秘密!
多河 嵐。太西学園 高等部 二年生。
つい最近……付きまとう女が、一時的に減った。
理由は、兄貴の彼女……福本 綾が俺の彼女だと言ったから。
綾は、モデルの仕事をしたことがある。(一度だけ断りきれず。)
小学校の時から、ファンクラブまである。
その当時、校内新聞でカラーの隠し撮り特集も……。
今は、ファンクラブが減った。俺の兄貴が、お手柔らかに潰していって……少ない。
ま、ブラコンの俺が言うのもなんだが、兄貴はかっこいい!
頭もいいし、回転もだが……人の中が読めるんだ。観察力が鋭いってこと!
後は、怪我さえしなければバスケの才能もあって!強いし!特別な任務ももってるし!!
あとはあとは……
「嵐。何、興奮してるの?」
おっと、自分を見失うところだった。
「綾、何か用?」
綾とは同い年で、小学生のときから一緒。
綾は、小学6年の時から……5つ年上の兄貴と付き合っている。
「何か、用……?ですって~~。おおありよ!!いい加減に、私をダシにするのは止めて!」
女よけに、彼女に仕立てたが……ご立腹だ。
「綾。家に泊まったこと、母さんにポロッと言っちゃうかも?」
綾は、ぐっ……と言葉を詰まらせる。
うしし……しばらくは、これでしのげるかな?
「……言えばいいわ!その代わり、優貴に言いつけてやる!!」
……ぐっ……今度は、俺の負け。
俺たちは、お互いに睨んで……火花を散らす。
「ほら、本当だって……」
「いやぁ~~。綾が相手なんて、敵わないよ~~」
遠巻きに、女の声。
お、まだ効き目ありか……?
「嵐!!」
放課後。俺は、姉妹校の麻生学園に向かった。
剣道部の道場、練習試合に応援……のはず?
いつの間にか、着替えが済んで試合に臨んでいる??
「始め!」
……あぁ、はめられた……。
兄貴のバカ野郎……大好きだ!!
「一本!」
大将に勝ってしまった。
はぁ……ため息を吐く。
「おい、お前!」
さっき試合をしていた男……?
綺麗な顔……
「部員じゃないだろ!」
……?声……低いけど、女?
「あぁ、悪かったな……。俺も、騙されてここにいる被害者なんだ。許してくれ……」
律儀に頭を下げる。
俺のじいちゃんは厳しい人だった。剣道も、亡くなるまでじいちゃんが教えてくれた。
大好きな、尊敬する人……兄貴より好きだった。(今は、兄貴が一番!)
「人の話を、聴いているのか!」
竹刀を、胴に目掛け攻撃される。
当然、竹刀で交わし……払い退ける。
「くっ……」
女に、攻撃は(反撃でも)しない。
「名を名乗れ!」
ふっ……面白い奴だ。
「多河 嵐。」
「私は、湖凪 閑。麻生学園 高等部二年生だ。一週間後、再試合を申し込む!!」
……熱い女だな。面白い……くくっ。
「イ・ヤ・だ!」と、方向を変えて更衣室に向かった。
さぁ、どう出る?
更衣室に入る。防具を外し、剣道着を脱ぐ。
【ガラッ】……ドアが、勢いよく開いた。
「………。」
「………。」
【ピシャッ】ドアは、閉まる。
袴があっただけましか……女じゃないし、胸を見られたが……減らないし。
けど、あいつ……くくっ。気に入った!
設備の整った更衣室に、シャワー室がある。
汗を落とし、着替えを終える。本当は、こんな予定ではなかったけれど……
更衣室を出ると、太西の剣道部員が並んでいた。
「嫌だ!」
部長が俺にしがみつく。
「まだ、何も言ってない!!」
「誰に頼まれた?いや、頼んだのか?俺が、兄貴に弱いと……誰が言ったのかな?許さないよ……。」
顔は、笑顔のツモリ。
本当は、そんなに怒っていないが……。今後、同じことをされると困るし!
「AYAちゃんが、お願いって言うから……。」
AYA……とは、綾のこと。漢字がアヤと読めるから、ファンクラブの人間はそう呼んでいる。
怒りが、込み上げる。綾、帰ったら……覚えておけよ?
「どんな、お願いなんだ?え?」
「いや……その、嵐がこんなに強いと思わなかったから……。お願いされたのは、気晴らしに誘ってあげてと……だけで。」
あぁ、付き合っているという噂の所為か!!
「赦さない。」
視線……?
道場の入り口に、隠れるように……顔を真っ赤にした閑がいる。
いい事を思いついた。犠牲になってもらおう!
「俺、用事があるので!」
まとわりつく男たちを押し退け、入り口に向かう。
閑は、俺が近づくのに気がついて……逃げた!
