俺のもの!!
窓から出た俺は、道に迷った。
この、麻生学園……幼等部~大学までエスカレータ式。
寮や、いろんな施設があって……広い。ここ、寮の道か?
校舎が遠いな。多分、その向こうが校門。
傷心に響く。この学校から、すぐにでも出たい。
逃げたい……。はぁ……。
「嵐!逃げるなんて、卑怯だぞ!!」
【ビクッ】
……振り返る。閑が息を切らし、立っていた。
もう、報告か?早いな……。
【ザァ~~】風が俺たちを包み、流れた。
【リン……】小さな、鈴の音が聞こえた……?
「……突風か?……閑……え、どうして泣いてるの?目に、ゴミが入ったのか?」
目を押さえ、閑がうつむいている。
「ちが……嵐……嵐が、好きだ。」
………。
閑は涙目で、様子を見るように顔を上げた。
今……え?!
俺の顔が真っ赤になる。
「閑?お前、違うだろ?いや、え?待て、お前……劾はどうした?話、してないのか?俺も、閑が……友達……あぁあああ~~。」
言いたいことが、全部交ざる。
「嵐、私……あなたに負けてから、ずっと好きになってた。気づかなかったか?あなたの眼が、とても優しく私を見る。卑怯だ。好きにならないほうがおかしいよ!……返事は?私のこと、好きか?」
「……好きだ!!」
俺は閑を抱きしめる。
兄貴、手に入れたよ!共に過ごした時間は、無駄じゃ無かった……。
俺の時間、君は……俺といたんだ。
「嬉しい……。けど、劾はいいのか?お前、好きだって……。あんなに、情報聞いて嬉しそうだったのに?」
「ふふっ。初恋だ……終わったよ!」
「……いいや、あいつ……閑のこと好きなんだ!」
知らないんだ……
「うん。さっき聞いた。けど、もう嵐のことでいっぱい。劾は友達。大切だけど、運命の人はあなただ。嵐……それじゃ、ダメかな?」
「……閑……俺の、彼女?」
「うん!」
「キスしても良い?」
「……え?ちょ、手……どこを……」
俺は、大切な人を手に入れた。
この眼は、俺を見る。この唇が、俺を受け入れる。
「……んんっ……ん~~」
逃がさない!
放課後。
喫茶店に入る。
「いらっしゃいませ~」
閑を見つけ、駆け寄ろうとした足が止まる。
「嵐ちゃ~ん♪ここ、ここだよぅ~~!」
兄貴に……その他、多数が閑の周りにいる。
逃げたいぐらいに、嫌なメンバーだった。
兄貴・綾・麗季・ヒツジ・草樹・劾がいる。
周りの視線が俺を外に、逃げれない雰囲気に。
畜生ぅ~~。誰だ、こんな召集をかけた奴は!!
「あ、僕です。幸せなんか、簡単にあげませんよ?覚悟、してくださいね。麻生学園の力、すべてで阻止しますから!」
眼がマジだ。
「兄貴ぃ~~」
俺は、力なんて持っていない。
「無理。俺、麻生学園に雇われてるし!クビになったら、綾を養えないし?」
「あらぁ。そうなったら、嵐に責任とってもらおうかしら?」
「え?」
青ざめる兄貴。
「優貴、良かったね!」
「ヒツジも、一緒にクビだ!」
兄貴が道連れにする発言。
「あぁ、俺は行き先あるから。麗季、俺に一生……身を捧げてね?」
みんなの空気が固まる。
「ヒツジ……あなたが言うと、エロい。てか、嫌だ!身がもたないわ。嵐、今からでもどう?」
ヒツジが、引きつった笑顔で麗季を抱きしめる。
何を囁いたかは、想像できるが……麗季は、ため息を吐いただけ。
「器鈴は、留学したのか?」
「あぁ。婚約を迫っていた奴から逃げて今日、行ったよ!」
劾が偽装してたのは、そのためか。
けど、本当に……閑は……
「ね~。嵐、後悔してない?私が初キスの相手で!」
麗季が、俺に訊いた。
「言っただろ?後悔はしない!ヒツジ、羨ましいだろ?男からのキスは、麗季の初めてだろ?ふふん。」
ヒツジは、麗季に深いキス……。
「おいおい……。」
ヒツジは、涙目で麗季を連れて……店を出た。
俺が、悪者じゃねぇ~~か。
「さてと、俺は麗彩のところに行くよ。今日は、一緒に動物園の約束なんだ。」と、草樹が立ち上がる。
「じゃ、俺たちも行く?」
「くすくす……どこへ?」
「ふふっ……良いところ?」
大人な会話を、兄貴と綾がして……立ち上がる。
伝表を持って会計をしてくれた。ごち……
「さて、俺も帰る。閑?そいつに飽きたら、いつでも言って。俺が大事にしてあげるから。」
甘いセリフを、劾は残していく。
「劾、お前には……絶対に渡さない!閑は、俺のだ!!」
劾は、冷笑を俺に見せる。
きぃ~~!!憎らしい!
