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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
2ヴァンパイアは何を欲すか

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冒険者たち


朝。嫌な朝が来た。

そう、三日目。私が餌の日だ……。

【コンコン……】【ビクッ!!】ドアのノック音に、心臓が跳ねる。

「誰?」

静かに開いたドアに、早助の姿。

「……あぁ、お帰り。何、餌?今、する?」

近づく私に、怖い表情の早助。

……?

不思議そうに首を傾げた私に、キスをした。

「……?!!?!」

あれ?飴を含んでいないのに、早助……お腹が減ってる??

ようやっと、解放された唇は熱を帯びる。

「……早助?飴を忘れてるよ??」

「何でだよ!!」と、辛そうな表情で抱きしめる。

何で?……焦ったからかな。私に訊かれても困るんですけど。

「李央……無意識なの?そんなに、簡単じゃないだろ?唇を……容易く……赦すな。何が、そうさせる?……役目?君は、餌じゃない!!」

……エサ……無自覚に?!!

「……俺は、雑種……君を求めなくても、栄養は取れる。……赦さない……君は、餌じゃないんだ。李央……それとも、もう手遅れなのかな?君の心は、あいつに惹かれてるの?」

……早助に、答えることが出来なかった。

「……まだ、間に合うね。彼の隠し事……勘のいい君は気がついたよね?……何かも、分かったかな。……教えてあげる……。」

「早助殿!!」

呼びに来た流烏が、叫んで早助の言葉を遮る。

「……ふっ、遅いよ……。あいつは、契りを交わした女性がいる。」

………。

契り……血で、彼の命を補うヒトが……

あぁ、やっぱり……納得した。彼の、私を見ない理由。

「……李央殿……」

「流烏……言い訳、してみなさいよ。聴いてあげるわ……。」

視線を逸らした流烏。

「……流烏に訊くのは、止めたほうがいいね。」

王利の落ち着いた声に、苛立ちが募る。

「……相手がいるなら、その子からもらえばいいわ。私は、旅にはついて行くけど……もう、あなたの餌にはならないわ!」

私の言葉を、悲しそうな……複雑な笑顔。

「……ごめんね。」

謝ってもらって当然なのに、私が悪いみたい……

心が痛い。王利を赦してあげたくなる……

「王利、言葉が足りません!誤解が……」

「黙れ……これ以上は、お前でも口にすることを赦さない。」

彼の、心の闇を……垣間見た。

その傷を癒すのは……私ではない。

「李央……百さんを起こして、旅に出ます。」

「……うん。」

まだ、あなたの名を呼んでいない。

この旅の目的は……叶わないかもしれない。

自分の身……命を捧げ、消えることを願った魔女……

あなたは、逃げた?私は、逃げ道にするわ……


『闇』……耳鳴りの中、小さな女性の声を聞いた。

「……“闇”?」

耳を押さえ、足元に視線が落ちる。

その目に、魔方陣が広がる。

「……痛い……」

右手の甲に、熱と痛みが走る。

「……っつ~~」

我慢が出来ず、気が遠くなる。

……苦しい……誰か、助けて……


『李央……さぁ、おばあちゃんが物語を話そうね。』

『……おかあさんと同じ物語?』

『……その続きだよ……』




意識を取り戻したのは、すぐだった。

物語は……

「李央、これ……闇の満月だよ?こんな大きなアザ……かわいそうだよ……。」

百の涙が、アザに落ちる。

「……百、これ……暗月かな?」

………。

「そうだっけ?」

………くすっ。

百に癒される。

「旅の用意は、出来てるの?」

「うん、もう出発できるよ。」

「……出ましょう。時が近いから……。」

そう、時が……


重い空気に5人が城を出た。

目的地は、ガラスの国【ラタバール】

「その国に、魔女の残したガラス球がある。それが、行き先を告げると伝承にある。」

黙々と、ただ……歩き続ける一行。

「……ふんふふ~~ん。ふふんふんふん……」

ただ、時間が経つにつれ……百の訳の分からない鼻歌が疲れを増やす。

「……ね、百……その歌は何?」

気になって訊いてみた。

「え?シンデレラの歌だよ♪」と、最高の笑顔。

「……早助、知ってる?」

「……いや、知らない。創作か?」

「知らないよ♪」

………。

「百、のどが乾きますよ?ふふ……水分をあげましょうか?」

おおかみの舌が……ペロリ。

「……流烏、あなたの言葉って……エロイ。」

「……当たり前です。百に、愛情を込めているのです。ふふ……情欲とも言いますが。」

ここまで、愛情を示されると……迷いが消えるだろうな……。

「え、何か言った?」

……百、聴いてあげようよ。

って、こんな変態の言葉を自然に受け止め始めた私は……やっぱり、おかしい??


「見えました、ラタバールです。まず、店に入って休憩をしましょう。……李央、手を出して……」

……?

自然に、右手を出した。

そのアザの部分に、布を巻いていく。

「……このアザは、全てのモノの希望。敵は、少ないほうがいい。……君を失ったら……」

王利の言葉は、そこで消えた。

私を失ったら、ミンナが困る?……あなたは、あの国の後継者……。

国を支えるために、心にない私を護る。

……あなたの栄養は、何で取れる?……

私の手に触れる、汗ばんだ手……。多分、無理をしてるんだ。心が痛い……

餌でもいい……


店に着いて、私は王利を引き止める。

他の3人は、(百に連れられ)中にどんどん進んでいく。

それを確認し……口に、自分が持ってきた飴を含む。

「高いわよ?」と、意地悪に笑ったつもり。

「……あぁ、覚悟するよ……」

王利の複雑な笑顔。

あなたの唇は、甘い……この苺の飴の所為なのか……あなただから?

