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大丈夫

 今日は昨日から降り続いている雨により屋上で食べれない一華と真理は、屋上に続く階段に座りお弁当を広げていた。


 前までは曄途と優輝も一緒だったが、今日は来ない。

 昨日の出来事もあり、来ないのも仕方がないと真理は罪悪感に見舞われていた。


「昨日、私、言いすぎちゃったのかな」


「そんなことないと思うよ。ただ、まだ私達はお互いに知らないことが多かっただけ。その人の考え方や過去、今までの努力がわからなかっただけ。ただのすれ違いだよ」


 おかずを口に運ぶ手を止め、一華は俯き冷静を何とか保ち言う。

 彼女の言葉を納得できない真理は、自分を責め膝に顔を埋めてしまった。


「私のせいだ。自分の考えばっかり押し付けて、二人の事なんて知ろうとしなかった。私が一番、二人の事を考えてなかった。私が……」


「真理…………」


 顔を埋めている真理の頭を優しく撫で、一華は何を言えばいいのか考える。


 このままでは、せっかくの繋がりがなくなってしまう。

 今までの楽しい時間が消えてしまう。


 真理とは四人の中では一番長い付き合いで、優輝とはまだ数か月。曄途とはまだ一か月程度。


 お互いを知るにはまだまだ時間が必要。

 だが、知ろうとする前に土足で相手の心を踏み荒らし、自身の気持ちを押し付けてしまった。


 助けたいという気持ちがかえって人の繋がりを絶ってしまう結果となり、一華の瞳には透明な涙の膜が張る。


 このまま何もかもがなくなってしまうのなんて絶対に嫌だ。

 そう思いながら真理の頭を撫でていると、階段へと近づいて来る足音が聞こえ始めた。


 徐々に近づいて来る足音、一華が下を向くと黒い瞳と目が合った。


「やっぱり、ここに居たのね」


「侭先生……」


 階段を上ってきていたのは、一華と真理の担任である侭朝花。

 一華が名前を呼んだことにより、真理も顔を上げ朝花を見る。


「なんか、今日は元気ないなぁって思ったけど、どうしたの? 何かあった?」


 二人の前に座り、頭をなでながら朝花は優しく微笑み問いかけた。


 優しく温かな手、声。

 今まで抱えていたモノが朝花の温もりにより解かれ、目の縁に溜まっていた涙が零れ落ちる。


 一度出てしまった感情は抑えられず、二人は涙を拭きしゃくりを上げ泣き出した。


 嗚咽を漏らし泣いている二人を、朝花は包み込むように抱きしめ、背中をさすり安心させるように何度も何度も伝えた。


 ”大丈夫だよ”――と。




「「すいませんでした」」


 数分泣いた二人は、ハンカチで涙を拭きながら隣に座った朝花に謝罪をした。


「大丈夫よ。何か悲しい出来事があったのでしょう? もしよかったら話してみない?」


 笑みを浮かべ二人に聞く朝花に、一華と真理は悩む。


 二人が悩んでいることは、曄途と優輝のプライベートと言えるところ。

 勝手に他人に話しても良いのか悩むが、二人だけでは優輝と曄途を助けることは出来ない。そう考え、一華が代表して話し出した。


 体育大会での出来事、屋上での話し合いなどをかいつまんで話すと、朝花は「そう」と階段の下を見つめ相槌を打った。


「大変だったわね」


「いえ、大変だったのは白野君と黒華先輩です。私は何も出来ませんでした」


 目を合わせる事が出来ず、二人も顔を俯かせる。

 二人の後悔しているような表情を見て、朝花はクスッと笑った。


「人を助けたいと思うのはいい事よ。その気持ちは忘れてはいけない。でも、今回は少し急ぎ過ぎてしまったわね」


 一拍開け、朝花が笑みを浮かべ優しく語り出した。


「白野君は、中学校の頃から執事達のお世話になっていたみたいなの。家庭訪問や参観日。親が参加する行事はたいてい執事の方が来ていたわ。なぜご両親ではないか聞くと、母親は病気で他界、父親は仕事人間らしく、白野君に構ってあげる時間を作れなかったみたいなの。だから、父親とあまり話したことがなかった白野君にとって、優輝の言葉は心に刺さるものがあって何も話せなくなってしまったんだと思うの」


