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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
7僕はおおかみ!

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35/71

弊害は、ここにも?


学祭の終了直後、委員長が引き止めるのを投げ飛ばし……

麒麟のもとに来た。

「え、相手を見つけたの?」

「うん。へへ……」

「どうでもいいけど、その姿が嫌でここに居るんだよね?俺のクラスのみんな……写真撮ってるぞ。いいのか?」

周りが見えなくなっていた。

「……忘れてた。まだ、相手のいない麒麟に自慢したくて。」

麒麟が、微笑んだ。

「きゃぁあ~~!」

女の子の奇声が響く。

…………。

はぁ……僕も、経験してみたい。

「ね、麒麟くん。景彩先輩を抱いてみて!お姫様抱っこ!!」

…………。

僕の怒りに、麒麟は周りを黙らせる。

「黙って。人を傷つける人は、嫌いだよ?」

……カッコイイ。

鬼畜だけど……

「景彩、行くぞ!」

人波を掻き分け、僕を誘導する。

傍から見たら、護られる女の子。情けなくなる……

役員の更衣室に入る。

「……麒麟……僕……」

落ち込んだ僕の頭に手を乗せ、慰める麒麟。

僕は涙を零しながら、制服のボタンを外していく。

「あれ、麒麟……ボタンにカツラが……」

「ホントだ。面倒臭いね……」

二人で細かい作業に、顔が近い。

【ガチャ……】

…………。

入って来た人に視線を向けた。

「何……してるの?……麒麟……」

大人の優しそうな男の人が青ざめる。

「……めぐむ?」

「泣いている……女の子……に、何を。まだ……君は中学生だよね?」

恵さんは声が震え、視線が定まっていない。

そんなに驚くようなことかな??

「あぁ!!恵、こいつ男だよ?」

…………。

男と聞いて、その人がふらついた。

「恵、麗彩の弟だよ。しっかりしろ!!報告は、お前が一番知ってるだろぉ~~。」

草樹くんの登場。

何故か、大騒ぎに発展。

…………。

「こほっ……すみません。あまりに、素敵な……雰囲気で……」

言葉、無理に選んでる??

