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【完結】私を甲子園に連れてってで人生変わりました  作者: マイヨ@電車王子様【11/25発売】


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番外編(前編) U-18世界野球大会

時系列だと18話冒頭あたりの話です。

 9月1日


 穂高南高校の甲子園初出場、初優勝。

 そして、初山タカシの日本最速球速の記録に人々が酔いしれた興奮が冷めやらぬ中、ある話題が新聞やテレビニュースで取り上げられ、ちょっとした騒動に発展していた。



 『U-18世界大会メンバーに初山選手の名前なしの衝撃!!!』


 『指揮は甲子園初戦敗退のGL学園監督。甲子園での意趣返しか!?』


 『日本代表事務局への苦情 数千件に』


 総勢12カ国が参加する、U-18世代別代表の世界野球大会が9月5日からアメリカで開催されることとなっているのだが、甲子園優勝投手である俺が選ばれていないことに、人々が反応し、いわば炎上状態になっていたのだ。


 「いや~炎上してますな」


 俺、初山 タカシはまるで他人事のように、教室の中でスポーツ新聞を広げてつぶやいた。


 「そんな他人事みたいに言うなよタカシ」


 朝にわざわざスポーツ新聞を買って学校に持ってきた、俺のバドミントン部の親友 幸太があきれたように言った。


 「お、スポーツ新聞って、けっこうHな写真もあるな。幸太のむっつりスケベめ」

 「せっかく買ってきたのにその言い草か!!それよりいいのか放っといて?それ……」


 幸太が指さす先には、同じクラスで幼馴染、甲子園ではバッテリーを組んだ一心がスマホでSNSを眺めながら、ドンヨリとした瘴気をまき散らしていた。


 「どうした一心?腹でも痛いのか?」


 「ああ、腹は痛いさ。悪い意味でな」

 「良い意味での腹痛なんて無いだろ」

 「焼肉食べ放題でしこたま食べた後の腹痛は良い意味だ」

 「なるほど。で、一心はスマホで何を見て腹が痛いんだ?」

 「エゴサーチしたら死にたくなった……」


 「ばか!!エゴサなんてするなって、あれだけ言ってただろ」


 「今回はせずにいられなかったんだよ。

  お前のU-18日本代表の選外は俺のせいなんだから……」


 「は?なんで一心が関係あるんだよ」


 「記事にちゃんと書いてあるだろ!!代表監督の談で、タカシが選外の理由は、タカシの球が捕れる捕手が代表選手にいないからだって!!」


 U-18日本代表の監督であるGL学園高校の監督によると、この世界大会は甲子園終了直後で、スケジュールがタイト故にメンバーが集まって練習するということもほぼ出来ない。


 そのため、代表に選ばれた捕手が、俺の最高球速167km/hの球に慣れる時間が無く、危険なためメンバーには選ばなかったということだ。


 俺としては至極納得できる理由だ。当初は正捕手だったチームの主将の茂雄も、俺の球を補球することが出来なかった。

 球速云々とは別に、俺の球特有の伸びやナチュラルムービングは、捕球をかなり困難にしているらしい。

 現状、俺の球を受けられるのは、幼少期から俺の球を受けていた一心だけだ。


 「つまり、あれか。この監督の談を受けて、一心もU-18日本代表に選ばれてれば問題解決なのにって騒いでるのがいるのか」


 「タカシと一心の二人を出場させるための嘆願署名活動なんてのがネット上にあるらしいぞ」


 幸太がスマホを見ながら、また一心のお腹が痛くなりそうなことを言った。


 「ちとトイレ行ってくる」


 力なく立ち上がり、前かがみで教室から出ていく一心と、ちょうどすれ違う形で教室に可南子が入ってきた。


 「どうしたの?一心くん。具合悪そうだったけど」


 「トイレだと。この記事を見たせいだよ」


 俺が幸太のスポーツ新聞の当該記事のページを開いて可南子の顔の前へ掲げる


 すると、可南子は無言で顔をみるみる真っ赤にして固まった


 ん?

 反応がおかしいな……


 何故か嫌な予感がした俺は机にスポーツ新聞を置くと、そこにはセクシー女優の新作宣伝で、デカデカとその女優のきわどい水着グラビア写真が載った記事が。


 見せるページ間違えた……


 ド・セクハラを可南子にかましてしまった俺は一目散に教室から逃げ出した。


 なお、何の罪もない一心の方が風評被害が大きかったことは言うまでもない。

 人の噂も七十五日。まだ一日目だけど頑張れ一心。




―――――――――――――――――――――――――




 世界大会についての炎上から数日後。


 世界大会へ向けてメンバーたちが現地に出発した辺りで、ようやく炎上状態は解消された。こちらは七十五日も経たずに解消された。


 そんな折、俺は放課後に校長室に呼び出されていた。


 また、大学の推薦かプロのスカウトの話でも来たのかなと校長室へ出向く。

 最近はこういうのも慣れたもので、物おじせずにノックをして校長室へ入る。


 すると、部屋の中には校長と川本監督、そして一心がソファに座っていた。


 校長と監督がいるのはいつも通りだが、一心がなぜ?

