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第一章(9) 私の立場と次会う場所の提案
「なんでも!君の正体が明らかになったら、僕が大変なことになるんだよ?それだけならまだ良いけど、君が変な輩に怪我でもさせられたら、僕は責任が取れない」
そ、そうだ。私はいつも、お父様にバレなければそれで良いと思っていたけれど、そうじゃない。
「すみません、考えがそこまで至らず」
「いや、ここに呼んだのも僕だ。まさか一人で来るとは思って無かったけどね」
「すみません」
一人で来るな、それは防犯上、当たり前のことだろう。けれど、私はそれが出来ない。周りの女中すら、出来ることなら私の面倒など見たくないだろう。そんな女中達にこんな様子を見られでもしたら、絶対にお父様に言われてしまう。それが女中達の善意であっても、私はそれを望んでいない。
「それなら今度は何処かのカフェで会おうか」
今度、そんな言葉が聞けると思わなかった。だけど・・・・。
「すみません」
断らなければならない。
私は謝って、席をたった。
「デルティーア!」
私を呼ぶ声が後ろでする。
だけど私は、その声に振り向くことは出来ない。
私は一人、馬車の待つ場所へ向かった。