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92話 頑張る日々 26「再開と恐怖」

さて、案内されて稽古場に来たものの、

もう日も落ちようかという時間なのに凄い熱気。

皆さんフルプレートですか、そうですか。

しかも、真剣?・・・いや刃は無いか。でも鉄の塊ですよね。

本当にお疲れ様です。

夏場じゃなくても水分と塩分を補給しましょうね。


見渡せば、一人偉そうに眺めている人がいる。

あれが軍務大臣だろう。

とりあえず困った時のヴィトさんです。

行け、ヴィト!君の出番だ!


「すみません、軍務大臣殿ですか?」


「ん?あぁ、リッチロード殿ですか。私がそうですがどうかしましたか?」


「あ、これからはこの身分証を持っているかを衛兵達にも徹底させてください」


「どれ、あぁ、なるほど。これなら更に安心ですね。それで、これ以外にも何かご用件があるのでは?」


「ワイバーンを・・・そうですね、20匹位貸してもらえませんか?奴隷を大量に購入したのですが、なにぶん門を通ってきてなくて、龍皇のハーヴィに飛んでもらい、ここの庭に直接下りたので。門などを通る時に面倒な自体になりそうで。それに、馬車ですと数日かかってしまいまして」


「あぁ、途中に宿泊施設がないと?」


「えぇ」


「奴隷なのですから外に寝かせれば良いのでは?」


「一応、衣食住を約束して買っているので。下は3つだか4つですしね」


「なるほど・・・今日の演習は見ての通り模擬戦ですからね。大丈夫ですよ、明日までには返していただけるのでしょう?」


「もちろん、そのつもりです」


「では、自由に連れて行って下さい」


「あの~」

と気になることがあるので声をかけてみる。


「どうしました?」


「どうして全身鎧で対人戦をしているんですか?」


「あぁ、もう魔物の脅威もなくなった・・・とは実はトール君には悪いが考えていない。いつ何が起きても良い様に軍は鍛えておかないといけない。ただ・・・」


「ただ?」


「最近の出動要請で一番多いのが酒屋で高ランクの冒険者が酔って暴れているとかなのでね、対人も練習する必要もあるということでね・・・困ったものだ」

と苦笑いするおっさん。

なるほど、高ランクの冒険者の実力も騎士団の実力も知らないが、殺さずに、かつ自陣にダメージを負わないようにする練習ということか。


「なるほど、よく分かりました。大人になってもお酒には気をつけます」


「是非そうしてくれ、君を相手に切った張ったをしたくない。後ろの保護者達が怖いのでね」


ですよね~。


と向こうで声がする。

「ねぇ、先生、一回休憩しても良い?ちょっと友達がいるんだ」


「え?良いですが?友達?」


「トール~!!」

と手を振ってかけてくる王子。

「久しぶり!」


「お久しぶりです、タクト王子」


「止めてよ、トールは敬語は駄目!命令でもなんでも駄目!」


困って軍務大臣の顔を見れば、困ったように頷かれた。


「では、改めて、久しぶりタクト。この間はゴメンな、色々あって」


「うん、トールが怒っていたからね、大司教は転んで骨折って言ってたけど、本当は違うってこの前報告が来たよ、なんでもボコボコにされたんだって?」

あ、報告ですか。そりゃそうですよね、あんな物騒な村は監視対象ですよね、でもそれは言って良いのかい?


