恋・失恋?!
鼻に、ティッシュを詰め……学校に向かった。
はぁ……欲求不満なんだろうか?
夢で、閑に手を出すなんて……。昔の俺じゃ考えられないな……。
麗季にキスするのも、必死だった。
この間は……感情が無く、ただ……綾のときと同じ。
ただ、調子に乗っただけ。ヒツジをからかいたくて……。
はぁ……。今日、会うのが……恥ずかしい。顔を見れないかも……
「あの、嵐先輩!お話ししたいんですけど……」
顔を赤らめ、うつむく女の子。
「……何?」
「……彼女、いるって知ってます!あの、でも……言いたくて……知って欲しくて………好きです!」
「ありがとう……。ごめんね。」
女の子は、涙目だが笑顔で去っていく。
君も、ふさわしい男がきっと現れる。俺のことは、忘れたほうが良い……。ごめんな……
校門の前に、女の子の集団。
……?
「邪魔、退いて……。用事あるのは、君たちじゃない。」
キツイ言葉、低い低音の怒った声。
あぁ~~あ、怒らせたのか……。集団が、一斉に散る。
あれは、さすがに無理だな。
「……多河 嵐さん?」
通り過ぎる俺に、名前を呼んだ。
振り返る……
劾……?実物は、思った以上にカッコイイ。
男の俺でも判る……ムカッ……
「時間を、頂きたいのですが。」
質問じゃなく、依頼か……。
「……良いよ。何?」
「閑のことです。」
だろうね。
「で?」
俺は、素っ気なく対応した。
何か苛立つ……育ちも良いのだろう……雰囲気や話し方が、気に入らない。
「付き合ってるんですか?」
お前に、関係ないだろ?と……言ってやりたい。
「あぁ、付き合っている。お前は、閑の何?何がしたいの?」
こいつには、彼女がいる。閑の幼馴染……確か、器鈴だ。
「俺は、閑の……友達だ。あいつは、今まで……誰とも付き合ったことが無い。いつも……俺に相談していた。それなのに、俺に相談もなく……本気なのか?」
必死で、俺に詰め寄る。
何だ?胸がチリチリする……イライラする。
「お前のことなんか、俺が知るか!!閑は、俺のものだ!!」
言い方が……悪かったのか?
俺は、柔道の技で劾に投げ飛ばされる。もちろん、受身を取り着地!
「……はぁ……喧嘩、買おうか?」
「……売ります!」
火花が散る俺たち。
【ゴッ……ゴゴン】俺たちの頭にゲンコツが落ちる。
「……っつぅ~~」
間に先生……?
「て、草樹かよ!!」
【ゴンッ】もう一発。
「いてぇ~~。畜生ぅ!て、俺を殴ったの右手じゃねぇ~~か!」
「痛い……です。」
こんな時まで、敬語かよ。
草樹は、何だか嬉しそうな顔。
「何か、良いよね。その口調……俺の兄貴に近くて……ふふ。ごめんな、痛かっただろ?さ、こんな野蛮な奴に係わったらいけませんよ~~。」
だと??
草樹は大学生で、兄貴の任務のパートナーだ。
「草樹、俺の警護はいりません。それより、嵐と知り合いですか?」
嵐ぃ~~?
「はい、場所を移しましょうか?観客がいっぱいだからね~。」
周りに、すごい人。ほとんどが女だった。みんな、顔が赤い。
……あぁ、草樹も劾も……男前。女は、そういうのに弱いなぁ……。
けっ……嫌気がする!!
「さ、行くぞ。嵐?」
「うるせぇ!!」
畜生ぅ~~。俺の顔を褒めるのは、どうせ……綾ぐらいだ。
はぁ……何か、やる気がない。帰りたい……。
部室棟のほうに歩いている。
多分、任務で使っている部屋に行くんだな。
俺の前を、草樹と歩く劾。
……こいつ、まさか……本当に嫉妬で来たのか?
『今まで……誰とも付き合ったことが無い。いつも……俺に相談していた。それなのに』
感情的で、敬語じゃなかった。
いつも、俺に相談だぁ?けっ!!バカじゃないのか?俺からすれば、綾だってそうだ!
