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93話 頑張る日々 27「開墾と仕度」

さて、色々あった次の日。

奴隷を買ったことをヴィトに村長へ報告に行ってもらう。

ついでに彼等にも共同釜とかの使用の許可と、彼等用の建物を建てる許可、農地開墾の許可をもらう為である。

ヴィトは割とすんなり戻るといずれも大丈夫だが、開墾と建築に人は出せないだろうから、いつものように魔物に手伝ってもらうように言われたとのことだ。

ついでにガイル様のところにも話をつけてきたらしく、前と同じように働いてくれる魔物の肉や酒は公爵家から買うことに決まった。税が無い分、開墾は好きにしろとのことだ。ただ、新しい野菜の農法が確立し、毒もないことが確認とれたら、また報告に行くことになったとのこと。

魔物はスライムロードに相談し、またスライムキングを何体か作り、ゴブリン、オーク、ジャイアント、ドワーフを連れて来てくれるのに協力してくれるらしい。

そのため、ハーヴィにお願いをして、連れて来てもらってすでに開拓に入ってもらっている。


何故、僕は動いていないのか。

決して、怠けているわけではない。

いささか、ここ数日は最近動きすぎだとのことで、謹慎を命じられているからだ。

だから、朝のジョギングも素振りもしていない。


来てくれた魔物達に感謝の言葉を告げて、我が家へ。

スコール達にお願いをして、充分な食料を買って、奴隷に朝食を差し入れるようにお願いをして、共に行く。スコールが料理を作っている間に、奴隷達に家は現在建築中とのこと、農地も開墾していることを告げて、できる限りここから出ないことを告げておく。トイレは洞窟の外でしてOKだけど。つまりは準備が整うまで好きにしていろということだ。


やったことはそのくらいだ。


今は諸々すんで皆で居間 (?)に集まり久々にまったりとしている。

ので、話を切り出す。


「さて、皆さん」


皆がこちらを向く。


「実はお金がありません」


「?うちはまだ余裕があるわよ?」

と母さん。


「うん、僕も働いているしね」

と父さん。


「それに、何を言っておる、奴隷を買った余りの金があるであろう」

と呆れた顔のハーヴィ。


「あれは奴隷を買う用で共同財産。今は所有権が僕にあるから、食料費などは僕が負担するべきだと思う」


「奴隷のためのお金なら食料費もそこから出すべきであろう。村長が認めたのだろう?文句は言うまい」


「そうかなぁ」


「そうです。それに、私はまだ宝石類を持っていますよ?」

とヴィト。


「うん、でもそれはヴィトのお金だから」


「従魔の物は主の物でしょう」


「う~ん、あまりそういう考え方は好きじゃないんだよね。ヴィトのお金は従魔用に充てて欲しいかな。ついでに言うと、以前買い占めた鉄の剣やら棒やらの代金も払ってません。これも僕の我侭で買ったものだから。つまり、奴隷の食料費を別にしても僕の自由にできるお金がありません」