 後ろに手を付き、天井を見上げる朝花に、一華と真理は目を向け首を傾げた。


「どうして黒華先輩はわかっていたのでしょうか。白野君の過去や境遇を」


「詳しくは知らなかったと思うわ。現状と白野君の様子、話で推測しただけだと思うの。優輝は。他人の感情、視線、言葉には人一倍敏感だから」


「え、そうなんですか?」


「えぇ。優輝は過去に色々あってね。一度精神を壊しかけているのよ」


 悲しげに告げられた言葉に、二人は目を大きく開き驚いた。


「精神、を?」


「そうなの。詳しくは、あの子の意思で話さない限り貴方達に伝える事は出来ないけれど、これだけは忘れないでほしい。優輝は、そう簡単に一度繋がった大事な繫がりは、そう簡単に断ち切るなんてしないわ」


 一華の問いかけに、笑みを浮かべる。

 その笑みは物哀しげに見え、今にも消えていなくなってしまいそうな儚さを感じた。


「安心して。白野君なら大丈夫よ。だって、今、頑張っているみたいだから」


「え、頑張っている? それってどういうことですか?」


 真理からの質問にも、朝花は笑みを返すだけで何も言わない。


 何を隠しているのかわからない二人は、ただ顔を見合せるだけ。

 その時、またしても階段に足跡が聞こえ始めた。


「侭先生。もう午後の授業が始まって…………って、貴方達、これは一体?」


「ごめんなさい、紫炎先生。悩みを抱えている生徒の話を聞いていたらこのような時間になってしまったわ」


「はぁ、それなら仕方がないですが…………」


「それより、白野君はどうかしら。大丈夫そう?」


「あ、あぁ。今日も朝、私の元に訪れましたよ。カメラを握りしめ、真剣な表情で親と話す方法などを聞いてきました。どういう風の吹き回しなのかわかりませんが、いい傾向には進んでいるんじゃないかなと」


「それならよかったわ」


 朝花と陽の話を聞いて、最初は何のことか理解出来なかった二人だったが、彼の言葉を頭の中でかみ砕きやっと理解した。


 瞬間、一華と真理は今日初めての笑顔を浮かべ、顔を見合せた。


「だから言ったでしょう? 白野君は大丈夫。あの子は強い子、貴方達がたきつけたのだから、もう大丈夫よ」


 笑顔で朝花は言い、立ち上がり階段を降りる。

 背後からは二人の喜びの声と、お礼の言葉。


 朝花は振り向き、笑顔で手を振りその場を後にする。

 陽が慌てて追いかけると、一華と真理は笑顔を浮かべお弁当の続きを食べ始めた。



 屋上から降り、朝花と陽は廊下を歩く。

 何も話そうとしない朝花に、陽も何も言えない。


 気まずい空気が流れ、陽はぽりぽりと頬を掻いて、よそを見ながら朝花に声をかけた。


「そういえば、悩みは解決できたのでしょうか」


「蝶赤さんと糸桐さんでしたら大丈夫かと思いますよ。白野君も、紫炎先生が見てくださっているので大丈夫でしょう。問題は、残された一人だけです」


「残された一人、ですか? それは一体どなたでしょう?」


 質問された朝花は一度足を止め、窓の外を見る。

 いきなり止まった朝花に首を傾げ、陽も止まった。


「どうしたのですか?」


 彼の質問に答える声はない。


 朝花は雨が降り注ぎ続ける外を眺めながら、今にも消えてしまいそうな程か細く、かすれた声で誰に届けるでもなく言葉を零した。


「残り一人は、もしかしたら――……」


ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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