格闘技の話しです 空手編
「大川!」
「渡辺先輩!」
試合場に立つ二名に対して数名が声援を送る声がこの一回廊下にも響いて来る。
この試合の後は自分の番だと考えると落ち着きが無くなり肩や胸辺りがゾワゾワとしてる。
『緊張しているな。』
彼は既に何度も頭の中で繰り返した言葉をまた繰り返し、そしてこの場に立って何度繰り返した緊張を解こうと無意味に手先足先をぶらぶらと震う動作を行う。
不意に後頭部辺り気配を感じると膝を曲げ頭部部身を低くした瞬間。
「ブォン」
風切り音が耳響いてきた、即座に後ろ向くとスーツ姿の男が立っていた。
「緊張してガチガチかと思ったが今のかわせる程度には力が抜けてるか。」
中年代のその男はそう言うと彼に笑顔向けた。
「緊張を解くつもりで後頭部軽く平手打ちする積もりだったんですか不意打ちで?。」
試合直前に何にするだと思いながらな言うと。
「いや拳で殴でやった。」
その言葉に目を丸くして。
「何考えてるですか試合前に館長!。」
やや声を荒げて館長と呼んだ男に怒ったような態度を取る、スーツ姿の男は笑顔をから真剣な眼差しの顔に変わると。
「文句は後で聴く試合終わったぞ。」
会場から判定で21番大川選手の勝ちと言う声が響いて来た、拳進館と刺繍されたジャージの男性が名前を呼ばれたら試合場に上がってくださいと声をかけられる。
「文句は後で言いますからね。」
いつ名前を呼ばれるか分からない為それだけ言うと会場入り口のドアの前に向かう。
館長と呼ばれた男はその際の僅かな動きから。
『緊張は少しは解れたみたいだな。』
と思い口元だけで軽く笑みを作った、眼差しは自分が試合をするかのような眼で。
「ゼッケン23番、松澤 練選手。」
名前を呼ばれ試合場に上がると押忍と試合場、そして審判に礼をし中央に移動する。
『さあ、何処までやれるかな。』
自分より後に名前を呼ばれ試合場に上がって来た対戦相手を見つめた。
地元で開催されているフルコンタクトの拳進館空手のオープントーナメントの初戦が始まろうとしていた。
「両者構えて。」
主審が向かう会う両者に言うとお互い構える、相手は両脇をしっかり締め軽く膝を曲げ構えるオーソドックスなフルコンタクト空手の構え。
対して練もオーソドックスなフルコンタクト空手の構えでは有るが、左手を対戦相手より前に出すような型にし、重心はやや後ろ左足も相手より足一つ分程前に出した構えだ。
「始め!。」
主審が開始合図をする、「ドーン!」と太鼓が打たれる。
『相手は聞いたことも無い他流、上段蹴りだけ喰らわないようにして先ずはどんな動きするか見る。』
上段蹴りを警戒しながら速攻で間合いを詰める、だが相手は動かない。
『相手も様子見か?なら。』
拳の届く間合いに成る、練に向かい前進の勢いも加えた右手下突き繰り出す。
勢いがついてる為威力も有り隙も少ない初手、上段蹴りを出しにくい程間合いを詰める腹に突きのラッシュを仕掛けて来た。
「なっ?。」
思わず声が出た、右下突きが当たると思った瞬間体が、右拳が大きく左側に逸れた、それに流されるように体も左側に若干流された。
「ドス!」
身体に衝撃が来た、右脇腹に相手の右拳が辺り捻り込まれる。
条件反射的に左下段回し蹴りを放つが右足が前に出されたヒットポイントをズラされたる。
そだけでは無く右足を前に出す動きから溜めを、腰を捻じり力と速度を出す為の下半身の済ませると振り打ちで再び右脇腹に拳を放つ。
「くっ。」
ガードが間に合う、右肘と腕の間に痛みが奔る。
