無い。ちっ……
《 ホ…… 》呪文の途中、口を塞がれた。
ケイトの唇……熱い……私を……求める……
ちっ!!
目を合わせ、暗示をかける。
「……何……を……?」
ケイトの力が弱まり、私にのしかかる。
この世界で生きた香りと温もり。
ケイトは眠り、吐息が聞こえる。
「ケイト、あなたは……夢を見た。私を女だと思って、襲い……男だと再認識して……目覚める。“俺はビエ、男”日を浴び……その度、この呪文は繰り返される。」
この、短い時間に……幸せを感じてもいいだろうか?
ベッドにケイトを寝かせる。……横に寝転んで、頭を撫でる。
愛しい……必死で、気がおかしくなりそうだ……。
「ケイト……」
唇に指で触れる。男の人の唇も、柔らかいんだ……。
この唇が、私の唇に触れ……求めた。ケイトが、私を……?ホモ……じゃないわよね?
いつから、前の魔法の効力が……?
朝。いい天気で、ケイトの上に日が注ぐ。
「うわぁあぁあああ~~」
暗示が、強かったかな……?
「どうした、悪夢でも見たのか?」
「……あぁ……はは。だよな、……へへ。」
私を見て笑う。ベッドに座ったまま、胸を押さえている。
心拍が乱れるほどの悪夢?
「さ、今日は勇者の所に行くんだ。早く着替えろ!俺は、先に飯を食ってるからな!」
これでいい……
この世界の料理も、見た目が悪いけど慣れてきた。
香辛料も、口に合わないのがどれか分かるようになったし!
「姉ちゃん!おかわり!!」
【ドン、ドドン!】机にいっぱいの料理。
全部、口に運んでいく。
「げ……。いつも思うけど、どこに入るんだ……それ?」
「腹だ!魔法には、食い物のエナジーを使うからな!」
本当かは、知らないが……
『おいおい……』
腹を満たし、店を出る。
ケイトは、地図を出し……方位を確認する。
「あっちか……」
俺に、確認で……な?と、訊く。
「……さぁ?」
はっきり言って、私は方向音痴!!
「……行くぞ!」
何を根拠に……あぁ、太陽かな??方向の分かる奴って、ちょっと……いいな。
『そうね、いいわ。女性は、ほとんどが方向音痴らしいわよ?』
マジ?
『らしい……』
だろ?
歩く……歩く……
森が見えた。
「この中だ……けど、地図はここまで……」
「ちょっと待てよ!」
《 ★ 〇 》水晶球が、鏡を通して情報を映す。
「……便利だな。それ、未来とか分かるのか?」
ケイトは、未来を知りたいのか?
「……いや、魔法の分野が違う。私には、未来は分からない。……それでいい。必死で、生きられるだろ?何かに頼ることなく……」
「……そうだな。じゃ、勇者様を助けに行くか!」
「あぁ!」
日の出た時間帯なのに、森の中は薄暗く……水晶球で、照らす。
火より安全で、二酸化炭素も出さない!これ、LEDだし。
『……本当?!』
……多分……
「ビエ。見ろ、洞窟だ!」
ケイトの指差す先に、岩場の影……割れ目。
洞窟……ワクワク……
【ガササ……】「がぁああ~~」巨大なモンスタ-出現!
《 ☆★ 》光がその地帯に広がり、モンスターが目を押さえる。
光は、私たちに周りをよく見せる程度。
敵が怯んだ隙に、ケイトの剣が突き刺さる。
緑色の血しぶきが、ケイトを染める。
……これが現実。ケイトの生きてきた世界……胸が痛い……
「はぁ……ぐっ。」
ケイトは剣を地面に刺し、体勢を崩す。血に、毒気があるのか?
