表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
2ヴァンパイアは何を欲すか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/71

別れ道


夕暮れに、魔物対策で一晩その家に泊まることになった。

会話が極端に少ない。

「李央、百……その隣の部屋は、二人で使って。俺たち3人は、この広いところで見張りを交代でするから。」

王利の不自然な視線。

「……分かった。王利、旅に響くから言うね。……信じるわ……」

「……うん。」

複雑な笑顔……よね。何を……か、言っていない。

言葉に出来ない……


「お腹がすいた♪」

食料は予備があるけど、旅の私たちに……2人の満腹は無理だろう。

〈 love.happyエスト 〉百の、訳の分からない呪文で……机の上に大量の料理。

「さぁ、腹が減っては戦が出来ません!!食べよ!!」

百……あなたの魔法……どんだけ??

緊張も、ほぐれた気がする。

食べ終わった王利と流烏は、別の机を囲んで会議を始めた。

「明日、鏡を見つけに行こう。流烏、人の姿で先に出て。王に許可を取って欲しい。」

「はい。王利、割れたとは言え魔法で作られた鏡。水晶球の在りかを教えるのでは?」

横目で見る私の手を、早助が引いた。

「……話がしたい。」

「けど、ここでは。外も、魔物が……」

「李央、大丈夫。この家と周囲は結界があるから。家の周囲なら、危険はないよ。」

……百?

あくびをしながら、百は眠そうな顔。

「……話が終わったら、呼んで。絶対に起こしてネ♪私も、流烏と一緒の時間が欲しいから。」と、部屋に入っていった。

彼女は、知っていた。私たちの別れ道。

あなたの睡眠の理由。ただ、私の未来を決めるのは……私?それとも……“アナタ”……なの?


家の外は、暗闇に結界が薄っすらと……護られているのが見える。

「早助、あなたは……何者なの?王利の心が見えないように、あなたが分からない。」

「……答える前に、李央の答えが知りたい。質問に答えて……王利を選ぶ?」

「……選ぶわ。魔女の血が、他の選択を赦さない……」

私の答えに、早助の雰囲気が変わった。

「ふふっ。選んでくれたら、名の通り君を助けられたかもしれないのに。本当の名はあらた。」

「あ……らた?……記憶にある……物語の『時の犠牲』?」

「時は、巡る……ふふっ、待っているよ。聖花せいかと共に……。君が、最後に選ぶのは……俺だ。苦しむといい……選んだ選択。これから過ごす時間。深まる愛に……苦しめばいい。」

どこから降るのか、雨が視界を妨げる。

落ち着いた後……早助……いえ、改の姿はなかった。

後悔しないわ……


濡れた格好に、王利の心配そうな顔。

愛しい……あなたの目に映る私が“何か”は、もう考えない。

今、この人の瞳に映り……心が私を心配している。それでいい……。

百を起しに、部屋に移動する。

百は、起きていた。着替えも、準備されていた。

「この家に、お風呂があるから入ったほうがいいわ。“改”は『選択の時』に、また会うことになる。行くね……」


お風呂を出て、部屋が暖かく……暖炉に目を向けた。

「早助は、どこに行ったの?一族のところ?」

王利が、背を向けたまま……暖炉の火を調節していた。

「……流烏たちは?」

「……外で、火を焚いてる。見張りはいらないみたいだけど、二人で星を見るんだって。」

嬉しそうに、笑う。流烏の幸せを喜ぶように。

うん、優しい人だ。この人の目、綺麗だね……

暖炉の前に座って、言葉を捜している王利をじっと、見つめる。

「……あの、さ……今……言うのもどうか、その……」

言いにくそうに、最初の強引な彼はどこに行ったのか。

ふふっ……可愛いわ。

「何?言ってくれないと、分からないわ。」

「……栄養を、戴けると……嬉しいのですが?」

上目でお願いされた。

【きゅうぅう~~ん!!】あぁ、もう!幾らでも!