『間合いを空け。』
そう考えた瞬間左膝が上がるのが見えた、上段回し蹴りが来ると咄嗟に左腕を上げガードするが。
「バターン!」
ガードの上から効かされ、頭部を襲った衝撃で視界は暗くなり倒れてしまう。
だが倒れた瞬間に視界は戻り意識もしっかりとしている。
主審の「待て」の声が聴こえる素早く立ち上がり構えお取るがその瞬間意識とは関係無く膝を付いてしまう。
『息が…出来ない、まさか突き二回で効いたのか?』
時間すれば5〜6秒では有る、その僅かな時間肺が空気を取り込まない為に膝を付き立てなかった。
立ち上がろうとした直前。
「一本、それまで!。」
主審の声が会場に響く。
時間にして13秒、松澤練の見事な一本勝ちである。
「いやー強い。」
試合を主催者席、関係者席で観ていた白髪混じりの男、松田 圭相世界最大のフルコンタクト空手団体、拳進館空手2代目館長が声を上げる。
一見肥満体型に見える広い肩に背中、しかし高齢からか脂肪が付いてるの確かだがそれ以上に筋肉が付いて居るためスーツ姿だと肥満体型に見えてしまう。
ただ十数年前辺りから腹に脂肪が付きだして出ているを本人は気にしてるいが。
「館長はこの流派の師範をご存知みたいですが元うちに居た人間ですか。」
隣に座る3〜40代の男が聴く、すると松田圭相は懐かしい顔を思い浮かべ。
「彼の父親が先輩でね数年一緒に稽古した仲なんだよ、彼が辞めてからも付き合いがあって小さい頃から知ってるんだよ。」
そうですかと納得するとそろそろ始まる次の試合を観戦する為に視界を試合場に向ける。
その横で一瞬鋭い眼光を無石にし小さな声で。
『たがら無理言って彼に出場して貰ったんだけどね。』
「まさか瞬殺で勝つとは思わなかったわ。」
そう言いながら彼女は練の肩を叩く。
セミロングの髪揺れる程の勢いで数度バシバシと笑顔で叩いて来る、何度も。
「痛いから辞めろ。」
座って居た会場となっている市設の体育館の据え付けの椅子から立ち上がり1メートル程距離をとる。
試合会場の控え室前の廊下、廊下も人7〜8人並んでも歩ける程広いため道着姿の参加者の一部と関係者の姿が在る場所で叩くか?と顔を睨む。
「怒るな怒るなゴメンね、嬉しくてつい。」
「ついじゃねーよ。」
タイプ的には可愛い顔立、もしくは健康的な美人の彼女は数原 すみれ。
松澤 練の高校からの同級生にして彼が習う信進流空手の師範、道場一つの小さな流派だが流派は流派。
館長と言うべきだろう、2代目館長数原 英明の娘である。
肩を何度も叩いた行動からも基本いい子なのだかガサツと言うかヤンキー気質的な所が有る。
それを知ってるゆえ、何度も叩かれてた時は怒っていたが既に怒りは無く手が出るほど自分の勝利を喜んで居る事を嬉しく思った。
「でっ人生初試合初勝利の感想は?。」
嬉しそうな目して聞いてくる。
「勝てたのは嬉しいけどなんか実感が湧かない、ただ。」
「ただ?。」
「自分がどの程度か試したい、そんな事言ってこの大会に出たんだ。
カッコつけたぶん、一回勝てたから良かったかなと。」
弱気とも取れる発言にすみれはムッとす、彼女の見立てでは彼は強いのだから、いい加減人身を持って拳進の黒帯秒殺だったんだから。
なんか文句言いたくなる、そして言おうとした瞬間。
「そろそろ森山 斉試合が始まるぞ。」
館長が近付きならがら声を掛ける、返事をして小走で館長ち近くとそのまま客席の方に向かう。
その後を館長が追い文句を言いそびれたすみれが2人を追いかけた。
国際空手連盟拳進流空手
