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55話 もっふもふとしたもふもふな日々 18「酒と問答」

「それで?こんな真似をしてまで言いたいこととはなんだ?」


「早く言ってください、そしてとっととあっちの屋台にでも行かせてください」

とジョルジュとザイガが吐き捨てる。


「なに、基本的なことよ、これを知らずして話は進まぬ」

とゴブリンロードが笑いながら言う。


「しかし、酒があるのに飲まないのは酒を作った者への礼を失するだろう、まずは飲めそれからよ」

そして同じく笑いながら皆のコップに酒を注ぐ。


「勝手に注がないでください、魔物が注いだら飲めないでしょう」


「ふん、まったくだ」


「まぁ、酒に罪があるわけでもない。とりあえずこの1杯は我慢して飲んでもらいたい」


「では、乾杯という雰囲気ではないが、各々方、イネガル神に感謝でも、眷属の健康を祝うでも、とりあえず乾杯」


コップを合わすでもなく、目の前で掲げ、各々が飲む。

ジョルジュは一口。

ザイガは半分ほど。

ゴブリンロードとオーガロードは飲み干す。


「「ぷは~っ!」」


「人間の酒もやはり美味いものよ、また前に飲んだものと味が違う」


「我等の酒に自信はあるが、味はどうにもこうにも比べられんな」

とゴブリンロードとオーガロードは笑う。


「お主等はオーガの酒を飲んだか?あれも良い酒ぞ」

とゴブリンロードが手酌で更に飲む。


「おい」

とジョルジュが睨む。


「どうした、他の酒瓶は持ってきただけで、開けてもない。魔物が云々ならその辺の酒を開けて飲むと良い。ただ、我等用に2杯分ほどは残しておいてもらいたい」

とオーガロード。


「おい」

とジョルジュが更に睨む。


「?どうした、もしかして酒が飲めない質か?それで群れの長なぞ大丈夫か?」

とゴブリンロード。


っち!と盛大に舌打ちして、一気に飲むジョルジュ。


「おぉ!いけるではないか、もう一杯!・・・といきたいが、ザイガ殿、他の酒でも注いでやっていただきたい、我等が注ぐのは嫌らしいからの」

とオーガロード。


「えぇい!飲みたくなったら自分で手酌をする!そうではなくてとっとと話を進めろ」

と怒鳴るジョルジュ。



周りの人間は怖くてそっちを見ようとしない。

魔物は興味深そうに酒のつまみ代わりに見ている。


「おぉ。そうだった、そうだった」

とゴブリンロードが手酌をしながら笑う。


「すっかり忘れてしまっておったよ、良い酒がいかん、酒が悪い!だから飲み干してやろう!」

と一気に飲み干すオーガロードに、酌をしてやるゴブリンロード


「忘れてしまうのは、知性と記憶力の問題でしょう、責任転嫁はいただけませんね。茶番は飽きました。とっとと話しなさい」

と真顔のザイガ。


「うむ、そうか。では、ずばり、何故我等をそう嫌う?」

とゴブリンロードが真顔になり、オーガロードも頷く。


「はっ!」

とジョルジュが嘲笑する。


「そんなことで連れまわさないでください、考えれば分かるでしょう。知性が乏しくて自分で分からないのでしたら、周りにお聞きなさい」

とザイガが言って立ち上がろうとする。

その手を掴む、無骨な手。


「そんなこと、ではないからよ。幾通りも考えられるよってな、こうして尋ねているのだ」

とゴブリンロード。


