1話:才脇のぞみ
私の名前は才脇のぞみ。生まれつき、目が良い。視力は両目とも2.0で、普通の人には見えないものまで、私の目にははっきり映ってしまう。それは、ときに見たくないものまで見せてしまう。
東京は人が多い。地方からさまざまな思いを持ってやってくる人たち、そしてここで命を終える人たちも。彼らの感情や死の残り香が、街中に漂っている。私の目には、それが見える。私は三種類の者を見分けることができる。人間とは程遠い姿をしたもの、まるで人間のように見えるもの、そして、本当に生きている人間だ。
明らかに人の姿をしていない者――煙や靄のように形が崩れている。顔も体つきも、全てがおかしい。パーツの位置がおかしく、奇妙な音や声を出し、不鮮明な言葉を話すこともある。私は彼らに近づかない。それは危険だからだ。次に、人か人でないかわからない者がいる。死者が現れるときには二つの姿があるらしい。生前の絶頂の姿か、あるいは埋葬された姿で。前者は見分けがつかない。普通の人間と見分けがつかないから、私は普段は知らない人に話しかけないようにしている。なぜなら、それが生きている人間とは限らないし、そもそもそれって変な人のすることだしね……?
子供の頃から変なものが見えると言っては、母に連れて行かれたのはメンタルクリニックだった。もちろん、何も異常は見つからなかった。私が悪いんじゃない。だって、私が見たものを聞きたがる人間はたくさんいるから。友達は、怖い話を聞くのが好きだし、私の話に興味を持ってくれる。
……受験には失敗した。ナーバスになっていたからか、幻覚と幻聴、それに伴う不眠、がたがたのメンタルを抱え、医者にかかるも、抑うつ以上の診断結果は出ず、医者はこのわけのわからない者たちや音を病気と結びつけることはできなかった。
高校入学して早速、私はやばい事に巻き込まれる。都市伝説、銃を持った女子高生との遭遇だった。