フルコンタクト空手最大流派で有る、現館長松田 圭相の人力より創設者で有る前館長の時代からあった分裂独立騒動。
その騒動から別れたいくつの流派を再びまとめ上げかつての最盛期と比肩する規模になっていると言われている。
試合ルールは腕による頭部攻撃禁止、金的禁止、掴み禁止、掴み禁止のため相手を背負う抱える投げ技も禁止と言う俗に言うフルコンタクト空手ルールで行われている。
そのルールで拳進館は4年に一度世界大会を行なって居る、そして去年。
世界大会優勝者で有る森山 斉の試合が始まろうとしていた。
試合場客席の奥壁際に三人は並んで立ち、試合場に立つ木山の姿を練は凝視する。
身長179㎝の森山対し相手は若干身長が高いようだ、両者が主審に促され構えをとる。
両者オーソドックスな肘を脇付けているようなフルコンタクト空手の構え。
「始め!」
主審の掛け声と共に太鼓が叩かれて試合が始まる。
数秒お互い動かず睨み合うと相手が右上段回し蹴りを放った。
蹴り脚はが森山の顔に迫るが当たる事無く空をきる、そして蹴り終わりまだ片足が宙に浮いてる状態の相手に。
「ドガ」
右中段回し蹴りを放つ。
腕に当たり衝撃が脇腹から腹部に伝わり、片足状態だったためバランスが崩れる。
倒れ無い用に上下反射的に右足を大きく後ろに伸ばしたような体勢に成る。
「バチィ」
その瞬間に森山の左下段回し蹴りが伸びた右足を襲う。
とっさに左拳を森山の腹部に放つ。
木山は相手胸部に右拳を放つ、放った拳を引かず押し込む。
体が押される、押されながら右下段回し蹴りを放つ。
読んでいた森山はガードすると左右両拳で相手の腹部に連続して突きを入れる。
反撃で突きを返すが手数が違う、一発返す間に3〜4発突きを入れられる。
押され下がる、だが間合いが開く、上段左回し蹴りを放つ。
森山がガードすると右下段回し蹴り、左下段回し蹴り、右中段回し蹴りと続ける。
痛みで顔が歪んで居るのが解る、歯を喰い縛り突きを返そうとするが。
「ドガ ドガ」
胸部に右正拳、腹部に左下突きが放た。
まるで押し出すような重い拳の一撃で胸部を上体を仰け反らされて一歩大きく後退させられる。
仰け反り踏みとどまった直後に下突きが腹部に突き刺さり堪らず2歩後退する。
「場外、待て。」
主審が止め両者を中央に戻す。
「直で見る凄さが解る」
練の言葉に館長と呼ばれていた数原 英明が返す。
「ああそうだな、派手さは無いが一つ一つの技が重く撃たれて強く受けも上手い。
試合時間3分の中相手を押して押して押しまくるスタイルの為、一本勝ちが少ないから地味なんて言われるが、3ラウンド制か1試合10分とかなら一本勝ちは3倍は増えてるだろうな。」
練は試合を見ながら聞いていた。
試合はお互いが付き合い蹴り合う展開、ただ森山は表情を変えず相手の顔は苦痛に歪んでいる。
木山の右下段回し蹴りが入ると耐えきれず背を見せ片足でタンタンと跳び間合いを開けた。
すぐさま向き合い構えるが主審が『技有り』と言う。
その後は再びお互い正面か撃ち合うが森山の突き蹴りには重さが無く、あえて相手の攻撃を受けている様に見える。
そして試合終了を知らせる太鼓と主審の声が響き判定が告げられる。
「勝者、ゼッケン1森山斉。」
空手式の礼をお互いし試合場から出る際も再び礼をし2人は下がる。
森山の方には数人に囲まれてインタビューお受けて居る、テレビカラメを担いで居る物もいる。
その様子を壁際から練達3人が見つている、見つめながらするれが。
「決勝まで行ければあの人と試合するのね。」
