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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
5天使な束縛

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30/71

ま、いいか♪

麗彩side


保健室。

草樹先生が、私のことを好きだと言いました。

「先生……?」

優しく微笑む。先生の天使のような微笑に……胸が熱くなる。

さっきまでの怖い涙じゃない。……自然に零れて頬を伝う涙。

「ごめん……また、泣かせたか?」

目元にキスを受け……くすぐったいけど、幸せだ。

「分からない……どうして、泣いてるのか。でも……幸せだよ?好き……なのかな……?」


【ガシャンッ】

近くで、ガラスの割れた音が響いた。

「……何?」

「……麗彩、何かあったら……俺が必ず護る。無理しないでくれ。」

草樹先生には、あの音の意味が分かっていたのかもしれない。


私は、記憶を無くしていることも気づかない。

危機感もない……天然になっていた。いや、もともと……なのかな?

保健室を出た正面に、割れたガラス……警告……



学園祭当日。クラスは、大盛況だった。

何度も同じお客さんが来て、バッジを手に……気持ち悪い。緩んだ顔……??

「大上さん、ここはもう良いよ!さ、会場へ急いで!!」

委員長に手を引かれ、早足でついて行く。

会場?

体育館の前に、大勢の観客がいる。女子更衣室の前で止まった。

「委員長。今から、何するの?」

首を傾げた私に、呆れたような視線。

「人の話、聞いてた?」

「……へへっ。うぅん!!」

正直に、言ってみた。

うなだれる委員長。

「とにかく、中に女子がいるから」

【コンコン】

委員長がノックするとドアが開いて、クラスの女の子が顔を出す。

「待ってたよ!もう、他の子は行っちゃって……焦った。」

「大上さんに、コンテストのこと説明して。聞いてなかったらしい。頼む!」

「えっ……ちょ、マジ?」

「……マジ。」

どうやら、美人コンテストらしい。

クラスの宣伝と、集めたバッジが……どうのと、早口で……途中で耳は聴いていなかった。

ま、いいか……。

「ちょっと、衣装が!!」

「え、これって……どうする?」

見たことのある裂き方。

「あぁ、彼女だね~~。もう、この姿で良いんじゃない?」

適当なことを言ってみる。

「二次を通ったら、着替えるらしいの。」

「通ったら、考えたら良いじゃない。ふふっ、ね?」

通ったらね?

のん気な私に、二人がうなずく。

「そうね、それまでに頑張るね!!」

……?通るって、思ってるんだ……??

景彩が、もうすぐ来る時間。中等部は今日は休み。

「弟に、何か持ってきてもらうよ。ね、彼女に酷いことされたらいけないし。ね?」

二人は、顔を赤くして微笑んだ。

可愛いな……

服のテーマは、天使。私に天使……?

携帯で連絡する。

「あぁ、景彩?お願いがあるんだけど……」

思いついたのは、あの服だった。

「麗彩ちゃん、順番だよ!!」

体育館は、人でいっぱい。

「大上さん、聞いてた?」

「……いいえ。」

ステージは、眩しくて頭がボーっとする。

「彼氏は、いますか?」

彼氏?草樹先生……は、彼氏??

「分かりません。」

笑い声がする。

気がつけば、二次を通過したらしい?


更衣室に戻る。すると見慣れた人物が。

「景彩?あんた、ここ女子更衣室だよ?」

「うん。入れないって言ったんだけど……。」

私服の景彩はズボンなのに、女の子にしか見えない。

「え、男の子なの??」

「うそ、可愛すぎる!!」

……あ、傷ついた顔を一瞬した。

「景彩、ごめんね……。」

「じゃ、これ……。俺、少し行くところがあるから……頑張ってね!」

今まで、弟の何を見てきたのだろうか。気づいてあげれなかった。

そうだよね……男の子だ。可愛いなんて、褒め言葉じゃない。

……どこか、羨ましくて……ごめんね……。

「可愛いけど、少し暑くない?」

今は、10月後半。

麗季ちゃんは、この服をクリスマスのプレゼントにもらった。

……『天使だと思った』……そう、ヒツジ君の心を惹きつけた服がこれ。

お父さんにわがままを一度だけ言って、今の高校生のサイズに作り直してもらった。

そう、唯一のわがまま。

この服を……あれ……?誰に見せようと思ったのかしら??

……記憶がない……まさか、消えた?

何度も、小さい頃から聞いた物語。呪いと伝承。記憶を失い……それでも、その相手を探す。

呪いは解放され……消えた。今更、何を試す?私を……?

私は……相手を……選ぶ。

草樹先生は、私を好きだと言ってくれた。私の相手だろうか?


白いワンピース。私の黒髪が、よく映える。

ステージから、沢山の人が見える。出逢うべき人は、この中にいる?

