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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
5天使な束縛

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28/71

弊害から解かれて


苺愛さんは、掌に乗せた小さな水晶球を見せる。

「草樹、記憶を消すのは簡単。でも……それでは駄目。これは試練。選んで……どちらの記憶を消す?それとも……二人とも消しましょうか?記憶は、徐々に戻る。その間に、気持ちは変わるかもしれない。普通に出逢い……それでも、選ぶなら……本当の相手。」

記憶を……消す?

試練……何度も聞いた物語。

「……俺は、記憶を消してくれ。麗彩に忘れられるのを、見たくない。狂いそうだ……。麗彩が、誰かを選んだら……。それが良いのかもしれない……。麗彩、今言っとくね。出逢えて良かった。……愛している。」

草樹は、私に微笑んで……水晶球に触れた。

倒れるのを、采景君が受け止める。

「連歌、いるんだろ?寮に運んでくれ。」

「連歌君、待って!」

采景君と連歌君に駆け寄った。

草樹は、眠っている。

納得する間もなかった……。多分、記憶が……もうないんだ。

私を忘れた草樹。眠った彼が、目を覚ましたら……彼の中に私はいない。

「酷いよ……。」

「麗彩、最後かもしれないよ?」

優しい連歌君の声。

最後……?気持ちは、通じないかもしれない。

二度と、あの笑顔は……手に入らないかもしれない。

「嫌だ……」

私は自分から、草樹に唇を重ねた。

反応はない。これが、最後かも知れない?

連歌君が、草樹を運んでいく。

涙が感覚なく流れ落ちる。

「あなたは、どうする?記憶を持ったまま……彼を求める?それとも……未来を信じる?」

記憶を失った草樹を追いかける?

……拒絶されたら……生きていけるだろうか?

「……途中で、消すことも出来る?」

逃げ道に……。

「そうね……。それも、いいかもしれない。私たちは、傍観者。願うのは……多くの幸せ。」

草樹が、よく言っていたと……誰かが言った。

私との未来が……遥か遠い過去から。

草樹は何を見てきた?私は、あなたを信じる?共にいた時間は、無駄だっただろうか?

「苺愛さん……信じる。彼との未来を……。消して頂戴……私の記憶を。必ず、出逢ってみせる!」



朝起きて、伸びをする。

……?何だろうか、何かが欠けたような……??

着替え、準備をして台所に向かう。

「おはよう、麗彩ちゃん。今日は卵、どうする?」

「うん……半熟で。」

台所に立つのは、景彩。

私も、料理をする……よね?あれ、何か足りない。

「寝ぼけてる?はい、お弁当。忘れないでね!」

「ありがとう。いつも……だっけ?」

自分が作ってる姿が……?

「……何か、言った?」

ニッコリ、可愛い笑顔。

……??何だろう、少し……イラつく。

「景彩……。」

食欲がなくなり、断ろうとしたらお皿に……きれいな盛り付け。

レストランのメニューより豪華だ。

「采景君の腕、抜いた?」

「いや、まだまだだよ~~。ふふっ。残したら、許さないよ?」

たまに、景彩が怖い。おばあちゃんに似てる?

…………。

「戴きます。」


「よぉ~~す!姫、お迎えだぜ!!」

朝から、テンションの高い保くん。

…………。

今日は、調子がおかしいのか……違和感?記憶が曖昧……。

「さ、いつものお迎えですよ!」

「うん。」

いつも、車で送ってもらってた。

「保くん……仕事、何してたっけ?」

「オヤジの会社の営業だよ。下着のカタログ置いていくぞ?」

おじいちゃんの、下着のブランド会社。


車に乗る。

何か、違和感……。

「ね、今更……かもしれないんだけど。」

「……何?」

保くんには、子供が2人……同じ麻生学園。私には弟……同じ麻生学園。

「どうして、私だけが車なの?」

…………。

何、この沈黙?

「あぁ~~ほら、じいさんが……心配だって……。あぁあ!!もうすぐ学園祭だろ?準備とか、あるのか?」

……話、逸らした?

「うん……」

車の中、保くんはうるさいぐらいに話を続けた。

まるで私の話とか……質問を避けるように。

違和感……。毎朝、これだった?

学園に着いて、車を降り……運転席の保くんに近づく。

「……保くん。明日から、景彩と登校するわ。ありがとう……」

自然に、頬にキスをした。保くんは呆然と私を見る。

……?

「はぁ……。何だよ、可愛く育てやがって……」

ハンドルに額をのせ、小さい声で言った。

……?

