※物語りが始まる前に※
ミズルディア・ディラングリーは元々はソロの、ハンターだった。“トレジャー・ハント”だ。つまりお宝探しだ。昔々の大規模地殻変動により埋もれた産物は方々に在る。其れ等を探り出し掘り出す。そんなハンターだ。別にソロ・ハンターを気取ってなった訳では無い。相棒が見付からなかっただけだ。仲間にするべき技量の人間に出会わなかったと言い換えるも良し。兎に角彼女は独りだった。が、
其処に転機が遭ったのは、ポニア王国跡の瓦礫を探索中の時だった。二人組の所謂冒険者と遭遇したのだ。
其の折には特には何の事も起こらなかった。ただ、遭遇したに過ぎなかった。けれど何故か彼女はその後、幾度か此の二人組と他の探索場所に置いても遭遇を繰り返す事と為ったのだった。不思議な事に。
二度目に遭遇した際には、一度目に素っ気無かった彼女の態度も、やや変化した。いや、気味悪そうに二人組を見たのだった。此れには流石に悪気も無い冒険者野郎共は気を悪くしたものだ。けれど、違う刻程も時を同じくはしなかったので、二度目はそれで終わったのだ。けれど、
四度目が謂わば“転機”だった様だ。二人組の片割れが下手を打った。其れを補助したのが彼女だった。
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「‥、え? また貴方達? ‥‥どうなってんの?」
“ミズルディア”は美しい額に皺を寄せた。そしてそう発したのだ。思わずだった。珍しくも肩より少しだけ長い髪を、今日は纏めていた。“ロォーリィディアズ・ティラピスト”は、そう思った。ついでに言った。
「よお、お嬢さん。又会ったな」と。
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「‥‥ええ、そうね。“ティラピスト”さん。“良いお天気”ね。」と、
ミズルディアは返したのだった。此れは皮肉だ。前回顔を合わせた際に、ロォーリディアズが言ったのだ。“土砂降り”の遺跡の瓦礫の下で。彼の返しは予想と違った。“今日は髪型が違うな”と彼は平然と返して来た。‥‥‥‥ミズルディアは呆れ返った。だが敢えて其れにはもう触れなかった。
「マールさんも、ごきげんよう。それとも些か“不機嫌”かしら?」
と、彼女はロォーリディアズの相棒の男へ向かって、言ったのであった。言われた男の方といえば、急に掛けられた言葉に返す言葉が思い付かなかった様で、ただ、黙っていた。特に無口な訳では無い。だが戸惑ったのだ。結果、黙った。そして益々発言を見失った。結果“不機嫌”にも、見え無くは、無いのだった。




