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66話 そして始まる日々5「神と人口の違い」

「ねぇ、トール?」

とお母さんが語りかけてくる。

「神話って何?あと、あなたが松田透さんだった世界には神様がたくさんいたの?」



そうか、この世界では神様は一柱だけが昔から信じられていて、

神様がいたという証拠も目撃証言なんかもある。

神様が行う御業について語ることはあっても神様の物語はないのか。


しかし、と考える。

話すべきか、話さないべきか。

いや、と思わず苦笑する。

話さないで怒られたばかりだ、全てを話そう。

それで彼等に危機がおとずれるのだとしても、それらから守れるだけの力を身につければ良い。

まだこの身体は7才で「祝福と加護」をたんまりもらっている、鍛えればものになろう。

そして、テイマーというジョブは何かを守るのには最適だと思う。


「これから話すのはかいつまんだ話になる、時間もそろそろ良い頃合だしね、少し話して残りは今日の夜にでも話すよ。朝御飯を食べて、少し休もう。皆にも疲れさせてしまったから、特に母さん達には。大丈夫、もう隠したりはしない、懲りたからね」

と苦笑する、皆が笑う。


「けれど」

表情を引き締め、真剣な顔で皆を見渡す。


「けれど、僕はこの話をすることを、特に母さんと父さんにすることを正直に言えば躊躇っている、知っているだけで危険の方からこちらに向かってくることがある、そういうことをもうこの身は知っている。だけど、必ず守ってみせる。幸いテイマーはそれに向いたジョブだしね。ただ、聞くだけでも危険な話ということを知っていて欲しい。脅されたり、人に危害が加えられるという時のみ、話すようにして欲しい。それ以外では絶対に口外しないで、良い?」


母さんと父さんが真剣な表情で頷く。


「我が従魔達への初の命になる。今より話すことは同じく口外を禁止する。脅されたり、人に危害が加えられるという時のみ、話すことを許可する。

僕はできるだけ君達を命令で縛りたくない、けれど、これだけは命令させてもらう。両親のためにも、君等自身のためにも」


皆が首を縦に振る。


「ありがとう」

こんな小さい子の話に真剣になってくれる彼等に、

彼等の忠誠に笑みが出る。

忠誠より、親心かもしれないが。


「僕が危惧するのは、危惧しているのは、人間だ。人という存在は異端を嫌うくせに、珍しい物が好きだ。宝石であれ、生物であれ、話であれ。もうこの身は知っている、人が珍しい話をする人を家畜のように飼うことがあるということを、話さないなど抵抗すれば拷問にかけることを喜びとする、そういう下劣な存在が人間という種の中にいるということを、この身は知っている。

秘密にしなければいけないのはそういう存在にバレないためだ。得てして、そういう奴等ほど鼻が利く。比喩ではなく、籠の中の鳥にされるよ、別の世界についてなんてこれほど珍しい話はない。知っているだけ話しても、まだ隠していることがあるだろうと拷問されることがあるかもしれない」


「ただね、」

と笑ってみせる。


「僕が話さなくても、僕が何か特別なことを知っていると気づく人間が出るかもしれない。いや必ず出る。そうすると逆に知っている方が安全かもしれないんだ。もし捕まっても、話している間は相手が満足するし、後はトールから聞いていないと言えば、僕に矛先が向くだろう。もちろん危険なんて近づけさせない、どんな手を使ってでもだ!ただ、万が一の時のため。人間にはそういう下劣な存在がいて、今から話すことはそういう奴等が好むことだと知っておいてほしい、最悪そいつ等に捕まる以上に悪いことが起こり得る話であるとも」


