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命ーしあわせとはー  作者: みる
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過去



 これは、僕の短い人生の話だ。


そして僕は、僕にとって、いや、誰にとっても大切なことに最後の最後に気がついてしまった。


 何が一番大切なのかを。





僕は小さい頃に父を亡くした。記憶がないから分からないけれど、いい父だったんだと思う。なぜかといえば母さんが、父の話をしている時の顔が幸せそうだったのを小さいながらに覚えている。

「お母さん、なんで他の子にはお父さんがいるのに、僕にはいないの?」

なんて事を聞いた時、母さんは困ってたけど

「そうね、お父さんは遠いところに行っちゃったのよ。でもね、僕のこと、ちゃんと見ていてくれているわよ」

そう言っている母さんは辛そうにも悲しそうにも見えなかった。ただその当時の僕は何でかなんてわからなかった。わかるはずもなかったんだ。それは、今になって分かったんだから。

小さい頃の僕は、友達もちゃんといたし、活発なほうだったと思う。保育所に僕は預けられていた。僕は部屋で遊ぶよりも、外で遊ぶほうが好きだった。体を動かすのが好きだったんだろう。よく遊びすぎて、お昼寝の時間にぐっすり寝ていたのを覚えている。

 ああ、そういえばこの頃にはじめて恋をしたんだった。相手は保育園の先生。何で先生を好きになったんだっけな、、、理由は分からないけど、その先生は母さんの次に心が安らぐというか安心できる存在だったんだろう。先生がいるから保育園に行き、先生がいるから家に帰りたくないと駄々をこねる。お昼ごはんは必ず先生のそばで食べる。お昼寝のとき先生に添い寝してもらった時はよりいっそうぐっすり眠れた。園児最後の年、六歳七歳のときも一緒に寝てもらっていた。親よりも甘えられたんだと思う。でも、別れは必ずやってくることを知った。今回は、卒園というわけだ。とても淋しかった。心にぽっかりと穴が開いたような感覚だったんだろうか。まあそれは今になってみてはどうか分からないんだが。


 そして月日が経ち小学三年生の僕にとって衝撃的なことが起こった。それは母さんの死だった。初めて家族を亡くす感覚、いや感覚じゃなく、亡くしたんだ。父のときはまだ小さかったから理解できなかったけど、だからこそ理解できるのは辛い。辛かったけど、涙が出なかった。このときもう一つ理解したことがある。人はいつか必ず死ぬということを。


 母の死をきっかけに僕は変わってしまったんだと思う。身寄りがなかった僕は母方の親戚に身を預けることになった。新しい家では気を使い、遠慮し、僕は自らの居場所をなくしていった。そして友達と遊ぶよりも一人でいる時間を大事にした。性格も内気というか内向的な性格に変わっていった。勉強をしても意味なんてないんじゃないのか、この先僕はどうしたらいいのか分からなくなっていった。


続く

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