彼氏!!
男の制服を着て、ホッとする。
「景彩……大丈夫か?顔色が悪い……え?」
麒麟を押し退け、海波が僕をお姫様抱っこした。
「……?!!?!」
驚く僕に、キスを落とす。
「景彩、おめでとう。私の、彼女……」
「……うぅっ……嫌だ。僕は、男だよ?……涙が止まらないけど、男だ。」
溜まっていた物が溢れるように、涙が零れて流れ落ちる。
「うん、ごめん……。景彩、私の彼氏になってくれる?」
「海波……」
次の日。熱は出なかった。
いつものように支度をし、学校に向かう。
門に、綺麗な彼女が立っている。
……何故か、立っているだけなのに……かっこいい!?
「……あ、景彩。おはよう。」
「おはよう。へへ……海波?今日、お昼一緒に食べよ?」
「……ごめん。今日……お昼、学食なんだ。」
「ふふ……お弁当、作ってきたんだ♪中庭で待ち合わせよう?」
海波は、嬉しそうな顔で僕に抱きついてくる。
「可愛い!!景彩……お前を今すぐ食べたいくらいだ!!」
手がおしりに触れる。
「……うぅ~~ん、それは……ちょっと……ごめん。無理……」
あれ?何だろう??
何かが、おかしい気がする??ま、いいか……
「私、委員会があるから……行かないと。じゃ、お昼に♪」
「……うん」
走る後姿を見送る。
「景彩、一言いいかな?」
突然の声に驚いて、身構える。
「草樹?」
草樹くんが、苦笑い……珍しい。
「麒麟から、伝言。ライバルが転校してくるって。」
……ライバル……海波の、トラウマ。
男の子を嫌いになった原因……初恋の男。
まだ海波の心に……どんな形にしても、彼の存在がある。
僕とは違った、カッコイイ男の人。
海波、君は本当に僕を選んでくれた?
イベントも過ぎ去り、授業が通常に行われる。
昨日、家に帰ると……おおかみ達が宴会をしていた。
しかも、ビデオに撮影した映像を楽しみながら……。
父は、部屋に閉じこもり……母が慰めに行った。
ごめんね、かな??
料理の手際を、采景くんが褒めてくれた。
「……残念なのは、相手の味覚がないことか。」
「いや、嗅覚もおかしいって!!」
双葉は、どれだけ変な匂いがしたとか大げさに。
「ははははは!!」
原因の蛍兎さんは、笑っていた。
双葉は相手の父親が来ると聞いて、保志くんについて来た。
一葉は、お母さんとお留守番らしい。
「けど、この双葉のテンションの高さは誰に似たんだ?」
「……おじいちゃんじゃない?」
うん、そんな気がする。
「俺か?……いや、個性だよ!!」
おじいちゃんは、ベビードールにデレデレしていた。キモイ……
「これ、新作で……この面積の多いのが逆に人気でさ♪」
……このイベントで、宣伝したの?!!
畜生……
「水着は、本当はスケスケのパレオをつける案があったんだ。」
画面を指さしながら、真剣な眼の保志くん。
「保志、案はいいが……実用性がな。」
何だか、真剣に仕事の話が始まった。
保志くんは近々、おじいちゃんの会社を継ぐらしい。
大人は大変だな……
「おぉう、この恥じらいが何とも!!」
て、感動していた僕がバカなのかな……??
おじいちゃんは、目を輝かせている。
「はぁ……美彩を、海に無理やり連れていった時を思い出す。……ぐふふ……」
【ぞぞぞ!!】
「……父さん、母さんがいたらお説教だね……」
采景君は、冷たい視線。
「麒麟……俺は、気になることがあるのです。」
「何、連歌君?」
「……処分した物体、結局……何だったのです?」
…………。
みんなの視線が麒麟に集まる。
「草樹くんに、預けたけど?」
「あぁ、今……研究チームが調べてるけど?」
……大げさなことになってる??
