7話 神様達の苦労話
「そう、あの時事故に遭うのはお主ではなく、その選出者の筈だったのじゃ」
「本当は神様的な力で、その人が助けるはずだったと」
「そうじゃ、その者はさっきのように表すとこんな感じかのぅ」
さっき(4話参照)と同じように空中に文字を書き始めた。
知力 85
体力 90
カリスマ 95
運 85
諦め 10
信仰心 75
酷すぎる、こんなチートな奴が助けるはずだったとは。
つまりご近所さんにいたということだろうか。
誰だよ、一体。
会社起こして俺を雇えよ。
さっきの俺のとの差は一体なんなんだ。
この世に神はいないのか(思わず)
「とまぁ、お主の心なぞ読まなくてもその表情で言いたいことは分かるが。この者なら体力と運により、トラックにぶつかっても数ヶ月の植物状態位で良かったのじゃ。ちなみに助けられた子供はその時のヒーローのような助け方と感謝とでこの者に憧れ、将来的にはこの者が代弁者をする時の右腕になる予定じゃった。一回の事故で2人分の働きが見込めたと」
「トラックの運転手はどちらにしろ轢いてしまうんですね」
こんなチート野郎の話から半ば逃れたくて、もう一人の登場人物の話をする。
「まぁ、そやつは日常的によそ見運転やながら運転をしておったからの。他の神がそやつの周りの他人を通じて治させようと努力していたみたいだが、治らんかった。だから見放したみたいじゃな。まさに拾う神あれば捨てる神ありじゃ。それでちょうど良いのでこの任にあたってもらったと。この事故で捕まり、刑務所で魂を磨くことになっておった。」
あまり同情心はなくなった。
つまり俺を轢いた時もよそ見やながら運転だったと。
よそ見だったら思わず珍しいものを見たとかだったら許すが、ながら運転なら許すマジ。
「さて、話を戻すが本来ならこの者が神によって導かれ、事故現場に遭遇。思わず助けるとなっておった」
そうして、その人の代わりに俺は死んだと。
だからこの方はまずは謝罪をするべきと俺に言っていたのか。
「その人はどうして助けなかったんですか」
初めて彼の顔が歪んだ。正しく苦虫を噛み潰したような、そんな顔だ。
「神も絶対ではない、導くといってもいつもより早い時間に登校させたり、散歩させたり。その者を誘導するのが正しい」
ふむふむ
「お主が死んだことから、選出者はこの神社の氏子である。距離的に導きやすいからの、他の神社より近いからやりやすかろうと」
ふむふむ
「わし達からしても大任じゃ。子供もトラックもその日、その時に会うように導いておった。もちろんその者も」
だろうなぁ
「いつもならその者はその時間にその場所を通るのが日課になっており、それを更に神の力で導いておった」
ん?完璧じゃないか?
彼は更に苦虫を数匹は噛み潰した顔で
「その者が来る途中でその日に限って一本横の道で猫を保護しておったよ」
・・・・?・・・・!!??
「え、だって神様も導いて、普段彼は事故現場の道に」
「そうじゃ、神の導きが完全じゃなくても、このような大任の時には特に強く力を行使する。それでもその者が来なかったのは他の神の導きがあったからじゃ」
はぁ!?
「猫の神が困っている猫がいるから良縁に巡り合わせてやりたいと、あっちでも導いておったのじゃ」
「え?他の神様も了承済みの計画だったんですよね。なんでそんなことに?!」
「わしが聞きたいくらいじゃよ!!その日のその時間がどういう意味を持つのか分からんかったのか!なんでその日に限ってそやつを導くのか、他の神の導きを感じなかったのか、失敗すればどうなるのか分からんかったのか!!!」
彼が爆発した。
なぜか障子の向こうで雷が落ちた音が聞こえた気がする。
「答えはこうじゃ、主神会議のことなど興味がないから忘れておった、自分の眷属に最良の縁があったから、他の神も導いていたみたいだけど、この時を逃すと縁が消えてしまうから、やっちゃえと」
まぁ、猫のためなら代わりに死んでも仕方ないと思えるから良いけど。(犬でも可)
「ちなみに他の日だとその猫に良縁はなかったのか聞いたら、次の日でも最良じゃないけど良い縁はあったと。じゃあそっちにしなさいよ!!他の神の導きを感じた時点でその神に訊きなさいよ、ちょっと先良いですかって!!