ちょっと、意地悪してもいいかな?

「……まだ、日が来ていないでしょ?」

「……君の飴は、俺たちに気づかれないように魔法の施されたモノ。ちょっと、足りない……ので、その……この飴でお願いします。」

今更、知るなんて……。あの小さな飴……

「あ~~。」

口を開けて、誘ってみる。

何が嬉しいのか、頬を染め……緩んだ顔でやってくる。可愛い……

頬に手が添えられ、口に小さな飴が入る。

口を閉じた私の首を持ち上げ、色っぽく閉じ気味の瞳が私を見つめる。

「戴きます。」

ムードの壊れる台詞に、微笑みながら……。

近づく顔が真剣で、ドキドキする。

触れた瞬間に、目を閉じる。

彼を受け入れるように、自分の唇が沈み……体が反応する。

優しい唇へのキス……飴が、融けきってしまいそうな熱。

何かに急かされるように、自分から口を開く。

その唇をついばみ、焦らすように舌が入る。

「……ん……」

声が漏れる。

そっと開いた目に、彼の必死な表情。

小さな飴が、口の中で消えた。

「……ご馳走様でした。」

口元の唾液を拭きながら、私の唇を指で拭う王利は、嬉しそうに微笑む。

【かぁあぁ~~】

同じように、唾液が?!恥ずかしい……

視線を逸らした。



朝。

火のほとんど消えかかった暖炉の前、王利の腕の中で寝ていた。

フカフカのじゅうたんに、横になって……

恥ずかしい。いつの間にか、寝てしまったんだ。

王利は、まだ寝ている。

起きない??そっと、髪を撫でる。

「……ん……」

撫でる手を捕まえ、ニヘラ……と笑っている。

可愛いなぁ~~。額に、キスを落とし……

「李央殿。」

「ぎゃぃいやぁあ!!」

「……ぅうう~~ん?何、何事??」

慌てて、王利の手を振り払う。

「……何でも無い!流烏……ビックリ……??」

人の姿(正装)で、百をお姫様抱っこ。


「城へ先に向かいます。……百から、何か聴いていますか?」

何か?首を傾げた私に、ため息と苦笑い。

「……嫌われたのでしょうか?」

「朝まで、二人でいたのに?」

「……思い過ごしならいいのです。」


時が近づいていた。


寝起きの悪い王利は、眉間にシワでじゅうたんの上にゴロゴロ。

流烏に運ばれ、ベッドに横になる百の目から涙が零れた。

「……昨日は、何を話しかけても……ずっと、黙っていました。言葉を遮っては、甘えるように私を求めて……」

「……あの、詳しく聞くのは……」

「あぁ、ふふ。こんな外ではしませんよ?まさか王利と……?」

「……流烏。この子は、あなたを……」

「すみません……行きます。また、後で……」

逃げるように、流烏はこの家を出た。

百は、起きない。

起きているわけではない。零れた涙の意味を知るのは、ほんの少し後。

私は、残酷な選択を迫られる。

あなたは、最初から覚悟があった。流烏と出逢った当初から……

『後悔……するかもしれない。』

させない。絶対に!!



家を出る。

私は、自分の持っている飴を口に入れた。

魔法の施された飴は……少なからず、魔力の源だろう。

そうね、誰かを護れるなら……力は多いほうがいい。

「李央、飴に足りないのは何かな?」

「……継続性?満足感?」

この疑問が、一族を救う。

王利は、剣を片手に森を進む。

この森にいるのは、小さな魔物……


契りは、どれほどの効力があるのかな?

喪えば一生独りの流烏。

王利は、失ったあと私を選んだ。契りのない私から栄養をもらう。

私が、彼と契れば……分かるのかな……。契る??


森の出口、逆光に彼の顔が見えない。

……?懐かしい……??

初めて会った、屋上への階段。確か、あの時も……??

