天使は失う?!
麗彩side
「……ん?」
目を開けているはずなのに、真っ暗。
…………。
??
「目が覚めた?」
この声は……
「原くん?」
訊いたと同時に、いきなりの明るい照明。
眩しい……
「ね、ここ……何?どこなの?」
私の手は後ろで縛られ、柔らかいじゅうたんの床に座っている。
「し、静かに。」
……??
目が慣れ、周りを見渡す。広い部屋……家具も少しある。
ここはどこなの?
窓には鉄格子。原くんは、イスに座って私を見ている。
「華澤さんの家か、彼女の関係の建物ね……。で、あなたは……仲間じゃないよね?」
信じて言ったわけではなく、何か……気を失う前に聞いた言葉で判断していた。
「う~~ん。どうかな?君を渡したのは、私だ。けど、ここにいるのは誰も知らないよ。君を護るためにいる、とだけ言うね。」
私って言ったよね……?この人……
「さ、助けが来るまで話をしようか?」
きっと呪いの関係者だ。
ニッコリ笑うと、雰囲気が違う。
淡い光が、原くんの体を包む。女の人の姿に変わった……?
「もしかして、美衣さん……?」
解放の魔女。
「正確には、美衣様の精神……バラです。この度の無礼、申し訳ございません。……麗彩様、答えを見つけましたね?さぁ。答えを提出してください。解放です……」
草樹side
「草樹、大変だ!あいつらが、消えた!!」
優貴さんが、青ざめて駆け寄る。
しまった……自分の感情に振り回されて油断した。
確かに、校庭には麗彩たちの姿がない。
「普通じゃない。役員も、見張っていたはずだ……。」
「とにかく、手分けして捜しましょう!!」
気が狂いそうだ。
「……居場所、分かるよ?」
慌てる俺たちに、冷静な声がする。
「……劾……本当か?」
「あぁ。俺は、先見……」
「お前、こうなるって……」
「分かっていたよ?」
俺は劾の冷静な態度にカッとなって、喰いかかる。
「……劾、どこだ!麗彩はどこにいる?」
「連歌さんが知ってるよ。華澤さんの所……だ。役員級を総動員したほうが良い。俺の役目は、ここまで。……草樹、あと少し……迷うな。手に入れろ。」
劾の服を掴んでいた手の力が抜けた。
冷静さより、動揺が激しくて情けなくなる。
「劾、すまない。情報をくれて、ありがとう……」
必ず、奪い返してみせる。
麗彩……俺は…………
「おい、連歌!華澤さんのこと、知らないのか?」
「あぁ……記憶がない。誰かな……」
俺は連歌の家に、押しかけた。
麗彩の居場所は分かったが、連歌との関係が分からない。
俺の怒鳴り声に、小鹿が驚いて別の部屋からやってくる。
「草樹、珍しい……。ね、華澤さんって……千鳥のこと?連歌を追いかけてたのよね……。ほら、高校の時……」
「……?」
連歌は、思い出せない様子。
「はぁ……。私の元彼を奪った子よ、連歌の前に……本当に覚えてないのね……。草樹も……記憶に無いの?結局、連歌に付きまとうから……役員級が手を打って、家族ごと引っ越したよね?」
「「そうだっか?」」
小鹿は、呆れ顔。
「もう!!散々、恥をかいたから嫌でも覚えてるわ。怨んでいても、おかしくないわね。」
怨み……なのか?
「けど、あれから何年?相手は、学生でしょ。千鳥は連歌が好きで、かなり……周りを巻き込んでたからね。その子、水鳥か……。血縁者なら、草樹のこと好きなんじゃないの?」
「……俺を?報告がないのは、それでか……?俺の情報は、いらないって言ってたからなぁ~~。小鹿、ありがとう!今から、助けに行くよ。……連歌、お前も来るのか?」
連歌は俺の前で、動きやすい格好に着替えている。
役員を抜け、大分経つが……腕は鈍っていないようだ。
「小鹿、少し出かけます。ふふっ。起きて、待っていてください。」
「え、何で?寝るよ、今日は!寝るんだから!!」
「くすくすくす……。良いよ、一緒に寝ましょう……いい夢を見せてあげます。」
「うるさい、うるさいぃ~~!!恥ずかしいことを、言うな!!」
相変わらず、小鹿は苦労してそうだ。
俺たちは華澤家に侵入した。
お金で雇われたいわゆるプロが、沢山。
けど、俺たち役員も……幼いときから訓練を受けたプロ。
麻生学園の力に比べたら、大したことは無い。あっけなく事は進んでいく。
水鳥も、事の重大さに青ざめていた。
収拾を連歌に任せ、俺は麗彩のいる部屋に入った。
「くすっ。少し遅かったかな……」
俺の目の前に、奴の制服の上着を被って寝ている麗彩。
……白いワンピースが床に、無造作に置かれている。
白い肌が……被った制服の隙間から見えた。
「何を……した?」
うそだ……。大切に、護ってきたのに……。
「想像の通り。でも、合意の上ですよ?くす。可愛いね……寝ちゃった。無理、しすぎたかな?くすくす……可愛い声でしたよ。」
合意の上……こいつを選んだ?