逃がさないぞ、獲物め。俺から、逃げられると思ってるのか?
……追いかけるのも、楽しいな。何でだろう……?
結構、足……速いな。
けど、本気ではない俺は……追いかけるのを楽しんでいた。
人気の無い庭園に出る。
息が切れる閑のスピードが落ちる。……いじめすぎたかな?
手首をつかんで、引き止める。
「……はぁ……はっ……」
俺の腕の中へ寄りかかるように、閑がよろけた。
【ドク……ン】
いい匂い……?汗をかいているはずなのに、甘い匂いがする。
これが……
「離……せ……」
頬が火照って、息が乱れ……俺は、何かに誘われるように……キスをした。
「……ん……?」
一瞬の強い力で、閑が抵抗したが……走りつかれていたのか……続かない。
柔らかい……
っ!!
我に返って……唇を離す。
閑は……驚いた眼。俺も、驚く……自分が何をしたのか……。
「~~!!」
【バシッ】体力が戻ったのか、平手は痛かった……。
結局、エモノには逃げられたな……。
何だろう、今までにいないタイプの女。あいつなら、強いし……。
学校が違うから、この学校の女にいじめられることもないか。
丁度いいんだけどな~~。剣道部には、入りたくないしな~~。
俺は、閑を掴んだ手をじっと見つめていた。
「何、手なんか見つめて……いやぁ~~らしぃい~~。」
家に遊びに来ていた綾。
「……襲うぞ……」
「いやぁ~~ん。若かりし頃の優貴を思い出すぅ~~」と、抱きついてきた。
冗談だとは、分かっているが……
はぁ。何故か、感じないんだよな。俺、おかしいんだろうか?
いつもは、軽く受け流すけど……ちょっと、試してみたくなった。
腰に手を回し、持ち上げ……ベッドに寝かせ……そのまま、俺の重みをかける。
【ビクッ】反応?
「ちょ、嵐……冗談……いや、ちょっと……待って……」
お、何か可愛い。
首元に、唇を当て……滑らせる。
「……んんっ……」
やばっ……このままいくと、止められない。
【ゴチン】ゲンコツが、頭に落ちた。
「あ~ら~しぃ~~?」
怖い、兄貴の声。
「痛い……」
綾から、体を退け……立ち上がる。
「綾が、悪いんだぞ!」
「……あぁ。後で、お仕置きだ……。」
綾は、涙目で……ベッドに座って……兄貴を見つめる。
「……ぐっ……そんな、可愛い顔してもダメ!あぁ~~、畜生!!」
なんて、言いながら。
綾を抱っこして、隣の部屋に連れて行く。
……ちっ、コンビにでも行くか!
全く……。壁は階段のおかげで薄くはないが、想像しそうだ。
知らない間に、隣でするのはいいけど……。気を遣うぜ。
彼女かぁ~~。はぁ……
興味ないわけじゃない。
さっきだって好きでもない綾と、危うくなりそうだった。
体と心は違うのか……?
綾、いい匂いがしたなぁ。柔らかいし、感じて……て、ダメだ!!
友達を、そんな眼で見ちゃ!!
「嵐?久しぶり!」
この声は、麗季……俺の初恋の人。
「よぉ。……て、ヒツジ……お前も一緒か?」
ニヤ……俺は、近づいて麗季の両胸を触った。
「………。」
冷たい目で、麗季は俺を見る。……感じないらしい。
「これは、俺のだ!!」
ヒツジは、威嚇しているが……。
「……ちっ、つまらん。」
「……嵐、彼女作れば?」
ヒツジに抱かれ、胸を触られているままの麗季。
「ヒツジ、痴漢で警察呼ぶぞ?」
自分のことは、棚にあげ……
「麗季、そんな狼やめて俺にしとけ!」
「ふふっ。ばぁか!」
最高の笑顔。
あぁ、まだ……好きだ。小学6年の時から、俺は……動けないでいる。
君の言葉が……今も、胸にある。
「嵐……」
麗季は、少し悲しそうな顔になる。
やべっ……心配させるようじゃ、まだ……子供だな。
二人は、大学生……年の差は、縮まらない。
「……嵐!!ここで会ったが100年目だ!!」
……?何か、古い台詞だな。
3人の間に入りこんだのは閑だった。
くすくすと、笑う麗季。
不機嫌なヒツジは「絶対に、お前にはやらない!近づくな!」と、捨て台詞。
二人は、仲良く歩いていく。
俺は、閑を忘れ……見送った。
「……初恋の女性か?」
「あぁ。綺麗だろ?」
「……ふん。どうでもいい!再試合をしろ!」
くっ……こんなところまで、試合かよ?
「……そうだな。俺が勝ったら、お願いきいてくれる?」
「あぁ!」




