冒険1
村2。
疲れを癒すために、宿に泊まる。
「な、ビエ?どうして、別室なんだ?」
うるせぇ……
「金はあるんだ。お前……城で、俺の隣で寝てたよな?広いのに、何でだ!!」
しかも、着替えまで!!
「え?助けてくれたお礼?」
……お礼になってない!!……ちっ!!
「……何だ、怒っているのか?大丈夫!俺は、女にしか興味ないから。」
……軽蔑の目を向ける。
「……ちが、部屋別でも……女は連れ込まないぞ?」
……怪しい。ムカ……ムカムカ……
「買い物に出るぞ!」
村の市場が並ぶ通りを歩く。
「……ビエ、ここ……地図が売ってる!」
値段は、0がいっぱい。
「いらない!」
「いや、必要だって!」
………。
《 ★★ 》
「いやぁ~。あなたが、あの有名な偉大な魔法使い様?いいです!!御代なんて!」
ニヤリ。
「……お前、今……呪文??」
「うるさい、黙ってろ!!」
俺たちは、親切なおじ様から地図をもらった。
『……もらってない!!もらってないよ?!』
「さ、サクサク行くぞ!!」
当然、地図はケイトが持つ。
装備の店を通り過ぎた。
「おい、ビエ!買わないのか?」
「……あぁ、俺は良い。お前の見るか?」
重そうだ。
宝箱とか落ちてないのか?タダで欲しいな。
ケイトは、店の人と話をして装備を見ている。
「ビエ、お前……魔法ってどれくらい使える?」
どれくらい?変な質問だな……あぁ、ゲームだとレベルで増えたりするからな~。
「無限大だ。俺の意思で、なんとでもなる。ただ、MPがわからない。あまり高度だと……出した後、疲れ果てるのが現実。」
MP……分かるようにして!
『無理……予測不可能だし!』
「……お前、どんな世界で生きてきたの?」
ケイトと同じ世界ですよ~~。
質問に答えなかったら、何を勘違いしたのか。
「悪い!辛い思いをしてきたんだな……。俺は、お前の味方だ!!」と、抱きついてきた。
押し退けながら答える。
「あ~、ありがとうな!で、ケイトは……ここに来てどれくらいになる?」
何だか、妙にこの世界に馴染んでいる?
「3年だ……」
……3年……?この世界で……独り……
「ビエ、お前の来るのを待っていた。この世界を守って、俺は……もとの世界に戻りたい。」と、真剣な眼。
今すぐ、帰してやりたい……
「帰るか?この世界は、俺が何とかする。お前は、今すぐにでも……」
ケイトは、苦笑い。
「……出来るのか?でも、俺の役目があるから……ここにいる。最後のエンディング見せてくれよ……」
「お客さん、買うの?買わないの?」
店のオヤジ……空気読めよな。
「……ビエ、装備って必要かな?」
「あぁ、お前はな!」
「けど、ゲームみたいには……俺の何かが変わるわけじゃない。」
「ケイト、あれにしろ!」
俺は目を輝かせ、指差した。
ゲームで見たデザイン!!カッコイイ!けど、俺は重いのは嫌いだ。
「お客さん、あれは重いし……誰も買わないよ?」
【キラ~~ン】俺の目が、一層輝く。
「じゃ、くれ!!売れないものを置いとくな!!な?」
「……何か、珍しいものと交換だ!これも目立たなくなったし……」
何か?珍しい??
「……おぉ、いいぞ!!」
《 ☆※ 》小型恐竜の展示品を召喚。
『……召喚?召喚って、どこから!ちょっ!?』
店の人は、大喜びだ。
「お前の世界にも、恐竜いるんだな。さすが……」
俺は、重い鎧を受け取りケイトに着せる。
「重っっ!!動けないぞ?!」
《 ※ 》
「……え?軽い??」
そう、重力をちょっといじった。
『大丈夫なの?それ……。て、軽く出来るなら自分も着たら?』
えっ、コスプレの趣味はない!!
『ケイトにさせといて?』
だって、RPGを楽しんでいるのは俺だ!!
「ビエ、ありがとうな!」
満面の笑み。
【ズキ……】
??
不思議な痛み……ま、いいか。喜んでるのを見て、苦しいなんておかしい。
『……少ない良心の呵責?』
はぁ?
「ビエ、魔法の杖があるぞ?」
隣の武器屋で、ケイトが叫ぶ。
杖……カッコイイのが欲しい!
『……コスプレは、しないんじゃ?』
ない方が、不自然じゃない??呪文だけって、ダサい……
『確かに、文章だと分からないけどね?いるね……アクション』
鉄の杖に、ジャラジャラいっぱい装飾のついたのを手にとり「オヤジ、これくれ!!」と、叫ぶ。
「ビエ、そんな……装飾落ちそうな……趣味悪い……」
俺は、ケイトを睨みつけた。
「……いや、女みたいな……ちょっと、男が持つには……」
視線を逸らしながらも、小さい声で意見する。
「あぁ、それ……銅貨5枚でいいよ。」
「買います!!」
杖をゲットした!!レベルが100上がった気がする!!
『いや、それはないだろ?』
「……銅貨って、一番価値ないし……安くて、気に入ったのならいいけど……離れて歩いてくれよ?」
……ムカムカムカ!!
