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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
7僕はおおかみ!

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39/71

ライバル!?


同じクラスに、転校生。そう……麒麟の情報の通り。

彼が、この地に戻ってきたんだ。

親の仕事の関係で海外に行っていたらしい。

背の高い、男前の彼……織野おりの 啄路たくみくん。

海波の初恋の人。トラウマの原因。

挨拶時に、目があって微笑まれた??

僕の心は穏やかではないのに。海波のことを知ってる風じゃない。

一体、何故??

彼は周りに囲む人垣を避けて、僕の席の隣に立った。

「……君、可愛いね。名前を教えてくれる?」

…………。

僕はライバルに、迫られてるの??!!

「あの、僕……男です。」

…………。

【ガシッ】

両肩に手が置かれ、顔が近づいてくる。

?!!

目の前ギリギリで、止まった。

「……タク……私の彼氏に、手を出すな!!」

海波が啄路くんの髪を掴んでいる。

「いててて……マジで、男なの?」

じっと見つめる目が、おじいちゃんと同じだ。

「……はぃ。」

気持ち悪いな……この人も、病気かな??

「タク、2人のラブラブを邪魔するなよ。」

「……お前、相変わらず……くくっ。ま、宜しく♪」

啄路が海波の額にキスをした。

【ムカッ】

彼の首襟を掴んで引き離し、投げ飛ばす。

受身を取り損ねたのか、いい音がするね。

「……いってぇ~~」

あのタイミングで、受身が少し出来る程度。

弱くはないんだ。

「タク、鈍ってるな。道場に顔を出せ。」

「あぁ、また組んでくれるのか?くすす……体は、立派に育ってるじゃん。」

海波の胸に視線を向けてニヤリ。

「……相変わらずだな。」

海波は、ため息を吐いただけ。

クラスの視線も気にせず……並ぶと、お似合いに見える。

「あぁ、景彩。俺は男でもいいぞ?気にしない。」

…………。


「ぷっあはははははっははは!!」

麒麟は、彼の情報に爆笑だ。

「麒麟、鬼畜度が上がっていくよ?」

苦笑の双葉。

「海波先輩の態度は、普通なんだ?」

「うん。トラウマ……彼に振られたのは、気にしてないみたいに見える。」

「案外、あの家系は……男を気にしないんじゃないかな?」

双葉はため息で遠い目をした。

「女の子を好きになるほどショックなのに?」

…………。

3人で考えるが、答えが出るわけじゃない。

「麒麟、準備が済んだのならすぐに来なさい。お前のグループ結成に、集まっているのだから。さ、他の役員衆に挨拶をしてください。」

呼びに来た恵さんは、麒麟の上司ではなくなった。

役員衆は7人。

「新任、もく。警備系。宜しくお願いします。」

麒麟は、役員衆のもくと言う立場を引き継いだ。

恵さんがつき。草樹くんがつち優貴ゆうきさんがすい。蛍兎さんがこと

……海波がひい

「……海波……??」

「ありゃ、ばれちゃった♪ごめんね……バイトって、これだよ。」

…………。

あぁ、勝てないわけだ。

はなが不在とは聞いていません。優貴、彼女はどうしたのですか?」

「……喧嘩しました。何か?」

優貴さんは不機嫌で、口を閉ざした。

「優貴さん。一体、何をしたの?」

草樹くんが訊いた。

「……浮気じゃないんだ。」

大人の世界は、僕たちには早いな。

微妙な空気に様子をうかがう。

「呪われたように狂っていたのに、どうしてそうなったわけ?」

「そうだよ……俺を狂わすのは、あいつだけだ。はぁ……多分、子供が出来たと思うのに……。」

「なっ……早く、仲を戻しなさい。本当なら、後任も捜さないといけません。」

お祝いの雰囲気ではないな。

優貴さんは、急いで部屋を出て行った。

「それにしても……捜査系は、ここにいるのが珍しいですね?」

恵さんは、蛍兎さんのいるのが不思議そうだった。

「本来、接触がないのをボスが望んだからね♪」

ボス……?

「ねぇねぇ、景彩。この後は任務があるのか?」

海波が僕を抱き寄せる。

「……うぅん。海波、啄路くんは……」

嫉妬心に、訊いてしまおうと口を開いたが……塞がれる。

【チュウゥ~~】

「……んっ……駄目だ……よ。みんながいるのに。」

押し退ける僕の手に舌を這わせる。

「……ゃ……っ……」

つい出てしまった声に、顔が赤くなる。

「……可愛い。景彩、本当に可愛いよ……ふふ……」

遠くで、全員が部屋を出る気配。

それを感じながら……上に、海波が被さるのを受け入れてしまう。

「景彩、私のこと好き?」

「……うん、好き。」

「へへっ、嬉しい。景彩、君が聞いた情報は正しくない。タクの適当が交じってる。」

嬉しそうに、僕の服に手を忍ばせ……滑らしながら囁く。

「聞きたい?」

「うん、聞きたい。」

「そのかわりに、景彩のすべてをくれる?」

僕のすべて??