言葉が出ない。
助けに来た……何から?
約束を守った……ずっと、ずっと……遥か長い年月。
この一時で……奪われた。もう、手に入らない?
「さぁ、どうします?もう……俺に譲ってください。大切にしますよ。」
大切に……?
俺は、一生……独り。
「麗彩……。君が選んだのなら、俺は……」
さよなら……出来る?
君がいない生き方なんて、もう忘れた。
16年……いつも一緒にいた。君と過ごした時間は……消える……。
「……ない。」
「え?何ですか、聞こえな……」
「渡さない!奪う……。お前から奪ってやるよ。どれだけ待ったと思ってるんだ!はい、そうですかなんて……俺が言うわけないだろ!!絶対に、邪魔してやる。どんな手を使っても、手に入れてやる!!」
はぁ……はっ……畜生!!
大事に?大切に!?糞くらいだ!!
「くくく……」
「何が可笑しい。……約束なんて無効だ!奪われたのに、手を出されたのに……何で、俺が我慢する必要がある?ふざけんな!!畜生、お前も……覚悟しろ?容赦しない。赦さない……地獄に突き落としてやる。いや、生ぬるい……生れてきたことを後悔させてやるよ。くくっ……」
天使だと?俺は、悪魔にでもなってやる。
麗彩は、俺のものだ。渡さない!!
「…………ぅっ……うぅ~~。草樹、好き……大好き……。誰にも、渡さないで……。私を離さないで。あなたのそばにいたい。草樹……草樹……」
制服から薄着だが、ちゃんと服を着ている麗彩の姿。
いや、どうでもいい!!
走り寄って、抱きしめる。
「麗彩……誰にも渡さない。俺に、束縛されて。俺のものだ。俺を選んで欲しい。」
「選んだの!」
俺は麗彩を抱きしめたまま、男を睨みつける。
「ふふっ。相変わらず激しいのね……。意地悪じゃないつもりよ♪くすっ。久しぶり……草樹。」
懐かしい女の姿に、何かが繋がった。
「……美衣。……じゃ、麗彩は……はっ……情けない。涙が……」
俺の目元に、麗彩がキスをする。
「泣かないで……。嬉しい。草樹……もう迷わないわ。愛してる……」
保健室。
「劾、いい加減に外してください。2人の時間の邪魔です。」
麗彩のお弁当を、口に運びながら睨み付けた。
「くっ。俺の警護のくせに、酷いね。学園に、言いつけるよ?」
机の上に座って、俺たちを見ている。
「麗彩、にんじんが残ってますよ。食べなさい。」
「じゃ、食べさせて?あ~~ん。」
口を開け、目を閉じる無防備な顔。
にんじんを口に入れてもぐもぐ、ニッ……と笑う。
可愛い……あぁ、劾がいなければ……
「押し倒すなよ?役目の時間までは、ここにいなきゃいけない俺の身にもなれ。」
劾のため息。
ちっ……。
「劾、彼女はどうしたのです?役員がいるなら、俺の警護はいらないでしょう。」
「あぁ。俺が我慢できないから、外してもらった。それにヒツジが、絶対に邪魔しろってうるさいから♪」
ヒツジめ……。過去のことを根にもつなんて、女々しい。
「誰がかな?」
……げ、こいつまで心が読めるのか?
ヒツジが、いつの間にか部屋に入って俺を睨んでいる。
「鍵、かけてたろ?」
邪魔者が増えた。
「何を言ってるんだか。任務に必要な、簡単な開け方のマニュアルを作ったのはお前だろ?はぁ……いつ見ても、無防備な姫だな。」
目を俺の膝の上で寝ている麗彩に向け、ため息。
お腹がいっぱいになって、俺に抱きついて寝ている。まるでコアラだ。
「華澤家の処分は、ボスと学園が決めるって。後……ボスが、あの部屋の特殊な鍵を開けたって評価してたぞ。」
夢中で覚えていない。
「草樹……。俺、必死で考えたんだけど……」と、ヒツジが真面目な顔で視線を逸らす。
何だ?緊張する……何か、重要なことか?
「お前、エロイよな。」
…………。
真剣に、何を言うのかと思ったら……エロイ?
うんうん、うなずきながら「じゃ!」と、部屋を出て行くヒツジ。
……え?何が??
「くすくすくす……。うぅ~~ん、俺はちょっと違うと思うな。」
劾は俺を観察するように見る。
何が??
「お前は、過保護だ!」
うんうんと、自己満足そうにうなずく。
確かに、過保護だけれども……??
「あ、時間だ。行ってくるね!」
劾は、役目で保健室を出て行く。
邪魔者はいない。くくく……。
無防備に育てたつもりはないんだけどな?誘ってるよね?
……ちょっとぐらい、いいよね?寝ている麗彩に、キスをする。
…………。
起きない。深くしたら、起きるかな?
イチャイチャしたいな。どうせなら、昼から……くふふ。
「おい、鍵ぐらい閉めろよ!」
ちっ!!何で、嵐が来るんだよ!!
