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第6話

『なんだか不気味ですね』

『こえー……』


 恭介さんの言葉に、いざなぎは腕を擦って怯えているが、声は弾んでいる。

 二階に行く気満々なのが分かる。

 いざなぎか懐中電灯を行く先に向けると、昔ながらの角度が急な階段が映し出された。

 登り切った先には、年季の入った木目の天井や蜘蛛の巣が見えたが……特に気になるものはない。

 そう思ったのだが……。


「まずい……何かいる」


 僕にははっきりと分かる。二階は本当に危険だ!

 慌ててチャット欄に『危険だから行かないで!』とコメントをしたが、一瞬で流れてしまう。

 同時接続者は予想通り二千人を超えていて、さらに三千人に到達しそうだった。

 人が多い上、盛り上がってきたチャット欄に書き込んでも、僕の声はかき消されてしまった。


「……そうだ! 恭介さんのSNSのアカウントにメッセージを送ったら、見てくれるかもしれない!」


 僕は絵を描くのが好きで、いざなぎのファンアートを描いてはSNSに投稿している。

 嬉しいことにいざなぎがよく反応してくれるし、この前は歌枠のサムネとしてイラストを使ってくれた。

 その時に恭介さんとSNSでやり取りをしているので、連絡したら目に留めてくれるかもしれない。


『配信見てます! 二階は危険です! 今すぐ離れてください! その霊能力者はあてになりません!』


 どうか僕のメッセージに気づいて! と願いながら画面を見ていると、恭介さんの「お?」という声が聞こえた。

 もしかして……見てくれた!?


『なぎ君なぎ君、大変です! 君のお気に入りの絵師さんから連絡きてます! 二階は危険なので、すぐに逃げて欲しいそうです!』

『え!? 神絵師のゼロさん!?』


 チャット欄にも『歌枠サムネの絵師さん?』という声が流れた。


 ゼロというのは、僕が使っているSNSのアカウント名だ。

 名前が『れい』なので『ゼロ』という安易なネーミングである。

 僕の絵柄は持ち前の根暗さが前面に出ている暗いもので、モノクロが多い。

 万人に好かれるタイプじゃないが、いざなぎの好みには合っていたらしい。

 絵は趣味でやっているだけだし神絵師ではないのだが、そう言ってくれるのが嬉しい……って、照れている場合じゃない!


『でも、ニート霊能力者がいるよ?』

『絵師さんいわく、ぽんこつでただのニートらしいです』


 そこまで言ってないが……まあ、ぽんこつで間違いないと思う。


『なぬ……? どなたか存じませんが、失礼ですね! わたくしにはちゃんと霊能力があります!』


 いや、だから……胸に女の頭をつけて言われても、まったく説得力がない。


――絵師さんでしゃばるな

――二階行かないなら配信終わっちゃうじゃん

――黙ってもろて


 いざなぎの配信を楽しみたいリスナーから顰蹙を買ってしまっているが……やっぱり止めないと!

 再び恭介さんにメッセージを送った。


『そのニート、女性に恨まれて生霊が憑いてます』


『あ、絵師さんから続報です! ニートが生き霊に憑かれている……女性に恨まれている、とのことです!』

『え? 恨まれてる?』


 いざなぎがニート霊能力者に不審な目を向けたが……。


『それはたぶん母ですね』


 ニート霊能力者の返答を聞いて、チャット欄には『wwww』と笑うコメントが一斉に流れた。

 大草原再び、である。


『働け! って念か。お母さーん、今働いてるから許してやってください!』


 いざなぎもそう笑っているが……そうじゃない!

 すぐに反論する。


『違う。セーラー服っぽい襟も見えたりする。すごく若い。多分実際に会ったことはない人』


 恭介さんは、すぐに僕から届いたメッセージを読み上げた。

 すると――。


『…………え?』


 ニート霊能力者の顔が凍りついた。


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