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51話 もっふもふとしたもふもふな日々 14「プレゼントとリクエスト」

「龍皇よ、トールの1才の誕生日が近いですね、また魔物の長達を呼んでお祝いを?」

とリッチロードが語りかける


「うむ、そのつもりだが改めてどうした?」


「いえ、皆もまたお祝いの品を持ってくるでしょう?ただ、もう目ぼしいのとかはこの前に持ってきていて、各種族で困ってないかなと」


「ふむ、我はまだ宝石類もマジックアイテムもあるから良いが、少し待っていろ。ドラゴンネットワークで確認する」

と龍皇が集中する


「ドラゴンネットワーク自体そういえば不思議ではありますが、そこで何を確認を?ドラゴンは各々飛び回っているから分からないのでは?」


「ふふふ、そう思うところがまだまだよ。魔物用にダンジョンが開かれたのだぞ?危険だが宝もある。皆も食事のために挑戦せざるをえまい、ただし怪我も負おう、毒も食らおう。そこに龍がいたらどうなる?皆助かるだろう?そして龍は対価に食事を提供してもらうわけだ。これぞ今の龍の在り方よ」


絶句した後、リッチロードは口を開く

「あなたの眷属だけあってものぐさだらけですね」


「そういうな。我もこの村にいなければそうしていた」


「そうでしょうそうでしょうとも、いや、この際構いません。確認してください」


(龍達よ、我が眷属達よ)

(あ、龍皇様だ)

(珍しい、2年続けてとは)

(え、僕この1回しか知らない)

(この前は巨体の者にのみだったからの)

(ドラゴンネットワークって龍皇様もできるんだ、他の龍達としかしてなかったから知らなかった)

(っていうか龍皇様って起きてたんだ、まだ寝てるかもと)


(毎度毎度喧しいわ!知らん奴は覚えておけ。我のこの波長が龍皇の物よ。ちょっと確認したくてな、お主等各種族の所に居候しておろう)

(うん、まだ死体にしたことないよ)

(たぶん、死なせたことはないよ、だろう)

(あぁそうそう)

(たまに血を結構消費するが、何もせんでも食事がでるのは良いの)

(血だけある程度置いておけばふらりと飛んでっても良いしね)

(大体の龍が大体の種族のところにいるんじゃない?)

(そういえば龍用のダンジョン作ってください、挑戦してみたいんですけど)

(そう、それ!なんか彼等ばっかり喜んでいるのはどうかと思う)

(龍皇様、仕事しろ~)

((仕事しろ~))


(本当に喧しい奴等よ!そんなに言うなら設置してやる。我の洞窟の横辺りで良いな?多数決!)

(良いよ)(了解)(承知した)

(ただし、我龍皇の下命ずる。イネガル神が我等に簡単なダンジョンを造るはずがない。最低4名で慎重に行くこと。空気がない部屋だとか、重力がもの凄い部屋だとかあっても驚かん。なんならボス部屋に我を模したのが2、3匹いても驚かんぞ)

((((((え゛))))))


(さて、確認したいのはそろそろ愛し子が1才になるので、また魔物の長を集めようと思っておる。各魔物の長もそのつもりだろう。彼等は何を持ってくるか決められているか?)

(決めてるみたい~)

(まだだな)

(こちらもまだだ)

(まだ、というか私も行きたい)

(まだ、同上)

(まだ、同上)

(まだ、同上)

(まだ、同上)

(まだ、同上)

(まだ、同上)


(ふむ、分かった。スライムロード達が素晴らしい働きを見せたので、今回は巨体でなくても構わん。9体ほどそちらで決めよ、また連絡する)


「まだ決めてないのが多かったぞ」


「そうですか・・・」

と考えるリッチロード


「じぁあ、リクエストしましょう。武具は魔物から見ても明らかな逸品のみで、基本は肉を自分が食べる用と土産用に。あと、たぶん塩とか胡椒とか砂糖とかもあるんじゃないでしょうか、ダンジョンには。何か味がする粒がたくさん詰まっていたらそれは必ず。美味しい肉になります。あと回復薬とかもダンジョンにあれば宝箱一つ分揃えられているならそれも。あと、前回毛皮とか毛を土産にしてきた種族はそれで構いません。もし宝箱に入っていたけど使い道が分からないのがあればついでに持ってきてくださいと伝えて下さい。あと日取りも」


