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61話 そして流れる日々2「日記と始まり」

日記を纏める作業を続ける二人。

あと少しである。


『1235年 ○□月×日

リッチロードが幾体ものスケルトンを持ってきた。

なんでもトールの剣術、槍術などを鍛えるためらしい。

試しに人間体で我も挑戦してみた。

なんと、我が真剣でスケルトンが木刀なのに、我の手から気づいたら木刀が飛ばされておった。

各時代の名人とうたわれた者達の中で、更に選りすぐったらしい。

こやつも我等と同じく親馬鹿限りなしであるとよく思う。

ようやるわ、ここまでの名人を見つけるのは骨だったろうに。

骨だからできたのか。

しかし、負けたままというのも癪なので、フェンリルにも試させて負けるところを見る。

競争相手が欲しいというのもあるが、どう動くのかを第三者的に見ることで分かることもある。

なんと剣のどこでどこを受けるか、我等の膂力に逆らわず、木がしなるが如く、それを一瞬の攻防に取り入れられている。

我等のスピードにそれができるのだから名人には違いない。たぶんソードマンなりの最上級職なのだろう。

リッチロードが言うには、

「いつか相応しい時期にトールの前でフェンリルと我で模擬戦をしてほしい、男の子はたぶんそれを見たら剣術を習いたくなるだろうから。その時には我流ではなく、彼の剣技で。少しでも良くない型を見せたくないので」

とのことだ。


やってやろうではないか。

剣技の全てを盗んでやろう。

そして格好良い姿を見せるのだ。』



「あら、たまにいなくなると思えば二人して修行していたのね」

とイリス。


「本当だ、今からでも見せれば良いのに」

と妖狐が横から覗く。


「きっと、まだ納得がいっていないのね、フェンリルさんの方かしら、まだ良い型と言えんとか言ってそう」

とイリスが笑う。


「あぁ、なるほどねぇ」

と妖狐も納得。


・・・

・・・

・・・


『1236年 □月×日

今日はトールさんが頑張っていました。

近くのダイス君がいきなりトールさんに「あ、異常者が来た!」とからかい始めました。

今日トールさんと散歩していたのが私だから、日頃言いたかったことを言えたのでしょう。

フェンリルさん達だと、どうなるか分かりませんしね。見逃されるか、怒られるか。

トールさんが怒って、

「なんだよ、いきなり!」

と返しました。


「だって、誕生日が祭りになるやつなんて異常者だろう」


「じゃあ、王様の前で言ってきなよ、僕だけに言うなら不公平の卑怯者だ!」


「うぐ、それにもうジョブについてるし」


「王子様だってついてるぞ!」


「うぅ、それに綺麗なお姉さんがいつも傍にいるし!」


「ルリちゃんのところのお姉さんだって綺麗だよ?」


「う、うるさい、お前は異常で変態なんだよ!この変態!」


「他の人より違うのが変態ならお前だって変態だ!いきなり人に悪口いうやつなんてこの村に今いないもん!この変態!」


「うっさい、変態!」


「変態!」


その後は、しばらくじゃれあっていました。

ただ、トールさんに勝てなくて、ダイス君が泣いて帰っていきました。

すぐにダイス君のお兄さんがこちらへ来て弟さんが泣いてた理由を聞いてきました。

説明すると納得して、「同い年に泣かされるなんて、情けない、後で説教兼ねて鍛える」と言って帰りました。

中身は子供らしい穴だらけの屁理屈でしたが、すぐに言い返すとはやっぱりトールさんは利発な子だと思っていたら、こちらを見て涙目になっていました。

思えば、こういう群れの他と違うということを突きつけられる悪口は今まで言われたことがなかったなと私もここでようやく気づきました。


頭を撫でていると、少し落ち着いたようなので散歩を続けました。

ただ、家に帰ると、皆に向けて「僕って異常なの?」と泣き出してしまいました。

すると、フェンリルさんが「そりゃ、こんなに可愛いのだ、異常に決まっておろう」と抱きつき、

龍皇さんが「こんなにも利発な子はいないわ、確かに異常よ」と頭に止まる。

リッチロードさんが「たしかにこんなに良い子は、異常ですね」と背中をたたき、」

お母様は「そうね、こんなに優しい子はいないわ、異常ね」と笑い右から抱きしめ、

お父様は「そうだね、こんなに皆に愛されている子はいないね、異常だ。それでどうしたんだい?」と左から抱きしめて答えていました。

てっきり、「異常ではない」と否定するものと思っていたので驚きました。こういう認め方もあるのかと。

皆が話を聞くと、

フェンリルさんが「うむ、ダイスとやらの言うとおり、トールは異常よ。神に確かに祝福され産まれながらジョブについて、魔物に好かれ、「祝福と加護」をたくさん受けて育ち、我等が傍におる、産まれた日は祭りに、今ではお主のためだけではないが、になっておる。・・・でそれがどうした?」


「どうしたって・・・皆と一緒が良い、一人だけ変なのって嫌だよ」


「そうすると我等に会えなかったし、今も傍におらんが良いのか?」

と龍皇さんが笑って言うと


「嫌だ!絶対に嫌!だったら異常でも変態でも良い!」


「そういうことです」

とリッチロードさんが言いました。


「どういうこと?」

と不思議そうに首を傾げると、


「その程度のことですよ、我等が傍にいるほうが大事なら、自分が他の人と違うことに誇りを持って、胸を張ってそれがどうした、と返しなさいな。そも、異常と言えば皆が異常なのです。一人として同じ人間などいないのですから。宿屋のおかみさんだって、第四の村で宿屋を盛り上げている女性は彼女だけです。このご両親から産まれたのはトールだけ。そしてダイス君もあちらの家庭で産まれた次男は彼だけでしょう。鍛冶屋さんはこの村で御一人でしょう。雑貨屋さんも。どこかしら違うから群れでいると強いのですよ、人間は。分かりましたか?」


