おおかみ!!
大上 景彩。中等部2年。
父は、諷汰。お菓子の会社の社長。母は、円華。
姉の麗彩は、16歳で学生結婚。
相手は、麻生学園高等部の保健室 担当医師。松木 草樹。
姉が生れた数日後、草樹くんは姉を結婚相手に選んだ。
だから、いつも一緒にいた。僕の初恋の人♪当然、相手ではない……
僕が、おおかみに目覚めたのは少し前に遡る……。
高等部の学園祭より早い、中等部の学園祭でのこと。
そう、僕は……君を見つけた。呪いは解放されたけど、分かる。
“俺”の相手だ。ふふ……俺のおおかみの部分を、君が引き出すんだ。
俺は嫉妬する……どんな匂いも赦さない。俺だけのモノ……
思い通りにいかないのは、どうしてかな?
ふふ……楽しい。
「お願い!!景彩、一生のお願いだ!」
クラス委員長の土下座。クラスのみんなが、僕に向かって手を合わす。
…………。
何、これ……異様な雰囲気に居堪らない。
「……わかった。引き受ける……けど、制服は姉のを借りるから!終わった後、売られたら笑えない。」
引きつる顔を無理して、ニッコリ微笑んでみる。
「ぐっ……」
委員長の複雑な顔。
「売る……つもりだったの??」
油断できない。
何の話かと言うと。姉の制服……つまり、学園祭で女装する訳です。
僕の顔は、おばあちゃんの若かりし頃にそっくりらしい。で、可愛い系?
姉は綺麗系で、たまに僕が嫉妬される……。
僕は、男だよ??嬉しかったのは、小学生までだ。
最近は、おじいちゃんの視線が気持ち悪い。
……いや、クラスの……学園の男共の視線がキモイ!!
僕は、男だ……畜生!!
家に帰り、姉に訊いた。
「え?あぁ、草樹が保管してるよ?」
…………。
草樹くん??
「ふふっ。全部、保管してるって言ってた。生れた時から、ずっとかな??だから、母さんは男物を買えたって喜んでたよ。」
…………。
それは、僕的には嬉しいんだけど。
「……景彩、聞いたぞ!さ、これを着なさい!!」
おじいちゃんが、麻生学園の中等部の制服を見せた。
…………。
「……ね、麗彩ちゃん……この年齢に、手加減はどれくらい?」
「私なら、容赦しないよ?」
「だよね?」
僕は、拳を握り締める。
しかし異様な殺気に手を止めた。
「……おじいちゃん、強いの??」
「……ふふっ。お前たちのじいじだぞ?一族の中で、最強だ♪今度、手合わせするか?」
…………。
ちっ!!仕方なく(?)制服を受け取った。
……あれれ、デザインに違和感??
「おっ、気が付いたか?ふふ……じじい……ひいじいちゃんが隠していた美彩のだ♪くふふ……いい匂いだろ?ぐふふふふ……」
この、エロ……じじい……
「はぁ。もういいよ、麒麟に頼むから。任務で使う制服を借りる。」
俺の台詞に、テンションがた落ちのじじい。
「……くすん。……景彩……小さい頃は、俺にキスしてくれたのに……」
気持ち悪いことを……
【ガゴン!!】おじいちゃんの頭に一撃。
おばあちゃんの登場。
「気持ち悪いわ!!遠矢ぁ~~、いい加減にしなさい!!景彩は、男の子なのよ?」
僕の性格も、一番近いかな?と、その時は思っていた。
……まさか父の嫉妬心を……僕が持っているなんて思いもしなかった。
君に出逢った……あの日……僕のおおかみが目覚める。
もうすぐ……もう少し……必ず、君を選ぶから……
次の日。
「景彩、こっち。」
麒麟は、一つ年下の中1。
「本当は、役員しか入れないんだけど。身内が多いから、特別だって。……景彩も、役員になれば?」
役員は、麻生学園と姉妹校合わせて6つの学園を護っているのだとか??
