ライバル!?
同じクラスに、転校生。そう……麒麟の情報の通り。
彼が、この地に戻ってきたんだ。
親の仕事の関係で海外に行っていたらしい。
背の高い、男前の彼……織野 啄路くん。
海波の初恋の人。トラウマの原因。
挨拶時に、目があって微笑まれた??
僕の心は穏やかではないのに。海波のことを知ってる風じゃない。
一体、何故??
彼は周りに囲む人垣を避けて、僕の席の隣に立った。
「……君、可愛いね。名前を教えてくれる?」
…………。
僕はライバルに、迫られてるの??!!
「あの、僕……男です。」
…………。
【ガシッ】
両肩に手が置かれ、顔が近づいてくる。
?!!
目の前ギリギリで、止まった。
「……タク……私の彼氏に、手を出すな!!」
海波が啄路くんの髪を掴んでいる。
「いててて……マジで、男なの?」
じっと見つめる目が、おじいちゃんと同じだ。
「……はぃ。」
気持ち悪いな……この人も、病気かな??
「タク、2人のラブラブを邪魔するなよ。」
「……お前、相変わらず……くくっ。ま、宜しく♪」
啄路が海波の額にキスをした。
【ムカッ】
彼の首襟を掴んで引き離し、投げ飛ばす。
受身を取り損ねたのか、いい音がするね。
「……いってぇ~~」
あのタイミングで、受身が少し出来る程度。
弱くはないんだ。
「タク、鈍ってるな。道場に顔を出せ。」
「あぁ、また組んでくれるのか?くすす……体は、立派に育ってるじゃん。」
海波の胸に視線を向けてニヤリ。
「……相変わらずだな。」
海波は、ため息を吐いただけ。
クラスの視線も気にせず……並ぶと、お似合いに見える。
「あぁ、景彩。俺は男でもいいぞ?気にしない。」
…………。
「ぷっあはははははっははは!!」
麒麟は、彼の情報に爆笑だ。
「麒麟、鬼畜度が上がっていくよ?」
苦笑の双葉。
「海波先輩の態度は、普通なんだ?」
「うん。トラウマ……彼に振られたのは、気にしてないみたいに見える。」
「案外、あの家系は……男を気にしないんじゃないかな?」
双葉はため息で遠い目をした。
「女の子を好きになるほどショックなのに?」
…………。
3人で考えるが、答えが出るわけじゃない。
「麒麟、準備が済んだのならすぐに来なさい。お前のグループ結成に、集まっているのだから。さ、他の役員衆に挨拶をしてください。」
呼びに来た恵さんは、麒麟の上司ではなくなった。
役員衆は7人。
「新任、墨。警備系。宜しくお願いします。」
麒麟は、役員衆の墨と言う立場を引き継いだ。
恵さんが月。草樹くんが槌。優貴さんが慧。蛍兎さんが琴。
……海波が妃。
「……海波……??」
「ありゃ、ばれちゃった♪ごめんね……バイトって、これだよ。」
…………。
あぁ、勝てないわけだ。
「華が不在とは聞いていません。優貴、彼女はどうしたのですか?」
「……喧嘩しました。何か?」
優貴さんは不機嫌で、口を閉ざした。
「優貴さん。一体、何をしたの?」
草樹くんが訊いた。
「……浮気じゃないんだ。」
大人の世界は、僕たちには早いな。
微妙な空気に様子をうかがう。
「呪われたように狂っていたのに、どうしてそうなったわけ?」
「そうだよ……俺を狂わすのは、あいつだけだ。はぁ……多分、子供が出来たと思うのに……。」
「なっ……早く、仲を戻しなさい。本当なら、後任も捜さないといけません。」
お祝いの雰囲気ではないな。
優貴さんは、急いで部屋を出て行った。
「それにしても……捜査系は、ここにいるのが珍しいですね?」
恵さんは、蛍兎さんのいるのが不思議そうだった。
「本来、接触がないのをボスが望んだからね♪」
ボス……?
「ねぇねぇ、景彩。この後は任務があるのか?」
海波が僕を抱き寄せる。
「……うぅん。海波、啄路くんは……」
嫉妬心に、訊いてしまおうと口を開いたが……塞がれる。
【チュウゥ~~】
「……んっ……駄目だ……よ。みんながいるのに。」
押し退ける僕の手に舌を這わせる。
「……ゃ……っ……」
つい出てしまった声に、顔が赤くなる。
「……可愛い。景彩、本当に可愛いよ……ふふ……」
遠くで、全員が部屋を出る気配。
それを感じながら……上に、海波が被さるのを受け入れてしまう。
「景彩、私のこと好き?」
「……うん、好き。」
「へへっ、嬉しい。景彩、君が聞いた情報は正しくない。タクの適当が交じってる。」
嬉しそうに、僕の服に手を忍ばせ……滑らしながら囁く。
「聞きたい?」
「うん、聞きたい。」
「そのかわりに、景彩のすべてをくれる?」
僕のすべて??