「劾、私……好きだった。大事な友達だ!」
閑には、優しく……多分、他には見せないだろう笑顔。
胸が……痛い……か。
二人になった席は、物凄く寂しい。
「……閑、どうした?」
うつむいて、目を合わせようとしない。
さっきの奴ら、面白がってたからな~。
「疲れたか?ごめんな、もうないと思うし……」
「……て」
……?
小さい声で、聞こえない。
「え?何、もう一度……」
「私もキス……私の初めて……うっ…………」
声を押し殺し、震えながら涙を零す。
やべぇ~~?
店から、手を引いて出る。
「泣くなよ。ちゃんと、話しよう?ね、どこで……」
【クイッ】服の裾を引く閑の顔が、赤い。
「……?閑、どこかいい場所ある?」
「ここ……」
指差すのは、ホテル。
………。
「ダメ!駄目です!!」
手を引いて、小走りに家まで歩く。
「閑、とりあえず……入って。な?話をしょう……。」
あぁ、あいつらぁ~~。覚えとけよぉ~!!
ドアに手をかける。【ガチッ】
………。
鍵?まさか、誰も……いない??
俺は、閑を見る。
閑は俺を、涙目で見つめる。
すり寄って「入れて……」と。
ぎゃぁ~~。駄目ダメだめ!!駄目だ、今……家に入れたら!
俺は、携帯を取り出す。
兄貴に電話……?メールが2件入ってる。
『父母より♪今日は、帰りません!』
『兄より。俺も、帰りません♪くすっ……』
「……入れてくれないんだ。……もう、別れる。今から、劾のところ行く。……慰めてもらう……。」
……ぐっ……
「閑……あのね……?」
説明しようと、両肩に手を置く。
「……好き?」
頬を赤くし、涙が……綺麗に零れる。
「……好き……。けど、その……」
「一緒に……いたい……な?……お願い……」
上目で、お願い……
「……うん。一緒に……いたい……ね。」
俺の部屋。
「落ち着いた?」
「麗季さんって、綺麗だね?」
ぐっ……ヤキモチ?
「あぁ、綺麗だな。」
悲しそうな目で見てくる。
不安を隠せない……そんな感じだ。
「閑?俺が、同じように劾のことを気にしてるって……知ってる?」
閑は、俺を見つめ……微笑んだ。
理解してくれたんだ。
「同じ?」
「同じ……。いや、同じじゃない。麗季にはヒツジがいる。」
けど、劾は……今度は、俺が落ち込む。
「ごめん……。嵐、キス……して?」
頬に手を当て、閑からのキス。
「閑……好きだ……俺の、大切な人……」
俺は、キスを返し……何度も……深くしていく。
自然に、閑を床に導く。
お互いに息が切れ、閑は俺の求めを受け入れる。
「もっと……。いいよ。全部、初めてをあげる。だから、麗季さんより多くの初めてを受け取って……。」
「……閑……もう、もらった……。幸せ、通じる心……俺だけの……俺に向けられた眼……閑の温もり。匂い。はぁ……ダメだ……。我慢できない……。閑……」
「嵐……良いよ。我慢しないで……。幸せ……ね、もっと……キスして。触って……温もりを頂戴……」
「はぁ……煽るな……。大切なんだ。……大事にしたい……閑……閑……愛してる」
「嵐……」
「嵐ちゃん♪昨日は、一人でお留守番だったのかな~?」
学校に、兄貴がわざわざやって来て、訊いた。
イラッ!