更衣室で着替えを済ませ、会議室に通された。

めぐむさんは、麒麟の上司。

「すみません。部外者が入ったからですね?」

「……いいえ。それだけでは……」

謝った僕に対して、言葉を捜して黙ってしまった。

「酷いよ!!恵、俺を疑った!!鬼畜だって、思ったんだろ!!」

僕の外見……制服が乱れ、泣いた女の子に麒麟の鬼畜が襲っていると見えたようだ。

悲しい……

「景彩、女装で潜入するか?」

草樹くんが場を和ませるため、普段は言わない禁句を告げる。

「「ぶぅ……。草樹、嫌い!!麗彩ちゃんに、浮気してたって言うよ?」

草樹くん、いつものなら明るく返すのに。

「……ふふ。いいよ……嫌うなら、そこまでかな……」

沈んだ表情に、心が痛くなる。

「草樹、誤解が解けたのです。二人は、話があるみたいなので場所を移動しましょう。私も、あなたに話があります。」

恵さんは、優しいな。

二人が部屋を出て行った。

「大人だね……。僕、もう少し大きくなったら……」

自分の未来が不安になって口を閉ざす。

「……采景くんは、綺麗なままだけど……男の色気があるよね?景彩……相手が、男にしてくれるんじゃない?」

「……なんか、Hな言い方。」

「ばっ!!……違うぞ?!」

顔を真っ赤に、僕を揺する。

分かっているよ、君の優しさが切ない程に。

「麒麟……君は、相手をどうする?」

「さぁ?鬼畜に扱うんじゃない?」

拗ねたように、僕に背を向けた。

その背中にもたれ、呟く。

「相手……女の子が好きな女の子だった。」

…………。

返事がない。

どうやら、何かを考え……言葉を捜し……見つからない感じ。

「諦めないだろ?」

「あぁ。」

僕の返事に、笑う麒麟。

僕は立ち上がり、伸びをした。麒麟も伸びをする。

「俺、情報系の任務なんだ♪任せておけ。原因を調べてやるよ!」



数日後。姉の麗彩ちゃんから、草樹くんの記憶が消える。

二人が、呪いの弊害と戦っているのだと知った。

出来ることは、ほんの少し。違和感のない生活を演出することだけ。

高等部の学祭の日。

『景彩、家に戻ってあのワンピースを持ってきて欲しいの。』

届けた私服姿の僕に、女子更衣室の扉が開き中に通される。

男の子だと言っても、誰も信じてくれなかった。

落ち込む僕は、彼女を見つけた。

高等部の手伝いをしているみたいだ。

「はい。これが片付いたら、中等部に戻ります。」

荷物を持って、部屋から出て行った。

「……景彩?」

「麗彩ちゃん、ごめん……行くね?」

この後、姉は試練を乗り越えた。

僕は……山を登り始めばかりだった。

彼女を追いかけ、人気のない中等部に足を向ける。

会ってどうするのか……ただ、走る……


【クン……クンクン……】

匂う。甘い……相手の香りだ。

解放された呪い……でも、おおかみの血はそのまま受け継がれている。

「……お前は……ぅっ!?」

駆け寄った僕を、驚いた顔で見つめ……視線を逸らした。

がぁあ~~ん……

【ガバッ】

……??

ショックの途中、彼女は僕を抱きしめ……首もとに舌を這わす。

「……んあっ……ちょ……」

変な声が……出てしまった。

恥ずかしい!

「はぁ……可愛い!!もう、男でもいい!!……ね、このまま……」

【ドキドキ……】

……あれ?何かがおかしくありませんか??

キスが激しく、服が脱がされていく。

「ちょ……んんっ……待って……ヤダ……あっ、そこ……ダメ……だよ。」

「大丈夫。優しくする……ね、いいだろ?」

……いいのかな?

身を任せ……触られるまま……

「海波!!酷いわ、私がいるのに!!」

服が乱れた僕の上で、眉間にシワを寄せた海波みなみ先輩。

「菫……邪魔をするな。お前は、タイプじゃない。」

僕の胸を撫でながら……

視線を声のする方に向けて、睨んだ。

あの~説得力ないですよ??

「邪魔してやる!!」

すみれさんは、海波先輩を突き飛ばした。

「あなた、抵抗しなさいよ!!まさか私から奪う気?」

奪う?ことになるのかな??

返事に困る。だって……

「……そう言えば、名前を聞いていなかったね。私の彼女……」

彼女??になるの!?

「……中等部2年。大上おおがみ 景彩けいや……男です。」

この自己紹介は、どうなのかな……

「ケイヤ?可愛い名前♪」

「……男……男ぉお~~??……酷いわ、海波のばかぁ~~!!」

今度は僕を突き飛ばして走って行った。

「よろしく。矢城やぎ 海波みなみだ。」

……あれ?双葉の相手に似ている??男装の女の子……

「で、私の彼女になってくれるのかな?」

「……あの、出来れば……彼氏がいいです。」

…………。

「ごめん。」

目を伏せ気味にして逸らし、俺を残して海波先輩は歩いて行ってしまった。

あれ?僕……振られたの!?

乱れた服のまま、思考が働かない。

「……景彩!?なんて格好!!……大丈夫か?誰に襲われたんだ??珍しいな……」

役員の仕事で、学園待機の麒麟だった。


僕は服を正し、ホットココアを口に運ぶ。

重い沈黙。ただ、麒麟は黙ってそばにいた。

落ち着いた僕は、口を開く。

「……振られた。彼氏は要らないみたい……彼女にならないかって、言ってくれたのに……」

「そっか……。」

麒麟は、真面目に耳を傾けている。

多分、彼女の情報が何かあったのだろう。

「彼女に何があったの?」

「……話が長くなる。それに……麗彩ちゃんが、大変なんだ……それでも聞きたい?」

「うん。麗彩ちゃんは、草樹が護るから。二人は、試練を乗り越えるよ……解るんだ。」

「……ふふっ。うん、そうだね……。今回、試練に関与しているのは……彼女の母親だよ。」

「矢城……『生と死の垣根』……美衣さん??そっか……その話が出たのは、何か他にも?」

「はぁ~~。やっぱり、役員になれよぉ。景彩、勘がいいから!!な、俺のパートナーにならないか?情報は、それと引き換え♪」

「……鬼畜だね。麒麟……彼女を護れるなら、なるよ……いずれ。」

「うん。そのための役員だからね。まだ、大丈夫……過去から話そうか。まずは、女の子を好きになった原因。君の敵が増えるかもね♪」

「……鬼畜……」


海波先輩の情報をもらい、麒麟と別れて廊下を歩く。

【クン……フンフン……】

彼女の匂いに、何かが交じってる??

