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50話 もっふもふとしたもふもふな日々 13「教会の完成と彫刻の完成」

今日もコーンコーンと木材を叩く音が村に響く。

少し遠くの森ではカーンカーン、バキバキと木が倒される音がする。

前からこういう風景がずっと続いていたかのような牧歌的な風景だ。


しかし、詰めに入っているからかドワーフ達もいつもの表情ではなく、声もがなり声ではなくなった。


「もう少しだ、もう少し傾けろ」

とドワーフが木材を支えているジャイアントに声をかける


「こう、か」


「そうだ、あと少し、コレくらい前にも傾けろ」

と自身の腕で角度を示す


「こう、か」


「そうだ、そのまま、ここがこの穴に入るように慎重に入れろ」


「おう」


「そのまま、そのまま。よし、少し叩くが角度はそのままにしろよ、いくぞ」


コーン、コーン


「今回は鉄を補強で使う、壊れても材料があるからすぐに直せるのが木造の強みだが、今回のはイネガル神と愛し子のためだ。できれば壊れて欲しくねぇ、補強するのにはできるだけ良い鉄を使いてぇ。鍛冶屋は良い鉄ってやつの作り方を自分の家行って黙って見て来い、棟梁、補強のやり方だが・・・」


と現場はかなり静かになった。

まさに厳かな物が造られるのに相応しい空気になりつつある。


村人も手伝い時以外には近くを通らないようにしている。


ドワーフロードの姿はない。

材料が届いた日から、大理石を持って一室から出てこない。

食事も置いても減る気配がない。

そろそろ1週間は経つ、人間なら危ぶまれるところだが、

仲間のドワーフは

「それだけ真剣なんだ、たまにあるんだよ、大丈夫、身体が資本の仕事を続けてるんだ、そう簡単にくたばらねぇよ。ただ、長の分の酒を残しとかねぇといけねぇが、それが難しい。あるのに飲んじゃいけねぇってのが、辛いんだ」

と言っている。

最後は自分の忍耐力について述べている。



数日が経ち、長が部屋から出てきて一言こう告げた。

「龍皇殿とフェンリル殿を呼んで来い」


「なんだ、トールと遊ぶところだったというのに」


「用件も告げずにとは感心せんの」

とフェンリルと龍皇がぐちぐち良いながら鍛冶場に入る。


「それで、どこへ向かえば良い?」

とフェンリル


「奥の部屋だ」

とフェンリルも見ずに、まさに一心不乱で色とりどりのガラスを並べている。

本来なら不敬だが、真剣な職人の顔をした者に言うほど野暮ではない。

返事をせずに奥の部屋を目指すことにした。

彼がそれを望んでいるのが分かったからだ。


ドワーフ達の真剣さと緊張が伝わり、龍皇達も顔つきが変わっていく。

ここまで必死になってやっている者達が自分達を呼び出すという手間をとったのだ。

何かがある、と。

何か自分達にしかできないことを任されるのだと。


「入るぞ」

と龍皇が告げると


「応」

と短く返事があった


そして龍王達がドアを開けると、一匹のドワーフが腕を組んで佇んでいた。

一枚の布をかけた彫刻の前に立つようにして。


「来てもらったのは他でもない、あんた等に最初に見てもらいたかったからだ」

と唐突に布を外す。


説明になっていないことを言い出した小人に何かを言おうとして、

布が外されたその彫刻に目を奪われた。

そして彫刻に恐る恐る近づいていく。


「おぉ、おぉ、父よ、懐かしき父よ、イネガル神よ」


「何という、何という、まさに父よ、我等が父よ、イネガルよ、まさしくイネガル神よ」

と2匹して彫刻に縋りつき、号泣している。


彫刻は赤子を抱き、慈愛の表情でその子を見つめる子供の姿だった。

赤子の産まれてきたことを祝福し、赤子のこれからを祝福し、赤子の未来に憂いがないことを願う、神聖な子供の姿だった。


ドワーフが泣いている2匹に語りかけた。

「何かを彫る前には、その石や木の本質を見るのに1日をかける。わしがいつものようにそうして大理石にどこを彫られたいのか、どうして欲しいのか、わしがどうしたいのかを語り合っていた。そして、彫る場所を決め、明日から彫ろうと寝た。そうすると夢で声がする」


『教会に僕の彫刻を作ってくれるそうだね、ありがとう。時間がないから一瞬だけ僕を見せてあげる。龍皇とフェンリルにお詫びの追加とでも告げてくれ、見せるのも2匹を最初にしてあげてくれ』


「そうして、わしは神の姿を見ることができた。龍皇殿、フェンリル殿、感謝する。貴殿等がいなければこのような奇跡はなかったろう。わしは神が姿を現したという遥か昔の時代にいたドワーフ以来、初めて神の姿を見れた。今の神の彫刻達はその時代の彫刻を真似して、真似してと劣化していた。わしのもそうなるはずだったが、このような栄誉に与れるとは」



