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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
4悪魔が微笑んで……

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23/71

恋心は封印です!?


授業が終わり、ざわめきが聞こえる。

「……えっ、あんた……草樹くんに告ったの!?」

廊下の話声が響く。

草樹って……連歌と双子のだよね?

「うん……やっぱり、ダメだったぁ!!」

「当たり前でしょ。初恋は采景君!有名な話よ……。綺麗な顔じゃないと、相手にしてもらえない。しかも、今……3歳の女の子を好きだって言ってるわね。」

……ウワサ……本当なのかな?采景君って朝の?

あの人なら、初恋と言われても……有かな?

……綺麗じゃないと……連歌も、綺麗な人ばかり好きになったと言っていた。

やっぱり……同情だったんだ。それか、胸……?

はぁ……疲れたな……

「はぁ!?草樹君を呼び出して、連歌君だったって……?……試されたの?」

……?

まだ、会話……続いてたのか。

「そう、2人の違いが分からないなら……付き合えないって……うぅ……」

最初から、その気なんてないだろうに……。

しかも、区別がついていないなら……連歌の振りした本物の草樹君?

性格悪いわね……あの双子。

悪魔……あの微笑に、何人が騙され……傷ついてきたのか……。

男なんて!!信用できない!

畜生ぅ~~。しばらく、恋愛は禁止よ!誰にも、心を許さないんだから!!

特に、連歌!あの悪魔が微笑んでも……絶対!!


今日はサボろう。天気も良いと、予報で言っていたし。

お昼の休みになっていたのか、中庭には人が多い。

お腹が減らない……。

裏庭に抜ける。

人気が無いし、時間帯だろうか……太陽が照らし、心地よい空間が出来ている。

木陰に座り、目を閉じた。

「……草樹くん。好きです……」

「ごめん。俺、結婚を考えてる子がいるんだ。」

「三歳でしょ?」

「だから?」

「……酷いぃ~~」

……静かな時間が、台無しだ。

しかも、この……声……?

「小鹿、ここにいたのですか?」

近づく声に目を開ける。

……やっぱり眼鏡のない連歌だ。そうやって試すん……だ。

それに合格しなければ?私に近づかない?幻滅する?私は……傷つかない?

「小鹿、泣いていたのですか?」

……っ!!

「……草樹くん。ごめんなさい……帰るわ……。」

「待てよ!……小鹿、分かっているのでしょう?」

「……私まで試すの?意味が無いわ。あなたは、草樹くん。でしょ?」

「……っ!!」

走って追いかけてくる。逃げ切れない!

手首をつかまれ、引き止められた。

「小鹿、こっちを……俺を見てください。」

「……離して。」

後ずさり、フェンスで行き止まる。

連歌は耳元で、私にそっと囁いた。

「名を呼んで……」

目を逸らしたまま……首を振る。

つかまれた左の手首が痛い。

「痛い……離して、お願い。」

「嫌だ!小鹿……小鹿。」

連歌の声が、私を苦しくする。

いつもよりかすれて、悲しげで……胸が苦しい。

「……連歌……」

「嬉しい……」

名を呼んだ私に小さい声で安堵の表情。

彼の左手が、そっと私の頬に触れる。

【ドクッ……】

動悸が激しい。

彼に反応しているんだ……っ!

駄目。心を封印すると、決めたばかりなのに。

「離して!」

抵抗するが、どこまで本気でしているのか。

……ダメ……苦しい。これ以上は自分が傷つきたくない。

心が……壊れそうだ。連歌……

「いやぁ……ゃ……っ」

優しいキス。

なんともいえない。幸せ……

はっ!!受け入れては、ダメだ!

自由に動く右手で、連歌を叩き……押し退けようとした。

連歌は涙目の私を見つめ、抵抗する右手を取り……

彼の胸に導く。連歌の左手で押さえられて熱が伝わる。

熱い……視線も……逸らすことが出来ない。

「小鹿……。この鼓動は、誰に反応していると思いますか?」

私を引き、胸に抱き寄せた。

鼓動が聞こえる。

「あなたです。小鹿に反応して、気持ちが高揚する。……他の誰でもない……」

連歌の声が、私の心を揺らす。

「……キス……したい」

【ビクッ】

ダメ、これ以上キスして……彼を受け入れたら、戻れない。

まだ、心が……心が!!

