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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
2ヴァンパイアは何を欲すか

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『パンドラの箱』


水晶球は、洞窟の広い空洞の場所へと運んだ。

中央に、腰の高さの台。私の力『緑』が王利を包んでいる。

回復には、血の方が良いかもしれない。

台に王利を寝かせる。

「緑よ。右手に還れ……」

この力は、多分……

「うぅ……はぁ~、李央?ここは?一族に、何もされてない?」

「……うん。見て、アザが完全な形になったわ。時に急かされて、洞窟に来たの。……李央、君……」

【チュッ】私からの二度目のキス。

『契り』だ……

「ははっ、やっぱり……君だったんだね。情けない……契った相手も分からないなんて。」

「うぅん。分かったから、私を選んだのよ。ね、時が来るわ……飲んで、私の血……。」

「……どこがいい?俺的には、首が嬉しいな。」

「……えっち……」

服のボタンを外し、肩まで服を脱ぐ。

「白い肌、いい匂いがする……」

唇が近づいて、舌が優しく舐める。

「……んっ……」

軽い痛みの後、牙が入り込んだ感覚だけを感じる。

「……はぁ……」

ゾクゾクする……

力が入らなくて、王利に身を寄せる。

「……色っぽいね。限度を忘れそうだ……」

「王利、あなた……私の初恋の、りど君なのね。」

「初恋?ふふ……俺は、あれから苺飴だけを食べてたよ。」

「お父さんは、一族に殺されたのね?」

「過去を……見たの?」

「……母と、殺されるかもしれないと会話していたわ。」

「……ごめん。護ってあげれなかった。」

「それより、あなたの見た未来は……」

王利は、私を抱きしめる。そして耳元に囁いた。

「……愛している。君を失ったら、生きていけない。もう、これ以上……失うのは嫌だ。一族も捨ててもいい……」

王利は、何を見たんだろうか?

「……王利、私の心はあなたにある。好きよ……愛してるわ。」

優しく重なる唇は、やはり甘く……幸せで……心が満たされる。

手に入れたんだ……この人の心を。


『君が、最後に選ぶのは……俺だ。苦しむといい……選んだ選択。これから過ごす時間。深まる愛に……苦しめばいい。』

早助の声が響いた。

あの時と同じ台詞……

「早助……いえ、改。時は来た?一族の時間を急かすような接触。」

「……ふふっ。君の『緑』に、一族の集合体は分散したよ。滅ぼすのは、やはり魔女なのかな?」

彼の手に、小さな箱がある。それを、そっと開けた。

「さぁ、選択の時だ。選んで、君の心にない俺を。ふふっ。君は、俺の手を取る。」

「取らないわ!私の心は、王利にあると分かってるのに……」

「だから、だよ。君は、その血が知る。時は、待ってはくれないから。」

「王利、どうして黙っているの?」

「見たんだ。未来を……見るんじゃなかった。これから何が起こるのか分からないのに、君の最後の選択が俺を不安にさせる。」

王利の見た未来は、私が彼を選ぶと言うの?

【チクッ……】

「痛い……」

右手の甲に小さな痛み。それがどんどん熱を帯びる。

「時の犠牲の魔女に、なるのかな?王利、選べ……これから、彼女は『最後の魔女』になる。時の犠牲……君は、知っているね?君たち一族を養う餌だ。命を懸け、捧げる……」

「この旅は、伝説の苺飴を手に入れることが目的だろ?何を……嘘だ。李央、もういい。君は、役目を放棄するんだ。その水晶球で百を救いに行こう。元の世界に帰してあげる……」