「話を勝手に終わらすのも礼を失するものがある、だな。つまり、お主等はこの問答が終わるまでは逃げられんよ」

とオーガロードが笑う。


きっと視線に熱を込められたら、オーガロードの顔面に孔が開いていたことだろう。

ザイガの怒りの視線は気の弱い人間なら気絶するほどだ。

弱い魔物ですら逃げるだろう。

一国の王は伊達や酔狂で務められない。

それを視線だけで周りに知らしめた。


「逃げる?我等が逃げると!?お主等から逃げたりするものか、自惚れるなよ魔物が!」

と手付かずの酒を持つと、一気に開けそのまま飲むジョルジュ。

あぁ勿体ない、と切ない声を上げる魔物2人。


「我等が魔物を嫌う理由?そんなのお主等が一番分かっとるだろう!!何故、国を広げられなかった?城壁がないとお主等に襲われるからよ、何故、魔物が怖いものと子供に教えなければならない?魔物が人を食らうからよ!どのくらいの間、突然襲われるかもと恐怖して人間が過ごしてきたのか!お前等がいたせいだからだろう!我等は怯え、暮らし、ある日突然に殺されなければならない程、罪深いのか!?我が兄はそれほどの悪か!?何故、我等を食べる?答えてみせろぉ!」


「ふむ、兄君を亡くしたか」

とゴブリンロード。


「そうよ、優しく、懐が深く、愛を持っている素晴らしい人間だった!わしなんぞよりよほど王になるのにふさわしい方だった!ゴブリンに襲われた集落があった!悲劇を繰りかえさないためにゴブリンの集落を潰すために騎士団を率い、そこで死んだ!貴様等は、貴様等はぁ!!」

とゴブリンロードの肩を掴み、叫ぶ。

肩からは血が出ている。

老年とは思えないほどの力が出ているのだろう。


「ふむ、まずは貴殿の兄の勇敢さに敬意を」

とゴブリンロードが酒を掲げ、飲み干す。

「さて、では質問に答えていこうではないか、貴殿も座れ、あくまで問答の場よ。なにより、貴殿の手が痛むでな」

と優しく手を開かせると肩を押し座らせた。


「ふむ、まずは聞いていて、お主の怒りは分かった。お主が我等を嫌う理由もな。だが、前半の質問は正直意味が分からん。国が広げられなかった?お主等がまだ弱いからよ。子供に怖いものと教える?当たり前だ、どこの種族でも喰われんようにやっている。突然襲われる恐怖?そんなのスライムがギリギリ感じていないかどうかよ、他のどの種族も感じておるわ。罪深いから食べられる?そんな訳なかろう。世界がそうなっているからよ。お主の兄にもし悪いところがあるならば弱かったことだけよ」

と淡々と酒を飲みながらゴブリンロードが答える。


「我にも意味が正直分からん。弱肉強食、だから弱者は群れて強さを手に入れ強者を屠る。それに何だ?それはお主等もやっていることだろう。ゴブリンの集落を潰すため?そこのゴブリンもさぞや恐れ戦いただろうよ。何故、我等を食らうだと?お主等だとて魔物を食らっているだろう。自分達は狩るが他の種族は狩ってくれるなとでも?何だ?聞いていれば特別扱いしろとでも聞こえるぞ」

と同じく酒を飲みながらオーガロード。

飲み干した酒瓶を切なそうに見ながら次の瓶を手に取る。


ザイガはそれらの光景をつまらなそうに眺めながら酒を飲んでいる。


「うるさい!うるさい!!お前等は強いからそう言えるのだ!!」

とまた酒瓶に口をつけるジョルジュ。


「我等はな、だが眷属は違う。我等ゴブリン・オーガの眷属はまず間違いなくお主等が狩られるよりも、殺されているよお主等人間にな、そも、その言い方だと人間が弱いと聞こえるぞ」

