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86話 頑張る日々 20「世界を変える下準備2」

「こんばんは、何か私にお話だとうかがいましたが?」

夜分遅くにも関わらず、嫌な顔一つ見せずにイワン大司教は私室に入れてくれ、椅子まですすめてくれた。

神父の部屋らしいと言えば良いのだろうか、机と椅子とベッド。来客用にと幾つかまだ部屋の隅に重ねられた簡易な椅子。そして衣服をいれるだろう戸棚。それしかない。娯楽用の物などは見えない。

・・・まぁ、娯楽用の物など何があるのかって時代だろうからか。

それを差し引いても酷く殺風景な部屋だ。


「ふふふっ、興味深そうですね、トール君は」

と見抜かれて、笑われてしまった。


「ごめんなさい、じろじろと見てしまって。あまりに物が少ないので、驚いてしまって」

と正直に言う。


「まぁ、清貧であることを求められる職業だからですかね。ヤヒトの部屋もこんなものですよ。あぁ、彼の方が真面目に勉強している分、筆記具などは多いですが」

と柔らかに答えてくれる。


「はぁ」

何て答えれば良いのか分からない。

あなたの方が知識欲旺盛ですよね、ってツッコミ待ちでしょうか。


「それで話とは?」

と柔らかな表情でうながしてくれる。


「あぁ~、そのですね・・・」


「うちのトールが神の叡智の一端に触れたと言うので、連れて参りました」

とヴィトが引き継いで言ってくれる。

ここに来る前に話し合った結果だ。

基本はヴィトが大事おおごとだと連れてきたことにしようと。

7才のトール君があんまり賢しげで下手に怪しまれると厄介だ。

・・・もう意味ないかもしれないけど。それでも打てる手は打っておきたい。

うまく事が運べば、知らない教会のお偉いさんと話すことがあるかもしれない。

その時に大司教経由で何か言われていると厄介になる。

・・・好戦的?

それはこちらに有利だから広めてください。


「なんと!!!???」

と目を輝かせるイワン大司教。

うん、あなたは喰いつくよね、知ってた。

「どんなことを!!??」


「あぁ~、えっと」

と目が泳ぐ。

でも仕方ないよね!?

顔が近い、顔が近い、おっさんの顔を間近に見る趣味はない!!

「・・・すみませんが、少し距離があった方が話しやすいので・・・」

言わせんな!


「あ、これは失礼を」

とススっと自席に戻る大司教。

手には紙が。

蝋版とか使わないのか、給料の支払いはどうなっているんだろう。

ATMも下手したら銀行もないだろうに。


「えぇっと、7才になった時に神様に会ったんです。その時にどうして自分が生まれついてジョブを、しかも最上級の状態で持っていたかの記憶を返してもらいました」


「というと、あのダイス君の決闘の時の?」


「あぁ、はい。あの話です。ただ、皆の前で神様に会ったと明言するのも躊躇われたので、あんな形で言いましたが」


「何故、躊躇う必要が?」


「あの場では証明できないからです、何せ決闘の最中です。少なくとも話をするより、相手を叩きのめすことが重要ですから」

ということにしとく。


くくっと笑われた。

「あれは叩きのめすというよりは、諭していたように思いますが」

ちらりとこちらを笑いながら見られる。

色々バレてそうですネ!


「あ~・・・」

思わず天井を仰ぐ。

最近、多くなったな天井を見るの。

・・・嫌な癖だなぁ。

「彼は僕に嫉妬していましたが、僕だって彼に嫉妬しているところがありました。それを、その価値を知らないで捨てようとしている彼に腹がたったので、その、拳で語り合ったというか」


まだくすくすと笑っている大司教

「そういうことにしておきましょう、それで今なら証明できると?」


「少し長くなりますが語れる今ならば、たぶん」


「たぶん?」


「本当は来るつもりはなかったんですが、ヴィトが広めないのはもったいないと半ば無理やり連れて来られたので、自信が・・・」


「なるほど、そういうことでしたか。試しにどんな物だか私に話してみてください。私が判断するのであれば、自信は気にすることもないでしょう」


「・・・はい、実は」


ぽつぽつと話をする。

光の中で神様にあったこと (嘘ではないが、時期が違う。7才どころか生まれる前である)

テイマーの最上級職にしてもらえたこと (同上)

その際に、神様のだろう知識が断片的に入ってきたこと (完全に嘘)

衛生的にするのが健康に良いこと (本当)

病院の施設構造について (うろ覚えだけど、ないよりマシかな?それとも既に考えられているかな?)

風呂の大切さと病気感染者の隔離の大切さ、一緒に入れちゃ駄目。水も取り替えましょう (風呂は大事、サウナでも何でも、風呂は大事。大事なことなので二回)

酒の大切さ (井戸水汚くなったら皆ダウンだよね?川はあるだろうけど、狼とかいるし)

スラムへの炊き出しについてと職の必要性 (3食必ず食べられる環境大事よ心に。つまり職って大切)

などなど。

ふと思いつくままに話していたら、反応がないことに気づいた。

大司教を見ると、酷く真剣な顔をして自分のメモを見ている。


「イワン大司教?」


「・・・あ、あぁ!すみません、ですが、これは・・・」

と言って黙る。

うん、分かる。一人で処理し切れないよね。

しかし、ちゃんと動ければ今生きている人達の死亡率を変え得る話だ。

・・・組織立って動き、然るべき施設を整え、それを運営できれば。


「それで、私も思ったんですが、イワン大司教は教えの編纂の為にこの地に来たとか」

とヴィトが言う。


「はい?そうですが」


「それは聖書の改訂の為と受け止めていたのですが、合っていますか?」


「はい、そうです」


あら?思ったよりすんなり言ってくれた。


「そうだったんですか?ヤヒトさんは新しい聖書って聞いたら首をかしげてましたよ?」

ととぼけて見せる。

・・・我ながらくさいか?