話しかけてくる。
「ああ決勝まで行ければ、行けたらいいけど。」
「弱気ね?、自分で出たいて言ったから出てるでしょ。
優勝する自身あったからじゃ無いの?。」
すみれは練の顔をみる、次の試合が始まって居るが練は試合よりインタビューを受けている森山の方を見ている。
真剣と判る眼差して森山を見ながら。
「自分がどの程度強くなったか知りたいから出たいて言っただけだよ。
出してくれたて事は試合に出れる程度には強くなってたて事ですよ館長。」
話しを振られ館長、英明は「ああ、そうだ。」と答えた、それ聞いた練は。
「だから今自分はどの程度通用するか、もっと上を目指せるのか、世界一の空手家と負けてもいいから試合をしてためしたかったんた。」
インタビューが終わったらしく森山が会場外に出て行く、それ最後まで練は見えなくなるまで目で追った。
英明館長は。
『本音なんだろうが・・・意外と負けず嫌いと言うか闘争心に火が付くと根性入れられるからな。』
入門しばらくの、組手稽古をした際の技も体力も無い状態で手も足出ないのにフラフラになりながら自分向かって来た姿を思い出していた。
『オヤジの試案と工夫が間違いじゃ無ければ、一回だけなら良い勝負か、運が良ければ勝てる筈だが。』
そんな事を考えながらトーナメント表を見る。
関東無差別オープントーナメント
拳進会は体重別の全日本大会と、無差別級で行う全日本大会の二回全国大会を開催してる。
体重別は4階級で行われて居るが無差別級は文字通り体重無差別で行われ、この大会は無差別級の予選も兼ねた地方大会で有る。
この大会はでベスト4まで残った選手は全国大会本戦への出場拳が与えられ。
ベスト4以下で1回戦を突破している選手の中から実力を認めてられれば推薦枠として全国大会に出場出来る。
体重別、無差別問わず全国大会ベスト8者は3年間予選免除の権利が与えられるのだが、去年行われた世界大会優勝者、体重別無差別で連続優勝を果たしている今現在拳進会最強の男、森山 斉が出場している為で有る。
去年の上半期に行われた体重別の大会で肋骨を折ったのが、世界大会にむけ無茶をし稽古を続け完治が遅れ。
完治していない状態で世界大会に出場するも優勝を勝ち取ったがその後治療に専念。
本来なら出場しなくて全国大会には出れるのだが、組手稽古不足から調整目的で出場したのである。
『言いはしないが世界王者と戦ってみたいから出場したいなんて言いだしたんだろな、ただ。』
この大会は関係者や格闘雑誌等から全国大会の前哨戦と言われていた。
ゼッケン29神谷 樹雄。
10代から頭角を現している次代の王者候補筆頭、国内No.2とも言われる選手である。
世界王者と国内No.2が出場している、ゆえである。
『松田館長親父尊敬してたからな、多分それで俺や練の奴過大評価して出場させたな。
次勝てたら準優勝で間違いなく当たるし。』
心の中でぼやいた。
「他流に舐められんな!」
「田中気合だ!」
対戦相手への声援が響く、自分と歳は近そうだか身長は176㎝有る自分より頭一つ分高いなと、練はやや左手と左足を前に出す構え取りながら考えていた。
『自分よりここまでデカい人とは初めてだな。』
相手の田中は手を下げ上下に体を揺らしている。
「始め!。」
主審の合図と開始合図の太鼓が響く。
相手が右足を前に動かすと素早く左膝を上げる。
『届く?』
足一足分程後に下がる、練の眼前に左足先が迫るものの当たらない。