とゴブリンロードがオーガロードが開けた酒を飲み、美味いと笑顔を浮かべながら応える。


「事実だろうが!」

とジョルジュは更にヒートアップする。


「阿呆か、間違いだ。自分達の長がそれでは確かに弱くもなろうがな」

とゴブリンロードが笑う。


「のう、皆の者!人間を積極的に狩りたいと思うか!!??群れから離れた者ではない、集落まで行って!あるいは群れをなしている時に!!我には恐ろしくてできんわ!」

と笑いながら酒を掲げ周りの魔物に声をかける。


群れから離れた者でなくて?嫌だな

あぁ、怖い

あまり人間の生息地の傍じゃないから分からん

同じく分からん

俺も怖いわ、眷属にも絶対にさせん

割に合わん

あの執着心は怖いものよ

やつらにも割に合わんはずなのにの

弱者ではないな

強くもないが、弱者ではない

たまに強者もいるがな

あぁ、だから余計に面倒だ


と眺めていた長達が声をあげる。


「な・・・んだ・・と?」

とジョルジュが声を漏らす。


ザイガも興味深そうに見ている。


「だ、そうだ。人間を弱者と思うておるのは当の人間だけよ」

とゴブリンロードとオーガロードが笑う。


「だが、現実お前等は襲っているではないか!」

とジョルジュが叫ぶ。


「うむ、群れからはぐれた者は格好の狩りの対象よ。お主等が狩る時もそうだろうが。だが、群れに手を出すのは躊躇われる。数匹固まっていたらもう躊躇うの」

と酒を一気に飲み干すオーガロード。


「お主等人間は手を出すには割に合わん。一人二人群れからはぐれた者ならば良い。が、同じ群れの所からあまり摘まむと群れで狩りに来る。その気迫ときたら前に進めねば死ぬとでも言うが如く。気迫に飲まれ死んだ同胞を見たことがある。そしてたまに群れにやけに強いのがいたりする。そしてそれを退けてほっとしていると、別の群れが次は来る。まるで蜂よ」

とゴブリンロードが嫌そうに言う。


あぁ、蜂だな

蜂だなぁ

蜂より手に負えねぇ

うむ、巣を潰したら、関係ないところの巣の者が来るからの

しかも皆決死の覚悟よ

各々が自分を弱者と思っているからの、そりゃ決死の覚悟だろう

そして火を使う

あぁ、喰うのが目的でないところが忌々しい

うむ、あれはどうかと思うが、それも彼等の生きる術なのだろう。


「聞いたか、蜂より厄介だそうだ」

とゴブリンロードが笑う。


「だが、確かに、私の国の村は、兄は、村の集落が潰されたと、いや、違う!そもそもお前も、そこのお前も、何故魔物なぞと仲良くできるんだ!!」

とそこらにいた目を背けていた青年を指差す。


「え!?俺っすか!!??いや私!?そうですね、飲んでみたら良い奴だったんで」


「魔物は怖いと教わってきただろう!いつ豹変するか分からんのだぞ!」


「でも、魔物を見るのなんて俺数えるほどしかないんで、むしろ言葉が通じない狼や熊の方がよっぽど怖いっすね」


「な・・・・ん・・・・だ・・・と?では貴様も?」


「えっ!??あぁ、はい狼や熊の方が怖いです、死人もたくさん出てますし」


「魔物は!!魔物は出ないのか!!??」


「・・・たまに噂で、ですかね?」


「何・・・故、何故魔物が出ない!!」

とジョルジュが叫ぶ。


「いや、私等に聞かれても」


「な・・・んだと?何故?何故だ??」

と途端に老け込んだように座り込むジョルジュ。



「何をしているかと思えば、肉も食べなさい。肉も。問答だろうが、祭りは祭り。肉も楽しみなさい」

と貴族のぼんぼんらしき男が他の青年を連れて肉を大量に持ってきた。

途端に机が酒瓶と皿に積まれた圧倒的な肉で覆われる。


「ん?見ない顔ですね、貴族ならそれらしく挨拶できるでしょう。不敬ですよ」

とザイガが言う。


「?あぁ、私はリッチロードです。すみませんが最初に言った通りに作法に疎いんですよ」

と手だけ骸骨にして見せた。

流石に驚いた表情のザイガ。

「骨だと食べられなくてですね、去年悔しかったので変化の魔法を練習したのですよ、美味いですね、酒も肉も。しかも今回は胡椒も好き放題、王族にでもなれた感じですね」


「なんと、リッチロード殿か!!??」

とゴブリンロードが驚く。


「ますます人外と化すな」

とオーガロードが笑う


「人外ですよ、元から。元の元は人間ですがね、ジョルジュ王」


「なんだ」

と疲れたように返す王。


「推測でよければ、お教えしましょうか?シャマル国が襲われ、ここが襲われてこなかった違いを」

皆さん良いGWを過ごせていますか!?

過ごせている人も過ごせていない人も、これから更によいGWを過ごせますように!

特に明日、明後日が仕事の人に祝福を!

あなた方の働きで救われている人は必ずいますよ!!

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