表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

序章(1) 私の日常

「姫様、おはようございます」

「・・・・おはよう」

「本日は三名でございます」

「・・・・そう」

私はいつも通り、真っ暗なドレスを着せられた。

「・・・・この1ヶ月の出来事は?」

「はい。大事はございません」

「・・・・集会は、どうなったの?」

「変化はありません。減らした分増え、プラスマイナスゼロ、でございます」

「・・・・そう」

気になっていることを聞き終え、私は部屋を出た。

少しの間、真っ暗な廊下を歩き、唯一光が漏れているドアを開ける。

「月光姫がいらっしゃいました」


私の前で行われることは、絶対に許されないこと。

そんなことはわかっている。

けれど、私にはどうすることも出来ない。

・・・・今、この瞬間も、そう。

「皆の者、面をあげよ」

私がそう言うと、そこにいる誰もが、幸福感と好奇心を宿した目を私に向ける。

・・・・そしていつも、それらの瞳は光を失い、私を地面から見上げるのだった。



「次も必ず来るように。父をこれ以上苦しめるな」

「・・・・はい」

そう返事をして、私はその部屋を出る。

使用人と一緒に自室に戻り、白いドレスに着替え、バルコニーに出た。バルコニーの下では、多くの支持者(ファン)が集会をしていた。

「げ、月光姫だ!月光姫様がお見えになったぞ!」

たった一人に見つかるだけで、私には多くの視線が向けられる。

それを確認して、私はバルコニーを足早に去った。

「姫様、今日はもう、お休みになられますか?」

「・・・・ええ」

「でしたら、お手伝いをさせていただきます」

そう言って使用人が、私を寝巻きに着替えさせた。

「おやすみなさいませ」


使用人が部屋を出て行ったのを確認して、私は深いため息をついた。

今までの私のため息が詰まった自分の部屋の空気は暗く、重い。

その暗い部屋を照らすのはいつも月明かりで、いつも、なんの嫌がらせだろうと思うと同時に、月を恨む。

遠くの異国では、月を愛でる風習があるらしいが、それは、なぜなのだろう?これほどに憎らしいものを、なぜ愛でれるのだろう?

何度思ったかわからない問を考えながら、私はまたその空気を吸った。

そして、あの日を思い出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