悪魔が微笑んで……
苺愛に聞いた、連歌の部屋。
インターホンを押すが、反応はない。
けど、苺愛がいると……泣いている……と言った。
ドアノブを回すと、開く。中は、とても静か……
そっと……入る。
「連歌、上がるから……ね?」
少し、声が……小さくなってしまう。
返事はない。
奥へ進み……窓際に座っている姿を見つけた。
私に、背を向けたまま……ずっと無言。
「連歌……」
連歌の背中に触れる。
【ピクッ】……反応はある。
何も、言わない。背中を合わせ、もたれるように座る。
彼の温もりが伝わり、それだけで……泣きそうだ。
愛しい……私が傷つけた……
癒せる?抱きしめてもいい?キス……してもいい?
「……連歌?」
呼んでみる。
「……何故。」
小さな声。
「……ん?」
耳を傾ける。
「鍵を開けたのは草樹……か。」
あぁ、草樹……あんなこと言いながら……。
ふふっ。連歌を大切にしてるんだ。
「連歌……好きよ……。もう、遅いかな?嫌いになった?私……」
もたれていた背中がいきなり退いて、倒れそうになる。
連歌が受け止め、そのまま私の体をそっと床に導く。
「今更かな……?」
見つめる目が、潤んでいる。
……あぁ、泣いてたんだ……。胸が痛い、苦しい……
「連歌、好き……ごめんね?」
両手を伸ばし、連歌の頬に触れる。
「もう、逃げたいと言っても……遅いですからね?」
私の手に頬を摺り寄せ、キスをする。
愛しい……触れる唇を、自分の唇に欲しい。
「連歌、キスして。唇に……いっぱい……あなたを感じられるように……」
連歌の視線が、私を捉える。
優しく……とても嬉しそうに……微笑む。
窓から入る満月の月明かり。
彼の顔が近づいて、私を求めるキスを受ける。
繰り返す……優しいキスと深く私を求めるキス。
「小鹿、もう……離しません。俺のです……俺だけの……小鹿。誰にも渡さない……。」
「うん……離さないで……」
あぁ、私は悪魔の手を取ってしまった。
離さないわ。だって……私に、あなたが微笑むから。
私に……悪魔が微笑んで……
ここは中庭。みんなでお昼。
草樹が訊く。
「連歌、幸せか?」
「あぁ、幸せだ……」
嬉しそうに私に抱きつきながら、答える。
が、胸に手が触れる。
「ちょっと、人前で胸を触るのは止めて!!」
手をつねって、睨む。
「……人前じゃなければ、良いんですね?」
「……!!ばか……」
「苺愛、俺も……抱っこしたい。おいで……」
「……嫌。今、食べてるから。」
采景君、なんとも言えない顔で……私たちを見る。
情けない顔……でも綺麗なまま。羨ましい……
「ね、誰を見てるの?」と、目を覆われる。
「……采景君、綺麗だなって……」
【ピク……】連歌が、過剰に反応した。
「……どうせ、綺麗な顔じゃない……」
目を覆っていた手を退け、連歌を見つめる。
しょうがないな……悪魔のくせに。
「……なんてね。」
【チュッ……】
やられた……。
傷つけてから、連歌の弱さを見せられると……つい、流される。
多分、それも……悪魔の手だ。
あぁ、悪魔の手を取って、幸せなんて……
「あ、小鹿ちゃ~~ん!」
あれ、この声?
「綾!!」
私は、連歌の顔を押し退け綾に走り寄る。
「「綾?」」
連歌と、草樹が反応した??
私は綾を抱きしめる。
「苦しい、小鹿ちゃん……一段と胸が……」
「……ごめん。」
一段と……て、大きくなってるんだろうか……。
「草樹、任務!至急だって!!」
「あぁ、行くよ!」
綾は、役員をしているらしい。
「ね……小鹿、綾と……知り合い?」
「うん!従姉妹なの。」
嬉しそうに答える私に、連歌がうなだれる。
「……??どうしたの?」
「ね、会うたびに……綾に抱きついていたの?」
変なことを訊くのね?
「うん!」
「はぁ……。原因が、ここにいた。」
連歌は、ため息交じりに空を見る。
??
「苺愛、知ってたのか?」
連歌は視線を、必死で食べている苺愛に向けた。
「えぇ。一生の相手の匂いのついた綾と、勘違いして契約するんだもの……。良かったわね、草樹が気づいて。」
「はぁ。どんだけ、あいつは……。」
私の分からない話?
でも、連歌が幸せそうに笑う……。
「え、連歌の振られた一人目って……綾?……あぁ、モデルのAYAって……あぁ~~。」
「二人目の噂の麗季は、綾の友達だ。」
「あぁ、麗季ちゃんね!あの子も、胸が大きいから親近感沸いて……よく抱きしめてたよ?」
連歌は、呆れた顔で私に言う。
「覚悟はいいですか?」
「何の?て、何を……ここ、中庭。押し倒すな!!やめ……。苺愛、采景く……??」
悪魔に協力して、誰も助けてくれない。
「イヤ……ダメ!……本当に、やめて……っ……」
悪魔が微笑んで、私にキスをする。
優しく触れる手に、抵抗できなくて……。
悪魔は囁く。
「小鹿……一生に一人……あなただけ。間違えたんじゃない。悪魔なあなたが微笑んで……俺を狂わした。微笑んだ悪魔は、あなたです。小鹿、覚悟して……?」
「嘘よぅ~~」
「連歌、いい加減に私のものになって!」
存在を忘れそうになっていた千鳥が、私たちの前に現れ……叫ぶ。
「ごめん、小鹿しか感じないんだ。」
【カァアァ~~】
顔が赤くなって、連歌の口を手で押さえた。が、遅かった……
周りの視線を感じる。
「……っ!!それぐらいの胸なら、私にもあるわ!」
服の破れる音。
「!?」
慌てて振り返るとブラが見える。
「わぁ~~」
周りが色めき立つ。
「ごめん。感じない……俺は、小鹿なら……」
連歌は、無表情で胸ポケットに手を入れた。
……?
ごそごそと小さな布を出し、広げる。
「これだけで感じる……ふふっ」
「それ、無くしたと思ってた……私のパンツ!!」
…………。
その後のことは、記憶にない。が、手元には没収したパンツ。
あの悪魔……あの、悪魔ぁ~~
思い出した……ブラとセットの下着。ブラはすんなり返したから、おかしいと思ったのよ!!
てか、常備していた??
恥ずかしい!恥かしいよう!!みんなの前で、私の……だって……
うわぁ~~~~ん。もう、しばらくはH禁止なんだからぁ!!
でも、悪魔が微笑んだら……
きっと、許してしまうんだ。悪魔が微笑んで……
「ごめんね。愛してるよ……小鹿……」
END