「ヤヒトは知らないかもしれませんね。私の務めですし、あまり吹聴することでもありません。新しい聖書ができるなら、今の聖書はなんだって人心が惑います。ただ気づいている人に隠すつもりもありません。聖職者が嘘をつくなど・・・。ヤヒトも気づけても良いのですが、あの子は真っ直ぐでして、あまり視界が広くないのです。だからこの村で視界を広げてくれればなと。ここには何せ神の実の子もおりますし。」

子どもの教育具合を聞いてる感じだ。

なんだかヤヒトさんに申し訳ない気がする。

こう・・・勝手に通信簿を見たような?


「まだ、新しい聖書はできてないですか?それとももうできましたか?」


「?まだだと聞いております。なので、早くもっと聞けと各方面からせっつかれてて、ただ龍皇様達は私が聞こうとするとお逃げになられるし、更には皆さん最近お忙しそうでしたので、遠慮しておりました」

と苦笑いでこっちを見られた。

はい、骨折しまくっていたりしました。

はい、子どもながらに決闘もしました。

子どもだから多少のヤンチャは許してよ!(逆ギレ

あと、彼等が逃げるのは掴まると長くなるって察してるからだよ!!


「それならば丁度良い、今のトールの話も聖書に載せるべきだと思うんです」


「そうですね・・・皆さんがどう言われるかは分かりませんが、私個人としては、はい。そう思います」


「そこでどうでしょう、教皇猊下達が集まる時に、私が今のトールの話やハーヴィ達の話を書いて持って行きます。勿論、彼等とともに。そこで一区切りにして、聖書を新訂しては?いつまで経っても聖書が改訂されないのも問題でしょう」


「そうなんですよね、改訂自体は決まっていたことですが、今までの魔物は悪という考えを変えるというところに人心を却って乱すのではと・・・製作が難航しているようです」


「そこで、トールが産まれた時に神がトールを通して話したこと、そして神の子達の言葉を載せるのです。魔物が怖いことは事実として、しかし、彼等にも他者を愛し、愛した者は何をしたら傷つくのかを考える想像力が生まれるほど成長したこと。神は魔物からの歩み寄りだけでなく、人間も成長し歩み寄ることを願っていることなど」


「なるほど」

と口に拳を当てて考えている。

考える人は皆このポーズを取るのだろうか・・・気をつけよう。何か自分がしてたらヤダ。

「猊下達も龍皇様達に会いたがっておられた、そして聖書も神の実の子が製作に関わっているならば否やと言う人は少ない、でしょうかね。・・・分かりました。集まりがいつになるかは分かりませんが文を出しておきましょう」


「あぁ、一点だけ。その際には各国の王達にも参加するようにと追加してください」

とヴィトが人差し指をピンと立てて追加する。


「王を?何故ですか?・・・あぁ!確かに教会でできることだけではないですね、道や糞尿の処理などは政治に関わります、分かりました。それも記載しておきましょう。いやはや、聖職者と言えば聞こえの良いものの世俗には疎くて、ご忠告ありがとうございます」

とイワン大司教はいつもの柔らかな顔で笑った。


・・・

・・・


帰り道にてヴィトと思念で会話をする


(イワン大司教は怖いね)


(どこがですか?)


(世俗に疎くて大司教ってさ、この時代なら考えられないように思う)


(そうでしょうか?)


(うん、僕の知っているこの文明の発達具合ならさ、大司教って椅子は貴族か、凄い立ち回りが上手い人か、金がある人か、とても信仰に篤い人だ)


(他はともかく信仰に篤いって良いことでは?)


(うん、ただそれだけなら。怖いのはそういう信仰に篤い人はさ、今までと違うことを教えることはできないんだ。だって自分が信じていたから。今までの信じてきたことが無駄だったとか信じたくないのさ。そうすると狂信者に早変わり)


(あぁ・・・信仰にだけ生きる人は怖いですね、命を惜しみませんから)


(そうそう、ヴィトの生きてた時代にもいたんだ?)


(まぁ、いつの世もいるでしょう)


(・・・そう言えば、ヴィトの生きてた時代をよく知らないや)


(話してませんからね、今度ゆっくり教えてあげますよ)


(ふふっ、よろしく)


(それでイワン大司教はどれだと思いますか?)


(・・・信仰に篤い人かな。周りが認める程に。貴族らしさはあまり見えなかったし、立ち回りは分からないけど、野心に燃える感じではなさそうだ。金はあるだろうけど、あれは教会からの支給品だろうね、部屋からの想像だけど)


(狂信者になりそうですか?)


(いや、あれは、たぶん)


(たぶん?)


(学者バカなんだと思うよ、知識欲で上がって来たんだろうね、大司教の椅子は今まで勤めてきた老人に対する褒美みたいなものかな?)


(では怖くないのでは?)


(はははっ、あぁいう人は一声かけた時の影響力が凄いのさ)


(そういうものですか)


(分からないけどたぶんね、あ~~~~~~、人間って怖っ)


と、のんびり星の下を歩いて帰る。


・・・あ、スライムロードについて皆、というか村長に許可もらうの忘れてた。

皆さん、水分だけでなく塩分も取ってくださいね!


新潟の方々は大変でしょうが、頑張ってください!!

いえ、頑張っているのは分かっているのですが、ボキャ貧で・・・

とにかく、地すべりだなんだに気をつけて!


他の地域の人も家族と避難場所は決めていますか?

防災グッズは古過ぎたりしてませんか?

ご注意を!


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