「いいか、男はみんな狼だ!気をつけろ。手加減すんな!!いいか?」

いきなり、私の方に視線を戻して叫んだ。

……??

「はい……。」

保くんの車が見えなくなるまで見送った。

「あら、大上さん。おはよう。」

確か、華澤さん……。

「おはよう。」

挨拶をして、玄関に向かう。

「待ちなさいよ!」

捉まったか……。

「あの人は、恋人なの?朝から、公衆の面前で……~。」

この話、いつ終わるのかな?あ、終わる……?

「~わかった?」

「えぇ。分かったわ……」

多分。

すっきりした彼女は、高笑いで去っていく。

…………。

はぁ……。疲れた。


個人ロッカーを開けた。手紙が落ちてくる。

個別についたポストに手紙が入っているのだが、溢れたみたいだ。

はぁ……ため息。

私には、友達がいない。周りのみんなは、華澤さんが怖いらしい。

「麗彩さん!あの、話が……」

顔を赤らめた男の子……中等部の制服。高等部に、わざわざ来たのかな……。

景彩でも、滅多に来ないのに。

「何?」

分かっていても、耳を傾ける。

何故か、そう……教えられた……気がする。

「好きです。付き合ってください!!あの、好きな人とかいないって……聞きました。」

誰に、聞いたのよ?

はぁ……。

「えぇ……。けど、ごめんなさい。……違う」

私は言葉を遮るように、自分の口を手で押さえた。

何が、違う……?この人じゃない……じゃあダレ?

「麗彩さん?」

「……ごめんね。」

逃げるように教室へ走った。息を切らし、自分の席に座る。

窓際……外は、良い天気。なのに、何かが……サミシイ。足りない……誰かを捜す。

授業中も、上の空……。と、言っても学祭の話し合い。

私には、関係ない……


「……みさん、大上さん!」

……へ?

「良いかな?同意してくれたら、これで決定なんだけど。」

……聞いてなかった。

「うん。いいよ……」

「ありがとう!」

「やった!人気ランキング一位狙うぞ!!」

「おぉ~~」

……??!?

教室中が異様な盛り上がり。

黒板を見る私は、目が点。

はぁ?メイド喫茶。超ミニスカ・猫耳♪その他:お金を出せば……。

おいおい……承諾しちゃったよ。

どうやら、人気のいいクラスに特別プレゼントがあるらしい。

ま、どうでもいいか……。

だけど、どうして私の許可がいるのかな?話を聞いてなかった。

……教えてくれる女の子もいないし??ま、いいか……。

「大上さん、有名なブランドメーカーの家だろ?協力して!」

……あぁ、それぐらいのことか。


おじいちゃんの知り合いが、衣装のデザインや成作をタダでしてくれた。

何故かそのデザインに、保くんと采景君たちが絡んでいたのが気になる。

ミニスカから見えても良い下着は、家の会社の新作らしい。

普段話さない女の子も、嬉しそうに近づいてくれた。

それを、気に入らない人が……一人。華澤さんだ……。

「ちっ!!」

大きい会社の孫が、舌打ちって。下品だな……。

呼び出されたのだが……無視した。

結局、数人に囲まれた形になる。

男の子も、混じってる……。

…………。

これぐらいの体格なら、逃げれるかしら?

攻撃と、逃走ルートの確保を計算していた。

もちろん、話は聴いてなかった。

「聞いてるの?」

「うん。」

嘘だ。

「~~っつ!!」

あ、何かまずい?怒りが頂点?

思った通り。

「いいわよ、好きにしても!問題は、私がもみ消してあげる。」

高笑い。

女の子を連れて出、男の子が二人残る。

「ね、可愛いね。いや、綺麗な顔……。傷なんて、つけたくないな。」

一人が、私に触れようとする。

「触らないで。私に触れて良いのは……」

良いのは……?

いや、華澤さん……私の顔に傷を??

はぁ……。この顔、嫌いなのよね……。

「付き合ってよ。そしたら、乱暴なことしないよ?」

「あ、てめ……水鳥みどりにケンカ売ったら……」

二人がもめ始めた。

出来た隙を狙って、スタンガンを装備。

【バチッバチバチ……】良い音がする。

二人が、青ざめた顔。

「これ、特注なの。くすくすくす……ひいおじいちゃんたら、人を殺しても良いなんて……。くすくすくす。ね、過激……よね?」

逃げていく男の人は、無様だ。

後姿を携帯で撮っておく。もちろん、会話は録音している。

…………。

自然に出来ている自分が怖い。

はぁ……疲れたな。

そう言えば、保健室に天使がいるとか聞いたことがある。

休ませてくれるかな?