何でも、俺に相談してきた。けど、兄貴と付き合って……兄貴にすべて話す。
……淋しいけど、付き合ってるんだ。当たり前だろ?
俺は、綾に内緒で……兄貴に喧嘩なんて……。
兄貴じゃなかったら?
……綾が、俺の相談もなく……知らない男と……内緒で付き合っていたら?
どうする……?
綾には、仕返しする。そいつに会わせてもらう。相手によっては……
麗季の時……俺は、怒りに任せて……告白した。でも、小学生の時だ。
じゃあ……こいつは?何故、ここに……来た?彼女がいる。
……まさか、本当は閑を……好き?それを自覚したら?
……俺たちの関係は……崩れる。
偽装は出来ない。閑の気持ちが……通じるんだ。
俺は、協力すると約束した……。
「……し。嵐!……大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「話ぐらい、聴いてやるよ!」
……取られたく……ない。叫んだとおり……俺のだ……。今は……。本当に?
隠れた一室に入る。
会議室のように、設備が整っていた。
イスに座る。
「で、君の名前は?」
名前を知ってるが、そのことを劾は知らない。
知られてはいけない……閑が、劾のことを知りたがっているなんて。
絶対に、教えない。……くそっ!!
「神成 劾。麻生学園 高等部2年。閑の遠い親類……長年の友達です。」
「ふぅ~ん。知ってる?友達より、彼氏のほうが上なんだよ?」
「……っ!……上とか、今は……ぐっ。」
勝った!
草樹のため息が聞こえたが、無視。
嫉妬なら、確かめないと……。
協力するかは、こいつの態度次第。多分……。
「で、俺は不合格?理由は?閑の気持ちは無視する?」
意地悪だな……俺も。俺、人に……こんな言葉……言ったことない。
だから、兄貴は俺のことを可愛がるんだ。なんて、自惚れてみる。
「……本気なら……いい。俺は、閑が幸せなら良い。気持ちは、隠さないと……関係が崩れる。」
………。
今……何て……?
胸が……痛い……。切り刻まれるようだ。
「……好き……なのか?お前、彼女……いるんじゃないのか?」
「いません。閑にも内緒です……。付き合っている振りです。」
こいつも、偽装の彼女……?
嘘だ……待て……気持ちが追いつかない……。
俺が、嫉妬で狂いそうだ。
嫉妬……?違う……っつ!!言葉が出ない!!
「嵐さん、すみません……。閑を、宜しくお願いします。俺が、ここに来たことは内緒にしてください。」
頭を下げ、部屋から出て行った。
引き止めなきゃ……でも、体が……動かない……
涙が零れた。
「草樹……どうして、黙ってる?……言えよ、お前が……本当のこと……教えてやれよ!!」
「……俺は傍観者。手助けはするが、邪魔はしない。幸せを見たい。……俺の幸せは、遥か未来。あるかどうかも……わからない。嵐……まだだ……まだ、君は大切なことに気づいていない……。」
俺の気づいていない気持ち?
草樹の相手は、今……4歳。遥か未来……。
閑……お前は、両想いだ。
教えてあげないと。気持ちは、通じてると……。
俺は、大丈夫。告白されても、断る。
もう、自分が傷つくからって……誰かを巻き込まない。
……俺の隣に……君は相応しくない。俺は。
俺の気持ち、今更だ。好きになってた。俺に向けられたのではない、君の笑顔に……
劾のことを、嬉しそうに……目を輝かせ。
可愛い……愛しさが……こんなに大きくなるなんて……。
まさか……いつから?
……キス……あの時から……だったかもしれない?
閑……俺は、恋愛音痴かな?
他の誰かを好きな女の子を、また……好きになるなんて……。
バカだ……。気持ちは止められない……思い通りにならない。
悔しい……閑が好きだ。
明日……閑に教えないとな。俺……また、振られる。
涙が零れた。
しばらく……また、一線を引くのか?繰り返す?