「監視されているんだ、うちの村?」

と聞けば、たちまちタクトが焦り、軍務大臣が手で顔を覆う。

「いや、良いけどね。確かに監視するべきだと思うし。ただ、監視対象に言っちゃ駄目でしょ」

と軽くチョップをする。


「その通りです、王子。大した秘密ではないから良い物の、秘匿するべきことを軽々しく口に出してはいけません」


「はい・・・」

と落ち込むタクト。


「まぁ、良いけどね。大司教様もある意味では教会の監視側の人間だと思うし。今更だ。いや、以前の怒っていたのとか、怪我の理由を詳しく言うと」

と、かいつまんで説明する。

「だから見送りとかできなくて、ゴメンね」


「ううん、そういう事情なら仕方ない・・・のかな?そこまで酷い怪我をしなくても良かったんじゃない?」


「いや、二度とあんな事を起こさせないように、ね?家族が傷つくのって自分が傷つくのよりよっぽど痛いって骨身に染みないと、ね?ハーティ?ハーヴィ?」


「う、うむ。二度とするまい、トールが、家族が傷つく様は、我が身が傷つく数千倍に痛かった」

としょんぼりハーティ。


「我もだ、しかも死ぬかもしれないというのをあぁも具体的に見せられては、怖くての。トールを怒らせたら怖いというのもよく分かった」

とハーヴィ。


「まぁ、結果が良ければ全て良しってね」


「家族が傷つくか・・・お父様もお母様もそういう場面が来なければ良いけど」


「大丈夫だよ、その為の騎士団、ですよね、大臣様?」


「左様でございます、王子におかれましては我等を信頼し、安心めされるよう」


「うん、君達の忠義、王に代わり礼を言う」


「勿体無きお言葉」

と傅く大臣。


「そうだ!トール、練習試合しない?トールも剣を習ったんでしょう?」


「いや、剣は才能がなくてね、鉄の棒をぶん回すほうが性に合っているんだ。しかも、まだ手加減できないから」


「えぇ~」


「大臣様、鉄の棒とか塊とかありますか?」


「いや、それに近いのは槍だな」


「全部鉄ですか?」


「いや、馬上槍ならともかく、ここにあるのは練習用だからな。持ち手などは木だな」


「じゃあ、壊しちゃいますね」


「後は斧か・・・だが、それは剣よりは事故が起きやすい。王子も今回ではなく、また次回に宴に行った際にでもすると良いでしょう、口ぶりからすると家にはあるのだろう?」


「は・・・・あぁ、ごめんなさい、斧みたいにしちゃいました」


「じゃあ、今度、全部が鉄の棒と鎧一式を持って行くから!」


「待っているけど、回復薬も持って来てね。僕等の練習試合位で龍の血は使いたくないから、家族がちょっとでも傷つくのは嫌だから」


「我は構わんが」

とハーヴィが口を挟む。


「僕が構うの~~~~」

とハーヴィの口を左右に広げる

「それに龍の血があるから安全とか、危機意識がどんどん低くなるでしょう~~~」


「わはっは!わはっは、はら、はめい」

と暴れるハーヴィ。

小龍の姿だから暴れてるのも可愛らしい。

思わずほっぺを挟みうりうりする。

「やめにょといっておりょうに」


「ごめん、楽しくて」

と笑って手を離す。


「相変わらず仲良しで良いね」

と少し暗い表情で呟く王子。


「どうかした?」


「いや、王家の習いとして、あまり子は王や王妃に会いに行くのが良しとされていないんだ。だから、その羨ましい・・・のかな?」


「大丈夫」

ぽんと頭に手を置く。

「さっき案内してくれた人が言ってたよ、王様も君の成長を見ているのが楽しみなんだってさ」


「お父様が?」

と目をぱちくりさせている。


「それに城の人も皆君のことを愛してくれているみたいだよ、いずれ賢王になられるお方だってさ」


「いや、それは、言い過ぎじゃ」

と顔を真っ赤にしているタクト王子。


「覚えておいて、君が愛されていないように思っても、愛に飢えていても、この城は愛に満ちているよ」

とここで耳に囁く。

「会いたければ押しかけちゃえ、なんか案を持って王に尋ねるでも良し。グレン王様が今まで行ってきた治世についての背景を教えてもらうも良し。本人から聞くのが一番だしね。王の仕事を間近で見たいと言って、執務室に行くのも良し。王妃様にも女性をエスコートする練習をさせて欲しいとかさ、何とでも理由をつけて。どうせ向こうも会いたがっているに決まっているんだ」