素早く足を引き床を踏むと軽く飛ぶようにステップをし間合いを詰め、再び左膝上げると足を捻り軸足をズラし左上段回し蹴りを放つ。
腰を落とし身を下げる、頭上を蹴り脚が通過する。
素早く一歩相手の右側に動く、相手も素早く手を下げ体を上下に揺らす最初の構えを取る。
『思ってた以上にやり難いな、なら。』
練が一歩踏み込む、相手の左前蹴りが腹部に向かって放たれる。
「ドッガ」
右腕で受け止める、突き出す、突き蹴り飛ばす軌道の前蹴りに前進する勢いが一回止まるが。
練は素早く一歩前進し間合いを詰める、左下突きが放たれるが右腕で受ける。
右下突き、左腕で受け止める、相手の体勢が自分から見て左肩を向けて真横に成った瞬間。
右上段回し蹴りが放たれた。
「バチッーン!」
頭部を狙った蹴りが両腕に当たる、当たた瞬間。
『コツ』
田中の耳に硬い物が当たるような音が聞こえた。
「痛っ。」
数瞬遅れてアゴに痛みが走り思わず声がでる、相手を見る。
右膝を上げて居る体勢、足先の角度。
『ブロックした直後に横蹴りを入れたのか。』
驚く、蹴りを受けた僅か間に蹴り返して来た事に。
『身長差のせいで間合いミスた。』
練は練で稽古でも普段蹴らない高さの横蹴りを放った為め高く足を上げる分、その分詰め無ければならない間合いを詰め損ねた事を悔いつつ。
右足を踏み込み左正拳突きを打つ。
腹部に力を込め耐える、だが。
『重い。』
衝撃が響く、そこら左中段回し蹴り、肘曲げ受け止める、重くバランスが少し崩れる。
右の正拳突きと左正拳突きが腹部に刺さる、来る事は読めていため力を込めて耐えるが、衝撃に後ろに下がる。
右下段回し蹴りが来た、足を上げる受けが間に合わない為意識を左太腿当たり向け力を入れ耐える。
全ての攻撃が重い、とにかく距離を取らなければと前蹴りを顔に向け放つ。
練の両腕に足が当たる、顔に来るとは予測していなかった為咄嗟に腕で受けに行って間に合ったが。
上体を仰け反らされてしまた、視界が自身の腕と相手の足で遮られて居る、即座の連撃を警戒して左足を後斜め左側に出し右足を後ろに引く脚運びで間合いを開ける。
警戒した連撃による攻撃も、間合いを詰める動きも無く此方の引く動作が終わると体を上下に揺らす構えをとった。
上体を仰け反らされてしまた、視界が自身の腕と相手の足で遮られて居る、即座の連撃を警戒して左足を後斜め左側に出し右足を後ろに引く脚運びで間合いを開ける。
警戒した連撃による攻撃も、間合いを詰める動きも無く此方の引く動作が終わると体を上下に揺らす構えをとった。
『身長差を活かして間合いも保つ戦法か。』
練は少し間合い開けると左に少しづつ動くき間合いを保つ、十数秒その上体が続く。
田中が動く、間合いを詰め左前蹴りを腹に放つ。
左足を下げ後ろに下がりかわされらは、間合いを詰め今度は上段左回し蹴りを放つ。
右足を右斜めに下げような動きで後ろに下りかわされる、続けて右上段回し蹴りを放つが左足を下げる動きでかわされるが。
蹴り終わりの体勢を利用し踏み込込む、先程より間合いを縮め胸部に左前蹴りを放つが。
『ドッ』
練が動く右足を前に出して間合いを詰める、右肩辺りに衝撃が来るが勢いが出る前に当たった、当てたので踏み止まれる。
左足を僅かに上げ踏み込み振り打ち、フックのような軌道の左突きを腹部に当てる。
続けて右下段回し蹴り、左突きを胸部、右下突きを腹部に当てる。
喰らいながら右膝が練の頭部めがけ放つ。
「ブン」
耳を膝がカスめる、ついで脇腹を狙い右膝。
『え?。』
当たると思った膝が空を切る、間合いが開いている。