 そしてなぜ2人一緒でなのか?


 あれか?

 先日の可南子へのド・セクハラがとうとう、校長の耳に入ってしまったのか!?


 ブワッと嫌な汗が出てきた。


 「悪いな初山。急に呼び出してしまって」


 川本監督のこの感じ……

 良かった。この感じは怒られる感じじゃないわ。


 胸をなでおろす俺をジトッとした眼で一心が見る。


 一心はまだ俺のことを許してくれなくて、最近口をきいてくれない。


 あの後、可南子には謝ったし、周りにも、一心は学校のトイレでそんなことする奴じゃないって、誠心誠意説明したんだけどな。


 「二人ともよく聞いてくれ。私のところに先ほど電話があった。相手はGL学園の杉浦監督からだ」


 説教ではないが、嫌な予感がした



 「初山 タカシ、畑中 一心 両名へU-18世界野球大会へ緊急の参集要請をするとのことだ」


 まさかのドンデン返しに、思わず俺も目が点になった。


 「そんな!!ようやく世論も落ち着いてきたのに何で今さら!?」


 一心も驚いたのか思わずソファアから立ち上がる。


 「一心落ち着きなさい。二人はU-18世界野球大会を観てたか?」


 「俺は野球観るのそんな好きじゃないし観てません」

 「俺はストレスになるので、世界大会関連の情報をシャットアウトしてました」


  はぁ……と川本監督が溜め息をついて俺たちに説明してくれた。


 「日本は予選グループを勝ち上がり決勝へ進んだそうだ。

  だが、悪い事に怪我人が続出してしまったそうでな。

  原因は、特定国との試合のせいだ」


 「特定国?」


 「国名をそのまま呼んではいけない彼の国ですね」


 「ああ……」


  何とも歯切れの悪い物言いの川本監督

  大人になると色々しがらみがあって大変そうである


 「話を進めるぞ。本来この世界大会は未来の代表に国際試合の経験を積ませるというのが主目的で、全体的に和やかな雰囲気の大会なんだが、その特定国だけは違ってな。敵愾心むき出しで試合に臨んでくるそうなんだ。」


 「よく聞きますね。

  勝っても負けても、こっちが嫌な気分にさせられるという……」


 「それで、先日その特定国との試合があってな。

  ピッチャーが2人も負傷退場させられたらしい」


 「ピッチャーをどうやって負傷退場に!?」


 「打席が回ったピッチャーの手元に死球、

  ピッチャーの1塁カバーリング時に走者と接触だそうだ。

  あと捕手もクロスプレーでやられたそうだ。

  選手生命を脅かすようなケガでなかったのが不幸中の幸いだ。

  ちなみに、特定国側は故意ではないと言っているらしいが……」


 話の流れが見えてきた。


 しかし、そんな凶暴な奴らと野球するなんて御免である。


 「そして決勝の相手は、またしても特定国。

  負けたら終わりのトーナメントだから、より攻めは苛烈になることが予想される。

  それで、テコ入れの追加メンバーとしてお前たち二人が選ばれたんだ。

  決勝は3日後。GLの杉浦監督は、急な話だから断ってくれてもいいと言ってるが」



 「辞退しm「やります!!行かせてください!!」



 は!?


 「自国の代表に選ばれるなんて光栄です。是非、俺たちに行かせてください!!」


 一心が俺を遮り、胸に手を当てて、心打たれたみたいな表情で勝手に返答する。


 「おお!!さすがは、甲子園優勝の黄金バッテリー!!素晴らしい気概だ」


  校長が手を叩いて喜んでいる。


 「おい、一心!!何勝手に」

 「タカシ。この間の俺の風評被害の貸し、この話受けるならチャラにしてやる」


 ぐ……こいつ

 ここで、そのカード切るとかズルいぞ

 それに、その事についてはちゃんと謝ったじゃんか……


 「風評被害?何のことだ?」

 

  川本監督が一心に尋ねる。

  マズイ!!


