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言い伝え

 この世界には女神と天使が存在した。


 女神は、人間に惜しみない愛を捧げ、天使は女神を支えた。


 女神は、人間である男に恋をした。その男を自分の物にするため、自身の力を分け与えた。


 女神が人間に与えた力は、手から白い薔薇を出すことができるもの。


 白い薔薇は、女神との繋がりを保つのと同時に、人間ではなくして自分と同じ立場にしようと考え埋め込んだ。


 だが、その男には妻と子供がいた。


 繋がりを持ったことにより、男が家庭を持っていることに気づいた。

 それでも、芽生えてしまった愛は抑えることができず、憎しみへと変貌。


 女神は、男の妻を薔薇の弦で動きを封じ、男には肌に薔薇の痣を出現させた。

 最後に、二人の間に生まれた子供には、花吐き病を発症させた。


 憎しみのあまり、女神が勝手に人間へ罰を下してしまった事により、神の逆鱗にふれ、女神は封印された。


 残された天使は行き場を失い、神の使いとして動くことを命じられた。


 女神に罰を下された人間は、神の力により命を取り留めることは出来たが、女神の力は体に残ってしまった。


 女神の力は消えることはなく、個性の花として引き継がれてしまった。

 その中でも薔薇は女神の力が強く反映され、女神の思いが強く込められてしまった。




「これが、僕の聞いた言い伝えです。本当か嘘かはわからないですが…………」


 曄途が話を締めくくると、一華は表情を変えずに外を見て、真理は眉を下げ悲し気に呟いた。


「女神様、ただ好きだっただけなのに…………」


 真理は、曄途に淡い恋心を持っている。


 もし、曄途が違う人と付き合っていたり、許嫁がいると聞いたら我慢できるかわからない。そのため、女神の気持ちを完全に無視できず、何も言えない。


 彼女の呟きを耳にしつつ、外を目線だけで見まわしていた。

 二人はなぜ、一華が周りを見回し始めたのか首を傾げる。


「……女神が封印された所って、何処なんだろう」


「え、なんで?」


「そこに行くの。女神様が封印されている所に行けば、何かわかるような気がするの」


「でも、今の話が本当かどうかなんてわからないんだよ? 行ったところで意味なんてあるかどうか…………」


 真理が言うと、一華はまっすぐと彼女の目を見つめた。


「わかる、わかるの。今の話、本当のことだって、なぜかわかるの。話を聞いている時、外から何か、視線のようなものを感じた。人の強い思いを感じたような気がしたの。多分だけど、赤い薔薇って、女神様の恋心が込められているんじゃないかな」


 自身の胸に手を添え、黒い瞳を震わせる。


 今まで赤い薔薇には憎しみを抱き、個性の花を恨んでいた。

 だが、言い伝えを聞いたことにより、まるで閉じ込められていた女神の想いがあふれ出たように一華の胸を占める。


 女神の恋心、強い思いに一華は眉を吊り上げ曄途を見た。


「ねぇ、白野君。お願い、場所を知っていたら教えてほしいの。女神が封印されているところ」


「それも一応聞いています。花鳥街から遠くないらしいのですぐに行けるかと」


「なら、今すぐにいこっ――――」


 一華がいち早く動きだそうとしたが、曄途が腕を掴み止めた。


「しっ」


 外を覗いてみると、四人の教師が三人を探している姿があった。

 今出てしまえば確実に捕まる。


『ここ以外に隠れられる所はないはずです。早く見つけないと』


『まったく、まさかこんなことになるなど……。紫炎先生は学校に閉じ込めている為手を貸すことは出来ないはずですよ』


『黒い薔薇と赤い薔薇を絶対に近づかせてはならない。女神の封印が解かれてしまう……』


 教師達の話を耳にし、一華は眉を顰めた。


「紫炎先生…………」


 陽はなぜか三人を逃がすため、教師を取り押さえていた。

 その前にも、パソコンのパスワードを解除し一華達にわざと見せるなど。


 明らかに一華達を助ける動きをしていた。

 胸を痛めていると、真理が一華を横目で見て目線を落とす。


「…………白野君、女神が封印されている場所って、どこ?」


「っ、公園を出て道路を道なりに行くと、大きな森がありますよね。その森の最奥に、女神の像が置かれている社があるみたいです」


「その社に女神が封印されているということ?」


「はい」


 真理が聞くと一華の方へ振り向き、両肩を掴んだ。


「一華、私、さっき外を見た時、先生の死角を見つけたんだ。だから、私が先に出る。たぶん、五分くらい経ったら大丈夫だと思うから、出てきて。何があっても、一華は振り向かずに森に進むの。絶対に、約束」


 なぜここまで念押しされているのか理解できていなかったが、一華は彼女からの圧に押されつつ頷いた。


 彼女の反応を見て、真理は満足したような満面な笑みを浮かべ外を見た。


「本当に、何があっても、振り向いたら駄目だからね」


 最後に言い残した真理の言葉を、一華と曄途は次の彼女の行動により瞬時に理解し、引き留めようとした。


「まっ――」


 だが、遅かった。


 外を覗きタイミングを計っていた真理は、ちょうど教師達が全員滑り台から目を逸らした時を見計らい、外へと駆けだした。


「あ、見つけたぞ!! 糸桐だ!」


「っ、逃げたぞ! まだ、蝶赤と白野はどこだ。別れて隠れていたのか!?」


 教師達は一瞬で真理を見つけ、捕まえようと追いかけ始める。

 一華は咄嗟に真理を追いかけようとするが、曄途が彼女の腕を掴み止めた。


「待ってください。今出て行っては駄目です」


「でも、真理をこのままにしていたら捕まっちゃう!」


「糸桐先輩は、時間を稼いでくれているんですよ! 出て行ってしまったら、糸桐先輩の行動が無駄となります!」


「でもっ!」


「糸桐先輩との約束、守らないつもりですか?」


 曄途から向けられたグレーの瞳と、放たれた言葉に言葉が詰まる。

 顔を俯かせ、下唇を噛んだ。


 彼女の震えが掴んでいる手に伝わり、曄途はするりと手を離す。


「蝶赤先輩、森に行きましょう。そこに行けば、必ず現状は変わります。必ず、プラスに働くはずです。ですから、今は女神の場所に行きましょう。黒華先輩も待っているはずです。先輩が助けてくれるのを」


 覚悟を決め、前に進もうとしている曄途を見て、一華は顔を上げ外をちらっと見た。


 そこには先ほどまでいた教師が半分程度いなくなっている。

 真理がうまく引き離してくれたとわかる。


 真理は運動が得意で、バスケ部では次期エースとまで呼ばれていた。

 その真理が本気で逃げ回っているのだから、そう簡単に捕まることはないだろう。


 真理が作ってくれた最大のチャンス。

 ここを逃せば、もう動けなくなってしまう。

 せっかく逃がしてくれた陽の気持ちも無下にすることとなる。


 強く歯を食いしばり、拳を握る。


 数秒、曄途は俯いている一華を見ていたが、彼女がゆっくりと顔を上げグレーの瞳と目が合わせた。


「…………わかった。必ず、女神様に会いに行ってやる」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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