匂いを辿り、委員会長室に着く。

鍵がかかっていた。

ふふ……草樹くんに教えてもらったんだ♪

【……カチ……ン】

ドアを開けると、海波先輩が女の子を押し倒していた。

「……海波!?……」

下にいたのは、可愛い顔の女の子。

僕の視線に耐えられず、乱れた服で逃げた。

海波の服も乱れたままで、焦りもしない……

「ちっ!!……来いよ。私の欲求不満を、満たしてくれるよね?」

むしろ怒りを露わ。

そんな海波に近づくと、さっきの女の子の匂いがまとわりついていた。

吐き気がする!!

「触らないでよ!……誰の匂いをつけてるの?俺……赦さないから。」

“俺”の中の何かが目覚める。

海波を押し倒し、首もとに唇をつけ吸いついた。

「……んっ……」

はぁ……息が苦しい。上手く呼吸が出来ない。はぁ……

目には、海波の肌に付けた俺のしるし……嬉しくて指でなぞる。

「……っ……ふふ……足りない。もっと……」

彼女の手が俺の服を脱がしていく。

その手に、自分の手を重ね……唇に導くように近づける。

「ひゃっ!」

俺のおしりを、もう片方の手が撫でていた。

しかも、キスをしようと近づけた手は……さっきの女の子の匂いがプンプンする。

「~~っ!……今日は駄目!!」

彼女をその部屋に残し、僕は振り返ることなく走った。

味わったことのない感情が、僕の思考を乱す。

憎い……何が、なのかは解らない。

悔しい……どうしたら、男に見てもらえるんだろう?

もう……諦めて、彼女になってしまおうか?

……嫌だ!!僕はおおかみ!!

僕は、男だ。絶対に、彼氏になってやる!!

君の唯一になりたい。心が欲しい……手に入れたい。



数日後。

家に帰ると、母が嬉しそうに電話していた。

「……意外だわ。美衣さんが、ホントに!?……そう……」

今、美衣って言った?

母さんは僕のほうを見て、何か話が続いている……?

『生と死の垣根』……海波のお母さん。僕に関係した話なのかな??

受話器を置いて、母さんは微笑む。

「今日……麗彩のお祝いに、みんなが集まるの。女ばっかりだけど、あなたも来る?」

多分、美衣さんも来るんだ。

「うん。行く……草樹にも、お祝いを言ってなかったから。」

草樹くんは、役員の集合住宅の敷地にある大きな家を買った。

16歳になった高校生の麗彩ちゃんと、新婚生活をスタートさせる。

結婚式は、草樹くんの仕事が落ち着いてから。

お祝いの集まりで机に、お菓子や飲み物が並び……女性陣が囲む。

草樹くんは蚊帳の外。僕は交じっていた。

女性陣は、相手についての話で盛り上がる。

時間が遅くなったので、解散にしようと……主婦ばかりで片付けも手際いい。

僕は、黙って見ていた。

「景彩くん。家の娘が……その、ごめんね?あの……蛍兎けいとに似て、野生的というか……トラウマは、聞いたかな?」

美衣さんが近づいてきて、言いにくそうに。

「はい。……野生的ですね。僕は彼女に勝てますか?」

「ふふっ。おおかみ……でしょ?大丈夫、あの子は必死よ……。あなたを手に入れたくて、ね?けど、弊害は続く。あの子……力があるの。いい?選んで欲しい。あなたの心は変わらない。トラウマが、私が選んだと同じ選択へと促すわ。その時、あなたの言葉があの子を救う。弊害……は、いつ消えるのか……」

「……美衣さん。僕、頑張るね!!」

必ず勝ってみせる!!


僕は、美衣さんの話を理解していなかった。

この時、言葉を用意していたら……いや、準備していても……

海波……僕は、君が好きなんだ。信じてくれるかな?

想いは、無駄になるだろうか……。


美衣さんを含め、(お母さんと僕を除いて)皆が帰って行く。

「景彩、相手が見つかったのか?」

草樹くんは、心配そうな顔。

多分、美衣さんと話をしたから??

「うん……」

言葉が出ない。

彼女が、女の子が好きで……押し倒された……とか。

その原因の人が、僕を苦しめるかもしれない。

美衣さんの心配する……力があること……。

「お前は、強い。大丈夫だ。何かあったら、俺が助ける。」

優しい男の人……強さ……

「……“俺”……頑張るから……草樹は、麗彩ちゃんを護って。幸せになって……」

「あぁ。まかせとけ!」




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