俺の特別な一人を捜して……。
【コンコン】
「……嵐……。」
俺の様子がおかしい事に、いつも気づくのは兄貴。
「兄貴……」
電気もつけていない、この暗い部屋に静かに入ってくる。
簡単に情報が手に入る任務……俺のことを聞いた?劾の情報か……
ベッドの俺の横に座り、俺の肩に手を置く。
「神成……名前を聞いたとき、お前に言った。頑張れよ……って。覚えてるか?」
確かに言っていた。
「あぁ……」
「神成は、特別だ……。けど、選ぶのはその女の子。どれだけの時間、お前と過ごした?」
「……あいつの心に、俺はいない。微笑むのは、俺にじゃない。俺が、一番よく知ってる。ずっと見てきた……」
そう……いつも、“劾”……嬉しそうに話す。
「兄貴、振られたらさ~。綾……ちょっと貸して?」
「ダメ!」
「くくっ……。何でだよ?」
「最近、あいつの……お前を見る目が違う。俺は、お前に取られるんじゃないかと……ハラハラしてるんだ!……こほっ。ま~、お前は俺に似て?十分、魅力的な男だよ!だから、女の子が告白して来るんだ。俺なんかより多いし!」
慰めてくれてるんだな。
「嘘つくなよ。知ってるぞ!クールに相手にしてなかったくせに。綾には、あんなに甘くて……バカみたい。」
「……ぐっ……好きになったら、そんなもんだ。お前だって、必死で告白しただろ?……今回も、頑張れ。傷つくことを恐れるな。……伝えろ……。でないと、もっと……気持ちが続いて苦しい。そんな姿は、見ていられない……」
その日は眠れなかった。
次の日の放課後……。
麻生学園の剣道場へ向かった。
「どうした?待ち合わせは、図書館だろ?」
突然俺が現れたからか、閑が嬉しそうにやって来た。
子犬が、おもちゃを見つけたように……走って。
俺の前に、シッポを振ってる子犬……。
あぁ……撫でたい。いや、めちゃくちゃに……
「……?」
首を傾げる素振りが、なんとも言えない!!
はっ!目的を忘れるところだった。
「……閑、劾と試合がしたい。……今日は、無理かな?」
「……劾と?面白そうだ!待てよ、ちょっと連絡するから。」
携帯を持ち、嬉しそうに……女の顔。
「あ、劾?あぁ、道場だ。え……あぁ。えぇ?!……分かった。」
……?
俺のことを伝えずに、電話を切った。
閑は、不思議そうな顔で俺に視線を向ける。
「劾、今来るって……」
草樹か……?それとも、別の……誰かから、俺のことを聞いたのか?
まあいい。来るってことは、諦められないんだよな?
閑を好きな気持ちが真剣なんだろ。
それは、俺だって一緒だ!
「着替えるから、来たら伝えて。あいつも、着替えるだろ?その間、誰かを練習相手に貸して!」
俺の言葉に、閑は目を輝かせる。
「私!」
「お前は、ダメだ!」
絶対に!!
劾が到着し、着替える間……俺は体を動かす。
閑より……強い。ここの部員より、強いだろう。
……負けたくない!せめて、これだけでも……勝ちたい。
「嵐、俺……手加減しないよ?」
ムカッ!
「劾、お前……。いや、いい!真剣勝負だ。」
「はい。」
向き合う。
構え……圧倒される。強い……神経が張り巡らされる。
ちっ……じいちゃんを思い出す。勝てるか?
すうっ……息を吸い、止め……攻撃に出た。
何度か、交差する竹刀。
鋭い目が俺を睨む。
好きな女を、俺に取られたと……?
これから、取られるのは……俺だぁ~!!
【パシッ】
「一本!」
俺の面が決まった。
「ふう……。劾、閑を……頼む。俺たちも、偽装だ。……うまくいったとき……告白させてくれ。勝った賞品ぐらい、くれよな?」
「……嵐、待ってください!!」
俺は、更衣室に入り鍵を閉め……着替える。
鍵をそっと開け、窓から逃げた。
……閑……想いは、通じただろうか?
いい報告が聞けたら……俺の気持ちも聞いてくれ。
また、麗季のように……優しく振ってくれ。
もう、その後は……会うことも無い。
久々に、楽しい試合だった。なのに……涙が零れる。
畜生……男が、簡単に泣くものじゃない。
閑……




