伝承
騒動が落ち着き、王利の部屋に5人(4人と1匹)。
「伝承の前に、早助……君は、一族の接触があるね?」
「あぁ。幼いときに、圧力をかけられる形で李央のそばにいた。」
意図的な幼馴染み……
「そうか。一族は、昔から……李央を知っていたのか。」
「いや、希望の可能性すべてに過敏だっただけだ。まさか……のつもりで、雑種をつけていたのが大当たり?」
この一族のハーフ……雑種は、酷い扱いを受けたのだろうか?
「……麻生学園は、異世界に通じた者も受け入れる。すべては、特殊な力と……呪いだとしても、続く家系の見返りを求めて。」
「すべてがそうではないわ。おばあちゃんも、魔女の家系……きっと、蒔いたものを気にしていたのよ。」
「……あぁ、俺はそのおかげだね。けど、君に害を返す……」
早助の意思は、何だろうか?
心は、見えない……
「ま、選ぶのは李央だ。話を進めよう。時間がない。旅に出ないといけないから。」
……あぁ、やっぱり旅に出るんだ。
『伝説の苺飴を捜せ!!』
「……繰り返される犠牲の恩恵。パンドラの箱が来た。……魔女を追い、異世界に向かった一族数名。力を奪われ、時の犠牲となり……二つの世界で解放を望んだ家系。」
パンドラの箱?決して開けてはいけない。災いとかが詰まった??
「……李央、意図的かな?君の血の記憶は、いつ戻る?」
「……分からないわ。ただ、確実に戻ると言える。それが、ここに来た理由だから。」
多分……私の心に反応するのか、あなたの心に反応するのだと思う。
未来のための恋愛……私には無理。予想も出来ない。
王利は……何かを隠してる……?
「王利、俺は一族の許に報告に行く。何かあるか?」
「……いや、戻るのか?」
「あぁ。命令で、必ずついて行けと言われるだろうから。」
「……明日の朝までに戻れ。朝一、出発する。」
早助は、ニヤリと笑い部屋を出た。
2人のやり取りに違和感。互いに探り、私は疎外感。
静かだな?
「百……?!」
床に、犬を抱いて寝ている。流烏は、愛おしく見つめていた。
流烏……彼の求めるのは、百だけ。
王利は?早助は?……そして、私は……。
「李央、右手の甲を見せて。」
「……??」
右手の甲??見るが、何も無い。
王利にその面を見せた。
「やはりないか……。伝承では、記憶に反応して……その甲に……印が現れるそうだ。暗月のような闇の円。それに絡んで咲くのは、この紋章と同じ花。」
じゅうたんの朝顔に似た花……
「流烏……彼女を、寝かせに行けば?」
寝ている百が、震えている。
「……私が……」
「大丈夫。私が欲しいのは、彼女の心ですから。」と、言いながら……
人型は裸で、百の胸を触っている両手。
……この、~~っつ……オスが!!
流烏の頭を叩いて、使用人の女性に手伝ってもらいその部屋を出た。
やはり違和感がある。流烏みたいに、王利の心は見えない。
私の右手の甲に、薄い影?
【ズキ……ン】軽い痛み。
多分、記憶が物語に反応している。
王利は、私を好きではない。彼の役目……
私は、更に……ない心で彼に餌となる。この、心が……何かを求める。
『魔女は、必死になる……―を求めて。』
何に……。
百も、必死になるはずだけど……手に入れたのかもしれない。
永遠の気持ち、変わらない流烏の心を……
食事を終え、流烏は百と散歩に出かけた。
いや、百が散歩をしに行ったのか??
誕生日のプレゼントは、首輪と綱。おそろいだと、嬉しそうに流烏に付けていた。
流烏は、何故か口元が緩んで嬉しそう??だった。
きっと、邪なことを想像していたに違いない。
『人に戻ったときのために、緩めでお願い』
……何て、気持ち悪いことを言っていた。
私のこれ……手には、流烏とおそろいの首輪と綱。
………。
【ちらっ……】
王利と目が合う。そして、最高の笑顔。
「……ふふっ。何、期待してるの?李央に、つけてあげようか?……くすくすくす……」
【ゾゾゾ!!】
「期待しとらん!!」
自分に、何故??
思わず、想像してしまった。けど、ついてはいないが……私の首は捕らえられた状態だ。
「李央……明日、出発だ。」
「……うん。……私も、外に出てみたい。」
名を呼ぶには、やはり抵抗がある。
そんなことも求めないこの人は、ただ……優しく微笑み窓を開けた。
「……出よう。敷地は、警備があるから夜でも安心だ。明日からの旅は、宿に泊まる。……魔物がいるんだ。ここは、君が生きてきた世界とは違う。」
……後ろ向き。あなたは、誰に言ってるの?
その心は、誰が……
月??……明かり。
百は、奴に襲われてはないよね??
隣を歩く王利は、ただ……黙って歩く。
一緒にいるはずなのに……独りでいるより淋しい。
この人を求め始めている。心が欲しい……
私の欲望は、呪い?それとも義務?愛情……だろうか?
「……り……」
王利……。消えそうな声が、思わず出てしまう。何故か、涙も……。
それでも、あなたは気づかない。
確信する。この人の心に、私以外の誰かがいる。
王利の心を持った女性がいるんだ……。
『……異世界から、この世界を救った魔女は……命を懸けた。愛する者の幸せだけを願って……』
おばあちゃんの声。
別の物語……断片的な記憶。この世界『スピニロブ』を救った魔女……。
『李央……奪うのが愛じゃない。時には、与える愛が命を奪う。それでも……』
「私は、旅の中で答えを見つける。あなたの心が、私の選択を左右するわ。覚悟して!!」
私との距離を気にしない後姿に叫んで、元の道を戻った。
走る足が速くなる。
悔しい……好きでもない男に、心が乱される。
好きじゃない……
呪いに、促され役目を果たす。
こんな呪いを、どれだけの人が長い年月……苦しんだの?
いいわ……この世界で死んでもいい。
部屋に戻ると、百が着替えていた。
「……それ、どうしたの……」
服は、汚れ……肌に赤い点が……
【かぁああぁ~~】顔が熱く、自分の想像に恥ずかしい思いをする。
「……へへ?誘ってみちゃった♪」
……くらっ……めまいがした。
「あ、最後までしてないよ?」
最後とか……そんな、簡単に……
「李央……後悔するかもしれない。」
それは、あなた?それとも……?




