一人芝居 『灯の家』
『灯の家』
監督・演出 ロファ・サーフェ
ラオ、ルクリ、フィア、アルフィス、レト
わしの可愛い子供達・・・
今日はお前達に話を聞かせようほどに
わしがまだ裕福で
そして若くて
ひとりぼっちだった頃の話をね・・・
わしがまだ若かった頃
わしはお城で芸を見せた事があってのぉ
王様はその時に
わしの芸を大層気に入られての
わしは王様の側で
芸をして暮らすことになったのじゃ
当時の王様は
貴族の方々の言うままに
人々からたくさんの物を巻き上げていての
おかげで王様や貴族の方々は裕福じゃったが
人々は皆
いつでもお腹を空かせていたのじゃ
だがわしは王様と共に
毎日を可笑しく楽しく暮らしておった
たくさんのお金を
珍しい物を
芸をする度にもらっておったから
そんなある日
城の宴からの帰り道に
赤ん坊を抱いた母親と
その後を付いてきた
まだ幼い顔をした少年に出会ったのじゃ
母親はわしに泣きつくと
『この子を助けてください』
そう頼み込んだ
わしは子供を見たがひどく衰弱していて
もう手遅れであるのにすぐ気が付いた
それでも
もしこの親子を医者に診せねば
夢見が悪いと思っての
酒に酔った気まぐれと思って
医者に連れて行ってやった
結局
赤ん坊は助からんかった
二人は激しく泣いておったよ
わしはその時
これ以上関わりを持つのを嫌って
僅かばかりの金だけを残して
屋敷に帰ってしまった
今思えばひどい事をしたものじゃ
そして数年の月日が経って・・・
王様はご病気で亡くなり
代わって王の第一王子が王様になっての
新国王は立派で
賢く、優しい方じゃった・・・
悪い貴族を退けて
税率を下げ
人々が苦しまぬ様に努力なされておったので
人々すべてに慕われておったよ
じゃが
わしの居場所は
もはや城の中には無くなったのじゃ
わしは国にとって無用の存在というだけじゃなく
かえって有害な人物だったからじゃ
家も財産も取り上げられ
頼る当ても無く
芸の練習を怠ったばかりに
誰もわしの芸を喜ばないばかりか
王様の側で裕福に暮らしていたわしの事を
人々はひどく責め始めたのじゃ
守ってくれる人もなく
頼れる者を失い
わしはその時初めて
一人が嫌だと本気で思った
みんなが怖いと
本当にそう思ったのじゃ
そんな時
一人の少女が前に出てきて
両手を広げてわしを庇ってくれたのじゃ
『この人にはもう何もありません
そしてこの人は今までの自分を反省しています
だからもう許してあげて欲しい』と
それを聞くと皆
お互いに顔を見合わせて
わしを責めるのを止めてくれたよ
少女はわしを家まで連れて行き
けがの手当てをすると
湯気の立ったスープを
わしに食べさせてくれたのじゃ・・・
嬉しかった
そしてそのスープは
今までわしが食べてきたどんな豪勢な料理よりも
とても美味しく思えたのじゃ
そのうち
少女は母親を連れてきた
わしはその母親を見て驚いたよ
その母親は
昔わしが気まぐれに医者に連れて行った
あの時の母親じゃったからだ
あの時少女は
汚く、痩せていたから
少年のように見えていたのじゃった
しかし、わしにはわからんかった
なぜ自分を助けたのか
そう尋ねると母親は小さく笑い
『あなたはあの時、自分たち親子を助けてくれた』と言った
『妹は死んでしまったけれど
それでもあなたは妹を医者に診せ
妹を弔うためのお金まで残してくれた』
少女は泣きそうになりながらもそう言い
『だから今度は
私達があなたを救う番だ』と微笑んだ
わしは恥ずかしかった・・・
自分の心が醜いとさえ思った
そして二人を見て思った
人とは何と暖かいものか、と
それからしばらく
わしはその家で二人と共に
家族のように暮らした
芸の練習を始め
少女に文字を教え
街の子供達には旅の話をした
そして旅立ちの時
見違えるように美しくなった少女は
泣いてわしの体から離れようとしなかった
母親は娘を慰めながら
わしに言ったよ
『たとえ遠くに離れていても
私達の絆は変わらない』と
わしは嬉しかった
帰れる場所があるという事が・・・
その言葉を聞いてからじゃよ
一人寂しい子供達を集め
一人残らず養子とし
『居場所』と『絆』を作ろうと思ったのは・・・
可愛いお前達 忘れないでおくれ
たとえ遠くに離れる事になったとしても
帰るべき場所はここにある
絆が切れるという事は決してない
ここはわしら家族にとって
大切な『灯の家』なのだからね
さあ、ヒルデ母さんが呼んでいる
夕食の席に着こうか
温かいスープが
わしらを待っているからね・・・
(THE END)