「お、これ……やっぱりいいよね。苺愛……はいてくれなくてさぁ……」
ため息を吐きながらの采景くん。
「うん……家も無理だな。」
遠い目をする保志くん。
「ふふ……俺は昨日、楽しんだよ♪」
デレデレの草樹くん。それに反応して……
「くすくすくす……嫌がるのを無理やり着せて、脱がすのがいいのですよ。」
連歌くんが、黒い笑みを漏らす。
「ふっ……俺は、エプロン姿で十分だけどな。」
ずっと黙っていたヒツジくんが、ボソリ。
この後の会話は、知らない。
僕と双葉、麒麟は追い出された。
麒麟は、ため息。
「俺、あんな鬼畜になるのかな?」
「相手によるんじゃない?俺の相手は、イメージじゃないし。」
双葉は気楽な感じで、帰り支度を始めた。
……回想終わり。
はっと気がつけば……授業が終わっていた。
双葉の相手も、海波と同じ雰囲気。
綺麗だけど、どこか……男前。
多分、蛍兎さんに似たのかな??
味……分かるようになってくれたらなぁ~~。
子供は、サバイバルに連れて行かなかったら、味が分かるよね??
……て、ふふ……結婚したときのことを考えちゃった♪
何だか、恥ずかしいな。未来か……
お昼休みの中庭。
「景彩、待ったか?」
「うぅん、今来たところ。」
「ふふ……お弁当、楽しみだな♪」
敷物を広げ、重箱を並べていく。
「すっげぇ~~。これ、全部?景彩が作ったの??」
「うん。海波、量がたくさんあったほうがいいでしょ?ふふ……満腹感を意識して、ご飯系を増やしたよ?」
「へへ。母さんは、いつも……どんぶり物だから。」
…………。
「……え?」
「天丼、カツどん、カレー。シチュウ……」
どんぶり……じゃ、ないよね??
てか、美衣さん……サバイバルとか野生的とか関係ない気がするよ??
「いただききまぁ~~す!!」
重箱は、すべて海波用。
どれだけ食べるのか、予想がつかなかったから……。
僕のは別で、小さなお弁当箱に作っていた。
「景彩、もっと食べたほうがいいぞ?タクは……」
タク……??
…………。
「景彩、これ……美味しいぞ!!」
何かを誤魔化した……味音痴なのが余計に。
けど、嬉しくて微笑んでしまう。僕……流されやすいのかな??
「ご馳走様でした♪」
「お粗末様です。」
重箱は、空っぽ……
へへっ、嬉しい!!
「足りた?もう少し、増やしたほうがいい??」
「ふふ……丁度いいよ。おいで、景彩……ここに座って。」
足の間……
「え、恥ずかしいよ……」
スカートの中が見えそうで、ドキドキして……さらに、その間に座るなんて。
【グイ……】
「え??」
【ポスンッ】
海波の胸に、頬が触れる。
【ほよほよ……ん】
柔らかな弾力に、顔が熱くなる。
「……ふふ。可愛いな、景彩は……ね、キスしてもいい?」
海波は、僕を選んでくれたんだよね?
本当に僕を……
「うん、いいよ……」
返事をしたと同時に、海波の柔らかい唇が重なる。
意外に力強く、思わず引き気味。
それを、逃がさないように後頭部が押さえられる。
唇に、熱い舌が這う。
「……んっ……っ……ぁ……」
舌が、口に入り僕の舌に絡む。
息が出来なくて、頭がボーっとする。
このキスに酔っているのか……思考が働かない。
気がついたら、僕は海波の下に寝ていた。
……あれ?何かが、おかしい。
んん??合ってるのかな……
「……んっ……そこ、駄目……感じちゃう……」
お腹に冷たい両手が、激しく撫で……滑る。
「……はぁ、可愛い……もっと、声を聞かせて……景彩……好き、大好きだ……私の景彩……」
「んっ……海波……駄目……ここ、外だよ?……誰かに、見られたら……ダメ!!」
「ふふ、残念♪」
【始業10分前のチャイム】
後片付けをし、海波に先に教室に戻るよう伝える。
「じゃ、景彩。今日は、放課後バイトなんだ。また一緒に帰ろう?」
「……うん。」
【チュ……】
淋しく、小さな返事の僕にそっと触れるだけのキスを残して走っていく。
後姿を見送り、ドキドキしていた。
かっこいい……。
上機嫌で、荷物を持って自分の教室に戻った。
疑問は消えて……
放課後。
「景彩、帰りに寄らないか?」
麒麟の、久々の遊びのお誘いだった。
「うん!!役目は、お休みなの?」
……少しの間。
んん??