前日に周りの関係しそうな神達に稲荷達が改めて伝達しておったでな、稲荷はちゃんと猫の神にも言ったと言っておった。聞いていたのではないかといったら、興味がなかったからうんうん聞かずに頷いておったと!!」
般若やナマハゲもかくやという顔になっている。
彼もお茶を一気に飲み干すと、ため息を吐き、ちゃぶ台に突っ伏した。
「そういう訳で、うちの神社の主神はミスに対する反省文と、今後同様なミスを防ぐにはどうすれば良いかとマニュアル作り中じゃ。次の主神会議で提出するためにの。他の相殿神達は方々に謝罪に行っておる。稲荷殿たちも各地に謝罪文を届けに行っておる。そしてお主と繋がりが一番強いわしが説明当番じゃったと。
本当は主神が謝るべきところを申し訳ないと言付かっておるよ。
猫の神は更に上の神達から説教を受けておるよ。国生み級の神様からの説教らしい。罰もあるらしいが今後のことを考えると厳しいと良いとわしは思うがね」
礼儀作法を大切にするイメージがあったのに、彼は流石のことにかちゃぶ台に突っ伏したまま話している。
「まぁ、猫の神も悪気はなかったと思うので、私の分でお怒りのところがあればそこは差し引いておいてください」
「お主の動物好きは知っておったが、死んでまでそれはどうかと思うぞ」
のそりとちゃぶ台から顔を上げて言った。
「まぁ結果的に、一匹の猫に最良の縁があり、子供も助かり、トラックの運転手は刑務所で修行と。ちなみにそうなると人類削減化計画はどうなるのですか?」
「あぁ、うちが選出した者より少し体力などが劣るが、カリスマなど必要条件をそろえた者は他にも一応いるでな、別地域で進行中じゃ。流石に世界的な決定事項じゃ、第2案や失敗したらどうするかなどはしっかりしておるよ。あっちは上手くいったようで植物人間状態になったらしいから、今他の神がその者に説明中じゃ。日本が動いたから他の地域でも動き出しておるよ」
失敗しないのが本当は良いのじゃがな、その後の選出者の説法も楽だし。
低い声で副音声が聞こえた。
触らぬ神に祟りなし、特にこの神さまにはそうだろう。
彼は居住まいを正し、私に頭を下げた。
「そういうことで、今回のお主の死はわし達神の責任じゃ。改めて本当に申し訳ない、言葉では伝え切れんほどじゃ。」
「いやいや頭を上げてください!神様に頭を下げられるなど、小心者の私を殺す気ですか!?」
なおも彼は頭を下げたまま
「人間に道徳を説くことも神の仕事じゃ、その神が失敗して迷惑をかけても謝らないなど道理に合わん。なんと罵倒されようとそれだけのことをわし達はそなたにしたのじゃ」
「じゃあ、まずは頭を上げてください」
彼は素直に頭を上げた。
本当に申し訳ないと思っているのだろう、唇がきゅっと結ばれている。
見れば腕が震えている、拳を強く握っているのだろう。
「私は最初こそ身代わりに死んだと聞いて、憤りこそしました。でも猫の神のことも分かるのです。私達なら家族や友人が眷属代わりでしょうか。彼らに最良の縁があったら巡り合わせたくなりますよ。それに私がいなければあの子が死んでしまっていたのでしょう。こんな疲れ果てたおっさんより子供の将来の方が大切です。だからもうあまり怒ってもいないですし、死んだことは気にしていないのですよ」
彼はため息を吐くと、
「諦めの高さもここまで行くと筋金入りじゃな、お主はもっと怒ってよいのだ。お主の家族の代わりにもな」
「あぁ、確かに家族には申し訳ないですね、親には苦労をかけさせた労力に見合うだけの孝行できずですし」
まぁ、孝行はお金としてトラック運転手から絞ってもらいましょうと笑ってみせる。
辛くない訳ではないが、どうしようもない。
それこそ諦めるしかないではないか。
「ちなみに神様なら時間を巻き戻してやり直しとかは・・・」
「できんの。お主についてはできることがあれば全てやっておったよ」
「そうですよね、それが一番楽ですもんね。じゃあ、この後私はどうなりますか?」
「それも問題なんじゃよ、死者は死後信仰先に行く。そして先ほども言ったように信仰心の高い魂はどこでも重宝される。特にお主についてはそこが一番面倒じゃ。」
俺にとっては??
