異世界に来ちゃった?!
ざわめきに目が覚めた。
「王利様、お帰りなさいませ。」
「あぁ、花嫁だ。」
「誰がだ?!!」
「起きたの?テレなくてもいいよ。さ、着替えようか……」と、制服のリボンをスルリと外した。
「……ぎやぁあぁぁ~~~~!!」
【バシッ】叫び声と同時に、右手が連鎖した。
「……痛い。」
「王利様!!」
使用人が、ぞろぞろと沸いてきて奴を囲む。
過保護め……んん??
「おい!!百と、早助はどこにいるんだ?!」
周りには、いない。……ここは、多分……こいつの城?!!?!
高級なじゅうたんに、あの紋章がでかでかと……特注品。
「あぁ、彼女は……いや、彼は牢屋に。」
………。
私は、使用人たちを押し退け、奴の首を絞める。
「百に、何をしたんだ?!早助が、牢屋って何をするんだよ!!う……うわぁあ~~~ん!!」
いろんなことに、頭が働かない。
感情が、涙となって……久々に泣いた。
「ごめん……。」
【チュ……】どさくさに紛れて、デコチュウしやがった?!!
顔を押し退け、涙目で睨む。
「李央ぉお~~~♪見て見てみてぇ~~!!」と、叫びながら私の後ろから飛びついた。
「百……その格好?!」
どこのお姫様?!みたいな、ドレス……けど、胸の谷間が見える。
「……少し、趣味が悪いよ?着替えたら……」
「何を言われるのです!こんな、美味しそうなものは目に焼きつけ……」
「黙れ、獣!!」
「……かわいそうだよ。このワンちゃん、優しいのよ?私が着替える間、ずっとそばにいてくれたんだから♪」
………。
犬は、視線を逸らし……口笛を吹きながらソロソロと逃げようとする。
「待て、そこの犬……食うぞ?」
「……ちっ……」
舌打ちとは、いい度胸だ!!
「……認めましょう。李央様、一言……宜しいでしょうか?」
真面目な顔(?)犬だからよくわからないが、目が真っ直ぐに……私を捉える。
「……うっ。何だよ?言ってみろ。聴いてやる。」
「甘いものは、別腹!!」
………。
「~~~っつっつ!!」
腹立たしさに、犬の首を締め上げる。
「苦しい……もっと♪」
「ね、早助君は助けなくてもいいのかな?」
はっ!!忘れてた。
「なぁ……へ?」
奴の方に方向を変えた途端、あごに指が滑り……口に飴が入る。
……??!?!
かと思えば、今度は奴の顔が近く……あっという間にキス。
いや、ベロチュウ?!!!
「んんん~~んっ……んんっつ!!」
【ドン!!】突き飛ばしたのは、唇が解放された後だった。
「なっ何を!」
「え、栄養補給だよ?」
平然と……畜生!!
「犬、早助をここに連れて来い。じゃないと、こいつの首を絞める!!」
「……王利、どうしましょうか?」
「……ふん。今回は、このキスで赦してやる。」
赦される意味がわからん!!
しかし、人質を取られては、下手な動きが出来ない。
「さて、李央?この食事は、3日に一回……お願いできるよね?」
今、何と?!
「王利様、私達は彼を迎えに行きますので。」
「あぁ、部屋にいる。」と、私の手を取り歩き始める。
強引に、引かれ……抵抗は空しく奴の部屋。
【カチャ】……今、鍵を閉めましたか??
「……あれ?李央、どうして距離を取るのですか?ふふ……追いつめたくなります♪」
「来なくていい!!……普通さあ、吸血鬼は血でしょ?」
「うん……。今は、飴を代用してる。」
「……じゃ、一日中……飴を舐めてたらいいわ♪」
「もう、無理♪君の口からもらったから、この方法でしか栄養が取れない。」
「……ほら……別に、手とか……指とかに、噛み付けばいいんじゃないの?」
嫌だけど……ベロチュウよりは、マシかな??