「うん、恵が……いいよって。ふふ……景彩、ゲームしようぜ♪」
何か、違和感。
「……うん。けど、お邪魔じゃない?」
麗季さんは、ヒツジくんに……よく食べられるから。
昔から、何度となく外に追い出された記憶が……
「あぁ、ははははは……父さんは、仕事で家を空けてるんだ。て、何か……気を遣わせて悪いね?」
「ははっ、いいよ。ヒツジくん、優しいから好きだよ。鬼畜だけど……」
「……うん。鬼畜だけど、優しいよね?」
麒麟は、よく似ている。
優しさは、何かから学んだ優しさ。理性的な配慮のあるモノ。
資質なら、嫉妬を生むが……
「あれ、蓮美か……?」
遠く……公園の木の前に、蓮美が立っている。
彼女は、連歌くんの娘。
不思議な雰囲気。あまり接触はない。
小学5年生で、可愛い系の顔なんだけど……ちょっと変わってる。
近づいて、話しかけた。
「蓮美、何をしてるの?」
「こんにちは、麒麟君に景彩君。」
丁寧にお辞儀をして、微笑む。
ただ、その仕草をしただけなのに色気が駄々漏れる。
…………。
つい僕たちは無言。
そんな様子に、首を傾げながら答えた。
「あぁ、ふふ……木とお話をしていたのです。」
「木と??」
「はい。最近、公園で遊ぶ子供が少ないと……嘆いているのです。」
「……そう。で、蓮美は……何て返したの?」
一応、小学生……真剣に話は聴いてあげないと。
「遊んであげると、約束しました。ふふ……」
無表情でふふ??
蓮美の手を引いて、家まで送ってあげた。
「ありがとうございます。では、さようなら。」
…………。
不思議な雰囲気だ。
「麒麟……どうして、黙っているの?」
「……へ?いや、何か……甘い匂いがしないか?ずっと、気になって……」
「甘い??クンクン……匂わないよ?」
「ん?あれ、さっきまで匂っていたような……気のせいか。」
……では、なかったけどね♪
麒麟の家に到着。
併設された動物病院は、ヒツジくんの不在でお休みになっていた。
「ただいま。」
「お邪魔します。」
「お帰りなさい。」
「ににゃ~~ん。」
麗季さんに、飼い猫のチャッピー(オス)が足元に絡んでいる。
「……チャッピー、よく知ってるね。父さんがいると、絶対に母さんに近づかないんだ。」
…………。
チャッピーは、これでもかみたいに甘えて離れない。
「ふう……羊二がいてもいなくても、疲れるわ。」
何て言いながら、麗季さんはチャッピーを抱きキスをした。
「……今、何をしたのかな?」
突然のヒツジくんの声に、猫は毛を逆立て……慌てて逃げた。
素早い……
「え、帰りは3日後でしょ??」
「……くすくすくす……寂しいだろ?慰めてあげるね。」
ネクタイを緩めながらワイシャツのボタンを外し、色気が増すヒツジくん……
僕たちは、麒麟の部屋に移動。
「……ごめんな。何か、鬼畜で……」
「うん、鬼畜だけど……麒麟……あんな大人になっても、僕は……多分、友達だよ?」
「……そうか、ありがとう?」
…………。
ゲームは対戦の新作。
僕は、あまりゲームはしない。
「さ、勝負!!」
「……え、僕……したことないよ??」
麒麟の鬼畜が、勝負を勝手に始めた。
まさか……??
一回戦。
「……あぁ、なるほど……この感じか。」
当然の負け。
続く二回戦。
「ふふっ、こうかな?」
必殺のトドメ♪
「麒麟、どうする?三回戦。」
「はぁ……。止めた!!……なぁ、景彩?」
「僕も役員になるよ。多分、双葉も入るだろ?」
「……知ってたの!?」
負けた時にじゅうたんに転がった体を僕のほうに向けて、麒麟はビックリした顔。
「やっぱり入ったんだ?ふふ……」
僕は、勘が良いらしい。
「双葉は、相手に男として見て欲しいんだ♪って。」
双葉は僕からみたら十分男だけどな。
相手が、それだけ手ごわいのかな?
「景彩、さっきのは本当?」
「うん。このゲーム勝負は、上からの指示?」
「恵と草樹くんだよ。テストも兼ねている。本当は、勝って無理やりの予定だよ。」
「……ふふ。悔しい?」
「複雑!!」
男らしさか……




