白雪の国『祭り』
城で食事をご馳走になり、旅の行き先を目指す。
「……百、魔法……使えたの?」
「うん。どうして?」
「……聞いたことがなかったから。」
「うん、訊かれたことがなかったし?」
……確かに。
日常で、あなた魔法が使える?何て、訊いたりしない。
「あの王様も、何かの力を持ってたね。」
「……けど、早助がいたら……魔法は意味がないんじゃ?」
「バカね……」
百は、しょうがないなぁ……みたいな笑い方。
「……疑っちゃった、か。はぁ……早助は、どうしたいのかな?」
私の疑問に百は、ただ……笑った。
あなたは、その力で……何を見ていた?私の知らない未来?
私とは違う能力で……あなたの見つめる先は、どこか……淋しそうなのは……
知っていたからなの?多分……いえ、確実に……選んだ未来を見ていた。
「ここから、歩きだと3・4……女性がいますので5日。」
「馬車でもあれば……」
「物語は、そうだったよね♪ふふっか・ぼ・ちゃ!!」
《 ☆△ 》
「流烏は、運転手。中は4人乗りだから♪」
「……ふふっ、仰せのままに。」
魔法……使えるなら、楽に旅が出来るな……。
私の力は、目覚めても……
右手の甲は、布がきちんと巻かれている。
怖い……不安……
揺られる馬車の中、百は寝ている。
魔法の所為もあるかな……けど、不安になる。
『後悔するかもしれない。』
何を?百は、流烏を選んだ……そのことを?
ガラス球は、行き先を告げる。パンドラの箱のところまで……
中身は『苺飴』ではない。けど、過去の魔女は……『苺飴』に変えた。
私が捜すのは、苺飴ではない答え……それが、何に変化するのか……
彼の心に、契りを交わした女性。失ったのは、いつ?
心にいながら、諦め……一族を背負い、私を無意識に選んだ。
ざわめく心。落ち着かない……
期待が大きくなる。彼の心を、手に入れることが出来るかもしれないと……。
早助と王利は、それぞれ反対側の景色を見つめる。
早助……この世界で、あなたは生きるの?あなたの手にあった花……役目……
『白雪の国』。馬車のおかげで、一日で着いた。
城下町は賑わっている。リンゴ焼きの祭り……
「この国は、隣国と合併したんだ。そのお祝いの祭りだよ。」
王利の穏やかな笑顔。
……あれ、何か雰囲気が違う。
「……懐かしい。」
少しの、彼の心のゆとりなのかな。
「森は、明日でしょ?ね、案内してよ。」
王利は、無意識に私の手を取って歩き始めた。
あれ……??私も、懐かしい……ような、そんな気持ちになる。
人ごみに、ざわめきも耳に入らず……ただ……王利の手の温もりを感じる。
入り組んだ路地。小さな石橋……火の灯された川沿い。
私の様子を見ながら、嬉しそうに……思い出を語る王利。
子供のような、無邪気な顔で……私に笑顔を向ける。
「……李央……今、笑った?」
のかな?
「王利、楽しい!!」
素直に言えた。
初めて、あなたの名を……あなたの目を見て呼んだ。
「……李央、嬉しい。君を見ていると、何かを思い出しそうだ。多分、大切なこと……」
抱きしめる王利に、身を委ねる。
人ごみに、他の3人とはぐれたんだ。それとも、百……なのかな?どうでもいい……か。
この温もりに、永遠を感じたい。
「……あぁ、彼女に……似てるのか……」
……え?
現実は、何て……残酷なんだろう……。
「……放して、私をどれだけ縛れば気が済むの?……ごめん。役目よね……いいわ、戻りましょう。明日は、森の中に行くのだから……。」
「……ごめん。」
消えたい……
あなたの国を救った魔女として。
あなたを解放してあげたかったのに……あなたから解放して欲しい。
餌でいい。あなたの求めるのは、私の……栄養。
宿。
「……百、寝てるの?……ね、どうして……そんなに寝るの?何があるの?教えて……私は、あなたを巻き込んだ?あなたを失ったら、後悔してもしきれない。」
物語。私の物語は、未来に語り継がれる。
命を懸ける……愛してしまった……自然に惹かれた人の為に。
これは、夢?……逆光に、微笑んでいるあなたは……誰?
