5話 神様と死後
「さて、これから少し世界の神々の壮大な話をする。その後にお主の話をすることにする。その時にこの信仰心とカリスマが大事になるからなんとなくで良いから覚えておきなさい」
ん?世界の神々?
「あの、」
「なんじゃね、松田君」
初めて名前を呼ばれて、あぁやっぱり人違いではないんだなぁ、と遠い目になったのを自覚する。
「世界の神々って、いるんですか?日本の神々以外にも」
「それはいるが、むしろどうしていないと思うのかね?家に神棚と仏壇があるじゃろう、まだ珍しく。そもそも日本にいる仏様達なぞ向こうから来た神様じゃよ?まぁ先方は神と呼ばれるのは何か違和感があるらしいから、高次の、つまりは人間より高い次元にいる存在じゃと認識してくれれば良いが。仏壇にもほぼ毎日手を合わせていたじゃろう」
「いや、仏様と日本の神様が両立するのも不思議な気がするんですが、なんとなく分かるんです。お互い排斥はあまりしなさそうだなぁと。ただ、西洋側の向こうって異教徒禁止の唯一神様ですよね?矛盾しませんか?」
「あぁ、なるほど。お主は初めてなのにいきなりここに来たからの。大丈夫じゃ、ちゃんと話すでの。むしろそれが一番始めに話したかったことよ」
彼は笑いながらお茶を啜る。
「さて、そもそも神の存在と死後について話さなければなるまい。簡単に言ってしまえば、神とは信仰されるもの。死後は死者が信仰した神の元へ行くことじゃ。神になるのに原則などはない。日本の付喪神が良い例じゃな。その家でだけで大切にしており、もはや信仰されていると言っても良いほど長く存在すれば神になれる。わしだとて元は人間じゃ」
「唯一神様とは喧嘩をしたりしないんですか?向こうは異教徒を嫌ってたりとか・・・」
恐る恐る聞いてみる。
「言われてみれば向こうさんは確かにこちらに厳しい時もあるような気もするが、別に子供ではないのでなぁ。向こうさんは厳しい環境から信仰されるにいたった神じゃ。だからか日本の多神教のようなゆるい信仰が合わんのではないかなぁ。まぁ、お互い自分の信徒がいる場所で仕事に励んでおるよ。」
「仕事?」
「先も言ったが、死者は信仰している者のところへ行き、その後をどうするのか審判される。わしのような専門職的な神のところにもたまに来るよ」
専門職って、確かに学問の神様という認識が一番強いけれど。。
「例えば山の神。山を信仰する者は絶えないからの、死んだら信仰されていた山の神がその後をそれぞれ決める。決め方は割と自由じゃよ。君は普段の行いが良い人だね。じゃあ、好きなこの山で不埒な行為をしている輩がいたら罰をくだしてね、散歩しながらで良いよ。君は普段の行いが悪い人だね、木を含めた全ての生き物にアンケートとってきてね、辛くて長い道のりだけど頑張ってみたいな」
「軽っ!??」
いや、普段の行いが悪いVerはかなり無理があるけど。
できるのか?死んだばかりの人間が。
「仏様のところは大変じゃぞ。お互いこの休憩所で会うときは仕事の話は皆避けるでの。まぁ休憩にならんからじゃが。だからあまり深く内容まで知らんが、三途の川を渡るときに奪衣婆に脱がされるとか、閻魔様に会うとか、基本皆地獄行きじゃとか」
「酷っ!????」
山信仰との落差が激しい。
基本皆地獄行きとかは聞いたことがあるけど、どうなの?