「いいか、ケイト!病は気から、だ!」
俺、良いこと言う~~。
「思い込みで、強くなれるなら……。いい、好きにしろ。」
優しく微笑む。
「……生意気!!」
なんだろう、照れくさい……?
「あ、ケイトォ~~。」
女が飛びついて、ケイトを抱きしめる。
「……アサヒ?」
……俺の機嫌は、何故か……そこから最悪だった。何故かはわからない。
酒場に入り、料理をやけ食いした。
『未成年の飲酒は、法律で禁じられています!』
俺は、飲んでない。コーラを召喚し、こっそり飲んでいた。
『それ、どこから……。泥棒も犯罪です!』
イライラする!!
「私、アサヒ。ケイトの恋人です!」
「違うだろ!勝手に、熱のある俺を襲っただけだ。」
……そう、体の関係なの。ふぅ~~ん。ま、この世界で3年……淋しかったのよね。
しょうがないわよ……ふふっ。
「ビエ?何か、怖いんだけど?あぁ、羨ましいのか?アサヒ、ビエと……」
【バシャッ】俺は、怒りで……飲んでいたコーラをケイトにぶっ掛けた。
「ビエ?」
「汚い手で触るな。」
俺の目は、冷めていたと思う。
なのに、想いは熱く……煮えたぎる……何かが沸くように。
俺は、先に旅館に戻り、風呂に入る。
『日本に近いお風呂だと思ってください。疲れたときは、お風呂が一番です♪』
鏡に映る女の自分を、ケイトが見る男の姿に換える。
……これでいい……自分を見失う恋なんて、しない。呪いは解放されたから……
朝。着替えを家から召喚し、洗濯物を洗濯機に入れた。
お母さん、後はよろしく!
私の家族には、私がいないことに気がつかないよう、魔法がかけてある。
でも、ケイトは……?世界に戻ったとき……どうする?
私には、何もできない。都合のいい“時の魔法”はない。
手を出してはいけない。摂理が崩れ、この世界だけでは済まない。
それでも、何を望む……?
【コンコン】
「ビエ。飯、食おうぜ~?」
ケイト……
「あぁ、すぐに行く!」
鏡の自分は、男。女だと知ったら、お前は……私を……。
ふっ。バカだな……。魔女は必死になる……自分を見失い……どこまで狂う?
私は……。やけ食いだぁ~!!
宿の外の小さな店。出来立てのパンに、コーヒー。
「なぁ、ケイトは……」
「何だ?今日は、大人しいな。気分でも悪い……」
手を伸ばし、私の額に触れる。
【ビクッ】
「……?ちょっと、熱いか……。どうする?体調が悪いなら、もう一日この村に……」
「イヤだ!……っ」
つい、叫んでしまった。
この村には、お前を知る女がいる。早く、ここを……出たい。気が、おかしくなりそうだ……。
「無理するな?行くなら、すぐに出よう。勇者も心配だし。」
優しい……俺が、男に見えるから?
お前にとっては、大事な仲間……命の恩人か?
村の外に出て、広がる高原に疲れを感じる。
「で、この道程だと……3・4日……いや……」
ケイトに持たせた地図は、勇者の居場所を告げる。
携帯で撮った情報を、魔法で書き込んでいた。携帯は便利だな!
『携帯だけじゃないよね?』
久々?お前、一体何してるの?
『物語の傍観……恋に冒険に……先が見えず……』
「ケイト、馬車は……カボチャだよね?」
私は、目を輝かせながら訊いた。
「……カボチャ……?」
『シンデレラですよ!それ……走ってたら目立つよ?』
《 ☆△ 》
くすっ。カボチャに、ねずみ二匹だったかしら?
くすくす……確か、隣町に……
乗り捨てましょう。綺麗なドレスと、ガラスの靴を残して。ふふ……くすくすくす……
『……美衣……異世界だよ?』
馬車は、勇者のいる近くの町へ走る。
「便利だな、お前の魔法。けど、疲れないか?」
朝の様子がおかしかったからか、ずっと調子を訊いてくる。
「うるさい。黙って……疲れが取れないから……」
肘を窓際に置き、あごをのせ……外を眺めていた。
勇者……多分、結界があるか……他の魔法使いがいる?
本当に死んでいるなら、私は……召喚されたりしない。
「ケイト。勇者は、眠っているだけだ……。私は……死んでいる人間まで、甦らせることは出来ない。ケイト……何があっても、死ぬなよ。助けられるとすれば……」
一度だけだ……
「ビエ?何を……お前らしくないぞ?」
そうだな……でも、無茶は出来なくなるだろ?
希望は、ふさわしくないと……生き方を惑わすから。
「ケイト、戻ったら……逢おうな……」
私は、体力を残すため……浅い眠りにつく。
揺れる馬車……この乗り物が、誰かの幸せを運ぶなら……私の力は……幾らでも出そう。
彼らは、呪いから解かれた……幸せだろうか?
多分、解かれたからこそ……弊害と戦うんだ。
今の私も……何を願う?何と戦う……
『美衣……。そうね、あなたはいつも、誰かのために動いていた。面倒臭いなんて言いながら……』