「……ふふふ。いいの?」
ニヤリ……と、笑った奴の笑みに寒気が走る。
「……何か、問題がありますか?」
「くふふ……。別に?俺は、いいんだけど……。むふふ。そう、その覚悟が君にあるんだ♪じゃ、早速……」と、近づいてくる。
「いや、待て……みんながいるときにお願いします。てか、さっき飴を食べたろ?!」
寒気が酷くなる。
【ゾワゾワ……】何かを感じ、ここから逃げる方法を探す。
「……勘が良いね。けど、言い出したのは君だよ?さぁ、契ろうか……」
チギル……千切る……契り……なんか、嫌なイメージの言葉。
「いやぁあ~~~!!来るなくるな、来るなぁあ~~!!」
その辺にある小物を投げるが、手元に投げれるものがなくなる。
投げたものは、すべて避けられた模様。
「ふふふ……くすくすくす……」
「前言撤回!!……ベロチュウを、イヤイヤ我慢します!!」
「……聞こえないなぁ?エモノ♪エモノ♪」
「李央に、触るな!!」
【バンッ】
あぁ!!勇者の登場!!
「早助!!」
私は、早助に抱きついた。
「よしよし、怖かったね。俺が護ってあげるよ。」
「うん……。早助、大好き!!」
「早助、かっこいいけど……自分もベロチュウもらうつもりでしょ?」
百の、冷たい声が聞こえた。
「……へ?早助……どう言う事?!」
「……ごめんな。」と、早助はチュウ……
私の唇に触れる前に、口に入れたのって……
【コロン……】私の口に、苺味の飴……と、舌。
すぐに出て行く舌は、優しく……遠慮気味に……
「……ごめん。俺、この一族のハーフなんだ。」と、苦笑い。
………。
今日は、私の誕生日……。
ここは、異世界。
早助は、幼馴染み。
百は、犬に惚れられ……
あはは……物語は、こんな展開だったっけ??……
「李央?!」
さぁ、物語の時間よ。
昔、昔……この世界とは違う世界……『スピニロブ』。
そこには、ヴァンパイアの一族が治める国がありました。
魔女……おおかみ……魔物……たくさんの種族。
秩序が壊れたのは、いつだったのか……
その世界は、この世界と区切られていたのに。
『入り口』を作ったのは、魔女。
この世界に、餌を求めたヴァンパイア達が行き交う。
しかし、秩序を破れば……必ず収拾がつかなくなる。
ヴァンパイアの急激な増加と争い。
激減したヴァンパイア……
そんなある日。
餌として、異世界から連れてこられた少女が……ヴァンパイアの世界を救う。
その少女は、この世界の魔女の子孫……。
その時代に、この世界から魔女はいなくなっていた。
一人のヴァンパイアが、彼女を愛するようになる。
その愛に、彼女の魔女の血が記憶を呼ぶ。
『入り口』を閉じ……血の代わりの『苺飴』を一族に提供した。
この世界の餌となる人々の解放。秩序を取り戻した世界……
しかし、弊害は続く……
『苺飴』に満足できない者……愛する者を得るのではなく、餌を求めるものが秩序を壊す。
『苺飴』も、秩序を護るには限界があった。
繰り返される儀式。
時の犠牲……
魔女の血?ふふ……あなたにも流れている。色濃く……記憶は、あなたの中に受け継がれた。
すべてを失ったあなたは、お父さんと同じ世界を選んで欲しい。
彼女は、その世界を選ばなかった……だから……たくさんの犠牲を生み出した。
始まりの魔女は、ヴァンパイアではなく……おおかみを愛し、共にこの世界に逃げてきた。
彼らの餌は、魔女だったから……
李央……あなたは、誰の手を取る?あなたの中に流れる血……その中の記憶は、辛い想いを知っている。
失う悲しみを、体に蓄えて……時を刻み……解放を与える。
その秩序を永遠にして、すべてを解放するのか……。
一時的な解放に、また犠牲の時を繰り返すのか。
選ぶのは、あなた……。
『始まり』を『終わり』にするか、『継続』するかはあなた次第……
……目が覚める。
「……李央!!」
泣き腫らした目に、かすれた声の百。
「……ふ……うぅ。2日、目を覚まさなかったんだよ!!」
2日……栄養を奪われすぎたのか??