「……ぁ……ダメ、ここでは嫌。駄目だよ……」

「我慢できない。ここだからかな?景彩は、いつもそうだ……。私のこと、本当は好きじゃない。いや、好きだけど……愛してはいないんだ。幼い……壊したい……そんな君を、めちゃくちゃにしてやりたい。」

首もとに、痛みがした。

「……っ!……海波、痛い……何をしたの?嫌だ、待って……意味が……」

「我慢なんて無理だよ。」

「……海……」

見上げると、悲しい笑顔が目に入る。

【ズキ……】

胸が痛い。

「……ごめ……」

「さ、帰ろう?私は明日、朝から任務でいない。昼には戻れないから……お弁当は、いらないよ。」

謝罪も途中で……お弁当もいらない……

「うん、わかった……。」

多分、この時だ。海波の力が暴走し始めたのは……。

僕に君の心が分からない。

信じて欲しい……君が好きなんだ……


朝、校門に彼女の姿はなかった。

任務……だと言った。

だけど、どうしても姿がみたくて任務に使用する部屋を巡る。

恵さんから聴いて、記憶した。

紙には残さない……この世界の決まりごと。

【コンコン】

「入りなさい。」

ある一室に、返事があった。

「……新人で、その……」

「あぁ、景彩くんだね。ふふ……彼女は、違う学園だよ。」

あぁ、この人がボスなんだ……

「くすっ。優貴とは違った勘の良さだね。そんな君に、情報を上げよう。啄路くんは、訊けば本当のことを教えてくれるよ?」

ボスは表情が読めないし、淡々とした口調。

「……だと、思います。ボス……僕の求める答えは、彼が持っていない……そんな気がします。」

「うん。だから、その方法なんだよ。彼女の力は……あぁ、時間切れだ。今日、彼のもとに行きなさい。命令です♪」

命令……。どこまで従わないといけないのかな?

教室には、彼がいるはずだ。

【フワッ……】

?!

海波の匂い……いないはずの彼女の匂いがする。

思考より、足が先に動いていた。

裏庭……

背の高い、男の人……?!!

「啄路……君、海波に……何をしたの?」

僕の声に、振り返り笑顔を向ける。

「え?何もしていないよ。あれかな?朝、挨拶代わりの抱擁を少し♪」

急き立てるような怒りに、啄路の胸座に掴みかかり投げようとしたが……かわされた。

「ふっ、そう何度も……?!!」

油断したところを、足払いして地面に押さえつける。

「……ってぇ~~、やっぱり鈍ってるか。ふふ……可愛い君に迫られるのもいい。ゾクゾクするね。」

その言葉に、僕は違う意味でゾワゾワするよ。

そして冷静になる。

「海波に触れるな!嫉妬で殺すかもしれない。」

「ふっ……くく……怒った顔も、いい。」

……?

【チュッ】

…………。

ちゅ?……あれ?今、この人の顔が、僕の顔に近づきましたか?

多分、唇に……唇が重なって……僕は男、彼も男……これは。

あぁ!接触事故だ!!

「キス、も~らい♪」

今……キスって言いましたか?

「これはキスじゃない!!て、何??僕は、男だ……ん??え、何?」

地面に押さえていたはずの啄路くんが、僕の腰を持って起き上がり……

一瞬で、形勢逆転。強い力で壁に押さえつけられてしまった。

「……くっ……放せ。意味が分からない。怒っているのは、僕……て、何して……やめろ!」

頬に生暖かい感触が……生々しくて、吐き気がする。

抵抗するが、体格の差なのか敵わない……悔しい!!

「……はぁ……男だとは、思えないな。もう、良いよね?……お前なら俺……本気で……」

眼がマジ?!!げげげ!……嘘だよね?

視界が涙で霞む。

【ゴン!!】

もう駄目かと思った瞬間。

「先輩、そいつをいじめたら容赦しないよ?」

「麒麟!!」

それに双葉も。

「……ちっ、俺は諦めないからな!!」

諦めてください。

「はぁ、ボスも鬼畜だよね。彼と海波先輩のこと、景彩に黙っているなんて。」

「……う……うぅ……僕、僕ぅう~~。」

混乱に、涙が溢れて麒麟に抱きついた。

「あれ?変な気分……」

「麒麟、相手は景彩だったりして♪」

「ばぁか。……いくらなんでも、違う……だろ?」

涙が止まらない僕の頭の上で、麒麟がため息。

そして優しい声で、僕の頭を撫でた。

「……落ち着いたら、情報を伝えるよ。」

安心感に満たされ、嫌な感触が複雑に僕を動かした。

【チュッ……】

…………。

背伸びして、気がついたら麒麟にキスをしていた。

「……景彩、これ……俺のファーストキス…………違う、接触事故だ!!」

「そうだよね!!接触事故だよね?……あぁ~~、よかった。」

「……景彩、最高の笑顔は可愛いけど……麒麟のトラウマだよ?」

うなだれる麒麟を横目に、双葉が呟いた。

「麒麟。大丈夫、忘れよう!」

「「…………。」」

吹っ切れた僕を見て、二人がため息を吐いた。

「……双葉、来い。」

「嫌だ♪」

ん??何故か二人が、じりじりと距離の取り合いをしている??

楽しそうだね。

結局、二人が喧嘩?を始めたので……僕は見物。

勝負は引き分けかな?

「……はぁはぁ……双葉、俺はまだ諦めないからな!!」

「はぁ、はぁ……。俺には、相手がいるんだ。相手のいないお前なんかに、譲れない!!」

「……へっ、一葉の相手が気になるくせに?」

「!!……麒麟、今……っ……鬼畜は、黙ってろ!!」

あれ……マジギレ??

「「ふん!!」」

二人は、それぞれ方向を変えて行ってしまった。

…………。

原因は……僕、だ!!

でもどちらを追えば良いのか……二頭追うもの……だね。

落ち着いたら謝ろう。

相手……か。


「景彩、ここにいたのか!」

叫び声に目を向けると、息の切れた海波の姿。

「海波、お昼に戻れないって……」

彼女は僕に抱きつき、頬にキスをした。

「……ごめん。護ってやれなくて……。」

「護るのは、僕の役目……だよね?」




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