練は左足を滑らすように前進させながら右正拳突きを撃つ。
それに気付き後方に飛び退こうとするが。
正拳突きの方が速く「ドン!」と胸部に衝撃が響きその衝撃で押されバランスを崩し後ろに派手に倒れる。
「場外!待て。」
場外に押し出されていた、練が背見せ中央に戻る背かなを見ながら一瞬右正拳突きを喰った胸に手お当てる。
『後ろに引きながら喰らった突きなのに効いてる、突きの重さが見ため以上だ。』
どうすか?、中央に戻り構えながら考える。
「始め!。」
主審の合図と同時に動いた後ろ右回し蹴り、練は引いてかわす。
蹴り終わりと体勢を素早く整えると右中段回し蹴り、後ろに引きかわされる。
素早く左前蹴り、これは牽制であり空を切る、蹴り終わると右足を前に詰める左上段回し蹴り。
これも左後方に下がるように間合いを開けてかわす。
『リーチ差活かして近寄らせない、手数で攻める。』
かわした直後に前進してくる右下段回し蹴りを放つ。
「パチン」
足の甲が当たるも掠めただけ、連続して右下段回し蹴りを放つがこれは空をきる。
間合いが開いてたタイミングを測り右足を一歩前進すると左足を大きく伸ばし掲げ軸足をズラし練との間合いを少しでも詰める動きをすると、眼前に振り下ろした。
カカト落としが空を切る、一瞬お互いの動きが止まると右後ろ回し蹴りを放つがこれも空を切る。
『リーチ差を活かし相手の間合いの外から蹴り続けて手数で判定勝ち狙いなんだろうが。』
次の試合の為に選手通路の入口で立っていた彼は試合を松澤 練の観察していた。
田中の右上段回し蹴りが空を切る、構え直し右上段後ろ回し蹴り続けて左前蹴りを放つが当たらない。
『後ろ回し前に出した左足を引いて下がってかわし。
左前蹴りは田中から見て左側に右足を下げかわしてる。
今だけじゃなく引いてかわすさい左右の動きが入ってる、センスがいいのか足運び意識て相当稽古したのか、なかなか出来る動きじゃ無い。』
左上段回し蹴りが空振る、相手は右中段回し蹴りを出そうとした瞬間に練は仕掛けた。
間合いを大きく詰める、相手の右中段回し蹴りが迫る。
「ドッ」
軽い振動が体に響く、蹴り足に対し両腕防ぐような体勢で受け止める。
相手が僅かにバランスを崩す、予想外の近い位置で蹴りを受け止められたためだ、その隙に胸部に左横蹴り。
「ドン」
蹴りが当たると素早く右突きを放つ、突きが当たる、相手が下がる。
右下段回し蹴り、左足が蹴りの衝撃で大きく右に流され体が左肩を向けるような半身を向けた体勢に成った相手に左膝が上がる。
練の動きにとっさに腕を上げ上段回し蹴りが来るに備える。
「ドス」
左脇腹に若干斜め、三日月蹴りと言われてような起動に近い前蹴りを当てる。
蹴り足をそのまま踏み込み間合い詰める右上段回し蹴りを放つ。
だが当たると思った相手の頭部が下がり空振り、相手が下がる間合いが開く。
間合いを詰め左の突きを放とうとしたが、練は動きを止めた。
「待て!、場外!。」
主審が止める、田中が場外に出たためである。
『痛てぇーしやっぱり重たい。』
痛みに歯を食いしばりながら中央に向かう、数発当たっただけなのに効いている。
打撃に押されてる形で二回場外に押し出されている、技ありこそ撮られて無いが判定なれば負ける可能性が有る。
田中は主審の始めの掛け声掛かると同時に右上段回し蹴りを放つ。
練は少し踏み込むと腕で受ける、打撃のポイントがズレてるため苦もなく防ぐと右上段回し蹴りを蹴り返す。
片腕でガードするも先程の蹴り足が床に着く前蹴られためよろめく。