口の中の飴は、彼の舌が運んでいく。

幸せが悲しい……


店に入り、食べ物を大量に注文した。

何が食べれるのか、分からないし……嫌な味のものが確かにあった。

「……流烏、宿を取って来て。」

「……では、着替えてから行きます。」

……食べながら、王利の顔色を見る。

うん、少しいいかな?ふふ……

私の様子を、早助は見ていた。気がつかなかった……

小さな喜びに……満足していたから。

多分、それが魔女なんだ……


宿。

旅の疲れをお風呂で癒す。

この世界にお風呂があるなんて、最高だ……。

ここは、人間(?)の国かな?

夕方に着いたが、町の露店にガラス製品。鏡も売られている。

シンデレラの国……昔、ガラスの靴とドレス、馬車をもらい王子と結婚した少女。

道程は険しく、国の内政・外政に巻き込まれた。

魔女の予言通り、閉じ込められた魔法の鏡からの救出。

その方法が、ガラス球。

それが城に眠っているはずだ。誰も行方を知らない……残された伝承。

「……ね、百……あなたは、流烏をどう思う?」

「好きだよ。李央は、王利のこと好き?」

「……うん。多分、そのために……ここにいる。命を懸けたら……ごめんね。」

静かな夜。一つのベッドに、二人で横になる。

「……李央、私……どうして、ここにいるのかな?」

「あなたは、流烏に出逢う為でしょ?」

返事は返ってこない……。

静かな寝息が聞こえる。

百……あなたの聞いた物語……確か、どこか……異なっていたような気がするわ。

思い違いならいい……。

この世界に、来た意味を求めるのは……私だけでいい。

怖い……この右手の甲のアザ……。この闇が、私を呑み込みそうで。

この月に、朝顔の花が絡んで咲き誇る。


朝日に、目が覚め……違和感。

【モフモフ……】まさか?!

私と、百の間に獣が一匹!!

「流烏ぅ~~?!」

私の声が響く。

「……朝は、静かに!しぃ~~李央殿。先に言いますね?私は、百にしか感じません。」

ムカッ!!

何故だ?無性に腹が立つ!!

【パコンッ】脱いだ靴で叩いてやった。

「……李央殿、この世界にはゴキはいないはずですよ?」

獣め……

「……流烏……私に、言いたいことがあるんでしょ?」

「……例えば?」

………。

見つめる時間が腹立たしい。

白い手が、流烏の目を塞いだ。

「……誰を見てるの?酷いわ……私以外を見ないで。流烏……私を愛してる?」

「……えぇ、あなただけです。」

……百の雰囲気が違う……目の色が緑色に輝いている。

「……百?」

私を見ないで、百は倒れるように眠る。

「……はぁ。どうして、呪いはここまで広がったのでしょう?」

流烏は、百に布団を被せ……私に背を向けた。

『複雑な人の想いは、力になる。だから、時の犠牲はこの一族をある期間……養えた……』

今、無意識に……自分の口から……言葉が出た。

「……李央殿……王利を信じてください。あの方は、契りの相手を失っています。想いは、微かなのです……」

失った?亡くしたではなく??

「思い出してください。出会いを……王利は、あなたを知らなかった。それなのに、あなたを選んだのです。」

「……私が、この役目だと知らずに……あのベロチュウをしたの?」

「……はい。これから役目のために、一人の女性を選ばないといけない身でありながら……一つ間違えば、一族から追放です。」

嬉しい。どうしよう……

「ただ、それがどうしてなのか……王利の中で複雑なのです。」

「……うん。私も、複雑だ……惹かれるのが、義務なのか……愛情なのか……」

「李央殿、それは……」

【コンコン……】

「入るよ?」

タイミングを狙ったかのような、早助。

「そろそろ、朝食にしようって……。ふふっ、俺はご馳走様かな?」と、ニヤニヤ。

……??

ほとんど、下着に近い姿?!!

「流烏、もっと早く言いなさいよ。」

「言われなくても、気がつくべきです。もう一度、言います。私は百にしか……」

【バキッ】本気のパンチが流烏の腹に直撃。

「ぐふっ……それは、ちょっと……もう少し手加減を……」

朝からバタバタだ。

一つ、気になることがある。百の睡眠の量だ。

私が気を失っていた2日間は、どうだったのか分からないが……多い。



城。

大きな広い部屋に、王様なのかな……何故か、人払いがされてる。

「……王利殿、紀央殿に似ておるね。ふふ……君も、知っているだろう?この城は、もう一族が必死に探した後だと……」

え……探した後??

「久々に、口を開けば王も……ふふ……おじの話は、心が痛むので控えて欲しいと……同じことを。」

「ふっ……洞察力のない。くく……楽しい。」

古い知り合いなのか、分からない昔話を……

ん??王が私を見て、微笑んだ。

……ニヘラ……愛想を振りまいてみる。

「ふっ……くくく……王利、お前……バカだろ?」

……?!!

いきなり、威厳やら何かが飛びましたか??

「王、仮にも……」

「ばぁか……くっ……はははっ。あぁ、久々に笑った。いいことを教えてやるよ。ね、君……呪文を。」と、百に微笑む。

《 ★% 》百は、無表情に何かを唱えた。

魔方陣が百の足元から、波の波紋の様に広がり……部屋を包んで消えた。

「……ふっ。喰えねぇ……」と、王様はご満悦。

……本当だ。喰えない……

「王利、『白雪の国』へ向かえ。その近くの森に隠れた家がある。そこに、ヒントがある。」

「……王、今まで……」

「ガラス球は、ここにはない。行け、未来の為に……」




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