「まぁ、仏様のところは基本現世含めて全てが地獄、全てが修行じゃからな。地獄といっても魂の修練には山と変わりはない。磨き方が違うだけで、全ての現世の生き物は現世で魂を磨き、死後も魂を磨く。この考え方は全ての神共通じゃよ。わし達も仕事をして魂を磨いておる」
「魂を磨くとどうなるのですか」
「例えば、お主達ならばより高次の存在になれる。北欧の昔のアインヘリアルじゃったか、あれも魂を磨いたもの達よ。ラグナロクに備えた勇士達じゃな。そう言えば、北欧の神達は今どうやって皆魂を磨いておるのじゃろうなぁ。ラグナロクで死んだが、信仰がまだあるから生き返ったりした者がいて、そこに集っているのか。まぁ、知らぬがな。」
なんとなく二人でお茶を啜る。
美味い。
「神になって初めてラグナロクなぞ知ったからの。神になった時になったばかりのわしに神の在り方を教えてくださった方がおっての。その方がラグナロクを題材に多神教の在り方を教えてくださったんじゃ。まこと、面白い世よな。
あとは、例えば仏様のところでは仏になれるとかあったかの。わし達、日本の多神教も大概じゃが、あそこも宗派が違うからどう扱っておるのか。たまには各地の処遇を見てみるのも良いかもなぁ」
「申し訳ありませんでした、私が悪かったと大変に反省しております。あなた様におかれましてはどうぞ仕事に集中してください。各地を飛び回るとか、それも私との会話がきっかけとか、各地の受験生を思うとあまりにも忍びないです」
「たぶんお主が思ったより時間はかからんと思うが、そう言うなら自分のところで仕事をしてようかの」
「是非、是非そうしてください。お願いします」
正直自分が死んだ時の話より、心臓に悪かった。
自分の時だけ応援してくれる神様が普段の場所にいないとか、その受験生がハードモード過ぎる。
「では、まとめると
1:神様は信仰されているものがなっている
2:死後はその信仰している神様のところに行き魂を磨く
3:死者への魂の磨かせ方は神様それぞれ
4:魂を磨かれた死者はより高次の存在になれる
で、合っていますか?」
「その通りじゃ。仏様のところはなんだかんだいって早く高次の存在になる者も多いから、厳しいのも良いのかもしれんな。そう思うと西洋の方の唯一神達も自分のところの方が魂をよく磨くことができる、だから他を信仰せずに生きなさいと、生きている者を思ってのことなのかもなぁ。自信があるから布教する。日本の多神教のほとんどは他と比べるとどうもゆったりしているからの」
「でも、そういうゆったりさが好きですよ。神社によくお参りしていたのもそのおおらかさが神社に満ちていたのだと思います」
「嬉しいことを言ってくれる」
また、照れていらっしゃる。直接の氏子の声はやっぱり嬉しいらしい。
死んで来た人達とはあまり話せないのかな、絶対に忙しいし。
思えばこの時間もこの方のところには仕事が舞い込んでいるに違いない。
なんか、凄い罪深いことをしている気がしてきた。
「なんじゃ、褒めてくれたとおもったら、急に青ざめおって」
「いや、各地の祈りを叶える時間を割いてもらっていると思ったら、彼らに申し訳なく」
「話したいと言ったのはわし達じゃ。お主は気にせんでえぇ。学問に強い神は他にもいるから手伝ってもらっているから安心せぇ。まぁ、ある意味わしの休憩時間じゃな、今は。」
爽やかに笑っているから安心して良いのだろうか。
「と、まぁ死んだら普通はその神の所に行くから、その者にとっては自分の信仰は間違っていなかったとなるよ。自分の信仰通りの神にしか会わんからなぁ。だからその者達にとっては西洋の唯一神は唯一神じゃよ、ちゃんとしたな。」
なるほど、信仰は報われるということか。
「ちなみに魂を磨かれた者は、神の手伝いで更に魂を磨くことが多い。そしてその素養は信仰心で計れる。」
ふむふむ
「だからお主は今人気者じゃよ。どこも忙しいから信仰心が高いものにはすぐに来て、とっとと魂を磨いて手伝ってほしいからの。
だから、先のに加えると
5:魂を磨くと神の仕事を手伝って魂を磨くこともある
かの。」
意外と評価が高かった~~!!??
もふもふ分が足りない。
(登場人物まだ2名)