その隙に練は左下付き右突きと素早く放つ、相手も右下突きを打ち返すが腕受け止め速さ重視で左右の突きを放つ。
「ドッドドッドッドドド」
胸部腹部脇腹、時に拳を開き一瞬だけ腕を抑えるような軽い掌底突きのような突きを混ぜ、相手の動突き返そうとす動きをき押されながら。
神谷はその動きを見ながら試合を自分なりに解析していた。
『手数と動きの起りを抑える、流石に三回押されて場外に出たら技有り取られるからな踏みた止まってる。
だがあれだけ一方的に殴られればその内止められるしもう時間が無い。』
田中が練の顎めがけ垂直に右膝を繰り出す。
練は突き連打のため若干前のめり気味だった上体を伸ばすし更に顎辺り手の平をかざす。
右膝は練の眼前を横切る、次の瞬間右足をほんの僅か浮かせる。
「ドーン!」
「それまで!。」
太鼓の音と主審の声が響く、試合が終わったのだ。
試合場の2人は主審に促され中央に立つと判定を待つ。
拳進会ではどちらも一本取れず試合が終了した際に、更にどちらも技ありをどちらも取っていない、もしくは一つずつ技ありを取っている場合は判定となる。
試合場の四隅に居る4人の副審が引き分け込みで判定を降す、判定は手数、相手に与えたダメージ等を見て判断を下される。
勝ちと判定した審判の差が2人以上居た場合はそのまま勝敗が決まる。
2:2、または2:1で引き分けが1などの場合2人以上の差が無かった場合主審も判定、引き分け込みで勝敗を判定する。
引き分けの場合は3分延長戦、それで副審の判定まで行き決着が付かない場合は主審がどちらかを勝者して判定しなければならない。
ただし7キロ以上体重差が有った場合は軽い方が勝者と成る。
判定と言う主審の声に試合上四隅に居る4人の副審が旗を上げる、判定は3:1で練の勝利が決まった。
礼をし試合場を降り練は選手用通路を早歩きで進み会場を出る。
その背中を見ながら神谷は気合を入れてる。
『身長差が有る試合に慣れてたら一本勝ちしてたな、一回戦の試合見る限り攻撃も重そうだ。
強いなあいつ館長が出場してくれてと頼む訳だ、昔程じゃ無いとは言え他流が地区大会とは言え決勝や準決勝まで行かれたくは無いか。』
そんな事を考えながら試合場に歩んで行った。
「よし!勝った!。」
練は両腕を胸前に突き出すガッツポーズを思わず取る、試合に勝った喜びも有るが自分が強くなっていた事に対する喜が心から溢れてくる。
すみれと数原館長が周りに居る拳進会関係を避けながら小走りに駆け寄ってくる。
「わー勝った勝った。」
すみれが満面の笑みで喜び嬉しいさか手を握りて来て上下に振る、普段なら数回で照れて手を引くのだがされるがままし嬉さを伝える言葉を聴いてか聴いて無いか構わず続ける。
「優勝したみたいな喜びようだな、まだまだ試合が有るのに。」
と言いつつ笑顔で数原館長が声を掛けてた、練はどうにか気合を入れてた顔をしようとした、本人は気が付かないが口元が緩んだ顔で。
「押忍、すいません。」
返してしまう、数原館長は仕方ないと思いつつも。
「次の試合始まるぞちゃんと見とけ。」
試合を見るよう言う。
「そうですね、あの神谷さんの試合ですし。」
「あっそうだった。」
練とすみれは通路から試合場が見える位置に急いで移動する、数原は真剣な眼差しに変わった練の横顔を見ながら。
『流石に笑みは消えたか、まあ仕方ない。』
自身も試合場に試合場に視線を向ける、拳進会実質No.2、次代の世界王者候補と呼ばれる男の試合が始まったからだ。