「最初の方は、他の人と違うことを誇りに思えってことでしょ。でも人間が群れでいると強いというのは?」

と目をもうキラキラさせながらもう別の話題になってました。


「例えば皆が鍛冶屋さんだとしましょう、そうすると・・・」


「そこまで!続きはお風呂と着替えをしてから」

とお母様が締めました。


・・・この家の家族の輪に入りそびれてしまっている危機感が。

ゆっくりしすぎる植物の習性からでしょうか、気づくといつもこうです。

もう少し早く考え行動しましょう。』


「ふふっ、ドライアドさんにこんな心配があったなんて、家族の輪にいなければ散歩をお願いしませんよ」

とイリスが笑う。


「今度いきなり皆で抱きしめてみようか」

と、悪ノリの顔で妖狐が言う。


「良いですね、そうしましょう!」

と答えるイリス。


・・・

・・・

・・・


「う~ん、熱い、痛い、だるい」

とトールが寝言で呟く。


「いけない、頭のタオルを変えなくちゃ」

とイリスがばたばたと動く。


その様を横目で見て、

「コレか、神様は何をしたんだろうね」


『1237年 (読めない、筆圧が強すぎて破けている)

今日は6回目の友好祭、つまりトールが6才の誕生日である。

めでたい日である。

昔、龍皇に言われた通りトールと祭りに参加した。

確かに種族の垣根を越えた、良き光景であった。

一部決して魔物に近寄らない者もいたが、そういう者もおるだろう。

屋台の料理も美味しかったし、ゴブリンとオーガの太鼓の組み合わせも中々のものだった。

セイレーンには人気が劣っていたようだが。

原初の音楽を思い出させる。

しかし、父は一体何を考えているのか。

祭りの終わりに広場の像に宿ったかと思えば、

『トール君、来年のお祭りにはトール君は出席できないよ、返すものがあるから。1週間くらい高熱が続くと思う。ただ、皆の者、命にもその後にも影響がないから安心せよ。くれぐれも愛し子の家に御見舞いの列をきずくのは禁止だよ。アーノルド達も君達にできることはない、龍皇、君もだよ、血とか意味ないから飲ませないように。覚えておいてね、本当に命とかには別状なく熱だけだから。

しかし、君達が友好祭と名づけたこの祭り、良き隣人として情愛深く他種族も迎え入れる、素晴らしいね。君達は本当に僕の誇りだよ。産まれて来てくれてありがとう。いつでも見てるよ』

と一方的に言うと、消えてしまいおった。

返すもの?

高熱?

父よ、何を考えている?

トールを不安がらせるでない、今度会えたら噛んでやる。例え怒られたとしても本気で。』


「是非、私の分まで噛んでおくれよ」

と苦い顔で妖狐が呟く。


「ごめんなさいね、あら、もう終わったの?」

とイリス。


「有能なのだよ、妖狐お姉さんは!」

と胸を張る。

(そうか、何かしてないと不安だったのか、お母さんは。仕事奪っちゃった、何が有能か!)

と内心は荒ぶっていた。


「ありがとうね、夕食を食べていくでしょ?そろそろ夫達も帰ってくると思うの」


「うん、今日は一緒に作ろうか」


「トール用にシチューはたくさん作っておきましょう。それなら起きたときに食べやすいでしょう」


「今日で6日目?」


「えぇ、こんなに心配させるなんて、悪い子よ、まったく」

と苦笑する。


「「ただいま」トールは?」

と音を出さずに駆け寄るフェンリル。


「まだよ、明日には良くなると良いのだけど」

とイリス。


「父は1週間くらいと言っておった。大体そういう時は1週間でできていたわ。今回が違うようなら、噛む箇所を増やしてやろう」

と静かに怒るフェンリル。


「私の分もよろしくね~」


「僕等の分も」


「あぁ、確かに承ったわ」

と牙を出し笑う狼。




(ここは・・・男性がお爺ちゃんっぽい人と話している、間違えて死んだ?別の世界?)

(場面が変わった、ここは同い年の子がたくさん集まっている、へぇ、あれ?さっきの男性の子かな?よく似ている)

(また場面が変わっている、さっきの男性が楽しそうに何か食べている、友達かな?)

(あれ?また場面が変わった白い建物だ

「産まれました!お子さんもお母さんも無事です!」

「ありがとうございます!一目会っても?」

「えぇ是非!」

「おぉ、よく泣くな、男の子か、ありがとう頑張ったね」

「目じりがあなたそっくりでしょう?」

「口なんかは君そっくりだ」

「男の子ってことは名前はやっぱり?」

「うん『透』だ!裏まで見透かせるように、優秀であるように」

「松田 透 ね」

松田 透? うぅ・・・)

(あれ?場面が、トラックが、子供が・・・トラック?)

(あぁ、そうか、これは前世の)


感想たくさんいただきました、ありがとうございました!

ね、話が全然進まないの。

主人公が60話になってまで主人公してない小説が自慢です(白目


でも、それでも良いと思っている自分もいます。

キャラが思ってたのと違う方向に進むと、その先を見たくなるんですよ。

そうすると新しい展開になっている。


だもんで実は文章書くのには全然苦労してません。

キャラが勝手に動くので。

苦労しているのは名前です。

あれ?この名前使ったっけ?みたいな(笑

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