「眩しそうな目……何かを思い出しそうだ。最初の時かな?その目、好きだよ。」と、王利。

「ひゅぅひゅぅうぅ~~~」

口で野次っぽく、百がニヤニヤ。

「嬉しくない!!」

微かに記憶が、何かの匂いを運んできた。

苺飴……?



城は、私たちを迎える。

その城内の緊張が不自然で、王利も感じていた。

「……一族か?早助との連絡が途絶えて、焦っているのか……。」

早助は、一族の人間……雑種であり、時の役目を持った一族でもある。

優先は……

王の許可で、面談無しの地下への案内。

ある一室……割れた鏡が、壁にかかっていた。

流烏が、その前に立っている。

姿を見つけた百は、流烏に飛びついて抱きしめる。

「……百、どうし……んんっ……ちょ…………」

百の激しいキスに、流烏の言葉が呑み込まれる。

百は、涙を流し……流烏を抱きしめたまま話し始めた。

別れを……

「……流烏、少し……眠って。ごめんね……待っててくれる?愛してるわ……」

流烏は壁にもたれ、ゆっくり目を閉じた。

その流烏に優しくキスを何度も繰り返す。

「……足りない。足りないよう……流烏……ごめんね。ごめん……」

百の様子が明らかに違うのを、ただ……見ているしかなかった。

「……李央、移動の魔法一つと……あなたの飴にも魔法を……」

百は、ゆっくり立ちながら幾つか呪文を唱えた。

私の方に歩いてきた百の目からは、涙が流れ続けている。

「李央、あなたの飴を10個頂戴。」

差し出す手に、小さなポーチを渡した。10個あるだろう。

「……王利、水晶球を手に入れたら……李央をお願い。」

王利に悲しそうな笑顔。

そして、割れた鏡の前に私の手を引いて近づいた。

「割れたのは、中からなの……」

「百……何を言ってるの?嫌だ……離して。何をするの?待って、嫌……嫌よ!!駄目……」

「……信じるわ。あなたを……お願い……流烏の温もりを、もう一度……頂戴ね?」

「……ならっ!!」

「時間なの。一族が迫ってる……護れるのは、彼だけなのよ……。行って、未来を護るために。あなたの大切な、彼を護るため……分かるよね?」

涙で視界が霞む。

割れた鏡の中に、百が入る。

私たちは両手を合わせ、見つめる。

百の呪文に、失われた破片が……現れては繋ぎ合わされ……鏡を修復していく。

完全に、百との空間が遮られ……

中央にガラス球……導く水晶球が現れた。

「百……百!!」

魔方陣が私と王利を包む。

「……も……百?何……」

目覚めた流烏の魔方陣は、違う色に輝いている。

「百ぉお~~~!!」




百枝side。


本当は、この時を知っていた。

学園に先見がいる。時の役目を持ったその人が、私に言った。

出逢った人を信じるようにと。

流烏を信じた……

一生に一人、私だけだと言った。だから鏡の中を選んだの。

私のわがままで……私の心の支えに、流烏をここに留めた。

一時的な魔法で、一族の目にはただの犬にしか見えない。

触れられない苦しみ。


水晶球が李央の手に入った時、一族が入ってきた。

移動の魔法で、二人を送った。

追いかける一族の目に、流烏は映らなかった。

流烏は、私を遠くで見ている。

必死で、人の姿になろうとしているのね。

ごめん……その姿で我慢して?私が辛いから。

覚悟していたつもり……泣かないつもりだった。なのに、涙が止まらない。

「……百、百……」

近づく流烏……

声は、魔力で届けるね。

『ごめんね……流烏。愛してるわ……少しの我慢。李央が、水晶球をもって、帰ってくるまで……信じて待ちましょう?ね、流烏……怒ってる?』

「……いいえ、それが最善だったでしょう?百……願うなら、会えるまで眠っていたほうが……いや、これもいい。ふふ……我慢の限界をあなたが作った。覚悟して?あなたは、私のものです……。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