皆が真剣な表情で頷く。

両親は心なしか顔色が悪くなっている。


「さぁ、どこから語ろうか。さっきも話したように僕がいたのは別の世界だ。世界ごとに神様がいるらしい、そして神様は実は増えることがある」


「な、に!?」

一番大きなショックを受けているのは龍皇であるハーヴィだ。

一番イネガル神を崇拝していたからか。


「僕の世界ではね、神様は数え切れないほどいたよ。

神様になる条件はね、次の2点の両方か、あるいはどちらかだと思う。例外もいらっしゃるけど。僕もあまり詳しくないけど、神様達の話を聞いたかぎりね。

1:信仰されていること。あるいはそうあれと願われていること、後者は僕の憶測が入っている。

2:魂が磨かれ高次の存在になっていること


例外としては世界が生まれたと同時に生まれた神様。イネガル様はその例外の神様、始まりの一柱。

柱というのは僕がいた世界での神様の数え方ね。


魂はただ生きているだけでも磨かれるけれど、修行することで更に磨かれる。

僕の世界では死後の世界という物があって、死んでからそこで魂を磨くことに集中している人達もいる。

魂の磨き方はその人がどの神を信じていたかで異なるらしい。この世界ではそれこそ生まれ変わり新たな生を生きることが修行らしいよ」


「そして、あぁそうそう神様の話だったね。そもそも僕がいた世界はこの世界の人口より圧倒的に人口が多く、歴史があった。そして、神様はほとんど姿を現さなかったし、声を届けるのも稀だった。そして、何よりも重要なのは僕の世界には魔物はいなく、魔力を帯びない普通の動物と人間しかいなかったんだ」


「だから、人間達は想像したんだ、雷を、山が噴火しているところを見て、何か人間の手に負えない偉大な何かの怒りだと。そしてそれが神という存在だと想像して、崇拝した。そして信仰が集まり生まれた神がいらっしゃる。

特に顕著なのは僕がいた国かな。全ての物に神が宿るという考えがあってね、森の木々、教会のような所にある大木、包丁、かまど、猫、狐、狼とかね。それらの神を総称して八百万やおよろずの神という。やおよろず、というのは数え切れないという意味だけど、僕がいた国では八百万と書いてそう読んだ。昔の人々では八百万もあれば森羅万象、全てを表せると考えたのかな?

ちなみにそんなだから人間が神になることも、僕がいた国ではあったんだ。雷を恐怖から信仰するように、特定の人物に恐怖し、災いがあるとその人のせいであると思い、信仰を捧げ、災いを遠ざけることを祈った。結果、その人は神になった。魂も磨かれていたんだろうと思う」


「他にも同じように考え万物を崇拝した国が幾つもある、例えば太陽の神様、雷の神様、狩りをする者を守護する狩猟の神様、病気の神様なんていう風に、万物に神を見出し信仰する。というか、人間が信仰していた神様は最初はそんな感じだけだったと思う。その後、唯一の神がいるという考えが出てきたりもするんだ。何故かというとその方が人をまとめやすいから。唯一の神がどこどこに救いがあるぞと言っていた、と長が言う。そうすると、同じ人間が言ったよりも受け入れやすくなる。そして唯一の神しか皆が信じていないから、反論が出なくなる。反論すれば唯一の神を受け入れない異端者扱いされ、群れから追い出される。神を、群れを統治するのに生み出したりした所もあった」


見ると、皆が両手で頭を押さえ唸っている。


「神が数え切れないほどいるだと?」

とフェンリルことハーティ。


「人間だけの世界ですか・・・」

とどこか呆けている、リッチロードことヴィト。


「万物が神様?」

と呆気にとられているような表情の妖狐の長ことスコール。


「・・・・????」

話の流れについていけないのか、おろおろとしているドライアドの長、スロール。


「神を群れの統治に利用とは」

と呆れるハーヴィ。


「人間が神様に?」

と父さん。


「包丁の神様?」

と母さん。


「まぁ、神様だけでこんなに違いがあると考えておいて。本当に唯一の神であるイネガル神様が治めるこの世界、数え切れないくらいたくさんの神様に見守られている僕がいた世界。イネガル神様が僕しか神がいなくて寂しいと言っていたのを覚えているから、唯一神なのは確実だ。

そして、人間が考える神様は人間の想像力の力の限界だろうか、はたまた、偉大な神を身近に感じたかったのか。人間によく似ている。太陽の神様が嫌なことがあって、岩穴に閉じこもって岩で出口を塞いだから、太陽がその間なくなったとか。僕のトールというのは、戦の神様なんだけど、騙されやすかったりしたり、短気だったりね。そういう神様達が織り成すお話を神話というんだ」