「ん?何か、ヒツジからメールで来いって。ちゃんと、時間まで指定されたぞ?一分も、速くなるなって。遅れるな、じゃないところがポイントだな♪」
……こいつら、楽しんでやがるな?
覚えとけ……
「で、お前がSでも鬼畜でもないなら……何だ?ってなってさ♪」
何だ、それは……。
「お前は、獣だろ?タガがはずれたら、獲物まで一直線だし?」
獣??
「いや、野獣だろ?」
「え、諷汰さんは天使だって……夢を見てるぜ?……兄貴が悪魔なら、魔王とかでいいんじゃね?」
保志さんに、采景まで……。
「ね、俺の職場に……何しに来たの?」
「「「邪魔だ。」」」
息、ぴったりで……
泣きそうだ。
「しかし、麗彩の天然は酷いよね。」
「あぁ、お礼の度に自然に頬キスだ。……エロオヤジ。」
「光源氏だろ?」
「野獣だよな?」
俺、16年我慢して……この言われよう。何で??
「お、楽しそうだね。草樹、姫を起こせよ。任務だ!」
優貴さんの登場。助かった……
「あぁ、墨が言ってたぞ~。嫉妬に狂うのだけは、醜いって!」
どいつもこいつも……いい加減に……
「……え、草樹は独占欲でしょ?」
寝てた姫が、俺の頬に手を当て……微笑んだ。
可愛いけど、独占欲って。
「「「「あぁ!」」」」
任務が終わって、家に帰る。
「お帰りなさい。」
自然に、頬にキスをする麗彩。
もう夫婦の気分……。玄関で、深いキスをする。
「……ん、駄目……料理が焦げちゃう……。」
ちっ……。ま、夜は長いしね。ふふふ……。
リビングのドアを開ける。
…………。
今度は、女の集団。に、景彩が違和感無く交じっている。
「……て、美衣までいるのか?」
あぁ、2人の時間が……畜生!
「そう、独占欲……。何か、語呂が悪いわね。」
まだ、その会話なの??
俺は、ご飯を独り食べながら……弾む会話を聞き流していた。
「ま、兄貴がドSだろ?高校生のときから、苦労したよ……」
「小鹿さんが、一番大変よね~~。優貴は、小学生の私に手を出したけど、クールだわ。」
「何故、弟の嵐はSなんだ?追い詰めるときは、最高に嬉しそうな顔するぞ?」
「閑さん、追い詰めたら色っぽいかもね~~。そうね~嵐は、熱い男だね……変なところ。ヒツジなんて、鬼畜よ?」
「麗季も、大変よね。てか、黙ってる苺愛のところも鬼畜だったわよね?」
「高校の時から、私を優先してくれます。美衣さん、会話を上手く避けてますね。で、どうなんです?」
「「「え?何、相手激しいの!?」」」
俺も、そこは気になるな。
「……いや、何か……。」
あの美衣が黙ってしまった。
何かを言われるより、生々しいのは何故だろう……。
「円華さんは、諷汰さんとどうなの?」
「ぶっ。こんな私にまで、話を振らないの!……諷汰は、嫉妬が凄かった。匂いがついただけで……はぁ。」
何かを思い出したらしい。
「あぁ。じゃあ、僕はお父さんに似たんだね。赦さないよ、他の匂いなんて!」
…………。
「えぇ~~~~!?!」
俺も、叫んでいた。
…………。
散々、喋って……みんなが帰ると静かだ。
床のじゅうたんに座り、麗彩が乗ってくる。
愛しい……。
独占?するよ。当然だろ?俺のだ。誰にも渡さない。
この、髪の毛一本だって……。髪を指に絡め、キスをする。
見つめる麗彩が、俺を誘う。
「キス……して?」
頬に手を当て、優しくキス。
優しいキスを繰り返し、深くしていく。
「……ふふっ。優しい……草樹は、私の天使。ずっと、大切に見守ってきてくれた。……これからも……ずっと、あなたの優しさに束縛されるわ。」
「くすっ……。俺は天使?君を汚すのに?」
服の中に手を滑らす。
「くすっ。優しい……天使な束縛……。大好き……愛してるわ。遥か、長い年月の……」
天使な束縛……
麗彩side
私の16歳の誕生日。
骨折での入院から、退院して自宅療養中のひいおじいちゃんに挨拶。
「約束の日です。婚姻届を出し、今日から一緒に暮らします。」
有無を言わせない雰囲気の草樹。
「待て。約束の日だが、お前は約束を守ったのか?」
「はい。」
草樹は天使な微笑みだ。
「監視していた人に訊いてください。」
私は笑顔のまま黙っていた。
心の中で、ただ…嘘つき♪と。
あの日。約束なんて、どうにでもなる……と。
私は、草樹の本当の姿を見た。確かに天使じゃない……。
おじいちゃん、確かに覚悟が必要だったよ。
けど……触れる手は、優しく……私を束縛する。
遥か過去から、長い年月変わらずに……きっと、これからも変わらない。
天使な束縛に……愛を感じて、護られる。
大切に、大事に……天使な束縛……大好きよ、草樹。
END