つかまれていた左の手首が、いつの間にか自由になっていた。

左手で口を覆い隠し、首を横に振った。

連歌の悲しそうな眼。

【ズキ……】

駄目!受け入れてはダメ……まだ……好きじゃない……

好きじゃない!連歌に失礼だ。

連歌は顔を近づける。

【ドキ!】

私の、口を隠す左手首にキス。

【かぁあ~~】赤くなる顔を背けた。

体は、フェンスに押さえられ逃げられない。

そっと視線を向ける。

目が合った。

【ドク……ン】

駄目、心が騒ぐ!

彼は私の様子を見ながら……私の視線を捉えたまま、手の甲まで舌でなぞる。

「……はぁ……」

息が漏れて体が震える……怖い?

違う、違うぅ……

連歌は手の指を、私の掌をなぞり中に滑らせる。

連歌の人差し指が唇に触れ……見つめる目が閉じ気味になる。

動悸の速さに、息が苦しい。拒絶が出来ない。

力の入らない私の掌を、連歌はゆっくりのける。

「小鹿……気持ちが抑えられない。めちゃくちゃに……したい。必死なのが分かりますか?小鹿が好きです。俺を受け入れて……」


「小鹿!!」

【ビクッ】

危ない……受け入れるところだった!

涙が溢れる。自分の弱さに、情けなくて。

「関……くん?」

連歌の表情が、怖く……雰囲気が冷たい。

その視線が関君に向けられ、連歌は私から離れる。

「っ!!やっ……やめてぇ!!」

連歌が関君の胸座をつかんで、今にも殴るところだった。

「止めて……。もう、私に……係わらないで。」

私はその場から逃げた。


逃げた。連歌から……連歌の気持ちから。私の気持ちからも!

自分が傷つかないために、連歌を傷つけて……。

連歌……好き……本当は、もう……あなたのことしか、考えられない。

いつの間に、あなたのことを好きになった?本当に好き?

ただ、あなたに見つめられ……あなたの想いが強いから……。

分かる……あなたが、私を求めているんだ……と。


「小鹿!見つけた。良かった……捜していたんだ!」

泣いている私に、声をかけたのは巴だった。

捜していた?もう、あなたに……用なんて無い。

出来たらかかわりたくない。話しかけないで欲しい。

「……泣いて……。小鹿、やり直そう……」

あまりの、意外な言葉に驚き……涙が止まる。

……今、何て……?

「は……?」

私の手を握り、巴は見つめる。

……気持ち悪い!

「離して!」

振り払い、睨みつけた。

「……ごめん。どうかしていた……。千鳥とは、別れたんだ。」

別れた?つい最近……だよね?付き合い始めたのは……?

いや、理由なんていい。もう巴に気持ちが冷めている。今更だ。

しかも、傷ついた自分の感情で……大切に想い始めた人を傷つけたばかり……。

「関係ない。もう、あなたに……何の感情も無い。」

「……小鹿、また……話をしよう……」

肩を落とし、巴が去って行く。

……今更……何を……?

今更よ!もう、時間は戻らない。気持ちも、離れて……冷めた。

また過去のように、気持ちを通わせることは無い!

巴……一体、何が……?

「あら、元鞘じゃないの?」

……次から次へ!

私は、傷心する余裕も無い。これが、私の心がもたない理由の一つだ。

「千鳥、どうして別れたの?飽きた?次のターゲットを見つけた?……私に用事なんて無いでしょ。」

疲れた……もう、そっと……して。もう、誰も……

「うん。連歌君、いいよね?」

【ズキ……】

連歌……?今度は、連歌なの?

「ふふっ。怖い?また、奪われるのが。」

怖い。失ったら、もう誰も好きになれない……そんな気がする。

誰も信じられなくなる!