懐かしい……その、手の温もり……
『時の魔法は、摂理を崩す。……時を操ることが出来るのは、時の犠牲になったものだけ……しかも、限られた力……』
『希望は相応しくないと、生き方を惑わす……』
『未来は、どこまでも続く……それは時間の点……人の命には限りがあるから。』
時間と希望……私の魔法は……。
摂理を崩したものを元に戻す?そんなことが出来る?
パンドラの箱の中身……
目を覚ますと、百が着替えを済ませ微笑んでいた。
「おはよ♪」
「……おはよう。」
睡眠の時間を気にしていたけど、少し安心した。
「ね、今日は先に食べてよう?どうせ、わたしたちより早く食べ終わるから……ね?」
急かすように、百が私の服を脱がせる。
「きゃぁ~~。出来る、自分で着替えるから!!」
二人で食事を取りながら、私は視線を感じた。
……?
感じる。誰かが、見てる……
敵意はない。ただの、好奇心で見ている風でもない。
「……李央、王利たちが来たよ。」
【ドキッ】……気まずい。
何故?私は悪くないわよ?
「おはよう。」
この声に、嬉しく感じる心が、少し……憎い。素直になれなくて。
「お先……」
ん?視線が消えた??
感じた辺りに、目を向けるが……誰もいない。
ま、いいか……過敏だね。
お腹いっぱいで、荷物を持ち森へ向かう。
「李央、昨日……何かあった?」
早助が、遠慮気味に訊く。
「……早助。落ち着いたら、ゆっくり話をしよう?今後の旅に、絶対必要だよ?」
「……うん、そうだね。李央、俺の気持ちは疑わないで。確かに、役目と想いは連動している。魔女の呪いだけど、気持ちに嘘はない。」
「……えぇ、分かったわ。ありがとう……」
王利は、時々……振り返りスピードを落とした。
“私”を気にかけている。
あなたにとっての私は、何?一族の希望?失った相手の面影?……餌……?
「李央、森は静かね……。」
百の雰囲気が、違う??
「百?……あなた……は、誰?」
にっこり笑う彼女は、私に囁いた。
「失ったら、手に入らない。王利を信じる?」
「……信じたい。」
「ふっ。約束をあげる……」
約束?
「……あなたは、彼の心を手に入れる。ただし、疑っては駄目。もう一つ約束を……あげるわ。この身は、元の世界に戻る……」
そう言うと、目を静かに閉じ……開けた。
「……?何、李央ったら……見つめちゃって♪て・れ・るぅ~~!!」
……誰かは分からない。過去の魔女……そんな感じか。
何故、今……何かがある?信じたいよ……王利……
「着いたぞ。」と、王利。
「……しかし、警戒した割に魔物がいなかったな。」
流烏が、周りを見回す。
二階建ての一軒屋。古いが、手入れもされ人の住んでいる気配がある。
【コンコン……】一応、呼んでみる。
「すみません、どなたか……」
【カチャ……】ドアが開き、小人が一人……出迎える。
「どうぞ、お待ちしておりました。」
小人の家なのに、ドアも中も……
「ふふ……不思議ですか?座ってください。この家は、予言の魔女が作ったのです。……一人の少女を護るために……」
「予言の魔女?」
「はい。この世界を魔族から救い、一時的な平和をもたらした魔女。予言をし、未来を信じるよう促しました。あなた方の知っている魔女です。ここに来た目的を果たしましょう。私が語るのを赦されているのはそれ一つ。」
「……ガラス球が、どこにあるか……」
「正確には、水晶球です。残念ながら、私が語るのは……魔法の鏡の在りかです。行ってください……未来のために……。『白雪』の国城の地下深く、眠る……割れた鏡を見つけてください。一つの未来と、閉ざさ……」
穏やかに話していた小人が、ふと……天井を見て……言葉の途中に、消えた。
何を意味するのか……




