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94話 頑張る日々 28「説明と魔法」

次の日、村長が奴隷を皆に紹介するということで広場に集まる。

もちろん奴隷達も連れて来ている。


「えぇ、既に聞いた者もおるかもしれんが、23人の仲間が増えた。理由などはこれからヴィト殿が話すが、その前に決定事項として伝えておく。共同釜は彼等にも使わせる、また、今魔物の皆が開墾してくれている土地も彼等の物である。彼等は現在は奴隷であるが、仕事振り次第では奴隷でなくなる。最後に、今は奴隷の身分だからといって差別することはまかりならん。彼等に非道な真似をする者がこの村にいるとも思えんが、仮にそのようなことをした場合には厳しい罰を受けてもらう。では、後はヴィト殿、よろしくお願いしますの」

相変わらず、村長の声はヴィトの魔法で遠くまで届いているようだ。

後ろにいても聞き取りやすい。

さて、前に行くとしようか。

ヴィトと一緒に演台にのぼる。


「はい、一応共有財産から費用を捻出したこと、そして、先の村長の言葉を伝えるためにお集まりいただきました。彼等はこれから新しい野菜を育てることに従事してもらいます。彼等の仕事は主に農作業です。彼等は8、8、7の家族で、今ドワーフやオークなどが立てている家を住居とする予定です。建築まではアーノルド家近くの大きな洞窟みたいなところ、あれですね、子どもを遊ばせていたところというとお母様方には伝わりやすいですかね、で住んでいます。奴隷の所有者はトールになっています、ではトール続きを」


「続きは僕から。新しい野菜を育てるにあたり人がいないため、奴隷を買いました。買う基準は家族で買われることを条件にしている人達。家族がバラバラになるのは可哀想なので、特に売れ残りやすい大家族を買っています。なので、労働力にならない小さい子もいます」

この言葉にはうんうん、とか、良くやったとかの言葉が返ってくる。

次の言葉を聞いてどん引かないと良いけど。

「彼等には新種の野菜の農法を確立させてもらいたいと思っています。そして、彼等のもう一つの仕事としてそれらの毒見をしてもらいます」

広場が静まりかえる。

もう、なんというか、外道を見る目ですね。

「ただ、動物が食べて大丈夫であること、王都の鑑定士から毒についての結果はもらっているので、万万が一を考えてです」

ここで、ようやく人間を見る目になってくれた。

「ここで、重要なのはここなら龍皇たるハーヴィがいることです。多少の毒も彼の血でどうにかなるという考えで買っていますので安心してください」

ここで、先に言えなどのヤジが飛ぶ程度に広場が温まった。

うるせぇ!話すにも順番があるんだよ!

「さて、奴隷は命令されたことを遂行させようと首輪が彼等を操ります。それに抵抗しようとすると激しい痛みがあるそうです。もし、彼等が痛みに震えているようならば僕に知らせるか、なにかしてください。

ということで、ここで君等に命じます。

1:住居ができるまでは昨日から休んでもらっている洞窟を住居とすること。村内を歩き回っても構わない。

2:村から出たいなどの場合は僕に相談してからすること。

3:万が一理不尽に誰かに暴力を振るわれたら、殴り返してもOK。それから誰にやられたかを僕に報告すること。その暴力を振るった人に罰を与えるため。同様に差別されても同じ。

4:畑ができたら10才以上は真摯に誠実に農作業に取り掛かること

5:体調が悪くなったら教会に行くこと、僕への報告はそれからで構わない。

6:建物の倒壊やら狼の襲来など明確に命の危険を感じたら即離脱をすること。これは全ての命令に優先される。万が一、村が崩壊したり僕が死んだら首輪の所有権は破棄される

7:僕の言うことに従うこと、ただし自身の考えがある場合にはそれを告げること

8:首輪の激痛は僕の許しがなくても村の人の許しがあればその場で開放されるものとする

9:村人に自身から暴力を振るわないこと

と、こんなものかな。

つまり、10才以上は真摯に農作業さえやってくれれば後は好きにして構わないってこと。

10才に届かない子は好きに遊んでると良い。

後、それぞれの夫婦には別の命令が一個あるけど、それは買う時に伝えた一つの不自由ね。

これは後でそれぞれに意味を伝えるよ。

ということで、皆さん、別に僕が好きにしたいから買ったわけではないので、好きになったりしたら自由に恋愛しても良いよ!

ちなみに、彼等への差別、暴力への罰は近くの湖でハーヴィとか魔物の皆のおもちゃになってもらうことね。大丈夫、死なないように加減してもらうから。1週間は陸に上がれないかもだけど。死にたくても死ねないけど、暴力を振るおうとか、無理に自分の恋人になってもらおうとか考えないよね、大丈夫でしょ?」

皆青褪めてコクコクと頷いている。


「ということですので、皆さん新しい仲間を温かく迎えてください。彼等が新しい野菜をしっかり作れるようになれば皆さんの食卓も豪華になるのですから」

と、ヴィトの最後の締めに皆から拍手が起こる。


え、ヴィトに全部言ってもらえば良かった?