王利の必死な顔。

ここから出ようと、私の手に触れようとした。

【バチッ】魔方陣が広がり、王利を跳ね除ける。

「王利!!」

「李央、何があっても彼を選ばないで。約束して、お願いだ!」

約束したい。だけど体の血が熱く、何かに駆り立てられる。

私の意志に関係なく、右手の甲のアザが浮かび上がった。

涙が溢れる。

自分の役目が、自然と頭にあるから。


改は、両手に箱の中身を出し……私に見せた。

中央に輝く『聖花せいか』それを包む『光』その周りを三色の輪『イリス』が封印している。

「『闇』よ、『光』を呑み込め。」

私の『闇』と、封印の『光』が消える。

「……改。酷いわ……あなたの手にあった花。あれは、私……私をあなたは……あの時から手中にあることを示した。足りない……解放できない。」

「そう、君は『イリス』を消すことが出来ない。『最後の魔女』になるには、俺の手を取るしかないんだ。」

「卑怯だわ……彼のために、あなたの手を取るしかない。」

「そう、彼の手に入れるものは……君か、一族より大きく比べ物にならない、この世界と向こうの世界の秩序。ね、君は……俺の手を取る。今までの幸せを思い出して……苦しむのは、時の犠牲。」

「……王利……愛してるわ。愛してる……」

「早助、君を赦さない!彼女は、俺のだ。選ぶのは、君かもしれない……けど、心は俺のだ!!」

「……俺は、改。時の犠牲……選べ。一族の解放か、李央の命か……俺は、どちらでもいい……李央の心は、変わらないから。」

きっと、王利の見たのは今の状況なんだ。

「……王利、ごめんね……ごめん。」

悲しい……

「入り口を、百に……閉じて。お願い……未来の為に……信じて……欲しい……」

水晶球を、王利の方に転がした。

「幸せを犠牲にするわ。改、あなたの『水』で『イリス』を呑み込んで欲しい。」

「うん……じゃあ、李央……『緑』を『聖花』に捧げてね。君の命と引き換えだ。さ、手を……俺の、手を取って……」

差し出された手……心は、そこにはないのに……

「李央、この世界も秩序もいらない!君は、犠牲にならなくていい。お願いだ……俺の手を取って欲しい。もう、失うのは嫌だ。俺たち一族が、犠牲になるべきだ。魔女を追い詰めたのは、俺たちなのだから……」

王利は、弾かれる結界に触れ続ける。

魔方陣は、力が増していく。

「いや、止めて。離れて!!嫌だ……傷つけないで。彼を死なせないで!!」

必死で、王利に手を伸ばす。

「……駄目だよ。その手を取ったら、すべてを失うよ?」

「構わないわ!彼を失ったら、すべてを消してやる。」

体がボロボロになりながら、私に手を伸ばしていた王利は意識を失う。

「いやぁ~~!!」

魔方陣が消え、彼の元に走り寄った。

私は彼を抱き寄せ、彼の手に触れる。

「……王利……王利!!」

私は、彼の手を取った……。


「くすくすくす……。時間だ。『イリス』よ、この『水』に還れ。『聖花』……俺の、愛しい人の温もり。君の求めた願いは、ここにある。時が来た……新たな時の犠牲の誕生に、行け……俺の手を取る彼女の元に。彼女が『最後の魔女』……」

『聖花』は、色鮮やかな赤色を放ち消えた。

「……さて、ここでの最後のお仕事だ。李央、君は『最後の魔女』じゃない。」

改は、私にニッコリ……穏やかに笑った。

「君の緑……その花の実。『緑』は、『苺飴』の代わりになる。いや、血を求める病気の治療薬だ。一族で、栽培するといい。成長までは、昔と同様……魔族の下級の血を吸えばいい。何か、質問があるかな?」

「……終わったの?」

「うん。君の手も、欲しかったのは本当だよ?嘘じゃない。時間だ……さようなら……」




エンディング


昔々、この世界『スピニロブ』。異世界から来た少女二人の物語。

一人は、モモ。魔法の鏡に身を捧げ、愛する者との時間を犠牲にした。

そして、伝承の『水晶球』を手に入れたリオ。

彼女の命のカケラで、パンドラの箱の中身を必要としない一族。

『緑』その実で、病を癒したから……。

ヴァンパイア一族の手に入れられなかった魔女との幸せが、解放した。


リオは愛する者と、待ち続けるモモの許へと急ぐ。

再び、ガラス水晶は魔法の鏡を割って解放した。

リオは、一族に留まり子孫を残す。

モモは元の世界に帰り……愛する者と共に、そこに子孫を残す。

それぞれの世界の秩序は、保たれているかのように見える。


『最後の魔女』が『聖花』をどうするのかは、また未来の話。

物語は続く……時を巡るように……。



END

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