 「ああいえ大丈夫、こちらの話です。受けます受けます。招集に応じます」


 俺は一心の前を遮り、そう食い気味に答えた。




―――――――――――――――――――――――――




 「なんでお前と二人きりで海外旅行に行かなきゃならんのか」

 「旅行じゃないぞタカシ。世界大会だ世界大会」


 憮然とした顔で、俺は飛行機の窓際で頬杖をして外を眺めていた。

 真っ暗で何も見えないが。


 俺たちはあの後、大急ぎで最低限の着替えやパスポートを準備し、当日の夜出発の便に乗ったのだ。


 「そもそも、どうして一心が世界大会行きたがったんだよ。

  あんなにお腹痛いって言ってたのに」


 「悩みのタネが万事解決されたからな。俺の力不足で代表入りできないからタカシが出場できないってのがプレッシャーだったけど、二人とも呼ばれたからタカシも無事に出れる。これで心置きなく世界大会を楽しめる」


 「俺は不安だよ。殺人野球に巻き込まれるかもだからな」


 「コンディションは万全だろ?ここ数日投げてないんだから」

 「自主練でお前が俺をシカトして受けてくれなかったからな」

 「あははワリィワリィ。もうノーサイドだから」


 「そういえば、可南子さんとはちゃんと仲直りできたのか?」


 「みっちり説教されたぞ。

 あ!!お詫びに、また勉強教えなさいよねって言われてたのに、ブッチしちまった」


 「あ~あ。可南子さん可哀想」


 帰ったらフォローしとかないとな。




―――――――――――――――――――――――――




 「タカシがアメリカ行ったってどういうことよ幸太君!?

 ウソつくならもっとマシなウソをつきなさいよ!!」


 「ウソじゃないって。一心と一緒に昨夜飛行機で出発したらしいぞ」


 「二人きりでアメリカ旅行!?ちくしょおおおぉぉぉぉ!!!」


 まるで、高校生活最後の打席で三振した球児の如く、地面を叩いて本気で口惜しがる可南子を、幸太はあきれた顔で眺めていた。

 場所は玄関で、今は下校時間。可南子の姿は悪い意味で目立っていた。



 「どうしたんっすか幸太先輩?これ」


 「ああ、美穂。これか?いつもの病気だ」


 もはや後輩の美穂からもコレ呼ばわりされる可南子だが、タカシ関連になると周りが見えなくなるのは、親しい者にとっては周知の事実であった。


 「例の野球の世界大会に呼ばれたんですよね?誉れなことじゃないっすか」


 「けど、ちょっと心配なんだよな。ネットの情報によると、この世界大会に参加してる特定国との試合で、日本で負傷者が複数出たらしいんだ。それもピッチャーばっかり」


 「え!?それってタカシは大丈夫なの!?幸太君」


 「俺もネットの情報だけだから何とも」


 「む~~ん……よし!!決めた!!私もアメリカに行く!!」


 「もう夏休みは終わったぞ。タカシと一心は公休扱いだろうけど、可南子はズル休みになっちまうぞ。」


 「さすがに外国に女子高生の娘一人で行くのは、親が許さないと思うっすよ可南子先輩」


 「じゃあ、私はただタカシの帰りを待つことしかできないの!?

  今こうしている隙にも、むこうの国の泥棒猫が跳梁跋扈してるかもしれないのに!!」


 「大丈夫っすよ可南子先輩。向うの国では初山先輩は別に有名人ってわけじゃないんですから。

 っていうか寧ろ、これからが大丈夫なんすか?

 初山先輩が一番仲好い女子が可南子先輩ってのは、校内の皆が知るところですが、同時にまだ二人が付き合ってないってことも知れ渡ってるんっすよ」


 「うむぅ……他の子との優位性って言うと、私がタカシの連絡先を握っていることかしら。

 タカシは甲子園で名が売れちゃってから、本当に少数の人にしか連絡先伝えてないみたいだし」


 「それだ!!初山先輩に応援メッセージを画像付きで送りましょう」

 「応援画像ってどんなの撮ればいいのよ?」

 「簡単ですよ。初山先輩にHな自撮りを…うげふぅ!!」


 美穂のみぞおちにに可南子の肘鉄が入った。


 「えっちいぃのは却下!!この間、タカシを説教したばっかりだし!!」


 「注文が多いっすね。けど、そういうのに忌避や嫌悪感ばっか示してると、理解のある彼君でも、いずれ離れていくことになりますよ」


 「うう……そりゃ、私だってそういうことに全然興味が無いわけじゃないけど……」


 モジモジする可南子に、しょうがないなと美穂は胸を叩いた。


 「じゃあ、受験勉強で忙しい可南子先輩に代わって、私が内容や衣装を考えて用意しときますよ」

 

 「美穂。あなたを新部長にした私の目に狂いはなかったわ。ありがとう。頼りにしてる」


 「御意のままに!!」



 ニヤリと笑う美穂を見て、こいつ何か企んでるなという事に幸太は気づいていたが、タカシ不在時の可南子の面倒を見るのは御免だったため、素知らぬ顔で気づかないふりをした。


今年の甲子園は東北勢初優勝で盛り上がりましたね。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 甲子園初戦敗退の学校はGL学園では?
[一言] 2人とも、パスポート持ってたんだ
[良い点] 一気読みさせていただきました。 テンポも良く、とても面白かったです。 続きも楽しみに読ませていただきます。
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