一生の相手!?
朝、いつもの時間に起きると苺愛はいなかった。
連歌は家に来ない。
……私は、あなたを信じられるだろうか?
バスに乗り、揺られ……外の景色が流れる。
静かだ……感情が、落ち着いてる。
……苺愛が、話を聴いてくれたから。
苺愛、あなたは……何故……教えてくれるの?同じ家系……?
遠い……血の繋がり。連歌は、私を求める……唯一……?
バス停で降りる。
「小鹿!」
そこには、巴と関くんが立っていた。
いやな気分はない。うん、落ち着いて話が出来る。
二人と、バス停から無言で学校まで歩く。
校門を入り、校舎を通り抜け……中庭に出る。朝なので人はいない。
「千鳥は、俺のこと……好きじゃなかった。ただ、小鹿から奪いたかった物。手に入れて、満足したらしい。小鹿が、あいつと……」
巴は、悔しそうに口を閉ざし……うつむいた。
関君が口を開く。
「連歌が、君に好意を持ったから。……千鳥も手に入れられると思ったんだ。君の物を、手に入れたから。連歌も、物……そう思っていた。」
……?関君?
「俺、千鳥が……連歌を好きだと知ってたんだ。連歌は、小鹿をずっと見ていた。高校の入学式から……ずっと。」
…………。
え?連歌が私を……?
関君は話し続ける。
「俺たちは、均衡を保っていた。君は巴、俺は千鳥、千鳥は連歌、連歌は小鹿……。均衡を崩したのは、小鹿……君なんだ。」
私が、原因……?
「千鳥は、きっかけ。俺も巴も、連歌の想いが強くなるのに気づいていた。千鳥は、小鹿から巴を奪うことで自信をつけたかった。連歌の心も手に入れることが出来ると。」
「バカだよね、俺も……」
「……巴が、小鹿から離れ……連歌は必死になった。千鳥は、不思議だったかもしれない。小鹿より自分を選んだ男がいるのに……どうして、捨てられた女を求めるのか。」
千鳥、あなたは……。
中庭に、もう一人現れた……苺愛?
「彼女は、小鹿より近い血縁者。恋に必死になり……得ることのない心を求める。呪いから、解放されたのに……」
必死に……?
「巴、あなたは……本当に私が好き?」
「……好きだった。君を一人に仕向けたのは……俺だ。」
薄々……気づいていたの。私も、恋に必死で……
その時は……誤解だ、思い過ごしだと考えた。
「うん。でも、他の人に心が動いた。」
千鳥の嘘の気持ちに幸せを感じ……独りにした私に罪悪感を感じないほど。
だから、私は……あなたへの気持ちが冷めてしまった。
「関君……あなたも千鳥と同じ。私が、連歌よりあなたを選んだら……いつか、千鳥が振り向いてくれると思いたかった。私は、あなたの眼から気持ちが読めなかった。連歌のように、真っ直ぐ私を求める……熱い眼差しがなかったから。」
連歌……あなたは、千鳥をどう扱う?
あなたや草樹が、女の子を試したように……私も、あなたを試す。
まだ、ダメよ……
千鳥は、連歌に積極的だった。胸元を強調し、常に付きまとう。
そして、草樹を見分けた。連歌、あなたは……どうする?
あなたを愛し、必死になる女の子。しかも、気持ちに嘘はない。
あなたは、私より千鳥を選ぶ?今なら、私の心は傷つかない?
……っ!……。嘘だ……本当は、怖い。選ばないで、私を選んで欲しい。
私の弱った心が、あなたを傷つける……あなたが求めるのは……
「何を、見ているのですか?」
【ビクッ】
……恐る恐る振り返る。
「あら、連歌……元気?」
連歌は、少し不機嫌。
ですよね、実は……こっそり覗いていました。何て、言えない……。
「ふふっ。積極的で誰かのようです。くくっ……覚悟は、いいですか?」
狙ったように、壁に閉じ込められる。
しまった!油断していた……。尾行していたから!?
「あのあのあの……連歌、近い。近いです!!」
「……ふうん。汚い言葉、なくなったんだ。」
ニヤリと、口調が……いつもと違う。まるで、草樹。
けど、この雰囲気は……この、私を見つめる眼は……連歌だ。
「……いい事を教えてあげますね。小鹿の匂いって、判るんですよ?くすくす……今日、一日中……俺の近くにいただろ?」
【ドク……ン】心音が!!
