無関係だよね?
人生で、これほど落ち込んだことがあるだろうか……?
付き合っていた彼に、いきなり別れを告げられた。
校舎の影……人目のないところで泣いていた。
壁に、両手を当て……額を置く。
……悔しい……
【むにゅ】
…………。
……?
手は、額に両方ある。
しかし目線を胸に落とすと、両手が……胸を鷲づかみ……??
【ふにふに……】
??!!
「ぎゃぁ~~!!」
自分が、どれほど鈍いのか……
慌てて、触れている手を振り払った。
壁に沿って回転し、その人物から距離を取る。
体には、そいつの温もり……匂いが微かにする。
畜生!!
「……な、何を!!」
私が睨み、叫ぶが……反応はない。
ただ、両手をじっと見つめ……ニヤリ。
【ゾワゾワァ~~】寒気に襲われる。
やばい、こいつ……やばい!!
身を翻し、全速力で逃げた。
林野 小鹿。太西学園 高校部二年生。
その辺にいる、ごく普通の女だ。
男運がないなんて、まだ知らない。
変態が、学校で有名な双子だとか?
……彼氏が、奪われたとか……男友達に付きまとわれるとか……知らない!!
そんな私に、手を差し伸べる。
松木 連歌。
悪魔が微笑んで……
教室に戻り、自分の席に着く。
忘れよう!悪い夢だ……彼氏に振られ、悪夢が続いているんだ。
そう思うことにしよう……。
「小鹿、大丈夫か?」
こいつは、元彼の友達……関 徹だ。
「本当に気遣うなら、そっとしておいて!」
何だか、無神経な気がする。
親切なのかもしれないが、落ち込んでる私には……素直に受け止めれない。
「……ごめん。」
……はぁ。友達より彼を優先していたから、友達って言ってもなぁ~~。
中学は、別の姉妹校だったから……親しい友人が身近にいない。
元彼は、優しい人だった……。
一人でいる私に、親切にしてくれて。一年のときは、同じクラスだった。
今は、別のクラスで……ほっとしている。
『他に、好きな子が出来た。ごめん、俺がいないと……そいつ……』
じゃあ、私は……?あなたの優しさが、今……私を一人にしている。
何て偶然なの……?窓の外に元彼が、可愛い女の子とイチャイチャ……。
今日、宝くじ買ったら……当たる気がするわ!畜っっつ生ぉ~~!!
空は、黒い雲が広がって……私の心と同じ……
【ピカッ】……【ドォ~~オオ~~ン】……近くに落ちた。
しかも、土砂降りの雨……二人が木に雨宿り。
ザマ~ミロ!……って、傘ないし!!
雨は、放課後も降り続ける。
……濡れて帰るか……?傷心に浸れるか……いや、バスに乗れない。
歩いて帰れる距離でもない。私、何か……しましたか??
「入って行く?」と、爽やかな笑顔……の男。
「…………。」
頭の中で、考える。
男前……けど、知らない人。優しくされる意味が分からない。バス停まで……5分。
「……知らない人に、ついて行けません。」
出た答えは、係わらない……だった。
クスッ……奴は笑う。
「酷いですね。深い関係なのに?」
とんでもない言葉を、周りに聞こえるように。
「きゃ~~?!」
「連歌くん、どういう意味ぃ~~?」
女の子たちの奇声がうるさい!
我慢できず、雨の中……飛び出した。
途端に雨が上がる。
……マジ……で?逃げろ!!
【グイッ……】
手首をつかまれ、後ろに倒れそうになる。
風にのって、あの時の匂いがした。
「っ!!……へ……変態……??」
身をよじらせ、離れようとするが……奴は、手首を離そうとしない。
「……離せよ!!」
「嫌です。ね、俺のモノになって?」
…………。
モノ……者……物ぉ~~?!!
「嫌だ!!」
睨む私に、微笑んだ……
悪魔……何故か私の中で、……そう呼んだ。
「困りましたね。あなたに、拒否権なんてないですよ?」
「……あるよ!……お前、頭おかしいのか?」
「ふふっ。……かもしれませんよ?」
【ゾワゾワ……】
やばい……身の危険信号を察知する。
「……手、離して……放せぇ~~!!」
勢いよく回し蹴り……も、あっさり。足がつかまった!!
ピンチ……ピンチです!!
「くすくす……俺、足も……好きですよ?」
「……うっ……も、ヤダ……放して……」
情けない格好……情けない自分に、涙が……
悔しい、悔しい!!
「……すみません。意地悪すぎましたね。」
そっと、両手の力が緩む。
下を向いて泣いている私に……囁く。
「……泣き顔なんか見せられたら、もう……逃がさないよ?……くすくすくす……覚悟、しておいてね?こ・じ・か?」
……こじか……?今、私の名……!?
涙が止まる。……私は顔を上げた。
そこには、最高の笑顔で微笑む……悪魔が!!
「俺、松木 連歌。宜しくお願いします。ね、小鹿。」
「嫌だ!!夢だ、悪夢だ!!……宜しくなんて、しない!!かかわるな!!」
全速力で逃げた。
バス停2つを通り越し、走りながら……
絶対に手なんか取るものか!!……そう誓った……
逃げてやる!!
「おはようございます。」
爽やかな朝……
家の朝食に、奴がいた。
「……お母さん、私……まだ寝てるのかな?幻覚と、幻聴が……」
味噌汁を上品に吸い……
「おいしいです。」とか、愛想を振りまいている。
「いやぁ~~ん。男前の連歌くんに、そう言ってもらえると嬉しい♪明日も……いえ、毎日いらっしゃい!」
この、のんき者め!