「……ぁ……ダメ、ここでは嫌。駄目だよ……」
「我慢できない。ここだからかな?景彩は、いつもそうだ……。私のこと、本当は好きじゃない。いや、好きだけど……愛してはいないんだ。幼い……壊したい……そんな君を、めちゃくちゃにしてやりたい。」
首もとに、痛みがした。
「……っ!……海波、痛い……何をしたの?嫌だ、待って……意味が……」
「我慢なんて無理だよ。」
「……海……」
見上げると、悲しい笑顔が目に入る。
【ズキ……】
胸が痛い。
「……ごめ……」
「さ、帰ろう?私は明日、朝から任務でいない。昼には戻れないから……お弁当は、いらないよ。」
謝罪も途中で……お弁当もいらない……
「うん、わかった……。」
多分、この時だ。海波の力が暴走し始めたのは……。
僕に君の心が分からない。
信じて欲しい……君が好きなんだ……
朝、校門に彼女の姿はなかった。
任務……だと言った。
だけど、どうしても姿がみたくて任務に使用する部屋を巡る。
恵さんから聴いて、記憶した。
紙には残さない……この世界の決まりごと。
【コンコン】
「入りなさい。」
ある一室に、返事があった。
「……新人で、その……」
「あぁ、景彩くんだね。ふふ……彼女は、違う学園だよ。」
あぁ、この人がボスなんだ……
「くすっ。優貴とは違った勘の良さだね。そんな君に、情報を上げよう。啄路くんは、訊けば本当のことを教えてくれるよ?」
ボスは表情が読めないし、淡々とした口調。
「……だと、思います。ボス……僕の求める答えは、彼が持っていない……そんな気がします。」
「うん。だから、その方法なんだよ。彼女の力は……あぁ、時間切れだ。今日、彼のもとに行きなさい。命令です♪」
命令……。どこまで従わないといけないのかな?
教室には、彼がいるはずだ。
【フワッ……】
?!
海波の匂い……いないはずの彼女の匂いがする。
思考より、足が先に動いていた。
裏庭……
背の高い、男の人……?!!
「啄路……君、海波に……何をしたの?」
僕の声に、振り返り笑顔を向ける。
「え?何もしていないよ。あれかな?朝、挨拶代わりの抱擁を少し♪」
急き立てるような怒りに、啄路の胸座に掴みかかり投げようとしたが……かわされた。
「ふっ、そう何度も……?!!」
油断したところを、足払いして地面に押さえつける。
「……ってぇ~~、やっぱり鈍ってるか。ふふ……可愛い君に迫られるのもいい。ゾクゾクするね。」
その言葉に、僕は違う意味でゾワゾワするよ。
そして冷静になる。
「海波に触れるな!嫉妬で殺すかもしれない。」
「ふっ……くく……怒った顔も、いい。」
……?
【チュッ】
…………。
ちゅ?……あれ?今、この人の顔が、僕の顔に近づきましたか?
多分、唇に……唇が重なって……僕は男、彼も男……これは。
あぁ!接触事故だ!!
「キス、も~らい♪」
今……キスって言いましたか?
「これはキスじゃない!!て、何??僕は、男だ……ん??え、何?」
地面に押さえていたはずの啄路くんが、僕の腰を持って起き上がり……
一瞬で、形勢逆転。強い力で壁に押さえつけられてしまった。
「……くっ……放せ。意味が分からない。怒っているのは、僕……て、何して……やめろ!」
頬に生暖かい感触が……生々しくて、吐き気がする。
抵抗するが、体格の差なのか敵わない……悔しい!!
「……はぁ……男だとは、思えないな。もう、良いよね?……お前なら俺……本気で……」
眼がマジ?!!げげげ!……嘘だよね?
視界が涙で霞む。
【ゴン!!】
もう駄目かと思った瞬間。
「先輩、そいつをいじめたら容赦しないよ?」
「麒麟!!」
それに双葉も。
「……ちっ、俺は諦めないからな!!」
諦めてください。
「はぁ、ボスも鬼畜だよね。彼と海波先輩のこと、景彩に黙っているなんて。」
「……う……うぅ……僕、僕ぅう~~。」
混乱に、涙が溢れて麒麟に抱きついた。
「あれ?変な気分……」
「麒麟、相手は景彩だったりして♪」
「ばぁか。……いくらなんでも、違う……だろ?」
涙が止まらない僕の頭の上で、麒麟がため息。
そして優しい声で、僕の頭を撫でた。
「……落ち着いたら、情報を伝えるよ。」
安心感に満たされ、嫌な感触が複雑に僕を動かした。
【チュッ……】
…………。
背伸びして、気がついたら麒麟にキスをしていた。
「……景彩、これ……俺のファーストキス…………違う、接触事故だ!!」
「そうだよね!!接触事故だよね?……あぁ~~、よかった。」
「……景彩、最高の笑顔は可愛いけど……麒麟のトラウマだよ?」
うなだれる麒麟を横目に、双葉が呟いた。
「麒麟。大丈夫、忘れよう!」
「「…………。」」
吹っ切れた僕を見て、二人がため息を吐いた。
「……双葉、来い。」
「嫌だ♪」
ん??何故か二人が、じりじりと距離の取り合いをしている??
楽しそうだね。
結局、二人が喧嘩?を始めたので……僕は見物。
勝負は引き分けかな?
「……はぁはぁ……双葉、俺はまだ諦めないからな!!」
「はぁ、はぁ……。俺には、相手がいるんだ。相手のいないお前なんかに、譲れない!!」
「……へっ、一葉の相手が気になるくせに?」
「!!……麒麟、今……っ……鬼畜は、黙ってろ!!」
あれ……マジギレ??
「「ふん!!」」
二人は、それぞれ方向を変えて行ってしまった。
…………。
原因は……僕、だ!!
でもどちらを追えば良いのか……二頭追うもの……だね。
落ち着いたら謝ろう。
相手……か。
「景彩、ここにいたのか!」
叫び声に目を向けると、息の切れた海波の姿。
「海波、お昼に戻れないって……」
彼女は僕に抱きつき、頬にキスをした。
「……ごめん。護ってやれなくて……。」
「護るのは、僕の役目……だよね?」




