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59話 もっふもふとしたもふもふな日々 22「終宴と取引」

そうして日が昇る。

魔物は今回は湖に投げ飛ばされた者はいなかったらしい。

まったりとしていたり、森の方で寝ていたりとしている。


人間側は二日酔いの者が死人よりも死人らしく起き上がり、自宅に戻ったりしていた。

もちろん元気に起きている人もいる、ナムダ王だ。

徹夜だが、顔が元気はつらつとしている。

寝ている魔物の長の姿をためつすがめつと見ている。

彼の付き人は流石にそんな元気はなく、途中で寝ていたが、もはや王も気にしていない。


昼になると広場の死人はいなくなり、ゴミも消えていた。

リッチロードがスライムに頼んだのだ。

スライムも栄養になるので嬉しそうにぷるぷると震えている。

前回もこうすれば良かったと若干苦い思いがある。

実際には前回は汚したものが片していたのだが、効率性が違う。

ナムダ王がその様子も熱心に眺めていた。

あらかた片付いたところで、土産の分配をしに向かう。


「おぉ、リッチロード殿、おはよう、片づけまですみませんのぅ」

と村長が声をかけてきた。

「あぁ、おはようございます、特に私は何も。スライム達に後で告げてあげてください」


「彼等もそうじゃが、指示を出したのはリッチロード殿じゃろう。やはり、お礼なり詫びなりを申し上げんとな。それで、どこへ向かわれるのじゃ?」


「そうですか、あぁ良いタイミングですよ、これから皆からの土産を分けるんです、また肉の量とか諸々。是非意見をうかがいたいので、一緒に来てくれませんか?」


「ふむふむ、この老骨がどこまで役に立つか分かりませんが、断る理由がありませんな。行きましょうぞ」


と二人で倉庫に入るとやはり肉の山、武具の山、宝石たくさん、塩、胡椒、砂糖の宝箱がたくさん。毛もある。


「肉は前回この位を村に残しましたっけ?」


「うむ、わしの歩幅でコレくらいじゃったから、そうじゃな」


「どうでした?消費量としては?」


「そうじゃのぅ、もう少し多く残しても良かったかもしれんのぅ。子供達が皆良く食べると聞いておるでな」


「じゃあ、今回はコレくらいで?」


「うぅむ、子も育つ、もう少し多めに、コレ位にしようかの。残りは他の村へで良いかの?」


「えぇ、もちろん」


「武具は・・・逸品はやはりトールのところへ。適当に良いのは村人用で。そんなじゃないのは売る用で」


「そこは分からんからなんとも言えんが、分け方はそれで良いと思うよ」


「毛は・・・」


「全て残すべきじゃろうな、まだ行き渡ってなく必要としているところもあるかもしれんしの」


「あぁ、そうですね。さて、宝石も逸品物はトールのところへ。流石に逸品物も数が少なくなりましたね」

と苦笑する骸骨殿。


「それはそうじゃろう、あんな大きく立派なのが毎年同じ数来たら怖いわ」

と笑う村長。


「じゃあ、後は村の共有財産へ」


「いつもすまんの」


「いえいえ、あまりトールのところに集まり過ぎても良くないですしね。今回は特にトールのためだけではないですから。村用と考えている者もいるでしょう」


「「さて問題は」」

と二人して見るのは宝箱の山である。


「なかなかない光景ですよね」

とリッチロード。


「うむ、酒が入ってなければ皆もあんなには使えんかっただろうよ」

と村長。


塩・胡椒・砂糖が入っている宝箱がそれぞれ10ではきかない数がある。


「この村用に最大で幾つ必要ですかね」

とリッチロードが訊く。


「ふぅむ、あまりあっても困らない気がするが、悪くしてものぅ。最大で宝箱3つずつかのぅ」

と村長。


「ふむ、そんなもんですか。では一応一つ足して4つずつにしましょう。子供達が良く食べるなら少し多く見積もりましょうか、なに、もし多くても売れる物ですしね」


「おぉ、そうじゃのう、さっき自分で言っておきながら忘れておった」

と笑う村長。


「残りは各村と国王と領主へで良いですかね?」

とリッチロード。


「うむ、だが、王達にコレは差し上げるのも不敬ではないじゃろうか?」

と村長が言うとリッチロードが笑い出す。


「はははっ!絶対大丈夫です、これの真価を知っているのはまさにその王達です。祭りの時に村人達が遠慮なく使い出した時の顔からしても絶対大丈夫です」

良い土産になるでしょう、と笑いながら言う骸骨。



太陽が完全に天を支配した頃、

「本来であれば各王や領主、村長、龍皇どのからも挨拶をいただきたいが、わし達もこの後仕事が詰まっているでな。各王達には申し訳ないが、わしからの挨拶のみにしたい。さて友好祭はこれにて終わりじゃ、魔物の長達も村人達も近隣に住む者達も、屋台をわざわざ持ってきた商魂たくましい商人も、そしてナムダ王、ジョルジュ王、ザイガ王も良き思い出になれば幸いじゃ。またこれからはいつもの日常に戻るが、来年もこの皆で参加できるように、皆壮健であれ。これは国も種族も違えどグレンからの命令よ!それではまた来年!」

と笑いながらグレン王が言う。


おぅ!またな!

また!

来年に!

何としても生き残らんといかんなぁ!

来年に!

ナムダ王!次は質問だけでなく飲んで喰おうぞ!

ザイガ王!ジョルジュ王!そなたたちも元気でな!

約束を忘れるでないぞ!