「うぅ~~ん。面白そうだけど、今は料理のほうが楽しいから……」
「そっか。けど、ほんと……似合うね。」
自分の姿を鏡で見る。
…………。
麒麟と並ぶと、カップル。
「……麒麟……」
「何?」
「……鬼畜。」
…………。
【ピシッ……】
空気が固まり、冷たくなる。
女みたいは、僕にとって禁句。麒麟にとって、鬼畜は禁句。
「「……ごめん」」
僕たちは、従兄弟。
君も、もうすぐ相手を見つける。意外に近くに居た存在。
僕の相手も難しいけど、麒麟の相手ほどではないかな??まだ、先の話だ……
服を脱いで、紙袋に入れる。
「草樹くんは、最近……元気ないよ。」
「あぁ、麗彩ちゃんもだよ。……ね、麒麟?僕たちも、弊害を受けるだろうか?」
「……さぁ?相手によるんじゃないかな。草樹くんは犠牲だからね。お父さんは、ずっと邪魔してやる……何て言いながら、心配で情報を訊いてるよ。」
「家のお父さんも、心配してる。幸せになって欲しいね……。」
僕は、麒麟と別れ教室に向かう。
「景彩!お前が、男でも構わない。俺と付き合ってくれ!!」
…………。
廊下で、周りに人がいる中での告白。
喧嘩……売ってるのかな?
「ごめんね。僕の相手じゃない……忘れてよ。」
「嫌だぁ!!」
抱きつくように走ってくる。
その勢いを利用し、背の差をカバーして背負い投げ。
「僕に勝てたら、考えてあげる。」
嘘だ……
「景彩!じゃあ、俺と勝負してくれ!!」
…………。
みんな、何の病気なの??
ムカァ~~~~!!
その辺の、かかってくる奴を次々に倒していく。
「……ふぅ~~。お腹減った♪」
死屍累累……これが後に伝説になったのだとか??
麒麟の情報だ。
え?麒麟の情報が少ない??
聖城 麒麟。
母親 、麗季が僕の父の妹。そして、鬼畜♪
他にも従兄弟がいる。年子で、麒麟と同い年。
大上一葉・双葉。
僕の母親の弟が、父親の保志君。
ま、彼らの話は追々……まずは、僕の話を終わらせようね♪ふふ……
学園祭。
僕の中でどうでもよかったんだ。
だって、男の制服でも男が寄って来るんだよ?
まして女の格好に……ロングのカツラなんて。ため息が出る……
お昼に、一葉たちのクラスへ顔を出した。
「……ぷ。」
双葉が、噴出した。
こいつも強いから睨むだけ。喧嘩すると、周りが迷惑だから……
「こら!双葉、景彩が嫌がってるのを知ってるだろ?」
一葉は、普段は常識あって周りが見える。
そう、普段は……。
「ねぇ~~、一葉君。手伝ってぇ?」
「うん!瞳ちゃん、僕がするから!!」
女を見る目はない様だ。
僕が呆れた顔をしていると、双葉が席に案内してくれる。
そして、注文を受け付ける女の子を紹介した。
「委員長だよ。」
女の子は不思議そうに、お辞儀をして注文をメモした。
「少々、お待ち下さい。」
接客の笑顔。
ふぅ~~ん、なるほどね。
立ち去る彼女を、双葉が見つめ……ため息。
「何?自分の相手じゃないから、残念なの?」
「うん。美味しそうでしょ?」
確かに……
「一葉の相手だよ。はぁ~~、俺の相手も見る?」
「……うん。このクラスなの?」
「あぁ、ビックリするなよ?」
……ビックリ?
「あれ。」
双葉が指差したのは男。
「…………。」
声が出ない。
「男装だよ。男前だろ?……性格も、何だかね~~。俺、呪いから解放されたのに……呪われてるのかな?」
「……相手は、判るもの?」
「……俺は、判ったよ?どうして?」
「……いや。なんとなく……」
意外に、出される料理は美味しくて食が進む。
「サンドイッチが……いや、これ……コーヒーも美味しい。」
「本当か?景彩にそう言ってもらえると、安心する。ふふ……あいつが計画したんだ♪」
……双葉の笑顔。
相手がいると、こんなふうになれるかな?