一生懸命聞いて、頷いている皆。


「神様についてはとりあえず以上!そういえば生まれ変わる際にイネガル神様に会わせていただいたよ、元気そうだった。結構、僕がいた世界のお話とかを買いに来てたみたい」


「「父よ・・・」」

とハーヴィとハーティが呆れている。


「なにせ、僕がいた世界の、僕がいた国では日常が平和だったからね、なぜなら魔物もいない、刀は危ないから持ち歩いてはいけない、魔物もいなければ盗賊も基本いないからね。魔法も使えない。そういう世界の人間だった。平和だが、つまらない、刺激が足りない。だから皆が想像、妄想するんだ。もし、自分に特別な力があったらどうするか、もし、この世に狼より怖いものがいたらどうするか、そうして魔物を考え、魔法という力を考えて、英雄譚を皆が考え、その中でも良い物が本として世の中に出る。

実はね、イネガル神様はそういう英雄譚が大好きでね、あぁ、こういう生き物がいても良いな、あぁ、魔法があると良いなと。そしてこの世界を作ったそうだよ、自分が好きな英雄譚が、自分が気に入った魔物や生物が、詰まったこの世界を」


皆がぽかーんとしている。


そろそろ限界かな?


「この世界の基が、トールがいた世界の物語だと。そうか、だから我をフェンリルと、トールと同じ由来の神話から・・・」

とハーティが納得し。


「父よ、趣味に走ったのがこの世界ということで良いのか、世界を作るのに趣味に走っていいのか」

と頭を抱えるハーヴィ。


「最後にとっておきの情報ね、僕がいた世界の人口はどれ位でしょうか!?僕が死んだ時ね」


「800万?」

とスコール。


「それはさっきの神様の話からだよね、ぶ~!」


「思い切って9000万!」

と笑ってヴィトが言う。


「ぶ~!答えは約70億でした!!億って数字は習った?」


皆が首を振る。


「一、十、百、千、次が万だよね。1万、10万、100万、1000万その次が億だよ。1億、10億ってね。1000人の村が700個集まったのが1万個分だね。笑っちゃうよね。僕の国だけで1億と2000万人はいたかな?」


皆の顎が外れそうになる。


「さぁ、続きは夜にまた話すよ、とりあえず一度家に帰って休もうか、皆も続きの前に頭を整理したいでしょ?」


口を開いたまま、皆が頷く。


「本当に皆、今夜はありがとうね」

というと、ようやく皆の口が塞がり、


「良いと言っておるだろう」

と微笑むハーヴィ。


「うむ」

と笑うハーティ。


「あぁ、お昼を食べて少ししたら、先ほどお話したとっておきをお見せしますね」

と笑うヴィト。


「家族なのですから、当然です」

とスロールが嬉しそうに微笑む。


「でも、お父さんも前世の記憶持ちってびっくりしちゃったよ!!全然そんな素振りなかったよ、妖狐さんを騙し通すなんてびっくりだったよ!!」

とスコールがばたばたと元気に言う。


はっと気づいて、お父さんが言う

「あぁ、あれ?嘘だよ?」


「「「「「「え」」」」」


「いや、そんなだったらもっと慌ててるし、こぶになってたらイリスも覚えてるだろう?嘘だよ、トールに自身を客観視して欲しくて、自分と同じ境遇を外から見たらこうだよって教えたくて、とっさに」

と照れ笑いをする父。


・・・

・・・

・・・


「「「「「「えぇ~!!!????」」」」」

あの場面でそれをするか!?

というか、よくそんなことを思いついたな、

と、ふと気づく。

「ハーティ?」


「うん?」


「気づいていた?」


「うむ、何か考えがあるのだろうと黙っていた。妖狐もまだまだよ、匂いで分かろうが」


「妖狐って呼ばないでスコールって呼んでよ!だって顔の表情とか視線とか、そういうので見分けてきたから、つい!!」


「ついではなかろう、先ほどの誓いを忘れるなよ」

とため息を吐くハーティ。


「うぅぅ、精進するよぅ」

と本気で落ち込んでいるスコール。


でも雰囲気に呑まれて思わず信じたスコールは悪くないと思う。


実はこの日、最大級の爆弾を落としたのは父さんだったのかもしれない。


お父さんお茶目でした♪


作中で父さんや母さん、お父さん、お母さんとか、語り口調が異なってたりするのは記憶の影響からです。幼い発言や思考もあるし、大人っぽい発言や思考もある。記憶に引きずられてはいるという。

主人公も高熱から目を覚ますなり、大変ですネ♪(目が泳いでいる


明日は金曜、もっふもふ魂で切り抜けましょう!!

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