それとも、身近な人を求める?草樹先生は、どうして……私なの?

『俺を選んで欲しい。』

あなたの笑顔が、痛い。胸が苦しい。……独り占めしたい……


「大上さん、優勝おめでとう。」

……気がつけば、自分の頭上に軽い王冠??

「話、聴いてた?」

「いいえ。あの、もう……帰っても良い?」

私に、司会の人が笑う。

「面白いね。さて、皆さん。重大発表!!何と、彼女のクラスでバッジを集めると!!」

ざわついていた会場が静かになる。

「彼女と、デートの特権が♪さぁ、今すぐ1-AへGO!!」

デート……??

周りの状況に、ついていけず……司会の人に訊いた。

「デート?私が??」

「え……もしかして、人の話……また、聞いてなかったの?」

……あれか?私の承諾。

「あぁ……。ま、仕方ないか。着替えても良い?」

私に、爆笑の司会の男の人。

「俺のお願い聞いてくれたら、助けてあげるよ?」

意味深な言葉と、不敵な笑み。

【ゾクッ】背中に、嫌な寒気がした。

「助けはいらない!」



学園祭最終日。3日間行われた最終日は、一般公開。

大上家の来訪で、教室に特別席が設けられた。

お父さん、お母さんに景彩。

みんな、景彩に頬を染めた。お父さんは、渋いらしい??

他人の家族を見て、楽しいかな?

その後は、采景君と苺愛さん。綺麗な二人に、男の子たちも興奮していた。

ま、采景君みたいな綺麗な男の人は見たことないけどね♪

保くんが、歌毬夜さんと子供二人を連れてくる。

中等部1年の4月生まれと3月生まれ。年子で、両方男の子。

保くんと同じ、カッコイイ顔らしい。

大上家は、呪いで相手を手に入れるため必死で生きてきたから?

見た目の良い人が多い。

「おい、麗彩。コーヒー!」

「俺は、オレンジ100%だぞ!」

景彩にない、弟気質の二人。

小さい頃、嫁にしてくれる約束……

……約束……ん?何か、引っかかった??

「麗彩?お前、それ……」

嵐くん登場。

入り口で止まり、ぷっと笑った。何で??

「くくく……。おい、来いよ草樹!来たがらない訳が分かったよ。ぶぁあはははは……くくっ。閑、デジカメ!いや、録画しようぜ!!」

嵐君は、とても楽しそうだ。

こんなにテンション高いのを、初めて見た。

「はぁ、大人気ないな。」

閑さんは、ため息。

草樹先生は、とても不機嫌。

「あの、ご注文は……」

「お前だ!」

「ひゃっ!?」

草樹先生が私を担いで、教室を出た。

肩の上……景色がいい。けど、クラスの手伝いが……ま、いいか。

「ね、草樹先生。どこに……」

この道は保健室じゃない。

着いたのは、物置の立ち入りを制限された最上階。

「はぁ……。誰にも見せたくない……我慢できない。」

私たちは、付き合っているのかな??

「先生?あの、私……夜は……その……。」

夕方から、クラスの商品になってデート。

クラスの作ったバッジを一番集めた人と……。

「知ってる。だから、みんなに協力してもらったんだ。」

……??

「みんながクラスの売り上げに貢献した分、バッジが手に入るんだ。優貴さんが、協力してくれた。」

じゃあ……デートは……

「俺と、一緒にいてくれる?」

「……はい。」

嬉しい。自然と抱きしめた。

多分、忘れているのは……この人のこと。

分かる……抱き寄せるこの腕。この温もり、匂い。優しく触れる手……見つめる眼……

「麗彩……」

この声に……重なる唇……。

「草樹……」

……ミツケタ……手に入れた……

優しく微笑む……天使の微笑み。

甘い……束縛……離さないで……


【携帯のコール音】

「……ちっ。誰だよ……優貴さん?……はい。……え……何だよ、それ。分かりました、すぐに。後は頼みます。」

私の上で話をする草樹は、険しい顔。

何かが、あったんだろう。

「麗彩……ごめん、デートは……他の奴に決まったらしい。……ちっ!!何か、裏があるな。」

草樹は私に手を差し伸べ、起き上がらせて……床に敷いた上着を取る。

冷たい床に、私を寝かせたくないと……

今更、顔が赤くなる。

服が乱れ、胸元に……赤い印がたくさん。

恥ずかしい……もたもたと、ボタンをはめようとするが……上手くいかない。

ふっと、笑って……草樹が自然に、はめてくれる。

何だろう……照れも無く、懐かしい気がする。

「ん?……ふふっ。誘ってるの?残念だけど、今は駄目だよ?」

見上げる私に……優しく、目元にキス。

「さ、姫。教室に戻ろう。いい?何かされたら、容赦なく攻撃しろ!絶対に、助けてやるからな。」

真剣な眼差し。

「うん……。」

学園祭は、追い込み。

騒がしい周りの声が聞こえないぐらい……ドキドキしていた。

草樹は、距離を少しあけ……前を歩く。

この人が、私を好きだと言ってくれる。

あれ?私、言ってない?