「景彩……相手を求めているのか?」
たまに双葉が鋭い。
多分、読めるのかな?
「そろそろクラスに、戻るよ……。」
人通りが激しいのに、聴こえる音を遮断したように静かだ。
心が淋しい……何かを求め、待っている。
僕の相手は、どこにいるのかな?こんな外見で、僕を好きになってくれるのかな?
……はぁ。
人の気配が近づいたので、スルリとかわした。
【ガタッ】
…………?
振り返ると、男の二人組みが倒れている。
……??
「待てよ!!」
二人が、僕を睨んでいる。
あぁ!どうやら、わざと僕にぶつかろうとして(避けたから)こけたのか。
…………。
僕の所為じゃないよね?
はぁ……
「ね、可愛いね。倒れたときに、足を挫いたみたいだ。」
「痛たた……保健室に、連れて行ってくれるかな?」
囲まれた。気持ち悪い……
「嫌です。僕、男だよ?学祭で、女装してるんだ。ごめんね……じゃ!!」
逃げきれず……二人に囲まれた状態。
イライライラッ!!
手を出そうとした、その僕の手を引いて走る女の人。
「こっち……逃げるよ!!」
後姿……わかる。心が反応する。
この子だ……間違いない。
僕は、君を見つけたんだ……この動悸は、走っているからじゃない。
追いかけてくる二人の罵声なんかどうでもいい。
息の切れた君が、巧みに誘導する。
空いた教室に逃げ込み、息を潜めた。君の腕の中……
僕を優しく抱きしめる。
「大丈夫……もう、追ってこない。少し、隠れていたほうがいいね。」
優しい声で微笑む彼女を見て、一安心。
…………。
ん??手が、おしりを触っている??
気のせいじゃない。あれ?この人、女性だよね??
彼女(?)の肩に手を置いて、押し……距離を取る。
僕の戸惑う様子に、綺麗な顔で……ニヤリ。
…………。
あれ?この人も、女装してる男??僕、相手……間違えたのかな??
両手を、彼女(?)の胸に当てた。
【ムニュ】……柔らかい。
あれ?詰め物なの??
【ムニュムニュ……】
…………本物ですよ。
「……ふふっ。積極的な子♪」
あっけなく押し倒されてしまった。
……あれ?何かがおかしいですよ??
やはり、女性です。それなのに僕の胸に手を滑らす。
「ん?小さい……と言うか、ない?……ま、いいか。顔は好みだし♪いただきまぁ~~す!!」
混乱する僕に躊躇なくキスをした。
見開いた目に、彼女はエモノを捕まえたような眼。
キスはどんどん激しくなる。
彼女の手が、制服を脱がしていく。
手際がいい。そして、太ももに触れた。
「僕……あ……」
「可愛い声……もっと聞かせて……ん??」
彼女の手が……恥ずかしい。
「付いてる??」
……はい。僕、男だし。
解っていたわけじゃないの??あれれ??
…………。
沈黙が二人を包む。
起き上がった僕。その前に呆然と座った彼女。
乱れた制服の下、平らな僕の胸を見つめる。
「……あの、僕……」
「僕……??ふふ……可愛い。自分のこと、僕って……君……女の子だよね?」
目が瞬きをしてませんよ?先輩……
リボンの色が、3年生だと示していた。
「さっき、僕の……に、触れたのに。」
……ポッ……
「……可愛い。可愛いのに!!男なの??!!」
どうやら、彼女……矢城 海波先輩は、女の人が好きな女性みたいだ。
「……クソッ!!忘れろ!野良犬に噛まれたと思え!!」
彼女は逃げるように、教室を出て行った。
……取り残された僕。
ふふ……くすくすくす……絶対、手に入れる。
“俺”の相手……。逃がさない。
難しい相手……だけど、この外見に感謝する日が来るなんて思わない。
ね、海波?