そこに、私は天使なんか見なかった。

“私”が知っているはずの天使はいない。

確かに約束がないのは、覚悟が必要だった……。


保健室の扉をノックして入る。【コンコン】

「失礼します。」

机に、腰をかけたカッコイイ男の人。

……自分の周りの男の人も、そうだけど……それと、雰囲気が少し違う。

「あぁ。お客様だよ、草樹……」

ニッコリ微笑んだ。……この人が、天使?「がい、机に座るのはいけないと何度言えば……て、何故メイド?」

実は……学園祭の衣装合わせで着替えていた時、華澤さんに捉まった。

しまった、超ミニスカだ……。

「着替えてから、また来ます……。」

「いいよ。疲れた顔してる……寝ていきなさい。」

作業を止め、私を見つめる……この人も男前だ。

「草樹、襲うなよ?」

「……ふふっ。劾、役目はどうしたのです?」

「あぁ。くくっ……。ある意味、こっちの方が興味深い。……魔法……か。」

…………。

私は、2人の会話の間を通り布団に入った。

睡魔に負け、意識が遠退く……。




草樹side


「くすくすくす……。男が二人もいるのに、寝ちゃったよ?くくくっ。しかも、メイド服。」

「こら、静かにしろ。はぁ……。どんな教育を受けてるんだ?」

綺麗な顔……の、女の子。

「劾、さっき言ってた魔法って?」

「いや、なんでも無い。くく……。ね、どんな教育したらこんな純粋になるのかな?くすくすくす……。」

「馬鹿な親が、甘やかしたんだろ?」

俺の台詞に、劾は爆笑している。

……?何だ、何か……無性に腹が立つ。

「草樹。俺は、先見……。けど、君も……“彼女”の未来も……見えない。」

真剣な眼……

「彼女……?」

俺は今まで独身……気になる女はいたが彼女はいない。

劾は、自分の右手の甲に唇をつける。

「……痛い……。これ以上は、無理か。」

「独り言か?……劾、調子が悪いのなら早く言ってくれよ。」

劾は、微笑む。

「ホント、優しいな……。草樹、優しいと……失うよ?」

そう言いながら、部屋を出て行く劾を見送った。

失う?……最近、誰かに同じ事を言われた気がする。

はぁ……。何かが欠けたように、胸が空っぽだ。

何故、俺はここにいる?学園の担当医師。

役員の仕事で、十分食っていける。

通帳には、こんだけ貯めてどうすんだ?って金額。

……?微かな甘い匂いがする?……気のせいか?

途中になった作業を再開し、休憩にコーヒーを入れる。

まだ起きない。本当に無防備だな。

大事に、守られて生きてきたのか?誰かが、必ず守ってくれる環境で?

ここでは、誰も助けてくれないぞ。

俺は、誘われるようにベッドに近づいた。

綺麗な寝顔。長く、綺麗な黒髪……麗季の毛質に似てる?

指に絡め、自然と唇にもっていきキスした。

愛しい……。こんな年の離れた女の子に、感情が騒ぐ。

「……ん……。」

寝返り、上に向いた唇が……少し開いている。

「すう~~。」

ぷっ……幸せそうな寝顔。

自然に唇を重ねた。優しく……けど、その唇が俺に反応した。

いや、俺が反応したのか?気がついたら、深く……求めていた。

「ん……んん~~??」

俺の目に、彼女の驚いた眼……。

止まらない。首もとに、唇を滑らす。

「嫌っ……止めて……」

ほら、君を助けてくれる奴なんかいない。

君が、悪いんだ……そんなに無防備で……。イライラする。

「……っ!!……ぁ……。」

可愛い声だ……。

触れた胸の谷間に、赤い印のあるのが目に入る。

「……へぇ。誰につけられたの?こんな、印……。」

彼女は、涙目で抵抗しながら叫ぶ。

「知らない。私に触れる人なんかいない!嫌……」

白い肌……。明らかに、俺のだという印。

こんな無防備に寝ていたら、気がつかないうちにつけられた?

大切に、護ってきた結果がこれか?俺みたいな奴に触れられて……

畜生!!何か、イライラする。

「……はぁ。無防備過ぎだ……。俺が言うのもおかしいが、気をつけろ!」

ベッドから下り、部屋を出た。

触れた唇……掌……

彼女に触れた俺の体が、熱い……




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