「う゛、多いの注文が。お主がドラゴンネットワークに入れればの・・・。伝えたぞ。」


「これで良いでしょう、龍皇もついでにゴブリンのところのダンジョンを見てきてください。というか制覇してきてください。制覇するとどうなるか気になるので」


「何故、我が!!??」


「一番リスクが少なく、早いからです。トールが喜びそうな物が見つかるかもしれませんよ?道中の宝箱などはゴブリン達に任せてください。その分、その階のトラップは全て作動させておいて、その階の敵の殲滅をしてください」


「う、ぐぅ。トールを喜ばせたいが、トールから離れるのか・・・」


「何、あなたなら数日もかからないでしょう。私も行きますよ、その方が早い」


「お主もか?」


「私も祝いの品を送りたいのですが、どうにもお金がなくて。なるべく村の共有財産には手をつけたくないんですよ」


「村人は気にせんと思うがな」


「私が気にするんです、さぁ、さっさと行きましょう」


「人間側に言っておくのではなかったのか?」


「もう言ってありますよ、さぁさぁ!私だって早くトールに会いたいのですから!!」


「分かった、分かった。せめて村長と父君達には告げて来い。お主は頼りにされておるからな」



ゴブリンの集落に向かう、龍皇とリッチロード。

やはり制覇は目指したことがないらしく、ほどほどで止めているとのことだ。

彼等からするとただの狩場という認識である。

そこにも龍がいたらしいが、どうやら先ほど飛んでいったという。

たぶん龍皇に会うと面倒を頼まれると思ったのだろう。


「ダンジョンを制覇か?何か意味があるのか?」

ゴブリンロードが言う


「大体、ダンジョンを制覇すると豪華な物が手に入るというのが人間の古来からの認識でして、ちょっと試してみようかと。愛し子のための祭りに人間の酒を買いたいですし、そのお金にもね」

とリッチロード


「ふむ、龍皇殿がいるなら死人も出まい、分かった。手伝うし、手伝わせもしよう。どれくらい必要だ」


「最も安全なのは集落の全員ですね」


「全員!?」

とロードが目をむく。人間の次に数が多いのがゴブリンだ。

それのロードが治める一集落はある意味王都である。

流石に数は及ばないが、それでも他の魔物の3集落分くらいの数は優にいるだろう。


「安全が確保されたら一列に出口まで並んでもらうんです。それで宝箱や魔物が出たら順々に出口の方の者に渡していく。戦わせも捜索させもしませんよ、あ、レイスを呼んでおきましょう。何かと便利ですし、30位かな・・・」


「なるほどの、分かった。すぐに手配しよう」


そうして集められたゴブリン達。


ダンジョン?

ゴブリン用のダンジョンのため小さくなった龍皇がその階層の魔物を丸焼きにし、それを後ろのゴブリン達に渡していく。

レイスが宝箱を見つけるため、四方八方散って、壁を通り抜け探す。

その宝箱までの安全なルートをゴブリンロードとリッチロードで探していく。

(ゴブリンロードはただ進み、罠に悉く嵌まっては破壊。リッチロードは罠を見つけては予め破壊)

そしてゴブリン達を宝箱まで連れて行き、バケツリレー。

終わるとゴブリン達はまた列に戻る。


ひたすらその繰り返しである。

ダンジョンの同じパーティの者がその階にいると罠も魔物も復活しないらしい。

それが分かったら更にスピードアップ。

ダンジョンの最上階、100階にはその日中に着いた。


10階毎に強い魔物がいた、龍皇が瞬殺したが。魔猪もどきがいたのは喜ばしい誤算である。

100階になると何がいるのか、わくわくしながら開ける龍皇。もう楽しんでいる。

緊張するリッチロードとゴブリンロード。

いたのは大きな龍だった。

なんとなく分かっていたが、相手にするのはなかなかキツイ。

さて、どうしようかと思ったが、

龍皇がいつのまにか元の姿に戻り喉を噛み砕いていた。


「ゴブリンのダンジョンだからか知らぬが、最後位面白い敵はいないのか。フェンリルだとか」

と悪態をつく龍皇。

たぶん、それ無理ゲーです。

龍用のダンジョンならあり得るが。


ドラゴンを倒すと死体が宝箱や金銀財宝に姿を変えた。

そして男の声が響く

『ダンジョン達成おめでとう、もう一度下まで行くのも面倒だろうから、その財宝とともに外に送ってあげるよ。もし仲間を途中で置いてきてたならその人も。また、宝箱とかは復活するから遊びにおいで、じゃ』