やだなぁ、嫌なところは僕が言わなきゃ。


「それと、しばらく、1週間位ですかね、ドワーフ達はこの村で前と同じ様に公爵家よりの森で寝泊りしています。なにか力仕事があれば気軽に声をかけてください。ジャイアントが木を根っこから抜くので開墾には便利ですよ」


「ということじゃ。皆の者時間を取ってすまんかったの。奴隷と言っても、子供の薬のためだとかでその身を落とした者達じゃ。温かくしてやっておくれ、以上じゃ。それと建築の手際を盗みたいからと建築の場に行っておる男衆、向上心は結構じゃが本業を疎かにするでないぞ」


と奴隷のお披露目会は終わった。


その後は小さい子は小さい子同士。ある程度年齢が近い者同士で集まって遊び始めた。僕も久々に参加したところ、大層驚かれた。・・・レイヤとか、前に自分で誘ったくせに参加したら参加したで「明日は雨かなぁ」とか失礼な。最近雨が降っていないし、良いことじゃないか!


・・・

・・・


2日目

雨でした。

割と強い雨でした。

なに!?昨日子どもの遊びに参加したから!??

僕も7つなんですけど!!


スロールに奴隷達への食事をお願いする。

彼女は木の精であるから、嬉々として雨の中を移動してくれる。

今日はどうやら工事はないようだ。

魔物達のご飯はヴィトがどうにかしてくれているらしい。というか、ジャイアントが取りに行くのだと。

ガイル様のところの使用人は驚かないのかしら?

あ、前回もそうだった?

へぇ~、偉い人のところの使用人は恐怖を感じないのかしら?


ということで今日はヴィトに魔法を教えてもらう。

以前の決闘前に教えてもらった魔力の動かし方をあれからも練習していたので、見てもらったところOKをもらえたので、次のステージへ。魔方陣についてだ。


さて、ヴィトによると以下のようだとのことだ。


この世界の魔法は、頭に魔方陣と呪文を正しく思い浮かべ、魔力をそれに注げば、発動する。

魔方陣は基本は円の内側に接するように五芒星を描いた形である。

それぞれの頂点に「火」「水」「土」「風」と属性を定める。

そして、星と円の隙間に呪文を思い浮かべる。(書く)

一番分かりやすいのが、五芒星の頂点の全ての属性を「火」にする。

星と円との隙間全てに「燃えろ」と書く。

魔力を流す。

そうすれば発火する。

たぶん術者も一緒に。


属性を重ねるのは加減が難しい。だから普通なら五芒星の頂点の3つくらいを「火」にする。

残りは「水」や「土」など「火」と相性が悪いものをあえて作る。

星の上3つの頂点を「火」にして下2つを「水」にする。

そして呪文を刻む。

上の2つの隙間には「燃えろ」、こっちを相手に向けるイメージ。

左右にも「燃えろ」、しかし「火」と「水」で繋いだ線でできているからそんなに燃えない。

下には「燃えるな」、こっちを自分に向けるイメージ。

これで自分は燃えないで相手を燃やせる。


とのこと。


また、五芒星だけでなく六芒星でも良いらしい。

むしろ、コントロールが難しくなるが、効果はその分重ねたりなんだりできるので強いのだとか。

また、ひっそりと結界だけでなく、思念伝達を最短にして教えてくれた。

世界の要素、「闇」や「光」といったものも魔法の属性であると。

魔法の属性とは正しくは世界を構成する要素ではないかとも教えてくれた。


じゃあ、こんなのはどうだろうか。


「ヴィト、試しにこの辺にそうだな、風を、小さな竜巻みたいに起こしてくれる?」

とヴィトの人差し指を持ち上げて、その先を示す。


「こうですか?」

目に見えて、小さい竜巻が起こる。


「そうそう、ちょっと試したいことがあるんだ。そのままでいてね」

世界を構成する要素で良いのであれば、上手くできればいけるはず。

「消えろ」

と頭に魔方陣を描くと、それを起動する。

そうして、ヴィトの手から竜巻が消えた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


「よっし!考えた通りだった!」

と思わずガッツポーズ!