しばらくしてから、龍皇が目を赤くして告げる。

「みっともない姿を見せたの、すまんの。そして感謝しよう、ドワーフの長よ。昔に、そう遥か、遥か昔に我等を育ててくれたイネガル神そのままの姿よ、この目は我等を育ててくれていた時の目よ。父は姿を現すのはもう難しいと言っておった。もう死ぬまで会えないかと思ったが、こうして姿を見ることができた。ドワーフの長よ、物を作るのにかけてそなたの横に並び立つ者はおらんだろう。我が保証しよう、この我が生きた長き時で一番の作り手よ」


フェンリルはまだ泣いていた。

それから言葉を発したのは部屋から出る際に小声で告げる時のみだった。

「ありがとう、ドワーフの長」と。


ドワーフロードは彫刻を見て、

「あの反応なら、わしの腕も捨てたもんではないということか」

と満足そうな笑顔を浮かべ、そのまま倒れた。

すぐにいびきが聞こえ始める。



それから1週間後、教会は完成した。

皆が入れるというから、皆が見に行く。


外観は奇妙で、家に大きな箱がくっついている。そんな第一印象である。

その家も村では珍しく2階建てだから大きい。

だから、大きな家に大きな箱がくっついている。

また、イネガル神には特に象徴がないので、まさに外観だけでは何の建物か分からない。


しかし、一歩中に入れば、皆がここは祈りのための場だと認識する。

入った時にまず明るいことに気づく。

そして、光源を探すと、光に照らされた一体の彫刻がある。

その彫刻がイネガル神であることなど言われずとも皆が分かる。

その慈愛の表情に、自覚しないまま涙が流れる。

他人に言われてお互いが涙していたことに気づく。


入って左の方に階段があり、半分はそちらに。

もう半分は一階に。

2階には椅子があるのみ。

1階には机と椅子と説教台と柱があるのみという簡素な造りだ。

彫刻は1階から伸びている柱の上、大体2階の高さに鎮座している。

屋根にはステンドグラスが付けられており、それが彫刻と部屋を照らしている。


皆が集まり、彫刻を眺めていると説教台に老人と青年が二人やってきた。

「皆さん、本日はこの教会にお集まりくださりありがとうございます。本日よりこの教会に配属された大司教のイワンです。こちらが神父のヤヒト。これから村の一員として何卒仲良くしてください。」

とペコリと老人が頭を下げる。

「大司教や神父と言っても、大体の皆さんと同じイネガル神を信じる一人の人間です。なので、イワン、ヤヒトと気軽にお呼びください。私達は教えのためにいますが、ここではそれよりも読み書きなどの勉強を教える方を求められていると聞いています。後で授業の時間を設定しましょう」


ここでようやく手を挙げる者が出てきた、リッチロードである

「はい、どうぞ」


「えぇ、ありがとうございます。是非、私達魔物とも仲良くしてくださいね」


「もちろんです」


「それで、お話の最中に失礼いたしますが、何故あなた程の方がこのような辺鄙な場所に?私はてっきり神父と修道士のような位の組み合わせの方がいらっしゃるかと・・・」


「それは神託があった地だからですね。また、私達はいわば神の子孫ですが、神の実の子ともいうべき龍皇様とフェンリル様がいらっしゃいます。今まで知らなかった神の教えを学べるかもしれないということで、その教えの編纂に位階が枢機卿では高すぎますが、神父一人では低すぎるということです。それに私のような老人にもこの村は住みやすかろうという配慮があったようですね。」

まぁ、枢機卿も教皇もどうにかしてここに住めないかと駄々をこねていたらしいですがと笑う。


「はぁ、なるほど、そういうものですか、分かりました。確かに神に縁のある地ではありますか」


「えぇ、全ての土地と生き物に神の愛は注がれておりますが、特にこの地は最近になり神との接触がありますから。それにしても見事な教会ですね、祈りを捧げる、その一つに全てを捧げたかのような造り。まるで神そのものかのような彫刻。後で皆さんもご覧になる運動場。実に素晴らしい」


「彫刻が神と瓜二つであることは龍皇である我とフェンリルが保証しよう、ドワーフの長の夢に神が出て姿を見せたと言っておった。長は実に見事にその姿を掘り起こしたものよ。我等を育てていたときのイネガル神の姿、目そのものだ」


「なんと!また、神が!そしてこれが神のお姿!おぉ」

と彫刻を拝み始めるイワンとヤヒト。

そして他の者も各々なりに拝む。



「失礼いたしました。是非、また龍皇様達にはお話をうかがいたいものです」

と鼻息荒い老人。


「気が向いたらの」

と龍皇。


「では、運動場へ案内しましょう」

と青年の方が話を進める。

老人がもう使い物にならないと思ったからだろう、目が龍皇とフェンリルをキャッチし続けている。



「ここは赤ん坊や子供のための場所ですね、入る時には靴をお脱ぎください。いつでもお使いいただいて大丈夫です。夜泣き出してしまって周りに影響を与えてしまう、という時でも構いません。簡単にですが、見学会はこれで終わりですかね。あとは私どもは一応医術を学んでもおります、何かの際には呼んでください。」


教会騒動はこれで一応の終結を見せた。



次の騒動はトール生誕1年祭である。

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