「誰だ?」

と龍皇


「イネガル神でもないようでしたが」

リッチロード


「最後は龍か。やはり制覇は我等だけでは止めておいたのが正解か」

とゴブリンロード

若い者から制覇したいという声が出つつあったのを止めていたのだ。

何が出るか分からないという慎重さが彼らを救った。


「「「お?」」」

と3匹が光に包まれ、集落の広場へと。

周りを見渡せば他のゴブリン達もいる。


「ありがとうございました、ゴブリンロード。皆が手伝ってくれたおかげで宝箱を選別する必要もなく進めました」


「それはこちらの台詞だ、本当にこの魔物達をもらって良いのか」

とダンジョン内のほぼ全ての魔物の死体を指差す。中には焦げているのもいるが。


「えぇ。良いですよね、龍皇」


「うむ、美味そうなのはいただいたからの、満腹よ」


「ということですので」


「まこと、かたじけない」

とゴブリンロード。

どこで習ったのか、その言葉は。


「では財宝はある程度いただきますよ?」


「うむ、好きにしてくれ」



「この宝箱は・・・普通の武具ですね、要りません。これは・・・これもですか。これは・・・これも?これは・・・魔物の肉?」


「それは海の魔物の肉のようだの」

と龍皇


「なるほど、保留。これは・・・」


と続けること100階分。

1階につき複数個あるのでかなり大変である。


「じゃあ、ゴブリンロード、今度の祭りのときは自分が食べるくらいの肉とこの辺りの海の魔物の肉だとか珍しい肉を。そしてこの宝箱の塩と胡椒もお願いしますね。私は宝石類半分とこの辺のマジックアイテムをもらっていきます」


「む!?我の分は!」


「トールにそのままあげても喜ぶようなのはなかったので、一緒に王都で買いましょう。そのための宝石類、資金です」


「むぅぅぅ、やはり良い様に使われた気がするわ」


「そんなことはありませんよ。はい、これを」

と一枚の紙切れを渡す。


「ん?我には字など読めんぞ」

と受け取ると


『ダンジョン制覇、おめでとう龍皇。一人も死傷者を出さなかったのは素晴らしい。良い友人を持ったね』

とイネガル神の声がした


「!!??」


「流石は神ですね、たぶん一人一人持った時の言葉が違いますよ、ね?来て良かったこともあるでしょう?」


「・・・うむ」



「良いのか、これまでもらってしまって」

とイネガルの声がする紙を見る、ゴブリンロード


「あくまでゴブリンのダンジョンの制覇についてだからの、お主等が持っているが相応しかろう、無くすなよ」

と龍皇


「この収納鞄はいいですね、これをプレゼントしても喜ばれるのでは?」

ともう別のことを考えているリッチロード。

収納鞄ことマジックアイテムにより、宝石や他のマジックアイテムが全て入った。


「で?リッチロード、次はどうする?」


「ん?そうですね、私達からのプレゼントと人間のお酒でも買いましょうか。オーガの酒も今年は流石に来ないでしょうから、節約したいですしね」


「うむ、ならとっとと済まして帰るぞ」


「帰る、ですか。そうですね。帰りましょう。じゃあ、また変身してくださいね」


「うむ」


「ではゴブリンロード、また祭日に」


「またの」


「うむ、また迎えを寄こしてくれるのだろう?待っておるよ、では気をつけての」


「誰に物を言うか」

と笑う龍皇


「あなたにでしょう。うっかり街中で元の大きさにならないでくださいよ」

とリッチロード


「あ、はい」

素直に頷く龍皇。自分でもありそうだと思ったからだ。


「「では祭りの日に」」

と飛んでいく2匹を見ながら、


「それにしてもリッチロード殿はどうして龍皇殿と仲が良いのか・・・」

今度の祭りで聞いてみるか、と独りごちるゴブリンロードであった。



祭りの日は近づいてきている。

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