「……百。あなたも、血縁者……あなたが選ぶのは、……犬かもしれない。」
「……??流烏が、どうかした??」
……大事な記憶がない。
誰かを、誰かのために愛するような事は出来ない……
【コンコン……】
「はぁ~~いぃ!!」
百が、元気よく返事をした。
「……李央、起きたのか……よかった。今、食事の準備をしよう。栄養を取らないとね。」
物語の記憶は、母に消されていた。
毎日、寝る時間に聞いていた物語。
彼を選ぶのが、秩序を保つこと?この世界で、彼と共に生きる??
それとも……早助を選んで、もとの世界に戻るか……
「食べる!!」
考えるのは後だ!!
『伝説の苺飴』の手がかりが、あるはずだ。
明日、ベロチュウを二人に求められたら……はぁ……呪うよ、ホント……
『始まり』の魔女め!!
……誰かを犠牲にしても……いや、犠牲になってきたからしてしまったのかもしれない。
誰かを愛し、必死になる……魔女。呪いは、幸せを赦さない。
解放を望む私たちは、試練を経験する……
「……いつも思うけど、李央も百も……よく食うよな?」
「……もぐ……うん。もぐもぐ……美味しいから、特にね♪」
「ぐもぐも……おいひぃ~~~!!……もぐ、ぐもも……」
大量の料理が、あっと言う間に消えていく。
「……ふふ。伝承の通りか。」
「……おい、その伝承を後で聞かせて。」
「……伝承を知らないの?」
「多分、知らない。今、記憶に無い……」
そろそろ、『おい』で話しづらいな……。けど、名前なんか呼びにくい。
呼んだら、勘違いして……喰われるのは私??
はぁ~~、今更……
「……あれ、犬は?」
姿が見えない。
「ここにおりますが?」
……声がする。百の膝の上?!!
ヒョイッと……顔をこちらに向け、ニヤリ。
「……犬、いい加減にしろ!!百、その野獣に気を許すな!!」
「……い・や・だ♪」
嫌だ?!!
「……流烏……」
百は、獣の口にキスをした。
「あ……」
目の前で、信じられない光景が現れる。
「服だ!服を準備しろ!!」
王利は、使用人に叫ぶ。
裸の男が、百にキスをした。
「……まさか、今……キスされるとは思いませんでしたよ?」
「……ふふ。お腹がいっぱいで、気が大きくなっちゃった♪」
思考が付いていかない私を無視し、百は余裕。
「このまま、しちゃいます?」
「……私は、いいけど……ふふ。お邪魔虫が、そろそろ切れるよ♪」
「も……も……百ぉ~~~~!!!」
………。
しばらく、お待ち下さい♪
「……で、どう言うこと?」
「……ん?着替えるときに、下着姿を見られたから?責任を取ってくれるって♪」
……相手の都合のいい話。
しかし、今更……後には引けない雰囲気の様だ。
「流烏、私以外に感じないって言ってくれたよ?」
……それは、本当なのか?しかも、そんなこと言われて……嬉しいもの?!
「……おおかみの一族も、魔女の呪いで悩んできました。ある年齢になると、姿は狼になり……相手を探し旅に出ます。」
狼??あぁ、白い……大きな犬ではなかったのか……。
「唇にキスを受け、本来の姿に戻り……一生を誓います。」
百と、一生を誓ってしまった??
「百、私は……あなたを失えば……一生独り。私を、愛してくれますか?」
何か、真剣だ……犬ではなくなったからか聞いていて恥ずかしい。
「そんなの、わからないよ。流烏……私、犬の姿が好き。」
百……空気読んで!!
反対したい私が、辛くなる。
「……しばらくは、その姿でいます。今は、少し……待ちましょう。」
少し……??
流烏は、犬の姿に戻る。せっかく着た服が、無駄になった。
百……彼女は、物語と同じおおかみを選ぶだろうか?
選ぶかもしれないと、思った矢先の出来事。
百の反応は、微妙。
私たちは……誰を選ぶのか。
呪いは、解放されるのだろうか。
「……李央様。百は、私がもらいます。」
「うん。覚悟があるなら、私は何も言わない。ただ……百は……うん、頑張れ?」