『好き……なのかな。』

確か、こんな言葉は言った……気がする。


教室に戻ると、クラッカーが鳴り響く。

物凄い爆音に耳を押さえ、頭にテープがかかる。

「さ、大上さん来て。じゃん!!バッジを一番集めたのは、盛り上げに協力してくれた原くんです♪」

司会の人だった。

「今日、これからの時間は俺のだよね。じゃ、行こうか。」

そっと、私の前に手を差し出す。

悔しそうな、草樹の顔。

委員長……大丈夫かな?何故か気になった。

優貴さんの協力で、このクラスを盛り上げたのは事実。

なのに、あのコンテストで……お客を呼んだ原くんが権利を得た。

自然に出された手を、私は自然に取ってしまった。

あの時の寒気は感じない。

優しい、温かな手。何故か安心し、ドキドキする。

外では、資材を集め燃やし始めていた。

最終日の宣伝に着た、この白いワンピース。

草樹に、もっと見て欲しかった……。

「可愛い服だね。どうして、それが天使のイメージなの?」

微笑む原くんが、言いたいことを引き出す質問をする。

「……うん。憧れるような恋愛をしている人が、このワンピースの思い出を話してくれたの。相手の男の人が『天使かと思った。』って……。私も、なりたいなって……」

「うん。見えるよ……天使だ。可愛い……」

恥ずかしげもなく、私を見つめ囁いた。

【ドキッ】あれ、何だか……胸が苦しい??

「あの、原くん?……あの……」

何かを言っていないと、息が詰まりそうだ。

「ん?あ、寒い?」

優しい笑顔で、制服の上着を掛けてくれた。

誰かに、似てる……?この優しさに惹かれる。

「ありがとう……」

私は、自然に頬にキスをした。

原くんは驚いた眼で私を見る。そして微笑んだ。

何だか、それが嬉しくて私も微笑んでしまう。

「本当に、可愛いね……。無防備だ。大事に、大切にされたんだね……。」

そっと抱きしめ、温かい……優しい抱擁。

何故か、拒絶できない。

「……期待しちゃうよ?」

……?期待??

「何の?原くんは、私とデートして楽しい?ね、いつまで一緒にいるの?」

「友達になったら、今日だけじゃないよ?」

友達……一人もいない私の友達?

「……なってくれる?」

私は、何も知らない。

これが、草樹を傷つけるなんて……。

選ぶことの出来る立場。解放された呪いの自由。知らない世界。

この選択は、あなたを追い詰める。

呪いの弊害……逃れ道を閉ざすのは……

「麗彩、おいで。散歩しよう。」

私は、違う手を取る。

打ち上げの花火。闇に咲く花……。

私が共にいるのを願う人は……この人?何かが、足りない。

同じ微笑。優しさ……温もり……。

似ている。不自然なほど、草樹に似てる。

草樹……どこ?寂しい。足りない。満たされない。違う……この人じゃない。友達……じゃない。

求めるのは、違う存在だ。

「原くん。ごめん、一緒にいられない。あなたじゃない。違うの……」

「うん……。分かってる。けど、役目なんだ……。ごめんね、これが最後の試練……。頑張って。未来は、繋がってる。……あと、少し……。」

……?

原くんは、私の額にキスをした。

「……え……」

私の記憶が戻り始め、眠気が襲う。

「弊害を乗り越えて……。お願い……未来を望む……。」

意識が遠ざかる……。

原くん……あなたは、ダレ……?

草樹……




草樹side


陰から見守る。護っていたつもり……。

麗彩は、彼の手を取った。

自分から……微笑む。無防備な笑顔。

切り刻まれるような痛み。相手の男に殺意。

「草樹……。」

共にいた保志さんは、言葉を失う。

「ははっ……記憶が戻る。分かる……俺の記憶が、戻り始めている。大事にしたのに……麗彩は、他の奴を選ぶのか……?何故、今なんだ。俺は……」

「……草樹。何故、俺がいるか分かるか?」

俺の耳に届くのは、保志さんの微かな声。

醜い感情が、俺を支配する。

「俺は、心が聞こえる。……お前の、強い感情が……俺に流れる。痛みを分け合うことが出来るだろうか……。」

「保志さん……俺の、時間は……無駄だっただろうか?」

「いや、絶対に無駄ではない。堪えろ……試練だ。時は来る……選ぶのは、あいつだ。草樹……」




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