「ね、小鹿……こんな人気のないところ……。彼女から逃げるためじゃないって言ったら、どうします?」
ひぃ~~!?はめられた??
やばい、やばい!!試すはずが、罠にかかっている!?
「……ね、答えて。こ・じ・か?……フゥ~~」
息を首元に吹きかけられる。
【ゾクゾク……】
「ひゃ……」
つい、声が!!
嫌な予感……?そっと、連歌の様子を見る。
嬉しそうな、なんとも言えない笑顔。
【キュン……】
あ、駄目……流される!駄目だめダメぇ~~!!
「ね、いい?小鹿が欲しい。食べたい……めちゃくちゃにしたい。ね、……舐めたら、どんな味がする?」
いやぁ~~!甘い声が、耳に!!
「ね、どうして黙ってるの?ね、小鹿……いい?黙ってると、喰べちゃうよ?」
【ペロッ】首を舐めた。
「んっ」
「小鹿、好きだ……好き……俺だけを見て。俺を求めて……俺を受け入れて?小鹿は、俺のこと……好き?ね、答えて……小鹿。」
連歌の右手が、頬、耳、首……胸元に……私に優しく触れる。
もう片方の腕が、腰に回され……逃げられない。
連歌の言葉が、抵抗する力を奪う。
「……ダメ……やっ……だ。」
何度も、私を求めるような……優しいキス……。
「……ね、言って……小鹿。俺の事、好き?……呼んでください。連歌って……」
連歌……好き……好きよ。
けど、だけどぉ~~
「小鹿、言わないと……」
「……連歌……す」
「連歌!!」
【ビクッ】
……この声、千鳥?……
連歌の眼が、一瞬冷たくなる。視線は私に向けたまま。
「小鹿、続きが聴きたい……」と。
「けど……あの、連歌……退いて……?何も、言うこと……無い……」
視線を先に逸らしたのは、私だった。
「……分かりました。」
連歌に視線を戻したときには、もう……私を見てはいなかった。
「千鳥、来いよ!」
千鳥を連れて、歩いて行く。振り返ることなく、私を見ることもなく。
傷つけた。また、傷つけた!
あなたは言葉を求める。
……私の流された言葉でも……ウソでも……あなたが欲しているのを知っているのに!
次の日、連歌は学校に来なかった。
その次の日も。
草樹が、連歌の振りで教室にいるのを見かけた……。
双子の草樹、同じ姿だけれど……連歌ではない。
「……連歌……は?」
草樹に近づいて、小さな声で訊いた。
「傷つけたのは、君だよ?解放したのは、こんな辛い思いをさせるためじゃない。なのに、呪いに囚われ……君を選んだ。君だけなんだよ?」
「……ごめんなさい」
涙を堪え、自分の教室に戻る。
自分の席……。机にうつ伏せ、涙を零す自分の姿を想像した。
……違う、立ち止まった私ではダメだ!
「泣いてる……部屋で何も食べず。……心が、泣いているわ。」
苺愛……
「連歌は寮よね?部屋を教えて!」
「行くのね?」
「うん。私の気持ちがはっきりしたから!苺愛、ありがとう。私、悪魔の手を取るわ。絶対、離さない!」
苺愛side
私の役目が終わった。
「苺愛、呼ばれたのはこれ?」
采景と草樹が、教室に入ってくる。
草樹が采景に抱きついた。……甘えるように。
采景は、慣れているので無視。
「うん。魔女は、おおかみの心に反応する。雑種に対しても同じ……。運命の相手を教えるのも、私の役目……ふっ。呪いは、解放されたはずなのにね……」
「……でも、一生の相手だろ。」
「草樹、どうして……淋しそうなの?」
「俺は、まだ……先だから。それに、あいつが生れたのは……呪いから解放された後……。」
「そうね……。呪いから解放されて、本当に……良かったのかな?」
「呪いは、呪いだ。草樹……お前の心が……」
「いいよ……。今は、何も知らないあいつが……俺を好きでいるなら。……愛してくれなくても、近くにいたい……」