と魔物の声と拍手の音が広場を埋め尽くした。


魔物達が帰っていく。

スライムに入って、スライムが龍に乗り。

また、ここでも村人と長で挨拶が交わされる。

それは昨年と同様に。



最後に四聖獣が帰ろうとした時に、龍皇が呼び止めた。

「お主達には我から贈り物がある」

と4つの布に覆われた物を持ってきた。


「これは」

「「もしかして」」

「本当ですか!?」

「ありがたい」

ともう分かっているのだろう、4匹から涙が流れている。


「お主等も近くに父の像が欲しかろうと思ってな。ドワーフの長に頼んでおい、わふっ!」

皆が龍皇に飛びついた。


「「「「ありがとう、兄よ」」」」


「うむ、達者でな。ただ、リヴァイアサンのを誰か運んでくれ、潮風に気をつけるようにもな」


「では私が行くついでに洞窟でも作るように言っておきましょう、像を安置できるような洞窟を」

と青竜が答える。


「うむ、悪いが、すまんの」


「いえ、この贈り物の価値を考えればこの位」

と笑う青竜。


「では兄弟達よ、壮健で」


「「「「長兄も」」」」

と去っていく4匹



「さて、商談じゃ」

とグレン王が静かになった村の倉庫に来て言う。


「魔物の長の土産か、気になりますね」

とガイルが良い、ふんふんと頷くナムダ王。


「ふん、わし等は後は財務大臣と軍務大臣に任せる」


「えぇ、早く自国へと戻りたい、疲れました。・・・本当に」


「・・・あぁ。まさか奴等が言いたいことがあんなことだとは」

とジョルジュ王とザイガ王が言う。


「あ、でしたらお土産にコレを」

とリッチロードが言うと、村の青年が持ってきた。


「なんと!塩と砂糖と胡椒か!?良いのかこんなに?これだけで財産じゃろうが!?」

とジョルジュ王が驚く。


「まだたくさんありましてね、近隣の村にも配る予定でして」


「じゃあ、遠慮なくいただきますね」

とザイガ王が貼り付けた笑顔で応える。


「ザイガ王」

と龍皇が呼び止めた。


「なんですか?」


「もう人間が狩られることもそうそうなかろう、はぐれがおるかもしれんが、いつまでも憎悪や恐怖に囚われるな。神が望むからではない、我が、我等が守り育てた人間の子孫である、お主にそう願う」

と龍皇が言う。


「・・・言葉は覚えておきますが、簡単なものではないのですよ」

とザイガ王は最後まで笑顔を貼り付けたままであった。

そして、二人の王は先にワイバーンで帰った。


この後の商談の様子は割愛しよう。

また財務大臣が暴れ出すかと思えば、他の国の財務大臣もよだれを流す。

そして、国の予算を考え、絶望するというものであった。

手堅く良質な宝石と売ってもいい程度の武具が主に話の中心にあがったくらいである。龍の鱗もシャマルやオーガスタ、サジウルス国でも欲しいところだが、予算が厳しい。しかし、ナムダ王はぶれずに魔物の毛を頼んでいた、龍の鱗も。そこで財務大臣と一つ騒動があったが、ナムダ王が強権を発揮した。

あとは、グレン王と財務大臣とガイルが砂糖・塩・胡椒を各村に配るのは止めるように頼みこんだくらいだ。

市場価値が凄いことになる、首をくくる商人も出るからと、それはもう必死だった。

少しずつ安くしていき、それはこの村のおかげであると告げることを約束してオーガスタの王宮へ全て運ばれることになった。

肉を配るのはOKだった。



アーノルド家では、

「トール、我等からの誕生日プレゼントじゃぞ」

とフェンリルが尻尾を振りながらトールの頬を舐める。


「そら、これよ」

と龍皇がいつの間にか戻ってきており、渡した。


「これは?」

とアーノルドが首を傾げる。


「祭りの際に王達が村に筆記具をくれたじゃろ?それと同じ物を10枚ばかり買ってきた。消耗品らしいからの、トールにはたくさん学んでほしいからの」

と龍皇が答える。


「まぁまぁ、ありがとうございます!私達からはコレよ、トール」

とイリスがでんでん太鼓を渡す。


「ママ?」

とトールが何かよく分かってない様子。


「こうやって振ると音が鳴るのよ、さぁ、こう」

と手をとってやらせてみると、トールの顔が輝く。


「かんかん、かんかん!」

とトールが嬉しそうに鳴らす。


妖狐が躍り出ると

「トール?これはこう持ってこうすると書けるんだよ、ほら」

とトールの手をとって、簡単な絵を書いてみる。


「フェン!フェン!」

犬の絵だったが、トールにはフェンリルに見えるようだ。


「うむ、我だな」

と嬉しそうにぺろぺろしているフェンリル。

もう魔狼の王の威厳なぞ捨てているようだ。


「あぁ~!私がいない時に渡すなんて~!!」

と商談から帰って来たリッチロードが怒る。


アーノルド家はまだまだ騒がしい日々を送る。

ちなみにベッドは子供用に一つドワーフの長に作ってもらった。

そして、各財務大臣からも長にイネガル神の像を作ってほしいと依頼があったそうだ。

彼はまだしばらく帰れそうにない。むろん依頼料は酒である。

不満そうに言いながらも満面の笑みを隠せない酒飲みである。



「しかし、魔物がいなければ楽しい祭りであったな、確かに肩肘を張らなくて良いというのは貴重だ。村人の様子も分かる、ふむ、これからは自分の領内のには参加してみようか。身分を隠してだが」

とザイガ王がワイバーンの上で静かに笑う。


ジョルジュ王も

「魔物が人間の心配なんぞしおって、今更だわ!!・・・だが、祭りというのは久々じゃったわ。また抜け出すかな」

前のテイマーから

止めてくださいね~と声が飛んできた。

聞こえてたらしい。

ちょっと赤面するジョルジュ王であった。

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