《 ☆ 》回復の魔法……
顔色の良くなったケイトは、苦笑いを見せる。
「……ビエ、体力は……勇者に残しておけ。この、洞窟では……何があるか分からないから……」
悲しい笑顔……胸が苦しい。
分かっている……ケイトが、どれだけこの役目に固執するのか。
元の世界を……どれだけ……願っているのか。
「……ビエ、疲れたのか?」
優しくしないで……おかしくなりそうだ……
いつか、私の……。あなたは、望まない……けど……
「は……」
「は?」
「腹減った!非常食を喰うぞ!」
俺は、ケイトを睨みつけた。
「……ぷ……あはは!いいよ、そのための非常食だろ?」
彼の笑顔に、泣きそうになる。
食べ物を、少し……必死で食べる振り。
「さ、食べたら中に入るぞ?」
「あ、洞窟に近いから中の地図が……来た!生態反応も……少しいるな。」
「……レベルまでは、分からないか?」
「あぁ。3匹……魔力は大丈夫だ!ケイト、絶対に無理しないでくれ。絶対に!約束しろ!!」
「……あぁ、約束する。」
私は、知ってる……。約束を破ってでも……全力で行くんだと。
ケイト、俺は男だ……守らなくていい。だろ?
大切な仲間なら、裏切らないでくれ。命を大切にしてほしい。
「行くぞ。」
「勇者を助けに!」
洞窟の中。
光の魔法で、奥まで照らされパニック状態のモンスター。
攻撃は容易いが、体力が違う。
最終地点で、多分最強のモンスターが勇者を見張っているだろう。
宝箱も落ちていないし、回復の出来るアイテムも……セーブポイントなんかあるわけが無い。
「はぁ……は……。ビエ、大丈夫か?」
座り込んで休憩。
私を何度も気遣うケイトに、胸が苦しい。
回復の魔法をケイトに使おうとするが……拒む。だから、私の傷もそのまま……。
ケイトは、うるさいほどに回復を……私に勧める。
だから自分を回復する振りをして、ケイトを分からない程度に徐々に回復するようにした。
「もう少し、強い魔法で回復しとけよ!……俺が、頼りないから?だから、力を使わないのか?」
ケイトの声が、だんだん小さくなる。
「死ぬときは、一緒だ……。お前が、回復を拒むなら……私も、回復しない。力は、護るためにある。残しておくとすれば、先に死んででも……お前を生かす。怨むなよ。先に言っとく。命ギリギリまでは、お前の望みでこの世界に留めるが……私の判断で、向こうに戻すこともあると。」
「何、勝手なこと言ってるんだ!」
「……忘れろ……時が来るまで……」
詰め寄ったケイトに、暗示をかける。
私に寄りかかり、ケイトは眠る……。
死ぬときは、一緒じゃない……な。
ふふっ。過去の魔女たちは……こんなに必死だった?いや、もっと……異質だっただろう。
求めるのは、その人の心だから……。
手に入れない。手に、入らない。それでいい……俺は男……。
ケイト、この世界のエンディングを……二人で見えるかな?
「……ん~?はっ!俺、寝てた?!」
「15分ほどだ……。行くぞ!」
私は、立ち上がる。
「ビエ、大丈夫なのか?」
「あぁ、非常食はまだある!お前も大分、顔色がいいな。」
「確かに、すっきりしてる。……勇者を助けるぞ!」
「おう!」
細い道、迷路のように入り組んだ所。水晶球が映す地図のおかげで、迷わず行ける。
私の魔法とは違う光が見えた。広い空間!
予想外な魔物だった。姿は、まるで人間……。
「いらっしゃい……」
話した!
俺たちの攻撃が躊躇する部類。知能があり、意思を通わせるなら……なおのこと。
この空間の中心に、胸ぐらいの高さの石の台。
その上に勇者が横たわっていた。結界が施されている。
………。
「偉大な魔法使い……か、くくっ……気に入った。私は、去る……。すぐに会うだろう。」
………。
目の前で、あっけなく……消えた。
「「………」」
しばらく、私たちは……無言。先に口を開いたのは、ケイト。
「……勇者、助けようか?」
「あぁ。」
《 ☆◇◇☆ 》光が包み、結界が解かれる。
勇者は、何事もなかったように起き上がり、私たちを見た。
「……助けに、来てくれたんだね……」
「はい!」
ケイトは、嬉しそうに近づいた。
違和感……
「ビエ、実は……この世界に来て困っている俺を、助けてくれたのは彼だったんだ!」
「そうか、感動の再会だな。」
だから、必死でこの世界に係わろうと……生きてきたのか。
この人を助けたくて……。
「じゃ、城に帰るぞ!」
《 ★※☆ 》洞窟の中から、一気に城へワープした。
「……すばらしい!」
「……ゲームだと、洞窟に頭ぶつけたりするのがあったな……」