「そう、一人淋しくお留守番だ!」
「いやぁ~~ん。嘘よぉ!だって、何か色気が増してるわ。ね、たまには相手してみない?」
綾の眼が、少し……怖い。
「な、綾?俺じゃ駄目なの?」
「……。そんなこと、ないよ?」
「その間は何?綾、本気出すよ?」
イチャイチャ……と。
俺はこれから告白されて断るとしても、胸の痛みはないだろう。
偽装のときより、楽だ。
本当の、俺の彼女。閑しか目に入らない。
「けど、あの劾クン……。かっこいいよね~~。何でも、出来るのって……良いわね。ふふっ。」
「あんまり、兄貴をいじめるなよ?」
「え?今のは、嵐をいじめたつもりなんだけど?」
サラッと、綾は真顔で何を……?
劾が気にならないと言えば、嘘になる。
あいつは何かを背負い、誰かを待ってる。過去の俺と、同じように……相手を探している。
もう、それが閑ではないのが分かる。
けど、あいつが何も言わないから……気づかない振り。
秘密だ。
「優貴、任務ですよ!リーダーが呼んでる。遅れると、セクハラだって!」
「げっ。草樹、マジ?」
「あ、嵐。おめでとう……。くすくすくす……。ふふっ。」
天使の微笑で、その腹黒い含みは何だ?
「草樹、お前の相手は……あの子なのか?」
この間、下校中に見かけた。
麗季と同じ綺麗な……小さな女の子。
まるで、親子か兄弟のように……仲良く。
頬にキスをし、愛情の眼を向けていた。
「ふふっ。俺の、大切な人です。遥か……未来……。選ぶのは……」
草樹の声は、小さくなり……消えた。
「草樹、行くぞ!」
「はい!じゃ、またね……」
選ぶのは……彼女……。
一緒の時を過ごしたのは……無駄ではない。
兄貴の言葉……あれは、草樹に言い聞かせている言葉なのかな?
でも、俺との会話……。誰にも……秘密。
そうだな……二人が、結婚するときに……相手の子に教えてあげよう。
ふふっ。草樹に秘密で……。
麗季……確かに、見つけた。俺の……俺だけの大切な人。
……本当を言うと……閑に泣かれたとき、後悔した。
ファーストキスを、君としたこと。
でも、秘密。ヒツジが嬉しそうな顔をしたら、悔しいから。
俺は、ヒツジが本当は気に入ってるんだ。
本人は、気づいてるかもね。けど、これも……秘密。
そして最大の秘密。
閑……俺……君を追い詰めるのが……
「嵐。何、ニヤニヤしてるんだ?」
「幸せだなって……ふふっ。」
君を追いかけたあの日から……俺の心は知っていた。
俺の相手が……君だと。
「閑、試合しようか?」
「うん!本当?嬉しい。」
可愛い顔で、俺を見る。
苦しそうに、俺を求める顔も……好きだけどね。くくっ……
「にゃっ?!何か、寒気が!!」
勘の良い。
俺的には、子犬のイメージなんだけどな?
「で、いつする?」
「ふふっ。楽しいね……。ね、勝ったら……お願い聞いてくれる?」
「……う……ん?」
何かを感じ取った君の顔も……好き。
さぁ……勝ったら、どんなお願いを聞いてもらおうかな?
「……Hなのは、ダメだぞ?」と、小さな声。
「聞こえない。何か、言った?」
顔を真っ赤に「バカ……」と口を尖らす。
その口にキスをする。
秘密の恋嵐……
「あぁ~~あ。ちょっと、あいつも本当は“おおかみ”じゃないの?はぁ……閑を奪われたよ。もう少し、待とうと思ったら……はぁ。」
「劾、けど……分かっていたのでしょう?」
「草樹も、意地悪だよね~~。天使の微笑で、キツイ。」
「あなたは嵐を『風の通路』に誘い込んで、運命の人を知らせた。きちんと、役目を果たされました。」
「俺の役目だからね……」
END