「それで、鉄の何やらはトールの負債だとしても大した額ではないでしょう、他に何か問題でも?」


「うん、色々やるためには先行投資が必要だから」


「例えば?」

と今日は子猫サイズで頭の上にいるスコール。


「本を出そうと思う」


「本?」


「うん、この前皆に話したようなのを買いて売るのさ。中身は魔物と人間が共存する物語。知らず知らず、魔物は怖くないよと周知させていくの」


「ふ~ん」

と頭の上でぱたぱたと尻尾が揺れる音がする。

尻尾の感触も心地良い。


「それで。そう言うからには何か策があるから言い出したのだろう?何だ?」

と膝の上にいた子犬サイズのハーティが言い出した。


「うん、ダンジョンに行ってみたいと思います」


「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」

父さん、母さんは心配そうな顔。

従魔達は真顔になった。


「それは大丈夫な」

と母さんが言う言葉に被せて、


「トール、それはどういう意味か分かっておるか?」

と真剣な目をしたハーヴィに見つめられる。

さっきまで小龍サイズだったのに、いつの間にか目線を合わせるくらいに大きくなっている。


「・・・一応は、ね」


「そなたの身の安全のことを言っているわけではない」


「うん」


「そなたは言い換えれば、こう言っているのだ。魔物を殺しに行くと」


「・・・うん」


「父君がお主に狩りを手伝わせない理由に気づかないお主でもあるまい」


「・・・うん」


「お主は、その手で、生き物を殺せるのか?」


「ヴィト、結界をお願い、この会話が外に漏れないように」


「分かりました?」

とヴィトが結界で包んでくれる。


「うん、それはね、神様にも心配された」


「父が?」


「生き物が好きすぎるあまりにテイマーになりたいという僕だからね、レベルも上げられないだろうって。だからダンジョンの魔物を倒すと良いって。彼等は魂がないからってさ」


「・・・それで、お主はできるのか?お主を慕う者の姿をした物を、魂がないからといって、破壊できるのか?」


「・・・いつかはやらないといけないと思っている。それが早いか、遅いかだと」


「お主はテイマーだ、従魔に任せるのが正道だ。だとしてもか?」


「君等にばかり、僕が嫌なことはさせられない。させたくない。」


「いつかはやらないといけないと言ったな?何故そう思う?」


「きっと、人間をこの手で殺めることになるだろうから」


両親が揃って息を呑む音が聞こえた。


「何故だ?」


「前も話したように、僕は魔物を集めようと思っている。その方が皆楽だからね。魔狼もゴブリンがいた方が肉を持ち帰りやすいでしょう。荷車とかに載せたりとかさ。そうするとね、絶対人間が魔物を襲いに来る。個人なら彼等に任せよう。だが群れで来たら?国で来たら?僕はそうやって来る可能性も高いと思う。その時には僕が戦略を練ろう。そして先陣をきろう。愛しい彼等のためだ、侵略者には容赦しない。聖書が改訂されたらその原因となった僕を殺しにくる人もいるだろう。以前の信仰を信じている、狂信者とかね。何が原因かは分からない、でも、きっと、この手で殺めるよ」


「お主の周りには我等がいるぞ、そなたを殺させはしない」


「襲ってきた人はどうする?」


「?ん?殺して食うぞ?」


「それが嫌なんだ。僕を殺しに来たのであれば、僕が殺すべきだと思う。わざわざ、人の汚いところを君等に任せたくない」

とハーヴィの首のところを抱きしめる。

「僕の覚悟の問題でもある、優しい龍の長よ、認めてくれないか?」


「・・・我等も付いて行くぞ」


「うん、それはお願いしたい。魂が無いからといって、死体が消えるからといって、彼等の死体を無駄にはしたくない。道中、食べてくれるとありがたい」


「う゛、道中のもの全てか?」


「うん、食べきれなくなったら、荷車で運んで村の食料にしよう。人も増えたし」


「・・・・・・・・・・・・はぁ、分かった、我に異存はない、皆の者はどうだ?」


「我はトールが決めたことに従おう、そこまで考え、覚悟しているならばな」

とハーティ。


「私もハーティと同じです」

とヴィト。


「良いよぉ」

とスコール。


「勝てない相手に出会ったらどうするのですか?」

とスロール。


「うん、君等に任せる。そこの判断もテイマーには必要でしょう?」


「それでしたら、私も同意します」


「・・・・・・うぅん、トール?生き物の命を奪うことは大変だよ?だからこそ、僕みたいな仕事に就いている者がいるんだ。僕も初めての時は、しばらく肉は食べられなかった。大丈夫かい?」

と父さん。


「僕の手で殺したわけではないけど、もーちゃんを食べてるからね。大丈夫だと思う、いや辛いだろうけど大丈夫でなくちゃいけない。あの子のためにも」


「怪我とかはしたりしない?罠とかあるんでしょう?」

と母さん。


「うん、また借金が増えるけど、前のダイスの決闘の時のみたいな防具をドワーフの親方に作ってもらうよ、それに罠とかは皆に任せる。今回はダンジョンの攻略ではなくて、主目的はお金集めだから。目的を果たしたら、すぐに帰るよ」