千鳥と、その後……何を話したのか……どう、帰ったのか……記憶がない。

自分の部屋……冷たい床に寝そべって、涙が次々零れる。

【コンコン……】

「……何?」

「連歌君と、何かあったの?」

ドアの向こうで、母の心配そうな小さな声。

「……今、下に行く。……もう少し、待って。」

階段を下りる音が、小さくなる。

……連歌……あなたは、私の胸が好きなんだ。

私の代わりなんて、沢山いる。千鳥の胸……本物なら、十分だろう。

千鳥にあげる……奪われるんじゃない、譲るんだ。

私は、好きじゃない。好きじゃないから、傷つかないはず……よね?

「それは、違うと思うわ。」

……そうかな?違う……

!?

身を起こして周りを見る。

電気がつき、苺愛が立っていた。

「……苺愛?何で?何……??」

「ご飯よ!今日は、豪華よ。」

……何で、食卓に4人。父・母・私に苺愛。

「苺愛ちゃん、可愛いねぇ~~。もっと、食べなさい。」

母に、おかずをお皿に盛られている。

山盛りが、どんどん消化されていく。

「……今日は、泊まっていくんでしょ?」

「はい。小鹿の許可をもらいました。」

出してないけど?

「ね?」

無表情に近い顔で、私を見る。

「……うん。」

口元の引きつる私に、最高の笑顔!

家族全員が、やられた。滅多に見られないだろうその笑顔に、ハートが盗まれた!!

抱きしめる。

「……苦しい。この、胸……やっぱり……凶器。」

小さい声で、酷いことを。

「ごめんね……」

「はぁ……食べ終わったら、話がしたいの。いいかな?」

確認を取りながら、苺愛は首を傾げる。

まるで、捨てられた子犬のような……

【キュウ~~ン】

やばい、可愛すぎる!!飼いたいわ!


私は、部屋で苺愛にすべてを打ち明けた。

何もかも……順番は覚えていない。言いたいことを、すべて……吐き出すように……。

涙も、止まることなく……頬を伝う。

泣いている感覚はない。ただ、流れ続ける。

言い終えるまで、黙って聴いてくれる苺愛が……愛おしい。

「……ありがとう。」

私に、笑顔が戻る。

苺愛……あなたが私を癒してくれた。穏やかだ。

「……小鹿、昔話をしましょう。遠い昔、私の家系のある女性。その女性が好きになったのは、愛する人がいる男。どうしても……心が欲しかった。彼女は、汚い方法で手に入れた。でも……得たのは一時的。しかも子孫に……長い歴史の悲恋の繰り返しが付きまとった。呪いによる多くの犠牲……。幸せになったものは少なかった。……連歌も、その一人……」

昔聞いた、噂?

「……連歌は、あなたに辿り着いた。運命の人……あなた一人。間違えることは、もう決してない。あなたを失えば、連歌は……一生独り。」

私が……?

「あなたは、遠い呪いの関係者の家系。血は薄い……だけど解放される前に生れた定め……。小鹿、あなたの相手は連歌。信じて……決して、疑わないで……彼は、あなたを捜していた……」




連歌side。


めちゃくちゃにしたい気持ちを落ち着ける。

そっと……目を細め、顔を近づけた。

小鹿の目も細くなり、首の角度が……受け入れたのを示す。

嬉しい。幸せだ……。このまま俺を受け入れて欲しい。小鹿、好きだ。

君の唇……触れそうなギリギリで、邪魔が入った。

小鹿の表情が変わる。その眼が、拒絶を表す。

もう少し……もう少しだったのに!

俺は邪魔した男にイラつき、胸座をつかみ殴りかかる。

「やっ……やめてぇ!!」

必死な声。小鹿は走って行ってしまった。

……情けない……。

彼女の悲しみが伝わる。俺では、どうすることも出来ないのか?

『止めて。もう、私に……係わらないで。』

小鹿の、いつもより落ち着いた低いトーンの声が耳に残って……苦しい。

俺は、男から手を離す。

「行け、消えろ!」

走り去る彼女を見ることができなかった。

男の気配が消え、フェンスに寄りかかる。

網目に、しがみつき……力が入る。

……悔しい……小鹿……。

涙が零れる。

……どうして?教えて……小鹿、俺は、どうして……泣いている?俺は、どうしたらいい?

小鹿。呪いと同じ……君しか愛せないんだ……君を失ったら独りだと……君に誓う。

君は信じてくれる?



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