「お主は神社に行き、寺にもよく行く。家には神棚があり、仏壇もある。そしてクリスマスも祝っておる。皆がお主を欲しがっているのじゃ。そもそもそれ自体がなかなか無いパターンでの。大概は少しの話し合いで終わるのじゃが、お主はわし達のミスで死んだことから同情も多くての話し合いも長引いておる。」
実は説明担当ではなく、この行く先決めの担当を任されていたのだろう。
ここに疲れが一番見える。
「1:ここの主神から責任をもって預からせていただきたいと声があがっておる。お主の好きなこの神社で魂を磨くのじゃ。特に大変なこともなし、お参りに来た人たちの願いを分けてそれぞれ適した神に渡すだけじゃ。七五三とお祭りと年末は忙しい」
うん
「2:仏教界からも複数オファーがある。お主の家に仏壇があり、毎日拝んでいたのだから仏教徒ともいえる。こちらへ来るといいとな。ただ、仏壇2つあって宗派が違うからそこはどうするのじゃろうなぁ。先祖に会えるし、魂も早く磨くことができる。その分辛いがな。もしかしたらお主については他のものより辛いかもしれん。魂を早く磨くことが大事と考えておるところがあるからの。腕を振るって地獄巡りもありかと呟いておったのをわしは知っている。」
・・・・・・・・・・。ご先祖様に会えるのは良いかもだけど。・・・・・・地獄巡りか。
「3:唯一神の所へ行く」
「え?それは何故ですか、教会も行ったことないですよ?」
「クリスマスを祝っていたからあちらに行くこともできるという理論じゃ」
「ありですか、その理論!??」
「う~む、無神教の者は今までの理論でいくとどうなると思う?」
「えっ、と。無になる?」
「まぁ、大概がそうじゃ。エネルギーになってもらう、自意識もなく輪廻もなく、天国も地獄もなくの。ただ、無神教だからと罪を犯しておきながら、ただエネルギーになるなど道理が通らん。性根を叩きなおさないと被害者に申し訳がたたん。そういう時にこの理論で引き取ってもらったりしておるからのぅ」
ちなみに節分とかのイベントで楽しんでいたことがあると、そこへ流し込むことがあるらしい。
「そして、唯一神のところでは、わしも詳しくはないのじゃが。まずは教えを学び、しばらく研修をしてみて合う様なら天国で魂を磨く、合わないようならばお主は向こうのオファーで行くのだから地獄で苦しみはしないながらも研修を受けながらより深く教義を学びながら魂を磨く」
う~ん、宗教を知りながらもそれを学ばず生きてきた身としてはやりにくいかも
天国は気になるけど
「ちなみに仏教界や唯一神からは、お主達のミスで死なせておきながらそっちの神社で引き取るとかどうなのよ、と言われたわい」
疲れが一段と増した気がする顔をして続けた
「4:多神教の信者として、他の神社などを巡りながら魂を磨く。なかなかいないが、たまにおるでの。色々な神に会えるし、さまざまな仕事がある。もちろんキツイのもあれば楽なのもある。お主は道具にも神や意思が宿ると考えておるからの多神教の信徒してのくくりもできるのじゃ。皆もお主を欲しがっておる」
メリットもデメリットも本当に多様なんだろう。
そして、最後の選択肢を出してきた。
「5:異世界に転生する」
3話・4話あたりで説明が足りなかった部分を付け足しました。
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早くもふりたいと筆者も考えています