「皆、やんちゃだけど、トールをお願いできるかしら?」


「「「「「無論」」だよ」です」」


「それでいつ行くのだ?」


「三日後、くらいかな?防具を作ってもらいたいし、胃の中もできるかぎり空っぽにしていきたい」


「武器は?」

とヴィト。


「ん?外の鉄の塊」

と言うと、


「あ~、我等が食う分が残らなさそうじゃが?」

とハーヴィ。


「それは仕方ない、かな。できる限り、頭とか狙うよ。それにあれは盾にもなるから」


「「「「「「「なるほど」」」」」」」


あれは意外と大きいのだ。

槌というか、なんというか。持つところも太く、先の部分はデカイ。僕並にはでかい。

(7才の平均身長は120cm位、この時代だともう少し小さい)

正直、あれでシールドバッシュで大概の物はつぶれると思う。


「ということで、ドワーフの長に頼んでくるよ」


「トール、一緒に行きましょうか?」

とヴィト。


「いや、良いよ、一人で」

とハーティを膝からどかし立ち上がると、


「うわっ」

と頭上から声がした。

あ、スコールがいたんだ。

「もう、気をつけてよね!」


「あっ、はい、ごめんよ」

と頭の上を撫でる。

息遣いから、はふぅとでも言ってそうだ。

「じゃあ、行って来ます」

と扉を出ると、ハーティが大型犬サイズで付いて来る。

仕方のない狼だ。

頭を撫でる。あぁ、さらふわ。


ドワーフの長に以前と同じ様な皮鎧を頼む。

料金は後払いで。


採寸中、


「料金なんざ、原材料分で構わねぇがな、俺は家作りに行かなくて良いのか?」

と長が言う。


「あれ?ドワーフ達だけじゃ駄目?」


「いや、駄目じゃねぇけどな、どうもちゃんとやれているか心配でな」


「前は2日で作れたでしょ、今度は3日だから、気になるなら合間合間に見に行くと良いよ」


「まぁ、そうするかな。っと、終わりよ、3日後を楽しみにしておけや」


「うん、ありがとう、頼むね~」


帰り道に村の、第3の村側の木々が繁る開拓地 (手付かずの土地とも言う)を見てみれば、

ジャイアントが地面から木を根ごと引き抜いている。

人間が枝を落とし、ドワーフ達が印をつけたところをゴブリン達が切っていく。

そうして角材をたくさん作っていた。

根ごと引き抜いてくれるのはありがたい。開墾ではその辺の処理が面倒だと何かで読んだ。

連携も上手く取れている。

とりあえず、ジャイアントは木々を抜くのが仕事らしい。

うん、農地にするのには有効だね、そのまま辺り一面を抜いてくれても構わない。

たださ、

ただね。

・・・相変わらず、人間が混じっているのは何でだろう?村長は出せないって行ったんだよね?

ドワーフの技術を盗みたい人達?

あぁ、勤勉だね。

・・・本業は大丈夫ですか??


見なかったことにして、今日の夜のお話を考える。

今日はいたずら狐が撃ち殺される話にしようかな。

狐は・・・魔狼にしよう、お母さんのために頑張って狐に邪魔された哀れな猟師の名前はどうしようっかな~っと。

皆さんのおかげでブックマーク700突破!

評価人数も60人越え!

いつもありがとうございます(やっほ~ぃ


ということで、次回はトールは初ダンジョン!

果たして、どうなることか!?


以下いつもの!

皆さんからの後書き上の「勝手にランキング」の1日1回ぽちっと、感想、評価、いずれも楽しみにしております!作品の中の子達もですが、読者の皆様からの反響もモチべUP要因です、是非ご贔屓に☆


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