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【完結】私を甲子園に連れてってで人生変わりました  作者: マイヨ@電車王子様【11/25発売】


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14/23

第14話 甲子園初戦

最終話まで書き溜め完了したので完結保証 1日2話投稿です

8月はじめ。

 夏の甲子園の抽選会が行われた。

 抽選会には全員行く必要はなかったのだが、主将の茂雄から注目選手なんだから来いと言われて俺も連れてこられた。


 県大会ではシード、準シードといった形で、強豪校同士が序盤から潰し合うということはないのだが、全国大会では純粋にクジだけで組み合わせが決まる。故に、一回戦から全国に名だたる強豪校同士が当たる好カードだなんて盛り上がることもある。そして、時にはこんなことも。


「まさしく死のブロックだな」

「初戦にGL学園で、勝っても二回戦で明和か稲大付属かよ」

「さすがのクジ運だな主将は」


 クジを引いた茂雄をこれでもかと弄る他の部員

 茂雄は頭を抱えていた。


「無名初出場校の俺らにとっては周りは皆、有名校みたいなもんだろ」

「そうそう。練習試合申し込んだって絶対お断りされるよ」

「ならラッキーじゃん。折角当たって砕けるなら、相手は派手な方がいいぜ」


 主将を弄る余裕や軽口を叩くくらいだから、みな余裕があるな。

 初出場だからもっとガチガチになるかと思ったが、杞憂だったようだと俺は胸を撫で下ろした。


 なお、他の部員達に余裕があるのは、タカシというエースピッチャーがいるから、そこまで酷い試合にはならないだろうという、他の部員からの揺るぎない信頼があったからだ。




―――――――――――――――――――――――――




 GL学園は、周囲に何もない隔絶された山間部に校舎とグラウンドがあり、野球部員は全員が野球推薦で入部し皆が親元を離れて寮に入る。

 彼らは厳しいルールの下で過酷な毎日を過ごす。故に、それらの生活に耐え抜いた選手たちは強い精神力を持つことができる。


(あの過酷な日々を逃げ出さずに耐え抜いた自分たちは強い)

(あの先輩から与えられてきたプレッシャーと比べたら、こんな場面おそるるに足らない)

(自分たち以上に辛い日々を乗り越えてきた学校はあるまい)



(((  だから俺たちが負けるわけがない!!! )))


 過酷な経験に裏打ちされた自信は揺るぎない。


 全国から有望な選手を集め、当該都道府県の地元出身の選手がほとんどいないことに対して批判的な意見もあるが、15歳の少年が親元を離れる人生の決断をすることは、とてもすごいと思う。


「俺が高校選んだ時なんて、県外の高校受けるなんて考えもしなかったな。南高も家から自転車で通える範囲で、学力レベルもちょうど良かったからだし

ましてや野球部が少々強いかなんて、高校を選ぶ上で心底どうでも良かったな」


 フッとつい苦笑してしまった。

 そんな自分がこんな所にいるギャップに思わず笑ってしまったのだ。


 そして、意識を目の前のピッチャーに向け、バットを構えた。




(なに笑ってやがる)



 マウンドに立つGL学園のピッチャーは思わず下くちびるを噛んで、打者である相手エースピッチャーに鋭い眼光を向けた。

 相手は無名の選手だった。突如として現れた今大会の最速投手。

 全国レベルで特に強い投手というのは、リトルやシニア時代ですでに全国的にも名が知れている選手であるというパターンがほとんどだ。

 また、強い選手同士は世代別日本代表の召集で一緒になることもあるため、有望選手同士はある程度顔見知りだったりする。

 そういう意味では今の相手投手は、一切と言っていいほど前情報がない。これほどの選手なのに。


(俺も自分は野球の才能があると思ってたんだがな……)


 先ほど自身の打席で体感した、相手エースピッチャーの球を思い出しながら、ボールを握った左腕を振りぬいた。



(カーンッ!!)



 木製バット特有の乾いた高音の打球音を響かせて、球が弾き返された。

 打球の行方を一目見て思う。


(投手が……こんなのアリかよ)


『一回戦 GL学園高校 対 穂高南高校 9回表 投手の初山選手から本日二本目のホームランが飛び出しました。得点 0-4 追いかけるGL学園は最終回に追いつけるか』


『GL学園は正直苦しいですね。ここまで完全に初山選手に抑えられてますからね』


『本日の試合では3回裏に投げた159km/hが最速ですね。GL学園の強豪の選手でも打てないものなんでしょうか?』


『マシンの球なら前に飛ばせる選手もおるでしょう。そういう速球を打つ練習もしてます。けど人間が投げる球は、マシンから放られる球と違って生き物のように千差万別なんです。

キレや伸びがとんでもなく凄いのは、マウンド側から見ても一目瞭然。バッターボックスで見るそれは、もっと凄いでしょうね』


 テレビの解説陣と同じことをバッターボックスにいるGL学園の選手も思っていた。


(初山はカーブすら持ち球にないストレート一辺倒。これは打者に次に投げる球種を宣言しているのと同義。なのに……)


(ブンッ)


これが打てない。バットに当たらない。

巧みに球が散らされて狙いどころも絞れない。

高めの甘い球が一切来ない。


なにより、一級品のストレート

間違いなく、自分の野球人生で一番のストレートだ


(この球をバッピに使ってたとか何の冗談だよ。

 南高の打者はとんでもない経験値をここ数か月で積み上げたようなもんだ。

 けど、うらやましいな。願わくば……)



「試合じゃなけりゃ、俺もこのストレートに、ただ見とれていたかった」



バットが虚空を切り、試合終了のコールが審判よりなされた。




―――――――――――――――――――――――――




『地方公立校が名門GLを下して甲子園初出場初勝利』

『出た!!今大会、最速159km/h 野球歴3ヶ月 衝撃の天才ピッチャー』

『ノーヒットノーランと本塁打2本』

『セパ両リーグ 今年のドラフトの目玉か!?』



翌日のスポーツ紙に大々的に記事が載った。

そして朝のワイドショーにて当該のスポーツ紙の記事が取り上げられた


『本日の注目記事はこちら』

『出た!!今大会、最速159km/h。大きな見出しですね。件の選手の名前は初山タカシ選手。高校生でMAX159km/hというのは信じがたいのですが、さらに驚くべきはこちら。野球歴三ヶ月』

『コメンテーターの三浦さん。これは俄かには信じがたいことですが…』


司会のキャスターがコメンテーターの三浦に話をふる。

壮年のベテラン弁護士だ。

『実はソフトボール部だったとか、ずっと怪我してたのが最近治ったとかじゃないの?』

『インタビューによると、高三の4月まではバドミントン部だったと』

『バドミントン部!?本当に野球全然関係ないじゃないの』

『で、バドミントン部を引退した五月から野球部にバッティングピッチャーとして入ったと。そこで頭角を表したということなんです』


『それで甲子園出場』

『はい』


『投げたら159km/h』

『昨日は二本ホームランも打ってますね』


『マンガなら編集から、現実味がないってボツくらう設定ですね』

同じくコメンテーターで漫画家の山本は、手を叩いて笑っていた。


『しかし、この球速ならプロ球団が放っておかないでしょ』

『大学かプロ行くかですよね』

『初山選手は勉強も出来るらしく、番組独自の取材によると、難関国立大学を受けるつもりという話だそうです』

『いやいや属性てんこもり過ぎでしょ。』


『世の中には想像の上を行く人がいるんですね。それでは次のコーナーにまいります』




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