と、ここで吹き込むのは終わりにしよう。

「それでも駄目なら、お祭りの度に、うちの村においで。王様達も楽しみにしているはずだから。祭りを君等のために1日伸ばしたところで、文句は出ないよ、皆休めるからね」

と笑う。


「うん・・・うん!ありがとう、やってみる!!」

と手を握られ上下にぶんぶんと感謝される。


「どういたしまして」

なんか弟がいたらこんな感じなのかなぁ。


・・・

・・・


タクトにも見送られながら、一度奴隷商のヤットーさんのところへ。


「ヤットーさん、奴隷を運ぶ手はずを整えましたので引き取りに来ました」

と人間の姿になったヴィトが門番に通され、ヤットーさんに話しかける。


「かしこまりました、首輪の所有権を変える手続きにまいりましょう。お兄様でよろしいでしょうか」


「いえ、弟で。人を扱う大変さを学んでもらいたいのでね」


「かしこまりました。では皆さん、こちらへ」


先ほど、自分等が案内された部屋より幾分広い部屋に通されると、奴隷達が3列になって並んでいた。

「では、ここに血を数滴もらえますか?」

とコップを渡される。

ハーヴィがやるように親指の腹の方を噛んで、噛み千切って?血をだす。


「・・・弟さんは豪快ですね、相変わらず」

ナイフを用意してくれようとしていた、ヤットーさんが軽く引いている。

「とにかく、この血を希釈したのを全員の首輪に少しで良いので染みこませます」

と全員の首輪にコップの血を少しずつ注ぐ。

「そして、私が明言いたします。今、血を注がれし首輪の所有権を、私、ヤットーは移譲する。それで後は、弟さんが今のように所有権を有する旨を告げてください」


「では、今、所有権を移譲されし首輪の新たな所有権はこのトールに任された、以後、君等は僕の奴隷として働いてもらう。念のためだが、確認する

1:逃げようとするな

2:大声で騒ぎ立てるな

3:僕の言うことに従え

4:死の危険が明確に間近に迫っており、逃げる必要がある時はその限りではない」


「おや、それですと誰かが殴ろうとしたら死の危険を感じた~と言って、逃げ出すかもしれませんよ?」


「まぁ、殴ろうとする人も周りにはいないでしょうし。そんな人がいたら逃げてくれても構わないです。ちなみに首輪はどうすれば外れますか?」


「先ほど私は移譲すると申し上げました。あれを破棄するに変えれば外れますが?」


「外したら、人の扱いになる?」


「そうですね、村長や領主といった方々には告げた方が良いでしょう。たまに奴隷を買って、その奴隷と結婚する人もおりますが、皆そうしていますね。外すのですか?」


「はい、働き次第では」


「使い倒しても誰も文句を言いませんよ?それにせっかく買った労働力なのでしょう?よろしいのですか?」


「大丈夫です、逃げるよりも留まった方が良い生活ができると思ってくれるように頑張りますから」

と子どもらしく両腕を胸の前に、ファイティングポーズのようなガッツポーズをとる。


くくくっと笑い声がすると思えば、ヤットーさん。

「本当に良い弟さんだ、素晴らしい!是非、頑張ってください。命令は先ほどのように明言すれば首輪が覚えます。首輪が覚えれば、後は首輪が勝手にコントロールしてくれます。そのコントロールに無理に逆らおうとすれば激痛が走るようになっていますので、奴隷が痛みに堪えていたら命令に逆らおうとしたとお考え下さい。また、何かご相談ごとがあればいつでもうかがいましょう」


ヤットーさんはまた店の外まで見送りに来てくれた。

「お前達」

と真剣な表情で奴隷を見る。

「この方たちは稀に見るほど、人道的な方々だ。心からの忠告だ、彼等の言うことに従え。彼等は本当に首輪を外してくれるだろう。他の買い手では首輪を外すと言っておきながらいつまでも外さないで絶望する様を見るのを楽しみにする方もいらっしゃる。だが、彼等は違うだろう。良い買い手に恵まれた幸運に感謝しろ」

とこちらを見て、

「またのお越しを心よりお待ちしております」

と深く礼をする。


「うん!魔物も買いたいからね、またすぐ来るよ!」

秘儀、7才っ子モード!

・・・たぶん、違和感バリバリでしょう。さっきの文句とかこの身体が7才児とか忘れてたもん。


「えぇ、お待ちしております、頑張ってくださいね」

とニコリと笑顔で返された。


「ありがとうございました」

「ありがとう~」

とヴィトと一緒に感謝して進む。


王城前のメインストリートに来たので、

奴隷達の方に向き直る。

皆綺麗な服に着替えている。血色も少し良くなったようだ。

そんなところで、これは辛いかもしれないけど・・・。

「さて、皆、空の散歩は好きかな?」


悲喜交々な群れでワイバーンに乗ってもらう。

僕の2番目に出した命令は「絶対にワイバーンから落ちるな、必死でしがみつけ」というもの。

鞍もあるし、手綱もあるから大丈夫だとは思うし、皆必死になるとは思ったけどね。

念のため。首輪コントロールが安全性を増してくれると信じている。

なお、ハーヴィと僕達は一番後ろで落ちる人がいないかチェックしていた。


村に着いた時は皆、死人のように青白い表情をしていた。

よほど怖かったのだろう。

子どもは元気にはしゃいでいたが。

とりあえず、以前僕がハイハイに使っていた場所 (旧ハーヴィとハーティのお家を合体させたやつ)に奴隷達を案内し、ここにいるように伝えて、家に帰る。

ご飯は先ほど食べたようだしね。

あそこなら草も柔らかく、雨風もしのげるでしょう。

家をとっとと作ってあげないと。農地も用意かぁ。


また、ワイバーンはハーヴィが送り返してくれるとのこと。


まぁ良い。

なにはともあれ、

なにはともあれだ。

長かった一日もこれで終わる。

なんかどっと疲れたぁ。

シャワー浴びよう、匂いを落とす為にも、ハーティ達も洗ってあげよう (お湯は相変わらずヴィトの魔法による我が家の風呂

あぁ、石鹸!買うの忘れてた!うちの村の雑貨屋にあるかしら。

あ~ぁ、がくっ。

ちなみに小ネタ。

前回の冒険者ランク。

昔は下から

ゴブリンクラス

オーククラス

オーガクラス

魔狼クラス

ユニコーンクラス

ワイバーンクラス

龍クラス

でした。

ただ、ゴブリン~オーガクラスの人が名称が嫌だと言いはじめて、その際に併記されていた星の数で名乗り出した為、今の形に収まりました。


以下いつもの!

皆さんからの後書き上の「勝手にランキング」の1日1回ぽちっと、感想、評価、いずれも楽しみにしております!作品の中の子達もですが、読者の皆様からの反響もモチべUP要因です、是非ご贔屓に☆

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