魔法が成功したのもだが、考えが当たっていたのが嬉しい。

これならば魔法に関しては、僕は最強を目指せるかもしれない。


「いやいやいやいや!一人で喜んでないで教えてくださいよ、今何をしたんですか!!??」

と悲鳴を上げんばかりの、というか悲鳴をあげるヴィト。

ハーヴィ達もぽかんとしている。


「トールよ、我にも分からなんだ」

とハーヴィ。


「凄いな!トール!凄いぞ、凄いぞ!」

と顔をべろべろと舐めまわしてくれるハーティ。


「・・・これにはお姉さんもびっくりだ」

と目を見開いたスコール。


「トールさんは凄いわね」

と頭を撫でてくれる、スロール。


両親は何が凄いのか分からないらしい。


「ただ、消しただ」

と、父さんが言い出したので、急いで、


「ヴィト、結界をお願い、頑丈めで、なんならこの家を石で囲って!」

とお願いする。


即座に実行してくれる、我等が骸骨。

窓を見ると石がにょきにょき伸びる様が見える。

こういう風にスライムロードはお留守番してくれていたのか。

これは・・・一人だと心細い。

今度、改めて感謝しよう。


そしてヴィトが口を開く。

「そのただ消した、というのがあり得ないのです。逆回転の竜巻をぶつけたわけでなく、空気を奪ったわけでもなし。ただ、魔力で起こった結果を消したのです。これは今までの魔法の常識とは!!」


「僕がいた世界ではこの世界と違う文字が使われていてね」

と僕が言うと、ピタッと黙る。

「この世界は発音を文字としている表音文字、僕のいた世界には意味を文字とする表意文字があった」


「意味を文字に?」

と母さんが首を傾げる。


「例えば、そうだなぁ。『透』これが僕の名前だった」


「ふむ、この一字でトールと読むのか?」

とハーティ。


「正確にはとおるだけどね、しかし、これは別の読みもある。こうすると『透ける』、すけると読む。こちらの方が意味的には正しい読みかな?あとは『透明』とか。葉の裏側を太陽に当てると裏が透けて見える、あの透けるだね。この文字は透明ということを表す一字であるということ。つまり、一文字一文字に意味がある」

だからね、

「世界の要素というならば、僕の世界の言語は強いと思う。何せ、世界のことを伝えるための文字を一文字に集約していたりするんだ。火ならば『炎』の方が強い火力を意味する。この世界でも同じ意味の言葉はあるだろうけど、どれが世界の要素になるかは分からないでしょう?その点、僕の国が使っていたこの漢字という字には世界の要素になりそうなのがごまんとある。発想力で僕は皆よりも一歩先を行くということだね」


「先程のは?」

と骸骨なのに、目が輝いているのが分かる。


「無というのを各所に配置して、隙間には魔力に限るとしたんだ。これで魔力は無になる」


「無?」


「あぁ~、何も存在しないということかな。例えば、死体には魂が『無い』よね?」

と蝋版に書く。

「この『無』というのが、その何も存在しないということを指すんだ」


「ふむふむ、なるほど。発想ですか、確かに攻撃や飲料水、建築ばかりに使っていましたからね。闇と光を見つけた時は我ながらよくできたと思いましたが・・・」


「いや、自力でならばよく見つけたと思うよ。僕のはずるっこだから。だからね?」

皆を見渡して、

「これは秘密ね?」


「世間に発表すれば魔法史にも名を残せますよ!?」

とヴィトが食いついてくるが、


「駄目です。いざという時の隠し武器にします。だから駄目です。とにかく駄目です」

と大事なことなので3回言う。

「皆も知りたいなら他にも役に立ちそうなのを教えるから」


「本当ですか!?」

とヴィトが前のめりに近寄ってくる。


「秘密にすると誓えるなら」


「誓います、誓います!」

もはや他の子達はヴィトに任せるようだ。

今のヴィトに割り込む勇気がないのだろう。


それからは、魔法を使う感覚を練習する為に、ひたすらヴィトの竜巻を消す練習をしていた。

なんでも魔力も使えば使うほど、筋肉のように成長するらしい。

家の中で魔法の練習ができるのだから、我ながら名案だった。

火?論外、水?蛇口が壊れた水道みたいになるかも。土?家を壊す。風?ヴィトは小さい竜巻を作れているけど、僕はまだ挑戦しないほうが良いだろう。

何事も過ぎたるは及ばざるが如し。

どれ位で過ぎたるか分からないのだから、慎重に。


合間合間に使えそうな概念を教える『呪』とか、『力』とか。


夕食後もひたすら魔法の練習が続いた。


・・・

・・・


3日目。

晴れた。

これはこれで彼女の言っていたことの通りになったようで、なんかムカつく。

昨日は魔力切れで途中で力尽きたらしい。いつの間にか眠っていた。

しかし、今日は魔力を探知してみるとちゃんと回復している。

一晩で回復する程度ということか?

それとも皆一晩で回復するのだろうか。


さてさて、いずれにせよ、


さぁ、地獄が始まる。

今日も頑張って乗り切ろうか。

最近スープしか飲んでないからお腹がたぷたぷと言ってる気がするけど。

以下いつもの!


皆さんからの後書き上の「勝手にランキング」の1日1回ぽちっと、感想、評価、いずれも楽しみにしております!作品の中の子達もですが、読者の皆様からの反響もモチべUP要因です、是非ご贔屓に☆


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