表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌姫  作者: イリ―
8/8

エピローグ


 心を目覚めさせるようなパイロの炸裂が起こると、観客は一気にボルテージを上げる。


 この場にいる誰もがカシムを見ている。


 この場にいる誰もがカシムを求めている。


 この場にいる誰もがカシムの歌声に心を震わせている。


 聞こえているでしょう。私を求めている声が。


 今この世界の多くの人が私を必要としている。


 私は何も持っていなかった。


 あなたは何もかもを持っていた。


 見えるだろうか、あなたの両親もあそこにいる。


 あなたの居なくなった穴を埋めるように。二人には私が必要だったから。


 私の名前はあなたの名前。


 (いびつ)に並んだあなたの名前。


 あなたの名前で私があなたの夢を叶えた。


 もうすぐこのライブも大成功で幕を下ろす。


 聞こえるでしょう、この歓声が。皆が歓喜している手拍子が。


 カシムはまた一つ大きなステップを上がる。でも、それは些細なこと。


 何一つまともに持たない私だったけれど、あなたの夢を叶えたの。


 私の目的は歌手になることだったのだから。


 あなたじゃなくて私が叶えた。


 周りを見て香澄。これがあなたの欲しかったもの。


 あなたの欲しかったものを、私が手に入れた。


 世の中の理不尽は思うよりも遥かに多くて。


 きっとこれからも、もっともっと理不尽なのに違いない。


 だけど私は耐えられる。


 だってあなたがいるのだから。


 いつだってあなたがいたから私はやってこれた。


 苦しい時も、悲しい時も、いつもあなたがいてくれたから。


 私にはあなたが必要だ。


 もしかしたら、全てを失ってしまうこともあるかも知れない。


 それでもきっと大丈夫。


 私にはあなたがいるから。


 あなたがいてくれるから私は救われる。


 璃子は小さく嗤った。


 だって、


 私は、


 ――生きているのだから。





 終



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