「ありがとうございます。」
「……きさまも、断れよ!」
「……小鹿、言葉使いが悪いと……お仕置きしますよ?」
ムカッ!
何で、お前にそんなことをされなきゃならん!?
「ほう~~?例えば?」
訊いた私がバカだった。
「口を塞ぐなんて、方法は一つ……でしょ?」
……いや、いやいやいや!!
待て、エロく聞こえたのは……何故だ??
「いやぁ~~ん。お母さんも!当然、舌は入れてね?」
…………。
「……行ってきます!」
駄目だ、何か……周りから固められている気がする……?
気のせいだよね?気のせいだろ?!!
お父さんめ、今日に限って……出張だと??
……人の良い父は、アイツの言葉や態度に……絶対、騙される!!
あの、悪魔!!
「小鹿、先に行くなら……」
後ろから奴が叫ぶ。
当然、無視して歩き続けた。
「この下着、もらいますよ?」
……?下着……?
足を止め、恐る恐る……振り返る。
?!!
奴の手には、お気に入りのブラ……それ、セット……
まさか……まさか……?
「か、返せ!!」
しかも、こんな道の真ん中で広げるな!!
奪う私に抵抗なく渡した。……それが異様に怖い。
「……名前、呼んでください。」
「はぁ?ふざけん……っ……んぅ~?」
手を頬に当て、もう片方は腰に回され……逃げれない……
口は、奴の唇に塞がれている。
「ん~~んん~~!!」
口をしっかり閉ざし、抵抗する。
その唇を……いやらしく舐めた。
【ゾワゾワゾワ!!】
「……ぐっ……」
油断していた奴の横腹を、グ~パンチしてやった!
ごしごしと唇をこするが、舐められた感触が生々しく残る。
「くすっ……いい。」
気持ち悪い奴だ、お前はSだろ??
「小鹿、愛してるよ……」
何故だ?……何故、目をつけた?
「E70……か……」
奴は呟いて……ニヤリ。
……胸?胸なのか、お前の基準は!!
冗談じゃない。
「他に、胸の大きい可愛い子を捜してやる!だから……」
「言葉、汚いのは……嫌い。」
また鋭く睨まれる。
「…………。」
まさか、それで塞がれた……?
いや、待てよ!!手で塞ぐとか……違う、何でだ!!
あぁ……こいつに馴れてきている?
口を閉ざし、バス停に向かって歩く。
このとき忘れていることが……いくつかあった。
冷静でいると、錯覚したんだ……。
悪魔に微笑まれた……私……。誰か、助けて~~!?
隣では、機嫌よく本を読みながら、私の速度についてくる……悪魔。
こいつの名前……呼んだら、召喚したことになる?それとも、契約?
二度と、逃げられない??私……喰われるのか……?
朝、一緒に登校して……凄い騒ぎになっていた。
昨日の様子も、変に脚色されて……面白いなぁ~~?何て……
私が壊れていく!!
失恋を癒すゆとりも無いのか?
……女の子数人に捉まった。
「連歌くんを、どうやって落としたの?」
ニヤ……
これだ!!
「彼……胸の大きい子を捜してるの!誰でもいいのよ!!」
噂が広まれば、解放される可能性も?一石二鳥!!
予想通りに噂が広がり、奴は胸の大きい子に囲まれる。
くくっ……ザマ~ミロ♪これで、好みの子が現れれば解放される!!
「小鹿、連歌を好きなのか?」
席で、幸せに浸っていた私に……忘れていた現実。
「関くん。私が誰を好きになろうが、勝手でしょ?」
「俺、小鹿のこと……好きなんだ。」
「ごめん。同情なら、いらない……」
目を見たら、何となくそう感じた……。
「あいつだって、そうかもしれないぞ?……綺麗な子ばかり……好きになって。」
視線を逸らし、関君は教室を出て行った。
……今、何て……?綺麗な子……ばかり……?
いや、そこじゃない。同情……?
あぁ、泣いていたのを見られたな。……同情……か、そうか!安心した!!
何だ、言ってくれたらいいのに。分かりにくい奴だな。
安心したぁ~~だよな~~。
自分の噂と共に、興味本位で近づく女の子が別の噂を運んできた。
関くんの言っていた、綺麗な子たちの話。
一人目は、AYA……麻生学園と、姉妹校のマドンナ。
綺麗な……中3の女の子。小学6年から、年上……今、大学生の人と付き合っているらしい。
で、もう一人が大学生の胸の大きい女の人。しかも、美人で……色気たっぷり。
同い年の人と付き合っているらしい?
あんなに、(好みではないが)カッコイイのに……振られてるのか。
私の一回……しかも、付き合ったことがあるなら……まだマシか?
ちょっと、優しくして…………。
いやいやいや、駄目だ!
思い出せ、胸は触られ……揉まれ、キスまで……。
思い出したら、イライラしてきだした!!
……でも、失恋の痛みは……薄れてる。
同情……見知らぬ私に……いや、胸に?
あと、双子の弟がいるらしい。しかも、同じ顔……。
連歌は、デスマス口調で眼鏡。
草樹は、眼鏡なし……婚約者が3歳らしい??
意味が分からないけど、かかわるのは……なしだ!
しかし、この学園の中は平和だ。
時間は同じように過ぎていくのに、人それぞれ出逢い別れ……繋がっていく……。
連歌とも、もう関係ない。
同情はいらないと言おう。




